ミイラ薬への批判
江戸時代に、ミイラが、オランダ船によって、日本に医薬品として、持ち込まれました。
当然、人体を薬として用いるのに対しては、批判が起こります。
そのうちの一つを紹介します。
以下、本文。
ミイラ薬への批判
近年、南蛮より得たと言って、珍しく耳慣れない名前の薬をもてはやしている。
一つの薬で、多くの病気を治すように言って、高い価格で売り出した。すると、このような奇特なものがあると言って、起死回生し、寿命を延ばせると思い込まさせた。
実に馬鹿げたことではないか。
薬は、偏ったものであって、一つの薬では病を治すのは難しい。
治すことが出来ても、一薬では副作用の害が出る。
薬というものは、君臣佐使の法則に則って、五種類、三種類、あるいは十種類、二十種類ほど組み合わせて、始めて、多くの病気を治し、身を養うことができる。
(訳者注:この組み合わせるのは、漢方の理論に基づいています。何種類かの生薬を、ある法則=君臣佐使=によって、組み立てて、処方をつくります。そうすることによって、目的とする効果をあげようとするものです。一つの生薬を単独で用いるのは、例外的なことです。ミイラ薬単独では、十分な、効果を得られないだろう、と主張しています。)
なにか、一つの薬で、多くの病気を治せるものならば、医者の上手下手も無いであろう。
ウニコオル(一角獣の角:ユニコーン)と言うのは野底茄(ヤテイキャとルビがふってある)である。
アメンドウスとう言うのは巴旦杏(パタンキョウ)である。
ミイラと言うのは、木乃伊である。
これらの類は、たいして効果のあるものではない。
それのみならず、妙薬と言って、さまざまの合薬を売っている。
効果がないのは、こういうことからである。
害を受けることが多いであろう。
人身は、再び得られないものである。
大事にしなければならない。
以上
「醍醐随筆」(中山三柳、寛文10年 広文庫 より
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