鼻黒の時にもそうだったのだが、森が近いせいか、動物の血を餌にするダニがたくさん居て、ラックも年中…血で膨れ上がった大きなダニをぶら下げていた…。
家族が庭に出るたびに、ラックからダニを取り除いてやっていたが、一向に減らず、ダニ避けの首輪もあまり効果がないようだった…。
ダニは皮膚に食い込むように食いついており、こんな奴を放っておいちゃ、ラックが可哀想だというので、家族がそれぞれ、せっせと、手が赤黒く染まるまでダニ取りをしたり、ブラシをかけてやった…。
ダニを取る時にはラックもわりとおとなしくしている…。
やんちゃな犬だから…おとなしくしているのはあまり得意ではないのだが…。
構ってもらっているのが嬉しいようだ…。
誰かが庭に降りてくれば…触ってもらえると思って背中を向ける…。
いい子いい子も大好きなラック…。
ところが…ラックが我が家の生活にも慣れた頃…下の弟がいつも通りにラックの背中からダニを取ってやっている最中に…突然…ラックに噛み付かれた…。
あま噛みではない…。
グルグルと喉を鳴らし…牙を剥き出し…本気で敵意を向けている…。
昔から下の弟は犬に甘いので…舐められていたのは確かだが…それにしても何のきっかけもない不意打ちの攻撃だった…。
そのうちに…ラックの命の恩人である上の弟も噛み付かれ…あれほど犬好きで…伯父の飼っている人間嫌いの犬からも好かれる…犬受けの良い親父でさえも噛み付かれた…。
噛み付くとなかなか放そうとしないので…傷を受けたり…ズボンの裾に穴が開いたりした…。
何れも…ダニ取りやブラシ掛けの最中の出来事で…何気ない時に…不意に牙を剥き…眼を吊り上げて怒り狂う…。
オカンの場合は…二重の鎖が棒ッ杭にグルグルに絡んでいたので直してやろうとした時…だった…。
力のないオカンは餌でつってラックを反対回りさせて鎖の絡みを解こうとしたようだが…それが不味かった…。
意地悪したと思われたのか…いきなり怒ったラックに襲われ…血が出るほど腕を噛まれた…。
餌でつるのは…普通に考えても…さすがにどうかとは思うが…どっかちょっと抜けている人なので…馬の目の前にニンジンをぶら下げて走らせる…なんてギャグみたいなことを真剣にやってみたんだろう…。
鎖を解いてやりたい一心だったのだが…。
オカンは…ダニ取りの最中やブラシ掛けの最中にも噛み付かれている…。
オカンも子供の時から何匹もの犬の中で育った人だから…犬には慣れているはずなのに…。
doveの場合は…何故か…噛み付かれなかった…。
或る時…ダニ取りをしていると…急にグルグルと怒り出し…牙を剥き…手を噛もうと口をパクッとさせたが…牙を立てなかった…。
その際…doveは激しくラックを叱った…。
今ではいけないこととされているが…悪さをしたらお尻を叩くのが…当時の子育ての常道…。
ラックのお尻を思いっきりビシビシッと叩いて…噛んではいけないと言い聞かせた…。
思わぬ反撃にラックは慌てて小屋に飛び込み…小屋の中から悪そうな顔をして覗いていた…。
その後…doveに対しては…パクッ…もしなくなった…。
以来…一度も噛まれていない…。
他の家族が何度もやられているのに…。
それは…doveが怒ったから…では…ないようだ…。
弟たちやオカンはともかく…親父も同じように怒ったはずだから…。
憶測に過ぎないが…最初に食べ物を与え…拾われて不安だった頃に最も長い時間を一緒に過ごしたdoveには…ラックなりに遠慮とそれなりの信頼があったものと思われる…。
当時は…人を噛んだ犬は殺される運命にあった…。
犬は…一度でも人を噛むと噛み癖が付く…そう思われていて…ひどく危険視され…殺された…。
それを聞くたびに…可哀想で胸が痛んだ…。
犬が噛むに至った理由が…きっとあるはずだと…。
ラックだってもしかしたら…すごく気紛れな飼い主から…可愛がってもらっている最中に…突然…意地悪や乱暴されるような目に遭ってきたのかも知れない…。
何度も酷い目に遭って…心底…人間を信用できなくなっていたのかも知れない…。
生まれた時から飼っているわけじゃないから…気心が知れないのはお互いさま…。
人間が戸惑いを感じているように…ラックだって不安なのだ…。
拾った犬に幾度も噛みつかれながら…ラックは怖い犬だで逃がさんように気をつけないかん…などとのんびり構え…脱走できないように幾重にも手を打って…12年半も可愛がって育て続けたのは…考えようによっちゃぁ馬鹿なのかもしれないが…。
そのお蔭で…ラックの命が延びたことを思えば…それはそれで良いような気がする…。
一旦…ラックを飼うと決心したからには…何が起こっても責任は我が家にある…。
自分たちが噛まれている分にゃ…自分たちで何とでもできる…。
他人さまを噛んだら…さすがに助けられない…。
だから…逃がさないように最大限…努力した…。
散歩の時に見た目に惹かれて近づいて来る人たちに対しては危険も知らせた…。
そうして…12年余…。
拾った犬だろうと…怖い犬だろうと…ちゃんと泥棒避けの役目をしていた…。
噛み付き犬ラックは…dove家の…家族である…。
次回へ…。
この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。
この物語を書く決心をさせてくれた記事です。
