カラスといちごとクロッカスと

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個人の目をとおしてお届けします。

オカトラノオ、期待したようには

2023年10月06日 08時00分00秒 | サクラソウ科

2020.07.26撮影

オカトラノオ(Lysimachia clethroides)です。花房が、なでなでしたいぐらいに見事ですね。

学名 Lysimachia clethroides
和名 オカトラノオ(丘虎の尾)
英名 Gooseneck loosestrife「雁の首の(形の)ミソハギ」
サクラソウ科(Primulaceae)オカトラノオ属(Lysimachia


でも、こやつは、生命力旺盛で、庭中出かけて行って、延々と陣地を広げていく。その癖、元いたところはハゲチョロンにしてオサラバよ、という習性を持つ。おや、あそこにあったオカトラノオは、どこへ行った? と見てみると、数メートル離れたところで、のうのうとしている。

美しい顔(かんばせ)して、こういうことするのよ。庭の管理人は、オカトラノオは愛でながらも、格闘を続けることになる。

ところが、その元気一杯のオカトラノさんに去年ごろから異変が起きた。花房が小さい。今年のは、もっと小さい。次の画像は、今年の花房。これは、撮影の角度の関係で短く見えるのではなく、本当にこんなにちょん切れているの。

2023.07.26撮影

これでは、「虎の尾」にならんでしょうが。「短尾の日本ネコの尾」ぐらいかな。なんて、冗談っぽく言っていますが、実は、心配しています。これは、この植物が、うちの庭では消え込んでいく前兆なのか?

本当に、わたしはどうすればいいのか。


2020.07.26撮影

直前の画像は、うちの日陰の庭で美しく咲き誇っていたころのオカトラノオの一部です。このころは、増えすぎて、抜きまくっていたのよね。お友だちにあげたり。

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ジュウリョウ

2023年01月07日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia japonica(ヤブコウジ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2016.10.30
オリジナルからの改変、なし

ヒャクリョウ(Ardisia crispa)、センリョウ(Sarcandra glabra)、マンリョウ(Ardisia crenata)、にさらに加え、ジュウリョウ(Ardisia japonica)という植物もあります。

ヒャクリョウ(百両)は「カラ」タチバナ(唐橘)のことでしたが、

ジュウリョウ(十両)はヤブコウジ(藪柑子)のことで、
ヤブコウジ(藪柑子)は「ヤブ」タチバナ(藪橘)、
あるいは、「ヤマ」タチバナ(山橘)とも呼ばれます。

「ヤブ」タチバナ(藪橘)という名称は、マンリョウ(万両)の別名でもあります。

和名 ヤブコウジ(藪柑子)
別名 ヤブタチバナ(藪橘)・・・マンリョウの別名、でもある
別名 ヤマタチバナ(山橘)
別名 ジュウリョウ(十両)
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia japonica
英名 Marlberry
原産 中国大陸、朝鮮半島、台湾、日本

ヤブコウジ

ここまでに出てきた「〜リョウ」という名前の植物では、マンリョウ(Ardisia crenata)だけが別系統で、ジュウリョウ(ヤブコウジ、ヤマタチバナ)、ヒャクリョウ(カラタチバナ)、センリョウ、は、全て、サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia)です。

以下は、ヤブコウジ(ジュウリョウ)の花とツボミです。ヒャクリョウ(カラタチバナ)とセンリョウの花に似ている、と言ってもいいでしょうか。

ヤブコウジ(Ardisia japonica
撮影者:Alpsdake
撮影日:2016.07.02
オリジナルからの改変、なし

わたしは、去年まで、ヤブコウジだ、と思って育てていた植物があります。ほんの1株だったのが、あたり一面に広がり、他の植物を圧倒していたので、これは、なんとかしなければ、やっぱり秋口に掘り起こそか、と真夏に眺めていたんです。

その時、下のように花が咲いていました。(やっと、手持ちの画像が使えました。)

2021.08.05撮影

これを見てわたしは、その時まで気づかなかったのに、この花はエリカ系の花ではないのか、と思いました。でも、これはヤブコウジである、と思いこんでいたわたしは、その時は、この疑惑を、それきりで忘れたんです。でも、後にブログでサラール(Gaultheria shallon)についての記事を書いている時に、ついに真実がわかってしまった!

