マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

がん闘病のその先に。田部井淳子さん

2014年10月01日 | 文京食の100選

 敬愛する女性登山家、田部井淳子さんが2年前にがんを煩い、闘病のさなかにあると知った。

 25年ほど前、その当時進路部にいた私は「東京モード学園」主催の、彼女の講演を聞いたことがあった。女性として初めてのエベレスト登頂を果たしていた。筋肉隆々たるお方かと思いきや、小柄な華奢な体の方が現れたのには驚いた。偉大な足跡にもかかわらず、偉ぶったところが全くなく、自らの生い立ちから始まり、35歳でのエベレスト登頂・七大陸最高峰の制覇までを淡々と語った。細部の話は忘れたが、「運動能力が弱い私でも、好きな山登りに打ち込んできたお蔭で実現出来たことです」の様な話を記憶している。その話の内容と人柄に惚れた私は、彼女を、当時の勤務校の、向丘の「PTA講演会」の講師にお出で頂こうと、かなり積極的に動いた。しかし、事務所に講演依頼の電話をすると講演料50万円と聞き断念した経過がある。

 その後の華々しい活躍もさることながら、山からのごみ持ち帰り運動と積極的に関わるなどの活動歴を知るにつれ、尊敬の念も増していった。3年前には常念小屋で、何人かの山仲間と談笑する姿も垣間見た。身近に感じられる登山家でもある。
 その田部井さんが、がんに侵され、8か月間に及んだ、抗がん剤治療を終えたそうな。手や足に激しい痺れ、階段を登るのにも激しい痛みが伴い、辛そうな表情が場面に流れていた。

 しかしそんな状況にも関わらず、完登率60%の富士山に、登山経験の全くない高校生86名全員を登らせようとのプロジェクトを実行に移したのだ。題名は『一歩一歩 あと一歩』。
 福島県は三春出身の彼女。被災地東北への思いは人一倍深い。東北の高校生に向けた右写真の呼びかけをした。登山を通じて、若い人たちを応援したいと考えたのだ。「一歩一歩登っていけば、必ず目標を達成できるということを、体で感じてほしい」。これこそが、彼女が伝えたいメッセージ。「モード学園」の講演会で私が聞いた事柄に通じる。この呼びかけに86人もの高校生が参加を決意。参加動機には多くの若者が「前を向いて進むキッカケがほしい」と綴っていた。




 当日は午前2時スタート。7時間はかかるこの登山に一人の脱落者も出さずの山頂という快挙。田部井さんは、歩けなくなった高校生を幾度となく励ましていた。「どんなに辛いこと、苦しいことも、自分の足で一歩一歩、地味な努力を続けていけば越えられる」。彼女が登山から得たものは、人生にも通じる。言葉からの励ましだけでなく、一緒の”成功体験”を通じて高校生に伝えたかった”遺言状”。私を含め、この番組を観た、多くの人に励ましというご褒美をくれたことだろう。



(山頂で高校生一緒に歓声をあげる田部井さん)


  (写真:エベレスト女性初登頂時に)


  (カルステンツ・ピラミッド登頂直後に)