http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0
家族が庭に出るたびに、ラックからダニを取り除いてやっていたが、一向に減らず、ダニ避けの首輪もあまり効果がないようだった…。
ダニは皮膚に食い込むように食いついており、こんな奴を放っておいちゃ、ラックが可哀想だというので、家族がそれぞれ、せっせと、手が赤黒く染まるまでダニ取りをしたり、ブラシをかけてやった…。
ダニを取る時にはラックもわりとおとなしくしている…。
やんちゃな犬だから…おとなしくしているのはあまり得意ではないのだが…。
構ってもらっているのが嬉しいようだ…。
誰かが庭に降りてくれば…触ってもらえると思って背中を向ける…。
いい子いい子も大好きなラック…。
ところが…ラックが我が家の生活にも慣れた頃…下の弟がいつも通りにラックの背中からダニを取ってやっている最中に…突然…ラックに噛み付かれた…。
あま噛みではない…。
グルグルと喉を鳴らし…牙を剥き出し…本気で敵意を向けている…。
昔から下の弟は犬に甘いので…舐められていたのは確かだが…それにしても何のきっかけもない不意打ちの攻撃だった…。
そのうちに…ラックの命の恩人である上の弟も噛み付かれ…あれほど犬好きで…伯父の飼っている人間嫌いの犬からも好かれる…犬受けの良い親父でさえも噛み付かれた…。
噛み付くとなかなか放そうとしないので…傷を受けたり…ズボンの裾に穴が開いたりした…。
何れも…ダニ取りやブラシ掛けの最中の出来事で…何気ない時に…不意に牙を剥き…眼を吊り上げて怒り狂う…。
オカンの場合は…二重の鎖が棒ッ杭にグルグルに絡んでいたので直してやろうとした時…だった…。
力のないオカンは餌でつってラックを反対回りさせて鎖の絡みを解こうとしたようだが…それが不味かった…。
意地悪したと思われたのか…いきなり怒ったラックに襲われ…血が出るほど腕を噛まれた…。
餌でつるのは…普通に考えても…さすがにどうかとは思うが…どっかちょっと抜けている人なので…馬の目の前にニンジンをぶら下げて走らせる…なんてギャグみたいなことを真剣にやってみたんだろう…。
鎖を解いてやりたい一心だったのだが…。
オカンは…ダニ取りの最中やブラシ掛けの最中にも噛み付かれている…。
オカンも子供の時から何匹もの犬の中で育った人だから…犬には慣れているはずなのに…。
doveの場合は…何故か…噛み付かれなかった…。
或る時…ダニ取りをしていると…急にグルグルと怒り出し…牙を剥き…手を噛もうと口をパクッとさせたが…牙を立てなかった…。
その際…doveは激しくラックを叱った…。
今ではいけないこととされているが…悪さをしたらお尻を叩くのが…当時の子育ての常道…。
ラックのお尻を思いっきりビシビシッと叩いて…噛んではいけないと言い聞かせた…。
思わぬ反撃にラックは慌てて小屋に飛び込み…小屋の中から悪そうな顔をして覗いていた…。
その後…doveに対しては…パクッ…もしなくなった…。
以来…一度も噛まれていない…。
他の家族が何度もやられているのに…。
それは…doveが怒ったから…では…ないようだ…。
弟たちやオカンはともかく…親父も同じように怒ったはずだから…。
憶測に過ぎないが…最初に食べ物を与え…拾われて不安だった頃に最も長い時間を一緒に過ごしたdoveには…ラックなりに遠慮とそれなりの信頼があったものと思われる…。
当時は…人を噛んだ犬は殺される運命にあった…。
犬は…一度でも人を噛むと噛み癖が付く…そう思われていて…ひどく危険視され…殺された…。
それを聞くたびに…可哀想で胸が痛んだ…。
犬が噛むに至った理由が…きっとあるはずだと…。
ラックだってもしかしたら…すごく気紛れな飼い主から…可愛がってもらっている最中に…突然…意地悪や乱暴されるような目に遭ってきたのかも知れない…。
何度も酷い目に遭って…心底…人間を信用できなくなっていたのかも知れない…。
生まれた時から飼っているわけじゃないから…気心が知れないのはお互いさま…。
人間が戸惑いを感じているように…ラックだって不安なのだ…。
拾った犬に幾度も噛みつかれながら…ラックは怖い犬だで逃がさんように気をつけないかん…などとのんびり構え…脱走できないように幾重にも手を打って…12年半も可愛がって育て続けたのは…考えようによっちゃぁ馬鹿なのかもしれないが…。
そのお蔭で…ラックの命が延びたことを思えば…それはそれで良いような気がする…。
一旦…ラックを飼うと決心したからには…何が起こっても責任は我が家にある…。
自分たちが噛まれている分にゃ…自分たちで何とでもできる…。
他人さまを噛んだら…さすがに助けられない…。
だから…逃がさないように最大限…努力した…。
散歩の時に見た目に惹かれて近づいて来る人たちに対しては危険も知らせた…。
そうして…12年余…。
拾った犬だろうと…怖い犬だろうと…ちゃんと泥棒避けの役目をしていた…。
噛み付き犬ラックは…dove家の…家族である…。
次回へ…。
この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。
この物語を書く決心をさせてくれた記事です。
http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0