Days of Dragonflies & Moths

トンボや蛾に関わる記事中心。
当ブログの写真、文章の無断使用禁止。
写真集「関東甲信越のトンボ2010plus」

埼玉県に於ける実質的絶滅危惧種

2018年05月20日 | トンボ
絶滅種(埼玉県で括ることにはあまり意味がないが一応・・・)
ヒヌマイトトンボ 個人的に県内で最後に見たのは20世紀終わりころである。その後、生息地が潰されることになり、移植が試みられたようだが、失敗に終わった模様。
オゼイトトンボ 私が発見した皆野町の生息地ではもう20年以上見られていない。現地周辺はここ2年ほどでさらに環境が悪化し、多くの種類が姿を消しつつある。北関東では決して珍しい種類ではない。
オオセスジイトトンボ 2006年、県南部で42年ぶりに県内再発見されるも、2016年を最後に生息環境ごとダメになった(そこにはオオセスジの他、オオモノサシトンボ、ベニイトトンボ、アオヤンマ、マイコアカネ、ムスジイトトンボなどの貴重な種類が多く見られたが、それらは全く見ることができなくなった。オオセスジは2010年以降次第に減少していたが、完全に姿を消した2017年には生息環境そのものが変わってしまった。原因はわからないが、生活排水の流入に加え、除草剤流入などの可能性も考えられる。)。周辺が日本の重要湿地に選定された直後のことである。関東での確実な生息地としては、千葉の一産地が残された砦となった。
コバネアオイトトンボ もう50年ほど記録がない。この種類はかなり危ない状態で、関東全体でも風前の灯火。
メガネサナエ おそらく関東全体でも、もう数十年記録がないものと思われる。近似種のナゴヤサナエはかろうじてだがまだ安定して見られる。
キイロヤマトンボ まだ県内のどこかに密かに生息している可能性はある。25年以上記録が途絶えている。
ハッチョウトンボ 県内ではもう40年以上記録がない。関東地方全体でも開発によってどんどん既知産地が減っている。
オオキトンボ 県内では2007年がおそらく最後の確認(当ブログにも関連記述あり)。関東全体でも2009年が最後の確実な記録と思われ、関東、東海からはほぼ完全に姿を消した。


