徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

捨て犬ラックの物語…第五話 「ゴンベが種まきゃ…。」

2007-10-23 14:56:00 | 捨て犬ラックの話
 何も障害物がなくても十分にこけやすい性質であるオカンだが…ラックが来てから余計にひどくなった…。
それも…勝手知ったる我が家の庭で…のことである…。

 原因はラックの習性…穴掘り…。
届く範囲内のあらゆる場所を掘り返す…。
庭は無惨にもぼこぼこ状態…。

強度の近眼で…そそっかしく…真っ直ぐに前を向いて進み…あんまり下を見ないオカン…。
格好の餌食である…。

 ラックはウサギ狩りなどに使われるビーグル種だから…穴掘り名人…。
穴を掘って寒さをしのいでいたおかげで…繋がれて動きの取れない寒い森の中でも…何とか生き延びた…。

 せっせと穴を掘り…土を飛ばし…掘った穴の匂いを嗅ぎ…ちょうどいい加減まで掘ると…御腹を乗っけて冷やす…。
暑い夏場は…そうやってあちこちに穴を掘り…そこにすっぽりと納まっていた…。

 穴を掘るのは得意だが…掘った穴はそのままなので…雨が降ると水が溜まってしまう…。
ラックに埋めとけ…と言ったところで…埋めるわけもないので…こちらが土を運んで均すしかない…。

 ぼこぼこ穴が増えてくると…親父がシャベルで穴を埋める…。
埋めるとすぐにまた…ラックが掘り返す…。
親父が埋める…。 ラックが掘る…。
そんなことの繰り返し…。

 笑っちゃいけないのだが…親父がせっせと穴を埋めているすぐ傍で…ラックがせっせと新しい穴を掘っている…。
まさに…ゴンベが種まきゃカラスがほじくる…である…。

僕…お父さんのお手伝いしてるんだよ…。

ラックからすれば…そんな感じ…。
だからとても嬉しそうに…多分…褒めてもらいたげに親父を見る…。
親父はいい子いい子しながら苦笑するしかない…。



 或る日…何気なく外を見ると…ラックが家の裏の空き地で遊んでいた…。
垣根の内側に居るはずのラックが…垣根の向こう側に居る…。

???・・・・・・・・・逃げたぁ~…!!

慌てて庭に出ると…遊んでもらえると思ったのか…ラックは喜んで戻って来た…。
垣根の下を潜り抜けて…。

 期待に背いちゃ悪いので…撫で撫でしながら引き摺っている鎖を確かめる…。
鎖は大丈夫…何処といって異常はない…。
輪っかに潜らせた留め金部分が…偶然…緩んではずれたのだろうか…。

まぁ…構造が単純だからなぁ…。

鼻黒の時には脱走なんてついぞ起きたことはなかったが…運動量の激しい犬だから…鎖もはずれやすいに違いない…。

 何日かすると…今度は庭から姿を消した…。
慌てて捜しに行くと…坂を下った大きな空き地に居た…。
毎日の散歩コースを辿っていたようだ…。

 何度目かには…確かなことは分からないが…夜中に逃げて朝方戻ってきたようで…鎖がはずれたまま庭に居た…。
この時は…誰もその現場を見ていなかったが…身体中に草や草の実などがくっついていた…。
dove家の庭には…ラックの穴掘りのせいで草が生えていない…。
出かけていたのは…まず…間違いないだろう…。

 脱走している最中に誰かに怪我でもさせたらいかん…というので…もう一本鎖を購入し二重にして繋ぎ…括りつけてある棒ッ杭も新しく背の高いものに変えた…。
散歩時の引き綱の付け替えが二度手間だが…事故防止を考えればそれも仕方がない…。

 ラックの動きを観察してみると…運動音痴の鼻黒とは異なって上下左右の動きが激しい…。
それに伴って鎖は張り詰めたり緩んだりを繰り返す…。

 何処か上の方に繋いである場合はいいが…ラックのように棒ッ杭に引っ掛けてあると…止めてある部分が地面と擦れ合う…。
止めになっているΩ型の金属がそのたびに位置を変え…留め金の先が輪に向けば…わりと簡単に抜けてしまう…。

さすがに故意にはずすことは難しいが…。

 何にしても…ラックはこの家を自分の家だとちゃんと認識しているようだ…。
成犬になるまでずっと他の家で暮らしていたにも関わらず…脱走して行方不明になることもなく…朝までには戻ってきたのだから…。

日がな一日ここに繋がれてちゃ…おまえも随分と退屈だろうから…好きなだけ穴でも掘っておくれ…。




次回へ…。



 



この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。


この物語を書く決心をさせてくれた記事です。

http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0