カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

オリエンタリス、亜種のご紹介

2025年02月28日 19時00分05秒 | キンポウゲ科ヘレボルス
Helleborus orientalis subsp. abchasicus(ヘレボルス・オリエンタリスアブカシクス
撮影者:Dominicus Johannes Bergsma
撮影日:2015.03.18

レンテンローズ(Lenten rose)、学名ヘレボルス・オリエンタリス(Helleborus orientalis)、
には、亜種が3つあります。

オリエンタリスって、いろいろな色や模様の花が咲き、交配種、交雑種が多いので、亜種があると知って、なあるほど、と納得しちゃいました。これが形態変化(へんげ)の元となっているのね。

オリエンタリスさんたちは、自由恋愛をモットーとし、いろいろな子孫を作ってくれます。それも、近場に種を落としてくれるので、庭がヘレボルスだらけになるの。

これを阻止する方法を考えてみました。ナマケモノであるわたしがそんなことを実行するわけがありませんが。第一、花がよく見えなくなる。
・手作業で人工受粉をして袋がけをする(これでタネが取れる)
・飛び出してきたメシベを若いうちに切り捨てる
・不純異性行為でタネができてしまったら、タネのサヤ(次の画像)を取りのぞく


Helleborus orientalis subsp. guttatus(ヘレボルス・オリエンタリス・グッタトゥス
撮影者:Dominicus Johannes Bergsma
撮影日:2013.05.28


オリエンタリスの3つの亜種は、次のとおり。
・Helleborus orientalis subsp. orientalis
・Helleborus orientalis subsp. guttatus
・Helleborus orientalis subsp. abchasicus

Helleborus が属名、orientalis が種小名、属名と種小名を合わせた Helleborus orientalis が種名、そして、種名の後に subsp. と書かれて続いているのが亜種名です。subsp. は、subspecies の略で、「亜種」という意味です。学名を書くときには、斜字体で書きますが、subsp. の部分は、名称ではないので、斜字体にしません。

学名は関心のない方も多いかと思いますが、見続けていると、便利なものであるのが見えてきます。それに、結構、覚えてしまうものです。



Helleborus orientalis subsp. orientalis(ヘレボルス・オリエンタリス・オリエンタリス
撮影者:Jay Sturner
撮影日:2011.02.19

Helleborus orientalis subsp. orientalis
これは、亜種名が、種小名と同じく、オリエンタリス(orientalis)。

特徴
・花弁(実は、ガク)は、たいていは白
・クリーム色〜緑の色調がつく
・5枚の花弁のうち、2枚は、多くの場合、小さめ
・花弁から変化した蜜腺(ネクタリー)は緑



Helleborus orientalis subsp. guttatus(ヘレボルス・オリエンタリス・グッタトゥス
撮影者:Jay Sturner
撮影日:2011.02.19

Helleborus orientalis subsp. guttatus
オリエンタリスのもうひとつの亜種は、グッタトゥス(guttatus)と呼ばれます。オリエンタリスには、多くの交配種が存在しますが、この亜種が、親種となっていることが多いです。

特徴
・花弁は白
・緑がかることが多い
・赤、赤紫、また、紫の斑点がつく
・斑点のつき方の程度はいろいろ
・5枚の花弁のうち、2枚は、多くの場合、小さめでより緑っぽい

個人の花壇で自然に交雑が進むと、多くの個体において、この2枚の花弁が、特に小さく緑っぽくなってきます。これは、優秀な形質でない、とされます。ぱっちりと平均的に大きく咲く個体は、専門家による交配種でしょう。



Helleborus orientalis subsp. abchasicus(ヘレボルス・オリエンタリス・アブカシクス
撮影者:Jay Sturner
撮影日:2011.02.19

Helleborus orientalis subsp. abchasicus
オリエンタリスの3つ目の亜種は、アブカシクス(abchasicus)と呼ばれるものです。交配種、交雑種における赤やピンクは、この亜種からきています。

特徴
・花弁は赤く染まっている
・斑点がつく場合がある
・蜜腺(ネクタリー)は紫っぽい
・ただし、先端だけが紫、あるいは、紫のスジが入っている場合もある


Helleborus orientalis subsp. abchasicus(ヘレボルス・オリエンタリス・アブカシクス
撮影者:LPC / Wikimedia Commons
撮影日:2013.03.31

画像は、今までどおり、Wikimedia Commons から借りてきました。オリジナルからの改変はありません。亜種の同定は、わたしの知識にしか基づいていませんから、間違いがあるかもしれません。ご容赦ください。

参考サイト1(英文)
The Gardener's Guide to Growing Hellebores

参考サイト2(和文)
横浜市こども植物園


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わたしは、レンテンローズ

2025年02月24日 08時00分00秒 | キンポウゲ科ヘレボルス
Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:KENNPEI
撮影日:2008.03.16
* 花弁の先の丸い種類

わたしは、レンテンローズ! クリスマスローズじゃないもん!

