カラスといちごとクロッカスと

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マゼンタの花、フウロソウ 2

2024年05月22日 08時00分00秒 | フウロソウ科
2021.05.28撮影

マゼンタの花シリーズは、今日で終わりです。マゼンタの色の花が庭で一度に咲いて、うれしかったです。

今日のマゼンタの花は、前回
のつづきで、「ビーバンのフウロソウ(Geranium macrorrhizum 'Bevan's Variety')」です。

このフウロソウは、花びらがマゼンタであるばかりではありません。ちょっと色合いは異なるのですが、花糸(オシベの軸の部分)も花柱(メシベの軸の部分)も、マゼンタです。特に、花びらが落ちてからのオシベが見事です(冒頭画像)。

オシベは束となって残り、上を向いて突き出します。実際、花よりも形がおもしろくて、目立つくらい。

2023.05.20撮影

前回、オシベがヤクを開き、花粉を出して、「授」粉できるようになっているのに、メシベはまだ「受」粉体制に入っていない、というところまでお話ししました。

なんで協力しないんだ!!! とも言いたいのですが、彼らには彼らなりの理由があり、それはそれで、理屈はある程度通っている。

直前の画像には、開いた花がふたつ写っていますが、両者は日齢が異なります。

右側の花には、まだ花粉を出しているヤク(黄色っぽい粉のついているヤク)と、衰退したヤク(茶色がかってしぼんでいるヤク)とがあります。メシベは、この画像中では判然としません。

左側の花は、右側の花よりもう少し日齢の進んだものです。ヤクは茶色っぽくしぼんでいるか、あるいは、花糸からもう落ちています。つまり、もう生殖能力がないのです。

ここで代わりに目立つのは、メシベです。画像中、オシベよりもより長くなっているメシベが、オシベの先の位置から言うと、左上方向に伸びています。そして、その先が、割れて開いています。これが、メシベが受粉可能な状態です。

2024.05.11撮影

上の画像では、オシベの束が6つ見えます。そのうち、5つの束の間から、メシベがのぞいているのが写っています。柱頭が5裂しています。

一番上部にあるオシベの束は、わたしがうかつに先を画像から外してしまったのですが、それでも、その先には柱頭があるのだろう、とわかります。なぜなら、オシベに囲まれて、タネのサヤがもう形成されていますから、軸みたいに見える緑のものです。

2024.05.14撮影

上の画像では、若いタネのサヤに柱頭のついたメシベが残っています。

タネができる? いや、これ、おかしいんじゃ? オシベが花粉を出している時には、メシベはまだ受粉できるようになっていなかった。それなのに、なんでタネができるのよ。タネって、受粉の結果よね(大方の場合)。

メシベが成熟するのをオシベよりも遅らせたのは、自家受粉を避けるためです(と、学者が言っています、植物に聞いたわけではない)。その代わりに、メシベは他の花の花粉をもらいます。

このように、メシベの成熟の方が後発、という花は、たくさんあります。

でもね、わたしは、いつも考えるんです。1個体の植物があって、その花のひとつひとつがオシベとメシベの成熟をずらしても、自家受粉は避けられないと思う。なぜなら、早く咲く花も遅く咲く花もありますから。となりに咲いている花の花粉で受粉したら、自家受粉じゃ? 遺伝子、同じよね???

2024.04.26撮影

「ビーバンのフウロソウ」の花には、メシベしかつかないものが結構現れます。オシベがない、というより、退化しているようです、痕跡みたいなものがメシベの根本についていますから(次の画像みたいな感じ)。要するには、これは、雌雄別花のハシリでしょうか。

2023.05.03撮影

上の画像では、退化したオシベだけでなく、花軸が二股に分かれること、その股のところに花がつくことがあること、また、股の部分にある「葉」が左右に分かれること、などが読み取れます。

しばらく続けましたマゼンタの花シリーズは、ここで終わりです。


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マゼンタの花、フウロソウ 1

2024年05月20日 08時00分00秒 | フウロソウ科
2024.05.19撮影

マゼンタの花シリーズが続いています。今日のマゼンタの花は、フウロソウ(Geranium)の1種です。

学名 Geranium macrorrhizum 'Bevan's Variety'
和名 ゲラニウム・マクロリズム「ビーバンズ・バラエティ」
別名 ゼラニウム・マクロリズム「ビーバンズ・バラエティ」
フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium

