ラックの脱走回数を厳密に数えたことはないが、あの時はああだった…この時はこうだった…という記憶が家族のそれぞれに残っているから、何度も居なくなったことは間違いない…。
そうだ…。 こんなこともあった…。
逃げ出したラックを探しに行った下の弟が…ラックを見つけて連れ帰ったのはいいが…ラックの全身がとんでもなく臭い…と嘆いた…。
どうやら…何処かで…全身に肥を塗りたくったらしい…。
森の中の開かれたところには幾つも畑がある…。
近くには牛舎もあるから…考えられないことではない…。
まったく…何をやってくれることやら…。
いくら犬でも外で洗うには寒過ぎる季節のこと…。
仕方がないので風呂場へ入れて、シャンプーでゴシゴシ洗った…。
最も…外に出せば…すぐに仰向けに転がって庭の土を身体に塗りたくるのだが…。
或る時など、自分で帰ってきたのはいいが、両ほっぺたがおたふく状態…。
ずっと小屋に籠もったまま出てこない…。
理由は分からないが、そのまましばらくはいつもの元気がなかった…。
ひょっとすると原因は…マムシ…だったかも知れない…。
今は開発されてしまったが、もともとdoveの実家の周辺はマムシの多いところで、興味津々何でも口に入れるビーグル種のラックにとって脱走は危険と隣り合わせ…。
事実かどうかは定かではないが…犬がマムシに噛まれた時は…何日もじっとしていて自力で解毒するという話を聞いたことがある…。
その時には思い及ばなかったが、ラックの場合もそれだったのではないか…と、後になってから考えた…。
それもこれも…脱走が家族内のできごとで済んだからよかったようなもので…脱走中に他人に怪我でも負わせていたら…大変なことになっていた…。
とにかく…dove家としては…そのままにはしておかれず…原因を突き止め…太い棒ッ杭を打ち込み…鎖を二重にし…どうでもラックの脱走を食い止めなければならなかった…。
犬は…人間が思っているより…はるかに豊かな感情を持つ動物…である…。
喜怒哀楽に富み…愛情深い…。
言い換えれば…人間の子供と同じで…傷付き易く癒され難い心…を持っている…。
ラックが拾われた時に…見知らぬはずのdove家の面々に激しく身体を摺り寄せ…座っていたオカンの膝に顔をゴシゴシ擦り付けて喜んだ姿を…忘れることはできない…。
飼い主に裏切られて捨てられても…死ぬほど寒くて悲しくて腹を空かせて…そんな想いをしても…人間の傍に戻りたかったのだ…。
ラックは我が家で12年半を生き…最後まで飢えることなく温かく過ごしたが…しかし…我が家に来るまでに味わった心身の飢えを…癒せたかどうか…は謎である…。
親父が会社へ出かける時間が…ちょうどラックの朝御飯の時間だったのだが…我が家へ来た当初…言葉にできないラックの悲しみを表わしているような出来事が毎日続いた…。
オカンが朝御飯をラックの前に置く頃に…親父の車が車庫から出る…。
ラックは御飯を食べずにいとも悲しげな声を出す…。
オカンが何度…おあがり…と言っても…食べない…。
ガツガツと大飯喰らいなラックが食べない…。
親父の車の音が完全に消えてしまうまで…鳴き続ける…。
完全に消えてしまうと…諦めて食べ始める…。
もしかしたら…車で連れて来られたラックは森に繋がれ…最後の御飯を食べている間に置き去りにされたのではないか…。
オカンが…そう…推理した…。
親父が車で出て行く音がすると…また…置き去りにされるのではないかと…不安になるのかもしれない…。
何日も経って…朝出かけても夜必ず帰ってくることが分かってくると…安心したのか鳴かなくなった…。
見た目が可愛いくてもラックは作り物ではない…。
ラックには…ちゃんと感情が存在する…。
作られた玩具でさえ…捨てられる時には嘆くかもしれない…。
けれど…ラックは…捨てられても…その意味が分からず…自分を裏切った飼い主をひたすら信じ…待っていた…。
あの時の喜び方が…その証…。
諦めることは…ないのだろう…。
忘れることも…ないのだろう…。
連れて来られた時に飢え切っていたせいなのかどうか…前の飼い主と拾ったdove家を混同しているようなところがある…。
家族構成が似ていたのかもしれない…。
もとの家に帰ってこられたと思い込んだのかも知れない…。
でも…それは…前の飼い主を忘れたことにはならない…。
極限状態に置かれたために…記憶がすりかわっているだけなのだ…。
ラックを見ていると…そう思う…。
悲しいくらい…そう思う…。
次回へ…。