と、今日のお花が言っています。

日本では、キンポウゲ科(Ranunculaceae)のヘレボルス属Helleborus)のことを、クリスマスローズ属とも呼び、どの種でも、それが流通名として通ることが多いようです。

特に、庭でよく栽培されるヘレボルス属の種、および、園芸種のうち、同じように見えるか、と思われるものが、少なくとも2種あります。

ユリウス暦のクリスマスころに咲き始めるクリスマスローズ(英名 Christmas rose
学名は Helleborus niger「黒いヘレボルス」
キリスト教の四旬節(レント)のころに咲くレンテンローズ英名 Lenten rose)、
学名は Helleborus orientalis「東方のヘレボルス」

今日は、この、レンテンローズについて取り上げます。

学名 Helleborus orientalis「東方のヘレボルス」
英名 Lenten rose「レントのバラ」
別名 Oriental hellebore「東方のヘレボルス」
和名 クリスマスローズ
別名 ヘレボルス・オリエンタリス
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属Helleborus

今日も、画像は、Wikimedia Commons から借りてきます。オリジナルからの改変はありません。「*」の印をつけて、画像それぞれに、簡単な説明を加えておきます。

Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:Jay Sturner
撮影日:2011.02.19
* 花弁の先の尖った種類

四旬節(レント)は、太陰暦に基づいているので、現在世界的に使われている、太陽暦であるグレゴリオ暦で言うと、年によって日が移動します。

四旬節は、次の期間です。
・2月4日から3月10日の間に始まり、
・復活祭(イースター)の前日(=土曜日)まで続く、
・日曜日をのぞく、合計40日間
なお、復活祭は、3月22日から4月25日のいずれかの日曜日になります。

レンテンローズ(Lenten rose)というのは、「レント(四旬節)のバラ」という意味で、その期間に咲いている、あるいは、地域によっては、その期間に咲き出す、ということを表します。

具体的には、温帯の地域では1月の終わりか2月に、寒冷地域では3月か4月に、咲き始め、2ヶ月ほど咲きつづけます。

Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:Dominicus Johannes Bergsma
撮影日:2014.03.01
* まだ開ききっていない花、中央近くに薄い点々がつく

クリスマスローズとレンテンローズは、つまり、名のごとく、咲く時期が異なるヘレボルスです。そして、形態上の特徴も異なります。

クリスマスローズの花弁(実は、ガク)は、基本的には白です。でも、レンテンローズは、白以外に各種の色の花弁が存在します(園芸種になると、さらに)。今日は、白い、あるいは、白っぽいレンテンローズばかり、ご紹介していますが。

レンテンローズの花弁の色の例
白、薄い緑、クリーム色、黄色、アプリコット、
薄いピンク、ピンク、赤、赤茶色、黒、

そして、レンテンローズの花弁には、クリスマスローズの花弁にはつかない、濃い赤紫色の点々などがつくことが、よくあります。

Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:Jay Sturner
撮影日:2011.02.19
* 濃い赤紫色の点々のついた種類

レンテンローズの学名は、Helleborus orientalis で、意味は「東方のヘレボルス」です。この orientalis というのは、英語の Oriental「(西洋に対する)東洋の」と同根の語です。でも、Helleborus orientalis  orientalis は「(ヨーロッパの直近の)東方の」という意味で、中国や日本などの「極東」を指しているわけではありません。

前にもこの地図(下の画像)を掲載しましたが、もう一度ご覧ください。

ヘレボルス・オリエンタリス(Helleborus orientalis)は、以下の地図では、「13」の地域が原産地です。その地域は、主に、黒海に面するトルコの北部と、ジョージア(旧名、グルジア)に渡り、それは「ヨーロッパの東方」に当たります。


