昨10月5日(火)、「上村松園展」を観に、北の丸公園に隣接する東京国立近代美術館を訪れました。折りしも10月3日のNHK教育テレビの日曜美術館では「上村松園 美人画の深遠」が放映され、その影響もあってか、開館10分前には既にかなりの長い列が出来ていました。この美術展も家人のお膳立てに乗っての鑑賞でした。
上村松園(1875~1949年)の作品が数多く展示さた大規模な回顧展で、前期は9月7日~9月26日、後期が9月28日~10月17日まで。一部展示替えがあるようです。作品はほぼ年齢順に展示され、3章で構成されていました。
1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し
2章 情念の表出 方向性の転換へ
3章 円熟と深化
私はここ近代美術館へは初めてですし、上村松園の作品展も初めてでした。そこで初期の作品から、最前列で超ゆっくりのペースに合わせて、時間を掛けて鑑賞することにしました。最初の展示品が「四季美人」で松園17歳での作品との事にまず驚かされます。
以下「松園」初心者の駄文です。
多くの作品に登場するのは着物姿の美人。晩年までの作品を鑑賞しても、私には初期作品との差が良く分かりません。ただ「花がたみ」の前で足が止まりました。虚ろな眼差しと、しどけない様子の着物姿。それまでの作品とはまるで作風が違うことが分かります。
予習として前日に見た「日曜美術館」の録画では、感情など対象の内面の表現に苦悩した時期があったとの事。その代表作品「焰」は前期に展示され後期には登場しません。「花がたみ」は「焔」に先立つ3年前の作品のようですが、同じ範疇の作品と推測しました。ただ、一番長い時間観ていたのは「楊貴妃」。鑑賞の流れが止まり先に進みません。歴史上の人物のヌード画の前で、驚く人々の雰囲気が伝わってきます。
絵の師匠との間に子をもうけ、明治時代にシングルマザーの道を選んだ松園を陰で支えた母。その母無き後の作品には幼児を抱いた女性が登場し、慈しみの眼差が感じられ、絵に穏やかな雰囲気が漂います。
全作品を観て、色彩鮮やかな「序の舞」と松園の自画像が投影されていると語られる「人生の花」が深く印象に残りました。単に美人を描こうと思った分けではなく、真善美の極致としての美人を描きたかったと書いた松園、その結果として私達は、明治から大正を経て昭和へと続く近代日本の、内面豊かな美人と数多く出会うことになりました。
昭和24年、74歳で亡くなる年まで描くことに没頭し続けた、一女性の渾身の努力の軌跡を観ることが出来ました。