私の父は大正4年生まれ。91歳の天寿を全うした。農家の三男として生まれ兵役後そのまま軍隊に残り職業軍人として終戦まで満州に駐留した。
中学出の父は准尉まで出世し下士官となった。終戦時ソ連軍の捕虜となりシベリアに抑留され昭和24年に帰国。
戦争のことはあまり話したがらない父だったが私(現在64歳)が子供の頃に時々話してくれたいくつかの戦争の話を書き留めておきたい。
戦争体験者が少なくなってきている日本で貴重な体験談を受け継ぎ次世代に伝えていくことは私達子供の役目ではないかと思う。私達には平和な日本を子孫に受け渡す義務があると思うからだ。
そして今の日本の国情に今後平和を維持していけるのか国や国民の方向性に危機感を持っているからだ。
私が聞いた戦争の話を皆さんにも知って欲しい思う。
【父の戦争体験①】
20年くらい前だと思う。
お正月に私達子供3人が実家に集まった席で父は突然にそして何気なく話し出した。それは私達子供にとっては衝撃的なことだった。父は戦時中に満州で結婚していたと言ったのだ。母とは再婚だったのだ。
本土の女性と見合い結婚し満州で暮らしたのだ。子供も一人生まれた。だが子供はすぐに亡くなった。暫くして妻も病気で亡くなった。母とはシベリアから帰国後再婚したのだ。満州には亡くなった妻と子供のお墓がある。
私は父に尋ねた。「満州に行ってみたいと思わないの?お墓があるんでしょ?」
父は言った。「行ってみたいとは思わない。悲しい嫌なことを思い出してしまうから」
80歳を超えた父の心の痛みが如何ばかりであったか、私には到底想像もつかない父の悲しみを見た気がした。
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