日本語で「ゲラニウム」とするか「ゼラニウム」とするか(「ゲ」か「ゼ」か)は、学名読みに従うか英語読みっぽくするか、です。英語では、Geranium は「ジェラーニアム」に近く発音します。英語の「ジェ」は、日本語化する時、よく「ゼ」になります(例:「ゼリー」)。

この記事では、簡略化のため、今日の花を、属名に品種名の一部をつけ加えて、「ビーバンのフウロソウ」とだけ呼んでおきます。


2024.04.26撮影

これは、ビーバンのフウロソウ」のツボミです。若いツボミは、ややオリーブ色がかった緑、成熟してきたツボミは、赤っぽくなります。形が、蛇腹(ジャバラ)というか、提灯(ちょうちん)というか、半袖のパフスリーブみたいで、かわいいですね。(男性には、パフスリーブって、わかるかな? 昔の乙女は、パフスリーブを夢見たのであった。)

 
2024.05.04撮影               2024.05.12撮影

ビーバンのフウロソウ」は、花軸が(ほとんどの場合)途中で二股にきれいに分かれます(左上の画像)。その二股に分かれた様子は、上から見下ろしても分かります(右上の画像)。この二股に分かれるのがビーバンのフウロソウ」に特有のものかどうかなんですが、うちの庭で現在咲いている他のフウロソウでは、そのようになっていませんでした。

この二股に分かれたところに、さらに花が、ひとつか、あるいは、少数(せいぜい、ふたつ)、つく場合があります(下の画像)。


2023.05.03撮影

花軸が二股に分かれる根本には、葉(それ以外の名称がついているかもしれません)が左右に分かれてつきます(上の画像)。この、文字通り襟巻き状の「葉」ですが、いくつも観察してみましたが、大きさのそろっているのも、そろっていないのもあります。

2022.05.14撮影

これは、まだ新しい花です。フィラメント状に見える花糸の先に、ヤクがついています。袋状というか、米粒状のもの。そのヤクのほとんどが、まだ開いていません。つまり、花粉を出していません。

黄色っぽい粉状のものがついているヤクがひとつ(ふたつ?)ありますが、それが花粉です。よって、それらのヤクは、「遺伝子ばらまき」状態に入っています。この後、花の日齢が進むにつれて、他のヤクの袋も開いてきます。

メシベは、この画像では、ちょうど中央にある、すっと伸びた軸状のもので、柱頭(メシベの先端)は、まだ発達していません。申し訳程度に、ぷちっとなっているだけです。この段階では、メシベは受粉できる状態ではありません。

2024.05.05撮影

直前の画像では、ヤクがすべて開いていて、みんな花粉を出しています。オシベにとり囲まれ、やや長く左上に曲がり、先まで赤い軸がメシベです。この段階で、オシベは花粉を産出していますが、メシベの先にある柱頭は、成長し出しているとは言え、まだ開いていません。つまり、受粉能力はありません。

同じひとつの花冠(花弁の集合体)の中、オシベの方は準備万端、メシベはまだまだ生殖能力さえない、なぜメシベはオシベをこんなに「じらす」のでしょうか。

つづく


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ゼラニウム〜帰国日記14

2023年07月08日 08時00分00秒 | フウロソウ科
2023.03.14撮影

冒頭の画像の植物は、実は、ゼラニウムであって、ゼラニウムでない、そして、ゼラニウムである。うん。

「ゼラニウム」はローマ字で書くと、Geranium です。これは、ラテン語やドイツ語などで読むと「ゲラニウム」のように「g」の音になりますが、英語では「ジェラニウム」のような「j」の音で読みます。日本語では、この「j」の音を「z」の音に変えて、Geraniumを、「ゼラニウム」と読みます。

この花の「所属」を、科よりも上の分類である目(もく)から書くと、次のようになります。種名、あるいは、園芸種名まではわかりません。でも、重要なのは、属名だけが「ゼラニウム」系でないこと。

フウロソウ(風露草)目 Geraniales「ゲラニアレス」 
フウロソウ(風露草)科 Geraniaceae「ゲラニアケアエ」
テンジクアオイ(天竺葵)属 Pelargonium「ペラルゴニウム」*
日本での園芸上のグループ分け「ゼラニウム」