Helleborus(ヘレボルス属)の原産地の分布
作成者:Nalagtus
撮影日:2019.08.07

クリスマスローズとレンテンローズはどう見分ければいいか。

・根が黒ければ、クリスマスローズ(根を掘ってまで見る人はいないと思いますが)
・早く咲けば、クリスマスローズ
・花が白ければ、両方の可能性
・花に色がついていれば、まずは、レンテンローズ
・花弁に点々などの模様がついているなら、レンテンローズ

これに加えて、地上からの花軸1本に
・花ひとつなら(稀に例外あり)、クリスマスローズ
・1〜4個の花がついていれば、レンテンローズ
・花軸が中ほどで複数の花柄に分かれていれば(みんなではない)レンテンローズ

Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:Simon Barnes
撮影日:2007.03.24

と言っても、、、園芸店に並んでいる個体でさえ、区別するのが難しいことがあります。比較的信用して良いと思われる Wikimedia Commons の画像にも、怪しいのがあります。白状すると、わたしが自分で判断して借りてきている画像にも、間違いがあるかもしれません。

個体によっては区別し難い理由は、3つ。
・ヘレボルス属の複数の種は、そもそも、お互い外見がよく似ている
・その上、交雑種・交配種が多いので、形質の線引きがしがたい
園芸店の「商品」に、(上のふたつの理由などで)ラベルがつけられていないことがある

ラベルに関しては、ごまかすな! と言いたいのですが、わたしのように、クリスマスローズかレンテンローズか、また、他のヘレボルスか知りたい人は、そう多くないのかもしれません。

でも、これはレンテンローズでしょう、というときに、わたしはそれをクリスマスローズとは呼べない。

それに、クリスマスも大きく過ぎてから咲きだすレンテンローズ(ヘレボルス・オリエンタリス)を、2月、3月、にクリスマスローズと呼びたくない。

Helleborus orientallis(ヘレボルス・オリエンタリス)
撮影者:Magnus Manske
撮影日:2010.05.01
* 花弁に透明の脈の見える種類

これは、もちろん、わたしの個人的な感じ方です。何をどう呼ぶかは、意味さえ伝わっていれば、個人の自由だと思います。

ただ、ヘレボルスを何でもかんでも「クリスマスローズ」と呼ぶのは、流通機構の戦略勝ちだったと思います。レンテンローズなんて、わけわからないもの、キリスト教徒の方々以外は。「クリスマスローズ」の方が、ロマンスがあるわあ。


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君の名はクリスマスローズ 2

2025年02月21日 08時00分00秒 | キンポウゲ科ヘレボルス
Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Petr Filippov
撮影日:2009.05.01

クリスマスに咲かないヘレボルス・ニゲルHelleborus nigerが、なぜ「クリスマスローズ(Christmas rose)」と呼ばれるか、、、

調べてわかったことがありますので、ご報告します。伝説にしか過ぎないのかもしれませんが。

今回も、画像は、Wikimedia Commons から借りてきます。オリジナルからの改変はありません。「*」の印をつけて、画像それぞれに、簡単な説明を加えておきます。

クリスマスローズがクリスマスに咲かない、と言っても、日本で豊臣秀吉がバテレン追放令を出すころまでは、ヨーロッパ各地では、クリスマスのころに咲いていたんです。少なくとも、そういうことになっています。

これ、どゆこと?


Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Wildfeuer
撮影日:2006.12.18
* 花弁の先が尖っている

ヨーロッパでは、ローマ帝国の昔から、ユリウス暦が使われてきました。

から抜き書きすると、
> ユリウス暦は、紀元前45年から実施された太陽暦である。
> もともとは共和政ローマおよび帝政ローマの暦であるが、
> キリスト教の多くの宗派が採用し、
> 西ローマ帝国滅亡後もヨーロッパを中心に広く使用された。 

ところが、1580年代になって、これが、グレゴリオ暦に替わりました。
> ローマ教皇グレゴリウス13世がユリウス暦に換えて
> 太陽年との誤差を修正したグレゴリオ暦を制定・実施

そして、このグレゴリオ暦が、徐々にヨーロッパで広がり、現在、ほぼ世界的に使われるようになったわけです。新旧の入れ替わり、ということで、ユリウス暦を旧暦、グレゴリ暦を新暦、と呼ぶことができます。


Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Stefan.lefnaer
撮影日:2022.02.26
* 細い花弁

