『浪華奇談』怪異之部 15.小児水に化す
2024.4
今橋(大阪市中央区)の西の方に山中氏なる人がいた。
彼の男の子は、寛政年間に三歳にして早世した。
壷におさめ埋葬した。
その後七年ばかりも経て改葬する時に、蓋をひらいて見れば、ただ壷の中に清水と毛髪があるのみで、他には何もなかった。
昔より七歳未満の子の遺骸は、骨肉ともに水に化する、と語り伝えらているが、嘘ではなかった。
ついでに言う。
往年、河州生駒山(大阪市東大阪市)の麓において、百性が山の墓を掘ったが、ちいさい瓶があらわれた。
これも瓶中に同じく清水があった。
さて、ちょうどその時、その村に難産の婦人がいた。
かの百性が、その産婦にこの水を一杯飲ませるとたちまちに出産した。
それより安産の薬水であると言いふらされた。
所々より求められたのに応じて与えると、すべてに効果があったそうである。
私の所見であるが、これも亡児の水に化したものに違いない、と考えられる。
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