かわいい、ハートの、シラタマノキ

このわたしがヤブコウジだと思っていた植物は、ヤブコウジではなく、ヒメコウジであり、分類は、エリカ系だと思った通り、ツツジ科(Ericaceae)で、その下位分類は、サラールと同じくシラタマノキ属(Gaultheria)でした。

和名 ヒメコウジ(姫柑子)
ツツジ科(Ericaceae)シラタマノキ属(Gaultheria
学名 Gaultheria procumbens
英名 American wintergreen「アメリカの冬緑」(他の名称もあり)

次の画像は、このヒメコウジの赤い果実です。「シラタマ」ノキ属ですが、赤い実です。

2021.02.08撮影

これで知らずにいた誤解が解けてよかったのですが、ヤブコウジではなかった、というので、気落ちしました。ヤブコウジだと思って意気揚々と求めたものだったからです。でも、植物が何であれ、冬に緑の葉を保ち、赤い実をつけてくれるのは、うれしいことです。

それと、まあ、間違っても仕方なかったかな、という言い訳は、ヒメコウジがヒメ「コウジ」と名付けられている以上、ヤブ「コウジ」との関連を感じる人もいる、ということだと思います。

上の画像中、ヒメコウジの葉の上に出ている6枚の小葉のある葉は、クルマバソウ(Galium odoratum)のものです。この葉も、冬の間中、緑でいてくれます。

クルマバソウ:グランドカバー ⑵

同じく画像中、向こう側には、大きめの石が置かれています。その手前の方に紅色のツボミがふたつ、みっつつうなだれていますが、これは、ヘレボルス・オリエンタリス(Helleborus orientalis)のツボミです。ヘレボルスについては、2月に書いてみようと思います。

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ヒャクリョウ

2023年01月06日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia crispa(カラタチバナ、ヒャクリョウ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

センリョウ(Sarcandra glabra)、マンリョウ(Ardisia crenata)、に加え、ヒャクリョウ(Ardisia crispa)、と呼ばれる植物もあります。カラタチバナのことです。

和名 カラタチバナ(唐橘)
別名 ヒャクリョウ(百両)
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia crispa
英名 Japanese holly「日本のセイヨウヒイラギ」
原産 中国大陸、台湾、日本(福島県、新潟県以西)

カラタチバナ

ヒャクリョウ(百両)、センリョウ(千両)、マンリョウ(万両)、の中では、系統の分類は、次のようになります。

センリョウ科(Chloranthaceae)センリョウ属(Sarcandra
・センリョウ(千両)

サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
・ヒャクリョウ(百両)
・マンリョウ(万両)

ヒャクリョウ(Ardisia crispa)とマンリョウ(Ardisia crenata)が、同科(Primulaceae)同属(Ardisia)というのは、花を比べてみればわかるだろう(というのが、素人の考えることですが)。

ハナタチバナ(ヒャクリョウ)の花(Ardisia crispa
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

上の画像では、カラタチバナ(ヒャクリョウ)の花は、右端上の花だけが開いています。あとはみんなツボミです。この花房を、「樹げむ樹げむのTree World」というサイトの上から3番目の画像との花房とお比べくさい。

マンリョウ
「樹げむ樹げむのTree World」から

ヒャクリョウとマンリョウの花は大変似ている、と言っていいと思います。なんか、ナス科(Solanum)の植物の花に似ている、と思うのは、わたしだけでしょうか・・・

それにしても、カラタチバナ(ヒャクリョウ)は、なぜ「唐橘」と呼ばれるのでしょうか。「唐」は中国の王朝名、「橘」は柑橘類のタチバナです。カラタチバナ(ヒャクリョウ)は、日本も中国も原産地なので、カラタチバナ(ヒャクリョウ)を「中国の」と呼ぶ必要はありませんよね。カラタチバナ(ヒャクリョウ)の花が「タチバナ」の花に似ている??

これを見るために、タチバナ(ヤマトタチバナ)の花と比べてみることにしました。

和名 タチバナ(橘)
別名 ヤマトタチバナ(大和橘)
別名 ニッポンタチバナ(日本橘)
ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus
学名 Citrus tachibana
英名 Tachibana orange「タチバナオレンジ」
原産 日本固有

ヤマトタチバナの花
パブリックドメイン

タチバナ(ヤマトタチバナ)とカラタチバナ(ヒャクリョウ)は姿も果実も全く異なるので、仮に花がやや似ていた(似ていますか?)にしても、カラタチバナを「カラ」タチバナと呼ぶ理由はないと思うのですが・・・

