カラスといちごとクロッカスと

身の回りの鳥や小動物、庭の花や畑の野菜など、日々日々、季節季節の情報を、
個人の目をとおしてお届けします。

「気まぐれ変化」バラが枯れた

2024年07月03日 08時00分00秒 | バラ科

2021.06.04撮影(3年前)

わたしの庭は、家の北側と南側にあります。そのうち、北側の方が表の庭です。それは、玄関が北側にある(=道路に面している)からです。南側の庭は裏庭で、車庫をはさんで、路地に面します。

日本の家の建て方だと南側が裏庭というのは変だと思いますが、北米の家の建て方は、南北に長い土地なら、その真ん中にドンと家を建てるので、南側の庭と北側の庭ができあがり、玄関側が「表」と見なされるので、うちのように北側の庭が表の庭、ということが半分の確率であるのです。

わたしの北側の庭は、樹木の成長にともない、ますます陰が広がりました。そのため、多くの植物が消えていきました。南側の庭は、南と言っても、庭と路地の間に車庫が建っているので、手放しで太陽の当たる庭だとも言えないのです。

つまりは、太陽の必要な植物は多くは育てられない、ということです。

それで、わたしは、バラ(Rosa)を育てるのを躊躇してきました。と言っても、何種類かはあるのですが、なるべく、原種か、原種に近いものにしています。


そんな数少ないバラのうち、園芸店で見て恋に落ちて、やってきてもらったのが、冒頭画像の Rosa × odorata 'Mutabilis' です。この画像は、写りが悪いですが、こんなふうに咲いていた(ほんの3年前)、という例としてお見せします。画像右奥の白い花は、コデマリ(小手毬 Spiraea cantoniensis)です。

3年前はこんなに咲いていたのに、去年は下の画像程度。日暮前に撮影したからこんな色になっているだけで、別に何かを暗示しようとしたわけではありません。

2023.06.27撮影(1年前)

そして、、、今年は、見てみると、まったくの枯れ木になっていました。昨日、届くところだけは切り取り、ウッドチップになってもらいました。

今、ミニ(の)バラ園を作ろうか、と考えていて、それ用の太陽の当たる土地はあるんです。大木に成長していたフサフジウツギ(Buddleja davidii)が枯れた、その「跡地」に。

「気まぐれ変化」するバラ(Rosa × odorata 'Mutabilis')についてもっと詳しくは、以下の再掲載の記事(2022.08.08)をご覧ください。変化する花の色が見られます。
学名 Rosa × odorata 'Mutabilis'
和名 ロサ・ムタビリス(仮名)
バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa


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マゼンタの花、サーモンベリー

2024年05月15日 08時00分00秒 | バラ科
2024.04.07撮影(花柄に黄緑色の虫がとまっている?)

今日は、先週に始めました、マゼンタの花シリーズのつづきです。

シリーズ1回目、2回目は、シャクナゲ(Rhododendron)でした。

途中でシャクナゲ番外編をはさんで、

今日、マゼンタの花シリーズの3回目は、サーモンベリー(Salmonberry)です。和名があるかどうかよくわかりません(=見つかりません)ので、英名をカタカナにして「サーモンベリー」としておきます。

「ベリー(berry)」は、「ストローベリー(Strawberry)」「ラズベリー(Raspberry)」「ブルーベリー(Blueberry)」の「ベリー」ですが、「ベリー」とは何か、というのも、「シャクナゲ(日本語でいうところの)」とは何か、というのと同様、こわい話題ですので、避けて通ることにします。

学名 Rubus spectabilis
和名 サーモンベリー【暫定的に】
バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus

2024.04.17撮影

サーモンベリーは、冒頭画像のように、下向きに咲くことが多いです。ですから、お顔を拝見しようと思えば、下から覗くしかありません(直前の画像)。

撮影するには、全部を自動設定にして、画面の割り振りも考えず、ひたすらシャッターを押し続けます。ただ、光線の向きは計算に入れます。すると、何枚か、写真として通る画像が撮れます。あるいは、高く伸びた枝に咲く花を下から見上げ、普通に撮影します。

上の画像の花は、まだ若い花です。オシベがそろって、まだ固く並んでいます。

2024.04.22撮影

下向きの花が多いんですが、中には、直前の画像のように、ほぼ横向きに咲く花もあります(背景の青い花はブルーベルです)。このサーモンベリーの花は、雨に打たれた後で、花びらが傷んでいます。ぶちぶちと何度も書くが、バンクーバーは雨が多いのよ。人々は、天気予報を見ながら、いつ何をするか決めます。

