⑦ 戦う天皇ゆかりの寺院 戒光寺 後水尾天皇の身代わり
戒光寺 丈六さん
東山区泉涌寺山内町29
正式名 泉山 戒光律寺
別称 丈六さん
宗派 真言宗泉涌寺派
本尊 釈迦如来
開基 浄業
以上、紹介した数奇な運命を経て来た後水尾天皇にゆかりの深い寺院を紹介する。
素朴な本堂へ
丈六さんと呼ばれる「戒光寺」は、京都の「御寺」と別格扱いされる泉涌寺の参道を第一山門から数分歩けば左手に見える。筆者は何度も見逃してしまったので、注意して訪問したい。拝観寺ではないので本堂に上がるには勇気がいるが、古いガラス扉を開けると巨大な釈迦如来像が迎えてくれる。鎌倉時代に運慶・湛慶の親子が彫った丈六の像である。丈六とは仏の正確な身の丈である一尺六寸(4.85m)の仏像の事だ。創建当初は大宮八条にあり、洛中を転々としたあと後水尾天皇の発願により泉涌寺の塔頭寺として現在地に移転した。素朴ながら厳粛な本堂の中で、圧倒的存在感の釈迦如来を拝む。この仏像は、「身代わりの丈六さん」と言われる。
実はこのような話がある。後水尾天皇は東宮政仁親王時代に皇位継承の争いに巻き込まれていた。ある日寝室で就寝中、暗殺者に寝首を掻かれた。ところがその時、このお釈迦様が身代わりになって自らの首を切らせたのだ。朝になって見ると確かに、仏像の首には血痕が残っていたのだと言う。現在もはっきりと血の滴りの痕跡が見える。後水尾天皇は積極的に即位の為に動いたわけではなかった。むしろ望んでさえいなかった。それでもこのような話が残っているのが面白い。訪れる人は余りないが、歴史マニアには見逃せないお寺だ。