Ardisia crispa(カラタチバナ、ヒャクリョウ)
撮影者:Qwert1234
撮影日:2017.11.18
オリジナルからの改変、なし

昨日、マンリョウの世界的な分布を地図でご覧いただきました。マンリョウが外来植物として被害を与えているなら、近縁種のヒャクリョウはどうでしょう。同じくイギリスの王立植物園キュー・ガーデンズのサイトへ行ってきました。

Ardisia crispa(地図)

外来種として大きく影響を受けているのは、主に、オーストラリアのクイーンズランド州だけのようです。なぜアメリカにまで広がらなかったか、は、アメリカではより小型のカラタチバナ(ヒャクリョウ)は、園芸植物として、それほど需要がなかったのかもしれません。

以下は、著作権の切れているカラタチバナのスケッチです。葉っぱの出方が、センリョウ(Sarcandra glabra)の2段重ねで十字形になるのとは、随分違いますね。

Ardisia crispa
パブリックドメイン(1927.01.01よりも前に出版された作品)

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マンリョウ

2023年01月05日 08時00分00秒 | サクラソウ科
Ardisia crenata
パブリックドメイン

昨日のセンリョウ(Sarcandra glabra)に続き、今日は、マンリョウ(Ardisia crenata)です。

和名 マンリョウ(万両)
別名 アカギ
別名 ヤブタチバナ
サクラソウ科(Primulaceae)ヤブコウジ属(Ardisia
学名 Ardisia crenata
英名 Christmas berry「クリスマスのベリー」
別名 Coralberry「珊瑚のベリー」
原産 インド、東アジア、日本(関東以南)

マンリョウ

センリョウとマンリョウは、「センリョウ、マンリョウ」と並べて称され、両者とも赤い果実が美しく、同じように庭に植えられ、また、同じように正月の縁起物とされる常緑の小低木ですが、両者には近縁関係はありません。

センリョウはセンリョウ科(Chloranthaceae)、マンリョウはサクラソウ科(Primulaceae)です。

マンリョウの属するサクラソウ科、って、え? この植物が? と思うような植物がザクザクと入っている科です。例えば、オカトラノオ(Lysimachia clethroides)、シクラメン(Cyclamen persicum)、、、まあ、よく見てみれば、似ているのかな、似ていないのかな。

オカトラノオと、トラノオ一族たち

そんなら、マンリョウの花を見てみましょう。(花で比べればいいんじゃ?、というのが、素人の知恵です。)

花(マンリョウ)
撮影者:KENPEI
撮影日:2006.07.22
オリジナルからの改変、なし

この画像ではわかりにくいですが、このマンリョウの花、サクラソウに似てます? シクラメンは?

センリョウとマンリョウに戻ると、センリョウとマンリョウの差異点については、多くの方が語っていらっしゃいますから、ここでは、見た目ではっきりわかることだけを、念のために、記しておきます。果実が、センリョウは上を向いている、マンリョウは下を向いている。

Ardisia crenata(マンリョウ)
パブリックドメイン

マンリョウの原産地がインドにまで及ぶことを知り、興味深く思いました。それで、世界的な分布を調べてみることにしました。イギリスの王立植物園キュー・ガーデンズのサイトで、以下の地図を見つけました。どうか、ご覧ください。地図は、画面を横に拡大すると、全世界が見えます。

緑の部分が原産地、赤紫っぽい色の部分が導入され野生化している地域です。アメリカのフロリダ州やテキサス州、オーストラリアのクイーンズランド州で野生化していることがわかります。なぜそれらの地に導入されたのかは、わたしにはわかりません。

Ardisia crenata subsp. crenata(地図)

さて、この導入地のひとつ、フロリダ州には法律があって、マンリョウを栽培してはいけない、と熱っぽく語っています。繁殖しまくって、他の植物が駆逐されてしまい、生態系を乱しているのだそうです。外来種って、どこも同じですね。

以下は、フロリダ大学の博物館のサイトからの啓蒙記事です。5点を挙げています。

Five Facts about coral ardisia in Florida(英文+画像)

1.美しい厄介者である
2.元は、東南アジアから園芸植物として導入された
3.(英語では)名称がたくさんある
4.鳥が拡散を媒介する、生命力旺盛である
5.フロリダでは栽培するのは違法である