 
2022.10.18撮影               2023.03.14撮影

今日この記事で「ゼラニウム」として取り上げている植物は、18世紀には、その名の通り、フウロソウ属 Geranium「ゲラニウム」とされていました。

でも、18世紀も終わり近くになって、フランス革命の年(1789年)に、
このフウロソウ属 Geranium「ゲラニウム属」が、

新たに、
1.フウロソウ属 Geranium「ゲラニウム属」と
2.テンジクアオイ属 Pelargonium「ペラルゴニウム属」に
分けられたのです。

そして、このわたしたちの慣れ親しんでいる「ゼラニウム」の所属は、テンジクアオイ属 Pelargonium「ペラルゴニウム」になりました。

テンジクアオイ属

2023.03.14撮影              2023.10.18撮影

ですから、今日の植物は、

昔は、
・ヨーロッパで、Geranium と呼ばれた(民間では、現代においても)
・日本でもそれにならい、「ゼラニウム」という

現在の生物学上の分類は、
Geranium「ゲラニウム属」ではない
Pelargonium「ペラルゴニウム属」(テンジクアオイ属)である

園芸上は、
・習慣に従い、ペラルゴニウム属全部を旧名で「ゼラニウム」と呼ぶ
あるいは、
・ペラルゴニウム属の一部を「ゼラニウム」と呼ぶ(以下の1)

ペラルゴニウム(テンジクアオイ属)の、園芸での分類は、
1。ゼラニウム(四季咲き)
2。ペラルゴニウム(花が大型、丈が高い)
3。アイビーゼラニウム(葉の形がツタの葉の形)
4。センテッド・ゼラニウム(ハーブ・ゼラニウム)(芳香がする、食用ではない)

そして、今日の植物は、その狭い意味1での「ゼラニウム」です。2の例は、この記事の最後に写真を掲載します。

2023.03.14撮影              2023.06.06撮影

わたしが小学生のとき、母がこのゼラニウム(テンジクアオイ)に凝っていて、庭に何種類も作っていました。

あるとき、わたしがお稽古事の道筋でちょっと変わったゼラニウムを見たのです。見とれたのですが、どうしようもない。子どものことだから、ぼ〜〜、としているだけ。お稽古への行きに見たのですが、帰りにも立ち止まりました。こんなにきれいな花の大きな株、今までなぜ気がつかなかったのだろう、って。

母にさっそく言いましたよ。おかあさん、すごくきれいなゼラニウムを見たよ、変わってるよ、って。お稽古に行く途中で見たの、と。あんなのうちにあるといいね〜〜

すると、母は、ひと枝もらってきてちょうだい、と言うのです。水に入れておけば根が出るから、それを植えればいいから、と。掘り取って、と頼むんじゃないから、許してくれるはず。

あんなあ、子どもにそんな使いさせるか?? でも、母が言うには、子どもだからこそ頼みに行ける、って。

 
2023.03.14撮影               2023.06.10撮影

親の所望すること断るわけにもいかず、次の週、お稽古のとき、、、いえ、実行できませんでした。次の週も、花を横目で見ながら通り過ぎただけ。その次の週は、花を見ないようにして通りすぎた。その次の週からは、別の道を通るようになった。

ここまで遅れると、母が催促するようになりました。知らない人のおうちに訪ねていくのは恥ずかしい、と言うと、母は、そうだね、flowerconnectionちゃんの気持ちを考えなかったね、ごめんね、って。

謝ってもらえると現金なもので、次の週には、恥ずかしさをかなぐり捨てて、ひと枝もらってきました。そのおうちの人は、知らない子どもが急に訪ねてきたことにだけでも驚いているのに、その上、ゼラニウムをくれ、なんて言うので、びっくりしただろう。

このゼラニウムがどんなゼラニウムだったかのは、忘れました。それに、母の育てていたゼラニウムは、なぜか庭からみんな消えてしまった。今から思えば、母が長期入院したからかな、と思います。

今回の帰省では、上の画像のうち右側の八重咲きのゼラニウムを庭に植えました。母がたいへん喜んでくれました。

 
2023.06.06撮影               2023.06.06撮影

母がゼラニウムを育てるようになる前、実は、わたしは「ゼラニウム」という花の名前はすでに知っていました。でも、見たことはなかったんです。

なぜその花の名前を知っていたか、というと、翻訳物のヨーロッパのお話しで子ども用に書き直したものを、大量に読んでいたからです。描写に、ゼラニウムがいっぱい出てきた。ヨーロッパの家と言えば、窓の外にこのゼラニウムの鉢を飾っているものだ、ぐらいにまで思っていました。

でも、どんな花か知らない。わたしの持っていた植物の図鑑には載っていませんでした。その図鑑は、日本で見られる植物の教育用だったのだと思います。

2023.06.09撮影

これは、母の育てているペラルゴニウム(テンジクアオイ)です。この、花びらが大きく柔らかめで、多くは花びらにブロッチの出るペラルゴニウムは、園芸上の分類では、先に書いた分類の2「ペラルゴニウム」になります。

母は、この花が気に入っているらしく、よく花をつけているので、わたしもうれしいです。

と、ますます感傷的になってきました。大学に入学するために親元を離れて以来ですよ、両親とこんなに長い時間を過ごすのは。改めてお知り合いになったような感じであるとともに、昔のことをたくさん思い出します。

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ヒメフウロは、侵害種? 絶滅危惧種?