日本で、中国由来の太陰暦「旧暦」から、ヨーロッパ由来の太陽暦であるグレゴリオ暦「新暦」に変わった時、旧暦の正月「旧正月」が、新暦の1月末〜2月始め(年によって変わる)になりましたよね。つまり、新暦に従うと、正月は、「早く」来ることになりました。

それと同様に、ユリウス暦「旧暦」から、グレゴリオ暦「新暦」に替わった時、クリスマスが「早く」来ることになってしまったのです。でも、季節の方は、新しい暦についてきてくれない。よって、旧暦のクリスマスに咲くはずであったクリスマスローズが、新暦のクリスマスにはまだ咲いていない、1月になって咲いた、という事態が起こったのであります。


Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Stefan.lefnaer
撮影日:2022.02.26
* ピンクがかった花弁の裏側

この事情は、これまた別の伝説で、述べられています。

イギリス、イングランドの、聖トマス修道院(St Thomas's Abbey)で、新暦(グレゴリオ暦)が導入された時に、クリスマスローズが1月6日に咲いた、という。1月6日が、旧暦(ユリウス暦)のクリスマスであったわけです。

クリスマスのシンボルであったクリスマスローズが、新暦、グレゴリオ暦のクリスマスに咲かなかった、ということがショックで、イングランドでは、グレゴリオ暦の導入を停止し、以降、再導入が遅れる、ということまで起こっています。

もう一度Wikipediaの「ユリウス暦」の記事を見ていただくと、
「グレゴリオ暦との差」の見出しのところに、ユリウス暦(旧暦)とグレゴリオ暦(新暦)の日数のズレが示されています。

そのズレが、16世紀終わり〜18世紀終わりまでは10日間、それが11日になり、12日になり、現在は、13日まで広がっています。

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Stefan.lefnaer
撮影日:2022.02.26
* ニゲルは普通は花柄1本につき花はひとつだが、これは珍しい花ふたつつき

ユリウス暦からグレゴリオ暦への変更が、クリスマスローズがクリスマスに咲かず、1月に咲くようになった、ということなんです、、、

でも、花の咲くのは、当然ながら、地域によりますから、以上は、そういう事情がある、というだけのことです。海岸線と高山と、農村と都会では、植物の咲く時期が異なります。

そして、温暖化・・・クリスマスローズは、温暖化により、早く咲くようになるんでしょうか、遅く咲くようになるんでしょうか。

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Karl Gruber
撮影日:2010.05.08
* 花弁が緑に変わり、タネのサヤがふくらんでいる

以下に、ヘレボルス・ニゲルHelleborus niger)の、ヨーロッパ語いくつかでの名称をまとめておきます。日本語での名称もつけ加えておきます。

基本的に、「黒いヘレボルス」か「クリスマスローズ」なんですが、
・ドイツ語の Schneerose「雪のローズ」
・日本語の雪起こし」
には、相通じるところがあります。

ラテン語(学名)Helleborus niger「黒いヘレボルス」

イタリア語 Elleboro nero「黒いヘレボルス」
イタリア語 Rosa di Natale「クリスマスのローズ」

スペイン語 Eléboro negro「黒いヘレボルス」
スペイン語 Rosa de Navidad「クリスマスのローズ」

フランス語 Ellébore noir「黒いヘレボルス」
フランス語 Rose de Noël「クリスマスのローズ」

英語 Christmas rose「クリスマスローズ」
英語 Black hellebore「黒いヘレボルス」

ドイツ語 Schneerose「雪のローズ」
ドイツ語 Christrose「キリストのローズ(クリスマスローズ)」
ドイツ語 Schwarze Nieswurz「黒いヘレボルス」

オランダ語 Kerstroos「クリスマスローズ」

日本語 クリスマスローズ
日本語 ヘレボルス・ニゲル、あるいは、ニゲル
和名1 雪起こし(ユキオコシ
和名2 寒芍薬(カンシャクヤク)
* 和名のユキオコシとカンシャクヤクが、ヘレボルス・ニゲル(種名)だけを指すのか、
あるいは、ヘレボルス全体(属名)を指すのか、明らかではありません。


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君の名はクリスマスローズ 1

2025年02月17日 10時00分00秒 | キンポウゲ科ヘレボルス
Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Dominicus Johannes Bergsma
撮影日:2021.12.16

今日も、ヘレボルス・ニゲル(Helleborus nigerについてです。前回に続き、Wikimedia Commons から画像を借りてきます。全て、オリジナルからの改変はありません。