この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。
この物語を書く決心をさせてくれた記事です。
http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0

そうだ…。 こんなこともあった…。

逃げ出したラックを探しに行った下の弟が…ラックを見つけて連れ帰ったのはいいが…ラックの全身がとんでもなく臭い…と嘆いた…。
どうやら…何処かで…全身に肥を塗りたくったらしい…。

森の中の開かれたところには幾つも畑がある…。
近くには牛舎もあるから…考えられないことではない…。
まったく…何をやってくれることやら…。

いくら犬でも外で洗うには寒過ぎる季節のこと…。
仕方がないので風呂場へ入れて、シャンプーでゴシゴシ洗った…。
最も…外に出せば…すぐに仰向けに転がって庭の土を身体に塗りたくるのだが…。

或る時など、自分で帰ってきたのはいいが、両ほっぺたがおたふく状態…。
ずっと小屋に籠もったまま出てこない…。
理由は分からないが、そのまましばらくはいつもの元気がなかった…。

ひょっとすると原因は…マムシ…だったかも知れない…。
今は開発されてしまったが、もともとdoveの実家の周辺はマムシの多いところで、興味津々何でも口に入れるビーグル種のラックにとって脱走は危険と隣り合わせ…。

事実かどうかは定かではないが…犬がマムシに噛まれた時は…何日もじっとしていて自力で解毒するという話を聞いたことがある…。
その時には思い及ばなかったが、ラックの場合もそれだったのではないか…と、後になってから考えた…。

それもこれも…脱走が家族内のできごとで済んだからよかったようなもので…脱走中に他人に怪我でも負わせていたら…大変なことになっていた…。
とにかく…dove家としては…そのままにはしておかれず…原因を突き止め…太い棒ッ杭を打ち込み…鎖を二重にし…どうでもラックの脱走を食い止めなければならなかった…。

犬は…人間が思っているより…はるかに豊かな感情を持つ動物…である…。
喜怒哀楽に富み…愛情深い…。

言い換えれば…人間の子供と同じで…傷付き易く癒され難い心…を持っている…。
ラックが拾われた時に…見知らぬはずのdove家の面々に激しく身体を摺り寄せ…座っていたオカンの膝に顔をゴシゴシ擦り付けて喜んだ姿を…忘れることはできない…。
飼い主に裏切られて捨てられても…死ぬほど寒くて悲しくて腹を空かせて…そんな想いをしても…人間の傍に戻りたかったのだ…。

ラックは我が家で12年半を生き…最後まで飢えることなく温かく過ごしたが…しかし…我が家に来るまでに味わった心身の飢えを…癒せたかどうか…は謎である…。

親父が会社へ出かける時間が…ちょうどラックの朝御飯の時間だったのだが…我が家へ来た当初…言葉にできないラックの悲しみを表わしているような出来事が毎日続いた…。

オカンが朝御飯をラックの前に置く頃に…親父の車が車庫から出る…。
ラックは御飯を食べずにいとも悲しげな声を出す…。
オカンが何度…おあがり…と言っても…食べない…。
ガツガツと大飯喰らいなラックが食べない…。
親父の車の音が完全に消えてしまうまで…鳴き続ける…。

完全に消えてしまうと…諦めて食べ始める…。
もしかしたら…車で連れて来られたラックは森に繋がれ…最後の御飯を食べている間に置き去りにされたのではないか…。
オカンが…そう…推理した…。
親父が車で出て行く音がすると…また…置き去りにされるのではないかと…不安になるのかもしれない…。

何日も経って…朝出かけても夜必ず帰ってくることが分かってくると…安心したのか鳴かなくなった…。

見た目が可愛いくてもラックは作り物ではない…。

ラックには…ちゃんと感情が存在する…。
作られた玩具でさえ…捨てられる時には嘆くかもしれない…。
けれど…ラックは…捨てられても…その意味が分からず…自分を裏切った飼い主をひたすら信じ…待っていた…。

あの時の喜び方が…その証…。

諦めることは…ないのだろう…。
忘れることも…ないのだろう…。
連れて来られた時に飢え切っていたせいなのかどうか…前の飼い主と拾ったdove家を混同しているようなところがある…。
家族構成が似ていたのかもしれない…。
もとの家に帰ってこられたと思い込んだのかも知れない…。

でも…それは…前の飼い主を忘れたことにはならない…。
極限状態に置かれたために…記憶がすりかわっているだけなのだ…。
ラックを見ていると…そう思う…。
悲しいくらい…そう思う…。

次回へ…。

この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。
この物語を書く決心をさせてくれた記事です。
http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0