木立したマンリョウ
撮影者:Forest & Kim Starr
撮影日:1998.05.29
オリジナルからの改変、なし

上の画像では、赤い果実が前年より残ったままで、すでにツボミがついているようです。

次のリンク先の記事には
> 花の後にできる果実は(中略)でき始めは開花期と重なり、
> 花と実を同時に見るこができるが緑色。
と書かれていました。

庭木図鑑
植木ペディア
マンリョウ/まんりょう/万両

さらには、以下の記事などもどうぞ。

BOTANICA
マンリョウの育て方!見映えのよい樹形を長く保つ管理のポイント | 植物図鑑

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オカトラノオ家の変わり者、ルリハコベ

2022年09月06日 06時19分26秒 | サクラソウ科
2013.08.20撮影

この青い色が、わたしには、なんとも言えません。

これ、
・「白いトラの尻尾の」オカトラノオ(丘虎の尾 Lysimachia clethroides
と、黄色いオカトラノオ家3姉妹の
・「大きい黄色のミソハギ」(Lysimachia punctata
・「ふさ毛のついた黄色のミソハギ」(Lysimachia ciliata
・コバンコナスビ(小判小茄子 Lysimachia nummularia
の兄弟分なんです。



この真っ青な花、ルリハコベ(瑠璃繁縷 Lysimachia monelli)は、ハコベ(ハコベ属 Stellaria)に似た葉っぱと習性で瑠璃色の花が咲く、という命名でしょう。

ルリハコベは、現在、日本では、古い学名からアナガリス(Anagallis)という名称で流通しているようです。でも、なぜルリハコベと呼ばない? あるいは、呼べない? ルリハコベで何か不都合が? 「アナガリス」と打とうと思ったら「アナがリス」と出た。うわあ〜〜。

ルリハコベは、地上の低いあたりで横に向けてタラタラと伸びていきます。でも、茎の先は上に向けたままです。その点、姉さん分のコバンコナスビ(Lysimachia nummularia)が土にひっついて成長するのと異なります。

2020.09.17撮影

わたしは、植物をタネから育てるのはあまり好きじゃないんです(要するに、ナマケモノ)。でも、ルリハコベは、タネの袋に印刷された花の美しさにひかれ、購入しました。ルリハコベはバンクーバーでは冬越ししないよ、と言われていたころです。そして、気象条件により、消えたこともあります。でも、そういう時には、タネを畑にさらにパラパラと。するのは、それだけ。

バンクーバーでルリハコベが咲くのは、夏の終わりから初秋にかけてです。もっと暖かいところでは、晩秋から初冬に咲くそうです。耐寒温度区分では、ルリハコベは「8b-10b」(8b, 9a, 9b, 10a, 10b)。バンクーバーが、温暖化により、大体で言って「7b」から「8b」に変わったので、ルリハコベが育てやすくなったわけです。多年草ですが、生育条件の整わないところでは、一年草として育てることになります。

オカトラノオ属(Lysimachia)は、 サクラソウ科(桜草科 Primulaceae)に分類されます。これがサクラソウ科? と不思議なんですが、次の、サクラソウ科の、園芸種ではありますが、プリムラ・ジュリアン(Primula x juliana)なんかを見てみると、そうか・・・とも思ってしまいます。下の画像の葉は、右側のだけがプリムラの葉で、下と左のはフウロソウ属(風露草属 Geranium)のものです。

2014.03.24撮影

ルリハコベは、一見、アメリカン・ブルーに似ているか、と思いました。もちろん、花の作りが違いますが、色で目を引かれると、ハッとしてしまいます。アメリカン・ブルーは、ヒルガオ科(昼顔科 Convolvulaceae)アサガオガラクサ属(朝顔柄草属 Evolvulus)の園芸品種「ブルー・デイズ 'Blue Daze'」の、日本での流通名です。園芸品種名の 'daze'(英語)というのは、「目をくらませられた状態」。

アメリカン・ブルーの耐寒温度区分は「9-10」で、「8a, 8b, 9a」のバンクーバーで育てるのは厳しいです。夏の間だけの一年草として扱うか、あるいは、海岸沿いの暖かい「9a」の地域でなら、多年草として可能かもしれません。
エボルブルス属 - Wikipedia

エボルブルス属 - Wikipedia

 
光線の具合で、ルリハコベは次のような色にも見えます。

2020.09.17撮影


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オカトラノオ家の、黄色い姉妹たち

2022年09月04日 08時18分38秒 | サクラソウ科
2022.06.24撮影

この黄色い5弁の、真ん中がちょっと紅色っぽい花(Lysimachia punctata)は、昨日の記事で話題にしました、オカトラノオ(Lysimachia clethroides)の兄弟分です。黄色いので、勝手に「姉妹」としておきました。