ニゲルの英語での名称は、他にもあるかもしれませんが、代表的なのは、
・Christmas rose「クリスマスのバラ(クリスマスローズ)」
・Black hellebore「黒いヘレボルス」
です。

「黒いヘレボルス」(学名の Helleborus niger、英名の Black hellebore)と呼ばれる理由は、前回述べましたとおり、薬用になる根が黒いことから来ています。「薬用」と言っても、サジ加減では毒ですが。。。

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Albertomos
撮影日:2022.02.09

でも、クリスマスローズは、なぜ「クリスマスローズ」と呼ばれるのか。

まず、クリスマスローズが、ローズ(バラ)でないのに「バラ」と呼ばれるのは、バラに「似ていて」美しい、というほどのことでしょう。確かに5弁ではある。

クリスマスローズが「クリスマス」と冠されるのは、クリスマスのころに咲く・・・でも、実際に咲くのはそれより遅い・・・というように、わたしは理解していたのですが・・・調べ直してみると、そうでもあって、そうでもない・・・


Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Gerda Arendt
撮影日:2022.02.12

次の、アメリカのミズーリ大学のサイトの記事から、かいつまんで、まとめてみたいと思います。
Christmas Rose: Beautiful Plant with Interesting History
(クリスマスローズ:おもしろい歴史のある美しい植物)

ある伝説によると、
> 羊飼いの少女が、キリスト誕生に駆けつけたのはいいが、贈り物がなかった。
> それに嘆いて、泣いていると、天使が現れ、少女を厩から連れ出し、地上に触れた。
> すると、そこから即座にクリスマスローズが現れ、少女にそれをキリストへの贈り物
> とするように、と与えた。

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Isiwal
撮影日:2014.02.13

Wikipediaの英語版の記事では、ミズーリ大学の説明とは少し異なりますが、同様の伝説が採録されています。

その伝説によると、
> 羊飼いの少女が、・・・贈り物がなかった。
までは同じで、異なるのは、天使は駆けつけず、
> 少女が涙をこぼすと、その涙のこぼれた雪の中からクリスマスローズが現れて、
> 少女は、それを贈り物とした。

はは、他力本願と自力本願の違いですね。いや、失礼、茶化しまして。

なお、こちらの、自らの涙でクリスマスローズを出現させた伝説の方は、そのWikipediaの記事の注釈によると、イギリスの Royal Horticultural Society(王立園芸協会)の
「The dark side of the Christmas Rose(クリスマスローズの暗い側面)」
という記事に載っているそうです。


Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Michael Burgholzer
撮影日:2024.02.10

では、クリスマスローズは、「クリスマスのローズ」と呼ばれながら、キリストの誕生したとされるクリスマスのころに、なぜ咲かないか。

それは、また次回に。


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ニゲル(クリスマスローズ)

2025年02月14日 17時00分00秒 | キンポウゲ科ヘレボルス
Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Robert Hundsdorfer
撮影日:2008.05.27

わたしの庭には、以前、ヘレボルス・ニゲルHelleborus niger)があったのですが、失ってしまいました。もう10年近くになると思います。画像もほとんどなく、それで、今日は、Wikimedia Commons から画像を借りてくることにします。全て、オリジナルからの改変はありません。

学名 Helleborus niger「黒いヘレボルス」
英名 Christmas rose「クリスマスのバラ(クリスマスローズ)」
別名 Black hellebore「黒いヘレボルス」
和名 クリスマスローズ
別名 ヘレボルス・ニゲル、あるいは、ニゲル
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属Helleborus

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
撮影者:Wildfeuer
撮影日:2006.12.18

花びらの色は白で、ほぼ真っ白に近いの(冒頭画像)から、中央が緑の(直前の画像)もあります。

それなら、なぜ、「白いヘレボルス」ではなく、「黒いヘレボルス」?? 学名 Helleborus nigerniger というのは、ラテン語で「黒い」という意味。何が黒い? 薬用になる根が黒いんですって。

アカネ科(Rubiaceae)アカネ属(Rubia)のアカネ(Rubia argyi)みたいなものね。草木染めの原料になる、根が茜色のアカネ「赤根」。

Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)の花の異なる3段階
撮影者:P.gibellini
撮影日:2020.02.23