サーモンベリーの学名 Rubus spectabilis にもどりますと、属名 Rubus は「キイチゴ」、種小名 spectabilis は「目を見張る、見るに値する、愛でるべき、壮観な」というような意味です。これは、この鮮やかな花の色、マゼンタ、から来ていると言っていいと思います。

2021.05.14撮影

キイチゴ属(Rubus)の花の多くは、白ですが、サーモンベリーの花はマゼンタ。

日本固有のバニバナイチゴ(Rubus vernus)も、花の色はマゼンタで、葉や実も、サーモンベリーのと大変よく似ています。でも、ベニバナイチゴの花の色は、サーモンベリーの花の色より暗い色調のマゼンタです。花びらの形を比べてみると、ベニバナイチゴの花びらの先は、サーモンベリーの花びらの先ほど、尖っていません。そのため、花全体の姿が、ベニバナイチゴはややずんぐりと見える一方、サーモンベリーの花はほっそりしています。


バニバナイチゴは日本特産ですが、サーモンベリーは、わたしの住むバンクーバーを含む北アメリカ西海岸固有です。


2012.06.04撮影

直前の画像には、異なる成長段階のベリーが写っています。今はまだ花が咲いている時期なので、このようになるのは、もうちょっと先。

成熟に近づいている実は、画像のほぼ中央、やや左寄りに見えます。つぶつぶが集まっていますよね。このつぶつぶが、もっと熟すと、半透明の濃い朱色になります。それが、イクラそっくりなんです。イクラはサーモンなどの卵、それで、このベリーはサーモンベリー。

このベリー、食べられるんです。わたしは美味しくないと思いますが、美味しいと言う人もいます。美味しい、美味しくないは、当たり外れがあるんだ、とか。

サーモンベリーの葉は、段ボールの、2枚のボール紙(?)の間にはさまれた部分みたいな形をしています。次の画像をご覧ください。

2022.05.13撮影

わたしは、サーモンベリーの花が咲くと、毎年、うれしくなります。数多くのスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)がほぼ終わってしばらくすると、咲き始めるんですよね。それも、スプリング・エフェメラルのように地上近くに咲くのではなく、地上から少し離れた枝に付くので、花の咲いている感じが全く違うのです。季節が推移していっている、というのがよく感じられます。


2022.04.24撮影

実は、前にもサーモンベリーについて、書きました。わたしの初期の記事(7番目の記事)です。今日書いたことと内容はかぶるのですが、よろしければ、覗いてみてください。



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ミニバラ〜帰国日記12

2023年07月06日 08時00分34秒 | バラ科
2023.06.04撮影

帰国・帰省するたびに実家の庭の草取りをして、せっせと花を植えて、あとは、わたしの滞在していないときでも花が咲いてくれていることを祈る。水やりは、父がしてくれるのを知っています。でも、年寄りには、もうそろそろきついかもしれません。

世話がしやすくよく咲くものを、と、スミレ類(Viola)、サクラソウ類(Primula)、ナデシコ類(Dianthus)、ポーチュラカ(Portulaca)、ゼラニウム類(Pelargonium)、そして、ミニバラ(Rosa)、などを植えました。

今日は、そのミニバラについて書いてみようと思います。

 
2023.03.20撮影              2023.06.09撮影

が、わたしは、自宅でも何種類かしかバラを育てていないし、その育てているもののほとんどが原種か原種系なので、園芸種のバラについてはほとんど知識がありません。それで、バラ一般についてはいろいろ疑問点があるのですが、今日は、そのうち、特にミニバラについての疑問点に絞って、自己解決してみる予定です。以下の検索ページから、多くの記事を参照しました。

Google検索
ミニバラ

上の画像2枚のバラは、両者とも、ミニバラとして販売されているものを庭に植えたものです。ラベルから、園芸種であることはわかっています。見比べてみて、同じくミニバラと言っても、花の形態にかなり差異があります。下の画像でも、右側の画像の右の花は、花の姿が特に違いますよね。

 
2023.06.09撮影              2023.06.09撮影

では、疑問を挙げてみます。ミニバラは、
疑問1 ある特定の種、あるいは、亜種、あるいは、変種、あるいは、園芸種、なのか
疑問2 一定の大きさ(高さ、および、幅)以下のものをいうのか
疑問3 一定の大きさの花を咲かせるものをいうのか
疑問4 花の特徴は同じか
疑問5 室内で育てたほうがいいのか
疑問6 地植えできるなら、冬越しするのか
疑問7 冬越しするなら、年々大きくなっていくのか
疑問8 新しい園芸種は作り出されているのか