Lysimachia punctata には和名はないもようです。英名は、Large yellow loosestrife「大きい黄色のミソハギ」。でも、これはミソハギ属(禊萩 Lythrum)の植物ではありません。見かけなどからの、科学的ではない命名は、ごく普通にあるものです。

「大きい黄色のミソハギ」は、すっと1.2メートルほどに伸びます。茎は、しっかりとしていますが、季節が進むと個体によっては倒れることもあります。葉が茎に対して輪生するのが特徴です。その葉の上に、短い花茎を出して花が咲きます。

地下茎で伸びていきます。オカトラノオ(Lysimachia clethroides)のようには引っ越しはしない代わりに、生えている土地をぎしぎしにします。「管理者」のわたしとしては、いかに個体数を減らすか、ということに苦慮します。

花期は長く、花が多く開くと、次のようになります。でも、一度に咲くのではなく、花が1個1個咲いていた形のままで落ちては、次々とツボミが開きます。

2021.06.21撮影

花が終わった後の8月終わりから9月始めの様子が、以下になります。花がなくても美しい姿の植物です。切花としてよく持つので、わたしは、花が終わっていても、この茎と葉を利用します。実は、花のない方が花材としては扱いやすいんです。花が咲いている時には、個々の花が終わるに従ってパラパラと落ちてくるので。

2022.8.22撮影

次の「黄色い姉妹」(Lysimachia ciliata)も茎がすっと伸びる植物です。茎が細く、花が咲くと全草が倒れかけになることもあります。そのため、以下の画像では、花は、ほとんど裏側しか見えません。

2021.07.10撮影

こちらの花も、「大きい黄色のミソハギ」とそっくりですが、花弁の先の方がちょっと丸めです、と言うか、「大きい」の方が、先が細まっています。次のふたつの画像でお見比べください。



Lysimachia ciliata にも、和名はないもようです。英名は、Fringed yellow loosestrife「ふさ毛のついた黄色のミソハギ」。「ふさ毛(フリンジ)」って、何??? と思い調べてみると、葉茎に毛がついている(そんなとこまで、普通、見てないよね)・・・というので、実際に庭に出て、下の方から葉を1枚取ってきて、撮影しました。それが、次の画像。

2022.09.03撮影

デジカメ、フラッシュなしの撮影ですが、毛が見えました。

「ふさ毛のついた黄色のミソハギ」は、「大きい黄色のミソハギ」ほど生命力が高くなく、いつも消え込まないかヒヤヒヤしているぐらいです。今年はちゃんと咲いてくれました。花期は長くありません。

本日の「オカトラノオ家の、黄色い姉妹たち」の最後にお見せするのは、和名のある花です。花の形は、直立型の「大きい」姉妹や「ふさ毛の」姉妹のようなやや平たい花ではなく、ややカップ型。

2021.06.21撮影

コバンコナスビ(小判小茄子 Lysimachia nummularia)なんですが、これは、土地を、はいます。英名は、Creeping Jenny「(土地を)はうジェニー(女性の名前)」。そして、オカトラノオ一家(Lysimachia)の例に漏れず、しっかりと繁殖してくれます。「グランドカバー」として大変有用です。常緑というのも、魅力的です。ただし、他の植物にかぶさっていくことがあるので、庭づくりには注意が必要です。

動植物の「二名法」は、種名を「属名(氏に当たる)+種小名(名に当たる)」で表す、ということですが、和名の場合、属名と、その属の「代表的な」植物が同名であることがかなりあります。
・オカトラノオ属(Lysimachia)のオカトラノオ(Lysimachia clethroides
・スミレ属(Viola)のスミレ(Viola mandshurica
・ヤグルマソウ属(Rodgersia)のヤグルマソウ(Rodgersia podophylla

学名を使えば問題はないのですが、学名を使うのに慣れている人ばかりではありません。そんなときに「オカトラノオ」と言えば、それは、属のことを言っているのか、種(しゅ)のことを言っているのか、分かりにくい時があるのではないかと思います。どうすればいいでしょう。

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オカトラノオと、トラノオ一族たち

2022年09月03日 08時02分14秒 | サクラソウ科
2020.07.26撮影

これは、オカトラノオ(丘虎の尾 Lysimachia clethroides)です。小さい花がたくさん集まって房状に咲くのを「虎の尾」にたとえたものです。でも、この房は、「虎の尾」と言うより、「狸の尾」の方が近いと思うけど、「タヌキ」では気品がつかない、と言うのでしょうか。

タヌキ(Nyctereutes procyonoides)さんたちについてのおもしろいサイトがありましたので、ご紹介します。「東京タヌキ探検隊!」という、微笑みを誘うサイト名で、個人の方の経営ですが、たいへん真面目な研究です。

タヌキ? それともハクビシン? アライグマ?

