『浪華奇談』怪異之部 16.鬼僧
2024.4
天明中、讃州(さぬき:香川県)高松の金松屋善兵衛が所用があって萬年町へ行った。
その帰りに、谷町農人橋にて、裾が切れていて、さもやつれて髪ののびた僧が、破れ衣を着て向うへ行ったのが見えた。
僧はふりかえって見て、善兵衛の背にだきつき、我を負うてくれよ,と言った。
その重い事、例えようもなかった。
善兵衛は、これはかなわんと、南無大師遍照金剛(まぬだいしへんじょうこんごう)と唱えた。
すると、かの僧は、
「こやつは、四国のものだな。南無三宝(なむさんぽう)」
と言って、向うへ飛下りて、善兵衛の右の頬を三度たたいて去って行った。
善兵衛は、その後大いに痛み、急に悪寒がして、やっとのことで、大川町の宿へ帰った。
五七日もわづらって、やっと体調が回復した。
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