以下は、雨後の赤いバラです。色も花びらの様子も異なります。同じポットに植わっていたんですが。

 
2023.06.11撮影              2023.06.11撮影

ミニバラは、ある特定の種、あるいは、亜種、あるいは、変種、あるいは、園芸種、なのか
ミニバラは、Rosa chinensis(ロサ・キネンシス)「中国のバラ」という種の突然変異でできた矮性の変種 var. minima をもとに作られた園芸種です。minima(ミニマ)というのは、ラテン語で「小さい」という意味です。「ミニ」と同語源の語です。

属名 Rosa(ロサ)「バラ」
種名 Rosa chinensis(ロサ・キネンシス)「中国のバラ(庚申バラ)」
変種 Rosa chinensis var. minima(ロサ・キネンシス・ミニマ)「矮性庚申バラ
変種をもとに作られた園芸種「ミニバラ」

赤以外のミニバラも求めてみました。以下は、最初は藤色だったものが、赤みを帯びて、ピンクにまでなったものです。やや剣咲きっぽくて、花がゴージャスに見えます。

2023.06.09撮影

ミニバラは、一定の大きさ(高さ、および、幅)以下のものをいうのか
変種「矮性庚申バラ」をもとに作られた園芸種であるので、小さい傾向にあるが、交配の相手により、大きさには大小が出る。大きさの制限はないが、30cm程度の丈のものを一般に「ミニバラ」と呼ぶ。「ミニバラ」の「ミニ」は、「ミニマ」に由来する可能性あり。あるいは、商業目的で「ミニ」と命名されたのかもしれない。

ミニバラは、一定の大きさの花を咲かせるものをいうのか
交配の相手の選び方で、花の大きさも様子も変わってくる。大きさによる制限なし。「ミニマ」からの交配種であるかどうか、がミニバラであるかどうかの決め手である。

ミニバラは、花の特徴は同じか
「ミニマ」に由来する各種の交配種のグループを「ミニバラ」と呼んでいるので、花の特徴も一定ではない。

ミニバラの魅力に取り憑かれ始めて、ついに、次のような不思議な色のも買ってきました。ちょっと大ぶりのミニバラです。以下の画像は、すべて、「同じ」であるはずのミニバラの園芸種ですが、ポットにより異なるのかもしれません。もちろん、咲いてからの日数によって、色は変わってきます。

2023.06.04撮影

ミニバラは、室内で育てたほうがいいのか
普通のバラであるので、極寒、極暑でなければ、屋外で、地植えで育つ。ミニバラのラベルには、しかしながら、そのことについて何も言及がないものもあれば、室内で育てるように書かれているものもある。

それで、わたし、お店の人ふたり(別々のお店です)に聞いたんですよね、これは地植えできますか、と。ひとつはラベルがあって地植えについては何も書いていないもの、もうひとつはラベルのついていないもの。ふたりとも、ポットを手に取って植物を眺めてみて、これは地植えしないでください、と。

なぜ??? 地植えして、何か不都合なことが? それとも、よっぽどひ弱なものを売っているの? 例えば、根の活着していないのとか? わたしは学生時代に2回そういうのをつかまされたことがある。「ミニマ」になど由来しない残り物のバラの枝の切れ端をポットに突っ込んであるだけじゃないの? とまで考えたくなる。

ちゃんとした生産者以外のは、怪しいのかもしれない。

 
2023.06.04撮影              2023.06.04撮影

ミニバラは、地植えできるなら、冬越しするのか
バラは多年草であるので、普通に冬越しする。あるいは、ミニバラの場合は、交配の過程で弱い品種ができあがり、戸外で冬越しできないものがあるのかもしれない(って、信じにくいけど)。

ミニバラは冬越しするなら、年々大きくなっていくのか
持っている遺伝子に従って、成長はしていきます。これが「ミニ」か、と思うほど大きくなるものもあれば、小さいままでコンパクトにまとまっているものもあります。

ミニバラは、新しい園芸種は作り出されているのか
どんどん作り出されているようです。

下の画像は、タイミング的に、雨に濡れた後。雨に濡れたからこうなった? なんで、ピンクの斑点や縁取りが出る?

 
2023.06.08撮影              2023.06.08撮影

2023.06.08撮影              2023.06.11撮影

ミニバラのポットには、大抵、4株植えられているようです。そして、その全部が全く同じ種類であるとは限らない。今回、いろいろな赤いバラを手に入れました。

両親と電話で話しましたところ、赤いバラはよく咲いているそうです。新しい枝が高く伸びてきたのもあるそうです。

藤色〜ピンクのと、薄ピンク〜薄黄色のは、居間(リビング)から見えない、と言っています。やっぱり庭に出てくれていないのね・・・仏壇のお花を新しいのに変えよう、と本人が思うまで待つしかないか。

2023.06.04撮影


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ヤマブキも?

