新説百物語巻之五 7、針を喰ふむしの事
針を喰う虫の話 2021.5
京都三条の西に貞林という尼がいた。
若い時は備前に下って、御物縫いの奉公(責任者)をつとめた。その折の事であった。
この貞林尼は、物を縫う針の折れたのをもったいないと思っていた。それで、折れたのを随分と拾い集め、針箱の底に置いていた。ある時、取り出して捨てようと思ったが、見えなかった。
二度もこの様であった。
ある時、針箱の掃除をしていると、大きさが三分(9mm)ばかりある虫が出てきた。
めづらしい物なので、針さしの上に置いておいた。
この虫は、そろそろとはい歩き、針さしの針をほろほろと喰べた。
さては、先達っての針の折れもこの虫が喰べたのだ、と思って、小さい箱に入れ、針のおれを餌として飼い置いたが、二月ばかりすると、大きさが一寸程(3cm)になった。
この事を御主人が聞いて、その後には古かねなどを与えたが、いよいよ大きくなった。
それで、怪しい物であろうと火で焼き殺したそうである。
これは、この貞林が、直に語ったことである。
針を喰う虫の話 2021.5
京都三条の西に貞林という尼がいた。
若い時は備前に下って、御物縫いの奉公(責任者)をつとめた。その折の事であった。
この貞林尼は、物を縫う針の折れたのをもったいないと思っていた。それで、折れたのを随分と拾い集め、針箱の底に置いていた。ある時、取り出して捨てようと思ったが、見えなかった。
二度もこの様であった。
ある時、針箱の掃除をしていると、大きさが三分(9mm)ばかりある虫が出てきた。
めづらしい物なので、針さしの上に置いておいた。
この虫は、そろそろとはい歩き、針さしの針をほろほろと喰べた。
さては、先達っての針の折れもこの虫が喰べたのだ、と思って、小さい箱に入れ、針のおれを餌として飼い置いたが、二月ばかりすると、大きさが一寸程(3cm)になった。
この事を御主人が聞いて、その後には古かねなどを与えたが、いよいよ大きくなった。
それで、怪しい物であろうと火で焼き殺したそうである。
これは、この貞林が、直に語ったことである。
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