上の画像には、同じ株のニゲルでありながら、異なる色の花びらが見えます。これは、開花してからの日数の経過により、色が「帯色」あるいは「褪色」するのです。

咲いた時には、ニゲルの花びらは白いです(画像、中段の花)。この白さはかなり続きますが、そのうち、開花してから日数が経つと、赤っぽくなってきます(画像、上段の花)。そして、タネができるころには、花びらは、緑になります(画像、下の段)。

ヘレボルス各種の原産地を、以下の地図でご覧ください。西はイギリスのイングランドから、東はトルコ、シリア、までを見渡す地図です。その中で、ニゲルの分布は、「5」で示されています。

Helleborus(ヘレボルス属)の原産地の分布
作成者:Nalagtus
撮影日:2019.08.07

次の地図は、上の地図の中央部の拡大で、そこで、ニゲルの分布「5」が、イタリアの北部、オーストリア全域、スイスの東側半分、と、いくつかの東ヨーロッパ諸国の限られた地域、に渡っているのが、分かります。

Helleborus(ヘレボルス属)の原産地の分布
作成者:Nalagtus
撮影日:2019.08.07

ニゲルは、英語では、Christmas rose「クリスマス・ローズ」と呼ばれますが、そのことについては、次回に。


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セイタカアワダチソウ? その2

2025年02月10日 09時00分00秒 | キク科
024.12.29撮影

のつづきです。

Wikipediaで、日本語版に記事がない時に、中文版を調べると時々おもしろいことがあるので、今回もいそいそと出かけてきました。

中文版の「アキノキリンソウ属」に当たるページ
から抜粋すると、
・アキノキリンソウ(S. virgaurea)毛果一枝黄花 goldenrod, Aaron's rod 
・オオアワダチソウ(S. gigantea)早生一枝黄花 tall goldenrod, giant goldenrod
・セイタカアワダチソウ(S. canadensis)加拿大一枝黄花 Canada goldenrod
・オオセイタカアワダチソウ(S. altissima)高大一枝黄花 tall goldenrod, late goldenrod

こちらの学名表示は、英語版と一致しています。

それでは、日本語版では、学名の方が混乱しているのか、和名の方が混乱しているのか、あるいは、日本全体で、学名とは異なる分類をしているのか??? その辺のことはわたしにはわかりません。

2024.12.29撮影(この画像だけ、実家の庭から)

さて、混乱の可能性となる理由を考えてみました。要するに、アキノキリンソウ属の多くの種が、形質の線引きが難しいのではないか、と。そして、その原因は、自然界で容易に交雑するから、ではないだろうか、と。

それで、文献がないか調べてみました、インターネット上で、ですけど。


種屋のサイトから抄訳
>> 自然に簡単に交雑する変種が多い


研究論文のサイトから抄訳
(和名は、わたしが、省略して挿入しました)
>> S. canadensis(セイタカ)、S. gigantea(オオ)、は北アメリカ原産
>> S. virgaureaアキノはヨーロッパ原産
>> S. canadensisセイタカ)と S. virgaureaアキノ)の交雑種が S. ×niederederi
>> S. giganteaオオ)と S. virgaureaアキノ)の交雑種が S. ×snarskisii
(ご覧になりたい方は、リンクをコピペでどうぞ)


生態学者のサイトから抄訳
>> 他の1種としか交雑しない種もある、一方、8種とも交雑する種もある
>> 自身の属する亜節の他の種と交雑する種が18、自身の亜節以外の種と交雑する種が17
(ご覧になりたい方は、リンクをコピペでどうぞ)

この生態学者の記事の下方に、グラフ様のものがふたつあります。そのうち、右側のが緑の線で示されています。そこでは、S. canadensis(下から4番目)と S. altissima(下から3番目)が交雑するのが示されています。

「亜節」については、以下をご覧ください。亜節は、属よりも下、種よりも上、の階級です。


最後に、2回続いた「セイタカアワダチソウ」ぐだぐだ記を、Wikipediaからの画像と、私の思い至った結論で締めくくりたいと思います。画像は、英語版からひとつ、日本語版からひとつ、取り上げます。

英語版 Solidago canadensis から
Solidago canadensis, in Sasayama, Hyogo セイタカアワダチソウ(篠山市味間)
撮影者:松岡明芳
撮影日:2016.10.15
オリジナルからの改変、なし

* 英語版 Solidago canadensis の記事に出ている画像が、学名では Solidago canadensis、和名では、カタカナで「セイタカアワダチソウ」とされています。