2022年12月21日 08時00分00秒 | バラ科
2022.04.20撮影

ご存知の方も多いと思いますが、動植物の学名の種名は、
「属名+種小名」
で成り立っています。

このように名前をふたつ連ねて動植物を命名することを、二名法といいます。

高校生 5分でわかる! 二名法

「属名+種小名」の種小名は、属名を形容するものだ、と考えていいです。

例えば、昨日書きました日本原産(そして、多分、固有)のボケ属(Chaenomeles)の植物、クサボケ(Chaenomeles japonica)は、「日本の(japonica)ボケ(Chaenomeles)」という意味です。

2006.03.27撮影

和名 クサボケ(草木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles japonica「日本のボケ」
英名 Japanese quince「日本のボケ」
原産 日本

「ジャポニカ」なんていう植物

 japonica「日本の」と学名のついた植物(動物も)は、かなりあります。次もそうです。

2022.04.20撮影

ヤマブキです。冒頭の画像もヤマブキ。

和名 ヤマブキ(山吹)
バラ科(Rosaceae)ヤマブキ属(Kerria
学名 Kerria japonica
英名 Japanese kerria
原産 日本、朝鮮半島、中国

ヤマブキは、日本も原産地のひとつではあっても、日本の固有種ではありません。でも、japonica とついている。日本の固有種でなくても「日本の」と呼ばれる植物は他にもあります。

他の地域を差し置いて「日本の」になる理由は、それぞれあるでしょうが、ヤマブキの場合は、日本で突然変異でできた八重のヤマブキ 'Pleniflora'(「多くの花」という意味) の方が、一重のヤマブキよりも先に、西洋諸国に入ったからのようです。ただし、日本から直接入ったのではないようです。

わたしの周り(カナダ、バンクーバー)では、ヤマブキとはポンポンみたいな花だ、と思っている人はたくさんいます。そして、うちの一重のヤマブキを見て、不思議そうな顔をします。

僕は八重の山吹。知ってるよね。

2021.04.27撮影

実は、わたしは、高校で(?)太田道灌の

七重八重 花は咲けども
山吹の実のひとつなきぞ 悲しき

を習った時、これは意味不明、と思いました。なぜなら、その時、わたしはヤマブキは一重のものしか知らなかったからです。

でも、人間は、理解できないことは都合よく解釈するもので、その時は、花がたくさん咲いて、上の画像のように花が段々に重なっていることを「七重八重」と言ったんだろう、「実のひとつなきぞ」は、まだ花の季節だから、実があるわけないよね、そして、またあ、「蓑(みの)ない」なんてひっかけてえ、いやん、とも思いました。恐ろしい思考をしたものです。

japonica のついた花をもうひとつ。これは、もう2日前に話題にしました。

ツバキ? サザンカ?

Camellia japonica
撮影者:BotBin
撮影日:2007.12.27
オリジナルからの改変、なし

和名 ヤブツバキ(藪椿)
別名 ツバキ(椿)
別名 ヤマツバキ(山椿)
ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia
学名 Camellia japonica
英名 Japanese camellia
原産 日本、朝鮮半島、中国

これも、日本固有種ではありません。では、なぜ japonica か。

ヤブツバキの場合は、エンゲルベルト・ケンペル(1651-1716)が日本にいる時に、この植物について書き示したからです。(この情報は、Wikipedia英語版から得ました。)

Camellia japonica(英文+画像)

エンゲルベルト・ケンペル

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「ジャポニカ」なんていう植物

2022年12月20日 08時00分00秒 | バラ科
クサボケ
2006.03.27撮影

冒頭の画像の、ツボミのふくらんでいる植物は、わたしが、日本の花を懐かしく思い、また、この花の色が気に入って、求めたものです。でも、これも、庭の木々が大木に成長して、犠牲になりました。真後ろに葉が見えるチューリップ(Tulipa)も、同様。白いきれいなチューリップだったのよ・・・

あのころはこの庭の一角にもこんなに陽の光が当たっていたんだなあ・・・あのうららかな庭は、もう決して戻ってこない、、、木が市の条例により伐採できないから、、、

フウちゃん、伐採を免れる

冒頭の花は、クサボケ(Chaenomeles japonica)の、多くある園芸種のうちのひとつです。画像中では、まだ花が開ききっていません。「日本の」と学名(japonica)にも英名(Japanese)にも書いてあったので、色が気に入った以上、迷わず買ってきました!

