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子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その8

2006-04-02 | 子宮内膜症
前回まで直腸子宮内膜症を切除するメリットについて考えてきた。今度はデメリット、とくに合併症について考えてみる。

子宮内膜症が他の手術と異なる点はダグラス窩、子宮、直腸が癒着していることだ。しかも時にはその癒着は非常に強固で剥離するのが困難なことが多い。癒着剥離中に直腸を傷つけてしまう(直腸損傷)こともある。確実に修復するためには解剖学的な構造がわかるよう癒着剥離しておかなければならない。

もし、癒着剥離と結紮縫合が腹腔鏡下で十分にできないのなら開腹に変更せざるをえないだろう。それだけならまだいいが、大きな損傷を生じたり、解剖学的な構造が全然わからないようであれば、外科医は修復より一時的な人工肛門造設を勧めることもある。

重症子宮内膜症を安全に手術するためには、術前に腸管を十分洗浄させておくこと、繊細な手術操作や癒着剥離、結紮縫合などの高度なテクニックが非常に重要である。

他の合併症としては、術後腸管穿孔がある。術後数日~一週間くらいで起こるらしい。急激な発熱、腹痛で発症するそうだ。小さな穿孔であれば保存的に経過観察することもできるが、緊急手術を施行して一時的に人工肛門を造設しないといけなくなることもある。こうなると命にかかわる合併症となりうる。

原因としては、剥離操作や子宮内膜症の切除後に直腸表面が薄くなっているのに気がつかなかったこと、パワーソース(電気メスなど)を使いすぎて直腸表面に熱損傷が起こってしまったのを放置したということが挙げられる。直腸表面が薄くなっていても丁寧に縫合修復しておけば普通は問題ないはずだが・・・

とくに剥離が中途半端で終わってしまったとき、しばしば直腸表面を削っていることに気がついていないことがある。剥離できないのでこの辺で止めとこうか?なんてのは意外と危険だったりする。(薄くなっていても気がつかない)

もちろん、繊細で丁寧な手術操作を心がけ、腸管が薄くなってしまったところを確実に修復していれば、簡単に起こるような合併症ではない。
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