日本語版「セイタカアワダチソウ」から
セイタカアワダチソウの花
Solidago canadensis, Common goldenrod, Canada goldenrod
撮影者:Jeevan Jose
撮影日:2010.05.09
オリジナルからの改変、なし

* 日本語版「セイタカアワダチソウ」の記事では、その学名を Solidago altissima として
います。
* ところが、写真の説明は、記事の題名と同じく「セイタカアワダチソウ」としながら、
学名は、Solidago canadensis としています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

結論
・セイタカアワダチソウの学名は、Solidago canadensis のようである
・ところが、セイタカアワダチソウには、日本で使われる学名に揺れがある
・その揺れは、Solidago canadensisSolidago altissima である
・そのうち、Solidago altissima の方が日本では優勢である
・これには、シノニムの関係もあるか?
・自然に交雑するので、形態を線引きするのが難しい=種の特定が難しい?
オオセイタカアワダチソウSolidago altissima)とは、学名でどう区別するか


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セイタカアワダチソウ? その1

2025年02月07日 08時00分00秒 | キク科
2024.12.29撮影

この花も、帰国・帰省中、年末に咲いているのを見たした。駐車場の隅っこの草むら一帯に、何かのイネ科の植物の枯葉(画像中、背景)に混じって、咲いていました。

これが、キク科(Asteraceae)の、アキノキリンソウ属Solidago)に属する植物であることは形状からわかるのですが、そのどの種であるか。

今日は、花の形態よりも、名称について「探索」してみたいと思います。まあ、「植物学」というより、「文献学」ですけど。

アキノキリンソウ属に属する植物のうち、日本に存する主だった種は、
・アキノキリンソウ(Solidago virgaurea(別名、アワダチソウ)
・オオアワダチソウ(Solidago gigantea
・セイタカアワダチソウ(Solidago canadensis
オオセイタカアワダチソウ(Solidago altissima

このうち、アキノキリンソウは、日本原産かどうか定かではないとは言え(アキノキリンソウをヨーロッパ原産とする文献もあります)、かなり昔から日本にあるようで、「アワダチソウ」という名称の出発点は、この植物の可能性がある?

日本に入ってきた年代を査定せずには断言できないのですが、和名は、以下のように発展してきたのかな、と想像します。
1「アキノキリンソウ」は、そもそもの名称が「アワダチソウ」(?)
2「アワダチソウ(アキノキリンソウ)」より大きいのが、「オオアワダチソウ」
「オオアワダチソウ」より背(=草丈)が高いのが、「セイタカアワダチソウ」
「セイタカアワダチソウ」より大きいのが、「オオセイタカアワダチソウ」

2024.12.29撮影

今回の植物は、アキノキリンソウSolidago virgaureaではない、と思われます。なぜなら、アキノキリンソウは、草丈が小ぶりで、かつ、花びらがあまり細くなく、平たくて、花がぱっちりと広がるからです。アキノキリンソウの画像は、以下などでご覧ください。
アキノキリンソウ岡山理科大学

今日の植物が何であるか、花期に基づいて判断すると、次に、オオアワダチソウ(Solidago giganteaを除外することができると思います。なぜなら、オオアワダチソウは、真夏に咲くらしいからです。

これで、セイタカアワダチソウ(Solidago canadensis)とオオセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)が残るのですが、このふたつではどちらとも決め難いか? と思いました。両者とも、10月、11月まで咲くらしいです。通常10月、11月まで咲くなら、温暖化で12月末まで咲いてもおかしくない?

なお、国立環境研究所の侵入生物データベース
には、オオセイタカアワダチソウは出ていませんでした。

そもそも、オオセイタカアワダチソウの情報が、日本語のサイトでは、侵入生物かどうかと別に、大変少ないのです。


2024.12.29撮影

以下、Solidago を、属名がわっている場合の学名表記の慣例に従い、S. と略します。

結局、今日取り上げているアキノキリンソウ属の花は、
・セイタカアワダチソウ(S. canadensis
オオセイタカアワダチソウ(S. altissima
のどちらからしい。では、どちらかに特定できるか。

ここで、花の特徴よりも何よりも、名称の壁に突き当たりました。



セイタカアワダチソウ - Wikipedia(Wikipedia日本語版)を見ると、
・セイタカアワダチソウの学名は、S. altissima 
(おや? これは、オオセイタカアワダチソウの学名では?)
・シノニム(学名の別名、旧名)として、S. canadensis subsp. altissima 
(おや、亜種名に altissima とつく? それは、オオセイタカアワダチソウの種小名では?)
他のシノニム(学名の別名、旧名)として、S. canadensis var. scabra 
(変種扱い?)