和名 クサボケ(草木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles japonica「日本のボケ」
英名 Japanese quince「日本のボケ」

ボケ
パブリックドメイン

ボケ(Chaenomeles speciosa)は、先に述べたクサボケ(Chaenomeles japonica)とは別種です。

ボケ

和名 ボケ(木瓜)
バラ科(Rosaceae)ボケ属(Chaenomeles
学名 Chaenomeles speciosa「美しいボケ」
英名 Flowering quince「花用のボケ、花ボケ」

ここの英名に使われている flowering は、「花が咲いている」「花が咲く」いう意味(flower という動詞の現在分詞)ではなく、「花咲用の」という意味(同じく動詞 flower の動名詞)です。英語で、Flowering cherry と言えば、「花咲用のサクラ(=花の観賞用サクラ)」であって、Cherry とだけ言えば「サクランボ」「食用のサクランボの木」です。

ボケ
撮影者:Roozitaa
撮影日:2014.04.05
オリジナルからの改変、なし

クサボケとボケは、別種だとは言っても、見かけも似ているし、両者の交配種が園芸種として多く存在するので、区別は難しいか、そもそも、現実的に見て、区別する人は多くはないだろう、と思われます。

種名は「属名+種小名」であり、文脈でわかっている時には、属名を頭文字にして種名を短く表記します。その習慣に従い、以下では、ChaenomelesC. とします。

C. japonica と学名で呼ばれるクサボケは、名称の表す通り、日本原産です。 japonica (種小名なので、小文字で書き始めます)というのが「日本の」という意味です。英語圏では、Japanese quince「日本のボケ」と呼ばれます。

一方、見かけのよく似ている、学名が C. speciosa のボケは、中国が原産です。英語では、Flowering quince「花ボケ」と呼ばれます。

そして、英語圏では、日本原産のクサボケ(C. japonica)も、中国原産のボケ(C. specioosa)も、現代ではやや古風な言い方ではあるものの、共に、Japonica と呼ばれます。園芸関係者が、ボケ属(Chaenomeles)の話をしている時に Japonica と言えば、それは、クサボケ(C. japonica)のことを指しますが。

つまり、英語で Japonica と言えば、ボケ、クサボケ、それらの園芸種、全てをひっくるめて言うわけです。

わたしがカナダに来た時、現在住んでいる所とは別の所のことなんですが、お隣のおじいさんが、うちの庭に前の(いつかはわからない)所有者が植えてあったクサボケを指して、わたしが日本人であることを知って、これ、Japonica って言うんだよ、って、うれしそうに教えてくれたのを覚えています。

そのクサボケが、次の画像にそっくりな花でした。わたしの日本で見慣れていたボケに比べ、トゲが少なく、丈が小ぶりだなあ、と思いました。

クサボケ
撮影者:Hoodedwarbler12
撮影日:2010.04.11
オリジナルからの改変、なし

ところで、もううちには生きていないクサボケ(冒頭の画像)、横へ、横へ、伸びたんですよね。変わったボケだなあ、と思っていたんですが、あれはボケではなくて、クサボケ、つまり「草」ボケだったわけです。クサボケの「クサ」は、丈の小さいことを表すのだそうです。

下の画像で、枝が横へ伸びる様子をご覧ください。これは、冒頭の画像からの切り取りです。

クサボケ
2006.03.27撮影

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女心と、バラの色

2022年09月11日 08時24分43秒 | バラ科
2021.06.04撮影

このツボミは、Rosa × odorata のうちでも、園芸種の 'Mutabilis' のものです。わたしは、このバラを以下のような画像の状態でお初にお目にかかり、こんなバラがあるのか? と三度見しましたよ。根本をしっかり調べました。どう見ても、一株。

そして、原種が好きなわたしは、ラベルに Rosa mutabilis と書かれていた(偽情報)のと、植物屋さんの店員さんが、これは原種です〜〜(ウソつけ)、なんて言うものだから、また、ふらっとなって買ってしまいました。うちの庭はあまり陽が当たらないので、バラは育てたくないんです。でも、この鉢をそこに置いて家に帰ることは、できなかった。
Rosa × odorata - Wikipedia

Rosa × odorata - Wikipedia

 
園芸種でない Rosa × odorata「芳香のバラ」は、中国・雲南省原産で、Rosa gigantea「大きいバラ」と Rosa chinensis「中国バラ」の交配したものだとされています。Rosa × odorata ではなく Rosa odorata と、「×」(交配種であることを示す印)なしで表記することがあるのは、交配が大昔に起こったからでしょうか。