2022年08月31日 08時36分18秒 | フウロソウ科
2022.05.06撮影

ヒメフウロ(姫風露 Geranium robertianum)です。フウロソウ属(Geranium)の種々の花の中でも、特に花が小さくかわいい、ということで「ヒメ(姫)」という名前なんでしょう。原産地は、ヨーロッパ、日本も含むアジアの一部、北アメリカ。

切れ込みの激しい柔らかい葉っぱもきれいなんですが、この画像では、花の右後ろに見えるだけです。葉っぱは下の方の画像でご覧ください。

花の真後ろから左手にかけての葉っぱは、ナツシロギク(夏白菊 Tanacetum parthenium)のものです。ナツシロギクの葉は、以下の記事の、最後の画像(八重のナツシロギク)でよく見ることができます。そして、そのナツシロギクの画像の右下には、ヒメフウロの花が1輪見えます。


ヒメフウロの花の大きさは、わたしは10ミリ〜12ミリが見慣れているのですが、英語版のWikipediaには8ミリ〜14ミリ、日本語版のWikipediaには2センチほど、と書いてあります。野草の草丈などは環境で大きく変わるので、これをもって異種であるとは言えないはずです。ヒメフウロの画像をもう1枚。

2022.05.25撮影

花だけを拡大してみます。合計4つの花が写っていますが、それぞれ、花の進み具合が違います。

2022.05.06撮影(冒頭の画像の拡大)

2022.05.25撮影(2番目の画像の拡大)

ヒメフウロは、一年草、あるいは、二年草、なんですが、次々とタネをばら撒いてくれるので、しょっちゅうあるように見え、多年草か? と見紛うほどです。とにかく、寒い時以外は、庭からなくなることはありません! 庭のどっかには生えています。

葉っぱは縁が赤みがかっていることが多いです。そして、個体が老いてくると、葉も軸も赤くなります。以下の画像は、赤くなり出したところ。

2022.08.20撮影

もっと赤くなった葉のある個体群は、以下。

2022.08.20撮影

若い葉はサラダに入れて食べられるそうで、葉を摘み続けていると、新しい葉がどんどん出てくるそうです。これは、わたしが実際にして試したわけではないので、事実かどうかはわかりません。

Herb Robert
Geranium robertianum(英文)

また、ヒメフウロは、薬用にもされます。以下は研究論文(英文)のひとつです。


ヒメフウロは、北米大陸の西海岸(特に、アメリカ合衆国のワシントン州、オレゴン州)では、侵害種として認識されており、以下のような撲滅を熱烈に訴えるチラシも出ています。これは、アメリカ、ワシントン州のメイソン郡のものですが、メイソン郡は、お隣のキング郡からこのチラシを譲り受けた、と書いてあります。

Herb Robert(英名)
Geranium robertianum(学名)
Non-Designated Noxious Weed: Control Recommended(英文)

でも、日本語版のWikipediaには、ヒメフウロは絶滅危惧種だ、と書いてある・・・その地にあるのが「自然」かどうか、で、侵害種か絶滅危惧種かに分かれるんですね・・・

ヒメフウロ

日本語版のWikipediaからかいつまんで簡略引用すると、

> アジア、ヨーロッパ、北アメリカなどの北半球の温帯域に広く分布

> 日本では、伊吹山、鈴鹿山脈北部の霊仙山など、養老山地北部、
> 四国剣山、石立山の一部地域のみに分布

> 以下の都道府県で、レッドリストの指定
> 絶滅危惧 Ⅰ 類 - 徳島県
> 絶滅危惧 II 類 - 岐阜県、三重県、高知県

> 伊吹(岐阜)県立自然公園の特別地域内において採取禁止

その一方、園芸種が

> 北海道と本州で帰化しているのが確認されていて
> 北海道でブルーリスト(カテゴリーA)の指定を受けている

北海道のブルーリスト、つまり、「はびこりすぎて困っている野生種のリスト」、については、以下をご覧ください。


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