> 生物の命名法におけるシノニム(英語: synonym)とは、同一と見なされる分類群
(種や属など)に付けられた学名が複数ある場合に、そのそれぞれをいう



この日本語版「セイタカアワダチソウから
に切り替えてみました。
・記事の題(植物名)自体が、S. canadensis 
(あれ〜〜、日本語版では、セイタカアワダチソウ学名は、S. altissima だったのに?)



英語版では、次の記事が別々に出ています。
S. canadensis のページ Solidago canadensis - Wikipedia
(日本語版では、セイタカアワダチソウが、別の学名 S. altissima として存在する)
S. altissima のページ Solidago altissima - Wikipedia
(日本語版が存在しない)
ふ〜〜ん。



でも、中文(中国語)版には、日本語版に存在しない記事があるんですよね。

つづく


コメント

冬なのに

2025年02月03日 08時00分00秒 | タデ科

2024.12.28撮影

前2回にわたる記事と時間が前後するのですが今回から数回にわたって、年末年始の帰国・帰省中に写した植物を見ていただきたいと思います。やはり、温暖化のためなのでしょうか、今ごろ咲いていていいのかなあ、と思える花も見ました。

そのひとつが、ツタバウンラン(Cymbalaria muralis)。

学名 Cymbalaria muralis
英名 Ivy-leaved toadflax
和名 ツタバウンラン(蔦葉海蘭)
オオバコ科(Plantaginaceae)ツタバウンラン属(Cymbalaria

「葉がツタの葉の形をしたウンラン(海蘭)」、ということなのですが、なぜ「海の」ランなのかは、わかりません。学名の muralis は「壁の」という意味です。伝っていく様子ですね。

国立環境研究所の「侵入生物データベース」
によると、
> 開花期は春〜初夏
> 一年草もしくは多年草
だそうです。

あ〜〜、今(撮影時は年末)、初冬なんですけど・・・地上部が残っていてもいいけれど、花が咲いている?

わたしのバンクーバーの庭では、ツタバウンランは、暖かい間は、生き生き伸び伸びと、旺盛に生活しておりますが、冬にはやはり大体は消えて、茎と葉を少しちょろちょろと残すだけになりますよ。

次のは、うちの庭のツタバウンランくんです、5月末近くに撮影。


2022.05.25撮影

ヒメツルソバPersicaria capitata)も花ざかりでした。

学名 Persicaria capitata
英名 Pink-headed persicaria「ピンク色の頭のタデ」
和名 ヒメツルソバ
タデ科(Polygonaceae)イヌタデ属(Persicaria

先のツタバウンランは、わざわざ育てる人は多くないので雑草(そういう言い方は好きではないのですが)なんでしょうけど、ヒメツルソバは園芸用ですか。生命力、繁殖力では、ツタバウンランとどっちもどっちだと思うんですけど。

要するには、雑草であったものを、園芸用に導入し、それがはびこりすぎて「雑草化」した、というところなんでしょう。

2024.12.28撮影

わたしは、今でこそ自宅のあるバンクーバーと日本の実家とを行き来していますが、そうし出したのはコロナが「収束」してからです。コロナの直前に帰国し、カナダに帰ってきて、そのまま足止めになったのです。コロナ前は、数年に1度、という頻度でした。多くても1年に1度。でも、両親の高齢化に伴い、そうもいかなくなったのです。

ですから、そのコロナ前の、その程度の帰国の頻度での印象でしかないのですか、ある時、一斉に、ヒメツルソバって流行りませんでした? 何か突如としてあちこちの庭に出現したような・・・わたしの思い違いかもしれません。

によると、開花期は、
> 4月~11月(真夏は少なくなる)
だそうです。

ですから、年末って、やっぱり、やせ我慢して咲いているのか、それとも、平気、平気なのか・・・

ところで、ケチつけて悪いが、上記リンク先に書いてある
> 関東地方以西であれば、冬は地上部が枯れますが、根は残って冬越しします。
は、「関東地方以*西*」ではなく、「関東地方以*東*」、あるいは、「関東地方以*北*」じゃないのか??? それとも、わたしの理解がおかしい? いずれにしても、こういうこと、すぐ目にとまる方で、おかげで、校正するのに重宝がられています。


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