この、Rosa × odorata「芳香のバラ」の親のひとつであるとされる Rosa chinensis「中国バラ」は、のち、多くの「ティーローズ」(お茶の香りのバラ)を生み出す親株となります。

'Mutabilis'(ムタビリス)というのは、英語の mutate と同語源の語で、「変異する」という意味です。花びらの色が変わっていくんです。バラの多くは、花の色が咲き始めと終わりでは変わっていくものですから、それが何か? ともなるんですが、ムタビリスの花の色の変わり方は「え? こんなに?」と思うぐらい。うちのムタビリスを見て、これ、どうかしたの? と聞く人さえいます。

一般的には、黄色からピンクへ、そして、真紅へと変わっていきます。

うちの「変化する気まぐれ」さんの色をお楽しみください。(お見せする花は、同じ個体ではありません。)

まず、薄黄色〜薄ピンクのものから。まだ花が若い証拠に、オシベがしっかりしています。

2019.06.03撮影

そして、黄色地の上に、ピンクの色が増して、オレンジ色がかります。

2021.06.04撮影

次に、赤みがかってきます。ここまでくると、オシベが形を変えています。

2021.06.04撮影

そして、このように赤くなってきます。

2021.06.04撮影

赤さ加減の異なる花の「ツーショット」をどうぞ。

2021.06.04撮影

うちの「気まぐれ」さんは、もっと白っぽい花も咲かせてくれます。

これがかなり白い花。(冒頭のツボミの画像の奥、上の方に、白さが勝った花が見えます。)

2021.06.04撮影

白地に、ピンクが増してきた花。

2019.06.03撮影

うちのムタビリスは、周りの木々が成長して、陽がますます当たりにくくなり、生き延びる策として、それらの木々の上に頭を見せる、ということをしました。足元はかわいそうな状態になっています。わたくし、剪定係としては、今後も上へ伸びるよう仕向けるしかないようです。

以下は、周りの木々から頭を見せて咲いているところ。右手前に白く咲いているのは、コデマリ(小手毬 Spiraea cantoniensis)、左上の葉はレンギョウ(連翹 Forsythia)、右側奥は、上がモミジバフウ(紅葉葉楓 Liquidambar styraciflua)、下がオーク(Quercus)。

2022.06.19撮影

ロサ・ムタビリスは、英語で Butterfly rose「チョウチョウのバラ」と呼ばれることがあります。それは、花びらが一重で大きめでひらひらしているところを、チョウがとまっているのに、たとえたものです。

次の画像(ここでも、背景の葉はレンギョウ)には、ムタビリスの枯れ枝も見えます。陽が比較的当たるところなんですが。剪定係の怠慢です、でも、踏み台に登らないと手が届かないんです。

この画像には、ムタビリスのローズヒップも見えます。まだ緑のが、3つほど。野生種のローズヒップのようには、たわわに実らない。多くの花が受粉するのではないのかもしれません。

2022.09.09撮影


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花より団子、ヒップより花

2022年09月10日 06時29分27秒 | バラ科
2019.06.03撮影

このバラは、わたしは見た途端にお目々が大きくなり、息つく間も自分に与えず、うちにお連れもうしました。全く後悔しておりません。ヒップ(バラの果実)のお陰で、庭のあちこちに広がっています。うちに来る人、来る人、愛でていってくれます。苗は、いろいろな人にさしあげました。

光の当たり具合により、次のような色に見えることもあります。

2021.05.28撮影

花びらの形は、最初の画像(虫がとまっていますが)のように丸目の場合と、次のリンクの一番上の画像のように先がやや尖っている場合と、上の2番目の画像のように花びら全体が細めで間が空いている場合と、などなど、があります。

学名 Rosa glauca (syn. Rosa rubrifolia)
英名 Redleaf rose「赤葉のバラ」
和名 ないもようです

ヨーロッパ原産の原種のバラです。こんなにきれいなバラが原種? わたしは、原種の植物が好きな方なので、原種であることに全く異議はありません。昨日ご紹介したイヌバラ(Rosa canina)も原種です。原種は一般的に丈夫なので、ナマケモノには最適。


また、原種のバラであるおかげで、ローズヒップがいっぱいついてくれます(と、ここで舌なめずりをする)。イヌバラのヒップは、色が、緑→オレンジ→赤、と変わるようですが、今日ご紹介のバラは、緑→銅色→赤、のようです。生育条件により異なると思いますので、確言はできませんが。でも、確かに言えることは、イヌバラのヒップは縦長なのに対し、このバラのヒップはかなり丸みを帯びています。