タヌキさんのふさふさ尻尾を、ロープみたいなトラさんの尻尾と比べてみてください。

シベリアトラ(Panthera tigris altaica)

オカトラノオは、次のような感じで花が開いていきます。まず、茎に近い方が白く膨らんできます。この時点で、すでに房が垂れ下がりかけているのと、画像のように房が垂れ下がっていないのがあります。

2021.06.31撮影

次の画像の左側の背景にある花房3つは、ツボミの膨らみ具合が進んだもので、垂れ下がり方が大きくなってきます。画像中央の房は、茎に近い方(視覚的には「上」の方)が開花して、その部分が「狸の尻尾」に変化し始めます。

2021.07.08撮影

次のようになると、もう立派な尻尾の出来上がりです。

2020.07.26撮影

房の8割がたの花が開いたのを、斜め上から撮ったのが次の画像。花は、真っ白ではなく、オシベとメシベがピンクがかっています。英名 Gooseneck loosestrife で言うところの gooseneck「ガチョウの首」と言うのが、うなずけます。

2021.07.25撮影

「トラノオ」と名前につく植物は、かなりあります。

まず、オカトラノオ(Lysimachia clethroides)の属するサクラソウ科(Primulaceae)オカトラノオ属(Lysimachia)から拾うと、「丘」「沼」「沢」「野地」のように、生育しやすい地を表すと思われる修辞がつくのが多いようです。

* サクラソウ科(Primulaceae)オカトラノオ属(Lysimachia)
・オカトラノオ(丘虎の尾 Lysimachia clethroides)
・ヌマトラノオ(沼虎の尾 Lysimachia fortunei)
・サワトラノオ(沢虎の尾 Lysimachia leucantha)
・ノジトラノオ(野路虎の尾 Lysimachia barystachys)

次に、オオバコ科(Plantaginaceae)ルリトラノオ属(Veronica)。日本では、別名の「ニセオカトラノオ属」とも訳せる Pseudolysimachion で通っていることも多いようです。流通名は、ベロニカ。

* オオバコ科(Plantaginaceae)ルリトラノオ属(Veronica)
・ルリトラノオ(瑠璃虎の尾 Veronica subsessile)
・ハマトラノオ(浜虎の尾 Veronica sieboldianum)

ベロニカの「ハマ」トラノオと名前を読み違えそうな「ハナ」トラノオという花もあります。

* シソ科(Lamiaceae)ハナトラノオ属(Physostegia)
・ハナトラノオ(花虎の尾 Physostegia virginiana)別名、カクトラノオ(角虎の尾)

さらに、お互いに血縁関係のないこれら「トラノオ一族」には、タデ科(Polygonaceae)のイブキトラノオ属(Bistorta)の花々もあります。

* タデ科(Polygonaceae)イブキトラノオ属(Bistorta)
・イブキトラノオ(Bistorta officinalis)
・ハルトラノオ(Bistorta tenuicaulis )

「ハル」トラノオというのもあるんですね。

その他、挙げると、
・海藻のウミトラノオ(海虎の尾 Sargassum thunbergii)
・シダのトキワトラノオ(常磐虎の尾 Asplenium pekinense)
・観葉植物の流通名「トラノオ」(虎の尾 Dracaena trifasciata)

観葉植物の「トラノオ」は、葉に縞々が出ているのが命名の由来。別名、サンセベリア、あるいは、サンスベリア。

Dracaena trifasciata (旧学名 Sansevieria trifasciata)(画像)

以下は、オカトラノオが群れて茂っているところです。花は、2ヶ月以上咲いています。オカトラノオは、もと植えられたところからご自分で引っ越ししながら増えていきますので、植物を植えたところに管理しておきたい方は、お気をつけて。この群れも、この画像の左側の位置から、2メートルほどお引っ越しなさいました、20年ほどかけて、ですが。


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