河童の歌 諸国里人談
2024.5
肥前の国の諫早(いさはや)の辺(あたり)に河童が、多くいて、人々を取り殺していた。
ひやうすべに 川たちせしを忘れなよ 川たち男 我も菅原
この歌を書いて海や河に流せば、河童は害をなさないと言う。
ひやううすべは兵揃(ひょうすべ)であって地名である。
この村に天満宮のやしろがある。それで、菅原(天満宮は菅原の道真を祭っている)と言ったのであろう。
○又、長崎の近くに渋江文太夫という者がいた。河童を避ける符(おまもり)を出していた。
この符(おまもり)を懐にいれておけば、河童はその人に、あえて害をなさないと言う。
或る時、長崎の番士が海辺で石を投げて、賭をすることがはやった。遠くまで投げた者を勝ちとした。
ある夜、渋江の家に、河童が来て、言った。
「このほど、我がすみかに、毎日毎日、石を投げられて、おどろかされている。これを止めないと、災をしてやろう。」と言った。
渋江は、驚いて、「ひょうすべに・・・」を書いた符(おまもり)を、河童に見せた。
人々は皆、不思議なことだと言った。
諸国里人談巻之二 妖異部 より
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