2021.07.18撮影

2022.08.20撮影

このバラの学名は、以前、Rosa rubrifolia「赤葉のバラ」でした。現在の学名は Rosa glauca「灰緑色のバラ」です。

この glauca というラテン語(英語の glaucous に当たる)の意味は、
⑴ 鈍い灰色っぽい緑、あるいは、青の
⑵ 粉をふいたような艶におおわれた(例えば、ブドウの実の表面)
です。

Rosa glauca は、実際、「灰青っぽい粉のような艶に覆われた」葉です。

でも、葉は、赤っぽい場合もあります。旧名の Rosa rubrifolia「赤い葉のバラ」はそれを表します。英名も Redleaf rose で、「赤葉のバラ」です。

次の画像で、葉の色をご覧ください。

2021.05.25撮影

雨に濡れたところをどうぞ。

2013.06.13撮影

次は、晴れた日の。

2019.06.03撮影

いかがでしょう。好きなバラのリストに入れてくださいました?

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ローズヒップも、ジャムになる

2022年09月09日 10時33分14秒 | バラ科
2021.08.03撮影

この粒々は、ローズヒップです。左のは熟していますが、右のは後少し。ローズヒップとは、バラの果実のことをいいます、特に、野生の(=園芸種でない)バラの実のことを。

ローズヒップは、英語の rose hip で、hip だけでも、バラの果実を指します。人間の体の一部を指す hip とは、語源が異なります。

なぜ今日ローズヒップを取り上げたか、と言うと、昨日の「太平洋ヤマボウシ Cornus nuttallii」の実に続き、収穫の秋だからです。バンクーバーは、昨日、今日、めっきり秋になりました。


ヤマボウシの実は、拾えば食べられます。でも、ローズヒップは、摘んだだけで食べられる人はなかなかいない。う、すっぱい。バンクーバーの秋の雨が始まる前に収穫して、その上に食べられるように処理しないと、食糧にはできません。

今日ご紹介のバラは、バラ属(Rosa)の、イヌバラ(Rosa canina)です。色は、ピンク〜白。うちのは白です。花弁は、バラ科(Rosaceae)共通の5弁(園芸種等を除く)。

学名 Rosa canina「イヌのバラ」
英名 Dog rose「イヌのバラ」
和名 イヌバラ

次の2枚の画像は、花のまだ若いころと、時期がやや進んでからのもの。

2022.06.24撮影

2022.06.18撮影

次の画像では、花のいろいろな段階を見ることができます。硬いツボミは見えませんが、ふくらんだツボミ、咲いている花、花びらの散りたて、ガクが反り返って花托が果実に発達しかけているもの・・・

2021.06.04撮影

次は、まだ緑色のローズヒップ。茶色いオシベがくっついたままなのが見えます。

2021.07.19撮影

そして、ローズヒップが鈴なりになったところが、これ。

2021.07.31撮影

ローズヒップを取り入れる時には、トゲに注意してください。野生のバラのトゲには恐ろしいものがあります。チクッではなく、グサッと来ます〜〜(経験済み)。実の表面にもトゲがあります。

ローズヒップは、甘味料を加えて、煮て、シロップやソースやジャムのようなものにします。どの砂糖類を、どの分量使うかは、好みで。わたしは、贅沢に、ハチミツを使います。

熱を加える前に、ガクとヘタと中のタネを、わたしは小さいナイフで取り除くのですが、先に熱を入れて甘煮したものを、ザルなどに当てて、こす、という人もいます。

ローズヒップはビタミンCが豊富で、人間が食べてソンはありません。しかし、鳥が秋から初春にかけて、このヒップを食料とします。そのことを考えれば、人間がヒップを取ってしまうのは憚られます。また、バンクーバーでは、ローズヒップは雨でダメになってしまいうまで美しいので、庭に残しておくのもいいです。

2021.05.28撮影


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サーモンベリーの実は、いくら?

2022年08月08日 16時42分48秒 | バラ科
2022.04.24撮影

バンクーバーの身近なキイチゴ属(Rubus)の花では、このサーモンベリーの花が一番に咲きます。この花が咲くと春がやってきた、と感じます。地域や気温により前後しますが、だいたいは、最初にこのマジェンタの花が下向きに咲き、次に指貫ベリーの白く大きめの花が茎の頭にゆらゆらと咲き、最後にブラックベリーの花が上向きに密集してイヤというほど開きます。そうすると、ハチが大忙しになります。

指貫ベリーの実は、唇でそっと

ブラックベリーにはトゲがあったのだ

サーモンベリーは、学名 Rubus spectabilis「目を見張る(壮観な)キイチゴ」で、これは、この鮮やかな花の色からきているものと思われます。日本固有のバニバナイチゴ(Rubus vernus)とは、花の色も、葉の形状も、実の様子も似ていますが、別種とされます。