絶滅危惧種・準絶滅危惧種

モートンイトトンボ 山寄りに数カ所の産地が残っていると思われるが減少著しく、2019年現在確認できているのはわずかに一地点のみ。平野部の産地ではもう数年確認されていないようだが、工事によって撹乱され存続はほぼ無理と思われる。
ベニイトトンボ 県南部に放流された個体が多産する場所が知られるが、元からある現存生息地はごく限られ、ここ数年内に見られなくなった場所もある。県境付近の他県には多産地がまだ残っている。一方、キイトトンボもかなり減少の激しい種類だったが、ここ2、3年、安定して見られる生息地がやや増えつつある。
ムスジイトトンボ ここ数年、従来産地で次々と見られなくなっている。本種のこのむフサモなどの生育する環境が整えば、また盛り返す可能性もあるが、そのような環境が残っていてもクロイトトンボに駆逐されてしまったケースもあり、現在のところ、県内現存種の中で最も発見困難な種類の一つである。また、かつて丘陵地、低山のため池に普遍的に分布していたオオイトトンボが近年かなり減少している。確実に生息を確認できている場所は2019年現在わずか二箇所。セスジイトトンボとともに、河川流域でも見つかるが稀。
オツネントンボ 幼虫期間が短いため、水質環境による危険度はその分低いが、成虫の目撃数は年々減少し、壊滅的に少なくなってきている。2019年はそれでも数カ所で確認できた。
オオアオイトトンボ 絶滅危惧という概念には程遠い感覚を抱かせる極普通種だったが、そう思って甘く見ていると急にいなくなってしまう可能性があり、実際、ここ数年減少が著しい。木立のあるビオトープなどにも対応可能で、まだ見られる場所はそれなりに多くあると思われる。
モノサシトンボ オオアオイトトンボよりも環境選択性が強く、基本的に新しい水辺には馴染まず、その分危険とも言える。まだ見られる場所はそこそこあるが、個体数は減る一方である。類似のオオモノサシトンボは、もともと希少だがここ数年は横ばい傾向の印象。
ニホンカワトンボ カワトンボの同定についてはまだ調査が行き届いていない節もあるので、一概には言えないような気もするが、確実な本種の生息地と言われる場所は県南部の1箇所のみではないかと思われ、地域個体群として今後も手厚く保護されなくてはならないだろう。
ムカシヤンマ 県内西部丘陵地に広く浅く分布している印象。2018年には秩父地方でもどうにか生き延びていることを確認。
キイロサナエ 県南部と中央部に既知の生息地があるがいずれも危機的状況。隠れた生息地がまだ残されている可能性はあるが、自然環境は無限ではない。
ネアカヨシヤンマ 比較的広く、しかし浅い分布で、既知生息地では年々個体数が目に見えて減っている。「裏ヤンマ」では最も危険な状況とも言える。2018年には比較的よく見られていた印象。
マダラヤンマ 数年に一度散発的に目撃される程度で、実態は不明。元々低湿地にも生息していた種類で、県北や県境付近のそのような環境でも目撃されている。筆者は県北の湿地帯で1♀(1997)と秩父地方のため池で1♂(2010)を撮影している。
オオルリボシヤンマ ルリボシヤンマも危機的状況にあるものの、比較的小規模で浅い水域に生息するため、細々と続くことができているのに対し、ため池環境に依存するオオルリボシヤンマはここ数年極端にその数を減じている。1992〜2010頃の間、秩父地方に広く見られ、平野部へ飛来した個体も撮影したことがあったが、ここ数年は従来の確認地で発見困難になっている。2018年は山間部のため池わずか一箇所でかろうじて1♂1♀を確認できたのみ。その生息実態が今ひとつ不明瞭なのも相まって、今後県内においてはかなり危険な状況になるものと容易に推測できる。関東北部では山岳方面に極普通。
エゾトンボ 県西南部方面を中心に極浅く広く分布していたが、ここ数年、発見が難しくなってきている。寒冷地に分布する種類なのもあって、温暖な本県では必然的に日当たりが悪く、水の供給が安定した谷戸にひっそりと生息していることもあり、隠れた生息地もあるのではと思われる。
トラフトンボ 他の危急な種類とは反対に、ここ数年勢力を盛り返しており、私自身も県内8箇所(他数箇所で報告がある)で確認できている。
ハネビロエゾトンボ 丘陵地の細流に生息するが、そのような場所は通常アクセス困難であることから、元々発見の難しい種類であった。私自身は10年近く見ていないものの、まだかろうじて繋いではいるようだが予断を許さない状況ではある。
マイコアカネ 散発的に割とあちこちで見つかる種類ではあるが、確実な生息地は極限られていて、従来の生息地でも見られなくなった場所は多い。
ヒメアカネ 湿地依存種ゆえ盛衰の激しい種類ではあるが、最近、年々減少傾向著しく、見られなくなった場所が多い。同様に、リスアカネは従来安定的に見られていたのが県西部各所で異常減少している(東部方面ではわずかながら増加傾向?)。リスアカネは池環境に依存するため、オオアオイトトンボと同レベルの危険があると考えられる。ノシメトンボもここ数年減少しているが、水田耕作にアキアカネと共に関わっているので、今後については未知数な部分もある。一方、近年減少の著しかったコノシメトンボは県西部でも徐々にだが勢力を盛り返しているのを感じる。この辺り、例えば、コノシメトンボは比較的新しい水域に依存するもので、人工的な水辺の創出が本種の勢力を増大させているとも取れるし、リスアカネのように有機沈殿物の多い池に依存する種類は、そういった環境が成熟期を過ぎてしまったことを意味しているのかもしれないし、単純に環境汚染が進んで、リスアカネの許容量をオーバーしてしまったとも言える。
キトンボ 元々産地の限局される種類ではあったが、県内の有名産地で減少が著しい。周辺生息地(中継地)が次々とダメになったことも関係しているだろうが、この減少に加え、一向に衰えない採集圧もバカにならないレベルになってきている。良識のある大人は個人的な収集のための採集は自重するべきであろう。

上記に書き漏らしたが、近年発見が困難になりつつあるるものとしてオニヤンマアオイトトンボを上げておきたい。
。いずれもまだ広範に分布し、安定した生息地も存在する(アオイトはかなりヤバイ状況)が、目に見えて個体数が減っている。
また、アオハダトンボ、ミヤマカワトンボ、カワトンボ、ダビドサナエなど中間渓流に住むトンボは、ここ数年、河川の工事が各所で執拗に行われている結果、急激に減少している(一方、ヒメサナエをはじめとして夏季に登場するサナエ類などはここ数年安定して多く見られるが、河川工事が水遊びシーズンにかかる前の春に集中して行われることが関係しているのかはわからない)。特にもともと希少な部類だったアオハダトンボは、工事によってツルヨシの群落が無くなったりして、個体数が激減した場所が多い。源流域のみに生息するクロサナエ、ヒメクロサナエは生息状況が脆弱なまま横ばいの印象。


最新の画像もっと見る