Rubus spectabilis(英文)

ベニバナイチゴ

英名(salmonberry)ですが、salmon は魚の「サケ」です。サーモンベリーがなぜサーモンベリーと呼ばれるか、というと、花の色をサケの身の色に見立てたのかな、と思うかもしれませんが、そうではなく、サケの卵(イクラ)の半透明の赤い色とぷつぷつした形と並びを、サーモンベリーの実に例えたのです。

イクラ

サーモンベリーの実

わたしは、サーモンベリーの実って美味しくない、と思っていたんですが、そういう話をしていたら、いやいや、美味しいよ、と言う人がいて、調べてみると、サーモンベリーの実の味は、当たり外れが大きそうなんです。いずれの日にか、そういう美味しいのに出会えますように。

サーモンベリーの茎は、赤っぽいことがあります。そして、葉は、特徴的に、ダンボールの中央の波状の部分のような段々がついていて、そのためか、アメリカ原住民の人々が、現代で言うところのペーパータオル、あるいは、テーブルナプキン、のように使ったそうです。今度ピクニックに出かけたら、野や山に自生しているので試してみます。あ、うちの庭にもあるんだった・・・


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指貫(ゆびぬき)ベリーの実は、唇でそっと

2022年08月07日 08時49分01秒 | バラ科
2021.05.14撮影

指貫(ゆびぬき)ベリー、という見慣れない言い方を使いました。理由は、和名は、多分、ないからです。それで、英名 thimbleberry を訳しました。

英名の thimble というのは、お裁縫をするときの「指貫」です。もちろん、英名を単にカタカナにして「シンブルベリー」とすることはできたのですが、「シンブル」では日本人には意味がわからないし、「th」の音を「sh」の音に変えるのは、英語を常用するわたしには忍びなかったのです。

この「指貫」、ベリーの形を言い得て妙なのです。それで、thimble の部分は、日本語に訳すのが適切だ、と判断しました。

ただ、これは、西洋の「指貫」です。その「指貫」の、表面がぶつぶつとなっているのと、全体の盛り上がりにご注目ください。西洋の指貫と日本の指貫は、形が異なり、よって、装備の仕方も異なりますが、ぶつぶつの部分は、同じようにぶつぶつです。

西洋の thimble(指貫)の例の画像は、以下でどうぞ。

次に、指貫ベリーの真っ赤なベリーをご覧ください。まだ赤くないのは、熟れていません。

thimbleberry(指貫ベリー)の実の画像は、以下で。

ベリーの大きさは、径が1.5センチぐらいです。これをどう食べるか、というと、指を使うなら、そうっとつまんで、花托からはがすようようにして掌に取り、そのまま口を掌に近づけて(掌を口に近づけて、というよりも)食べます。

もっといい食べ方は、指を使わない方法です。なぜなら、指を使うとベリーをバラバラにする恐れがありますから。原始的ではありますが、口をそのものをベリーのなっているところへ近づけ、ベリーを唇ではがすように食べるのです。

指貫ベリーこのように可食部分がもろいので、商業ベースには乗っていません。よって、知る人ぞ知る、でしかないベリーなんです。

花托を図示したものを載せます。
指貫ベリーは、甘さと酸っぱさが最高なバランスで混じった味で、一度食べれば忘れられないぐらい。わたしは毎年このベリーが庭でなってくれるのを楽しみにしていて、熟したのから順番に唇を使って食べます。そうたくさんはできないのです、ブラックベリーなんかと比べると。

学名は、変なんですよ。Rubus parviflorusRubus は属名ですが、parviflorus はどう考えても、変じゃ? これ、「小さい花」という意味だと思うんですよ。でも、指貫ベリーの花は、2〜6センチもあり、ブラックベリーなどの花より大きいです。大きく、花びらが、風に揺られて、ひらひらするぐらいです。それとも、ベリーの粒々が小さい、という意味?? 何かわたしが誤解をしているのかもしれません。

葉っぱは、5つに分かれたカエデのような形で、大きいのは20センチほどにもなります。柔らかく、色は黄緑色に近いです。姿の美しい植物で、庭のおおっておきたい部分に植えておくには最適。他の植物と葉の触感と色が異なるので、庭の景観に変化をつけるのにもいいです。冬には落葉しますが、春にはきれいな葉っぱのついた茎を伸ばしてくれます。その後、美しい花が続き、おいしいベリーもできる、という最高の植物です。

thimbleberry(指貫ベリー)の葉の画像は、以下でどうぞ。


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