78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎4年前に書いていた小説の続きを募集してみる

2013-02-02 11:10:34 | ある少女の物語
『桜の舞う頃に・・・』を完成させたのが4年前。
当時、当方は調子に乗って2作目を執筆していたのだが、途中で話が浮かばなくなり未完のまま今に至る。
USBメモリに残っていたので、勿体ないので載せてみる。

簡単に言うと高校(高専)のファッション研究部を舞台にした物語。
テーマは良い気がしたのだが、私服のセンスが絶望的な当方にはハードルが高すぎた。

そこで「続き」を募集します。
HNを明記の上miracle_believe32◎excite.co.jp(◎=@)まで。
ちょっとしたアイデア提供も大歓迎(コメント欄にて)。
下記文章はいくらでも改変可。
あるいは同じ題材で冒頭から作り変えちゃってもOK。
とにかく皆様の力をお貸し下さい。当方には限界です。

※下記作品の無断転載や、完成作品の無断UPはご遠慮下さい。全ては当方に事前連絡願います。
※ファッション情報は全て2009年当時のものです。今風に改変可。
※これは「ガチ小説投稿宣言」とは一切関係ありません。そっちは完全新作を執筆します。


それでは未完の本編は↓こちら。


===


『Seventeen(仮題)』


 俺は毎日、学校帰りの電車の中で泣いていた。
 高校生活がこんなにも辛いものだとは思わなかった。イヤ、正確には高校ではなく“高専”である。
 工学系の大学と大差ない厳しさの中で5年間も過ごさなければならず、卒業しても“準学士”という微妙な学位しか貰えない。
 俺は工学系への興味が無かったのにも関わらず高専というものに入ってしまった。数学や化学など理系の授業は難しすぎてとても付いていけず、専門科目もプログラミングや製図、機械実習など、やりたくもないことを無理矢理やらされ怒られる毎日。クラスの学生たちは皆オタク気質でおかしな連中ばかりに思え、友達になれそうな気の合う人は1人もいない。そして何より女子が異常に少ないことがモチベーションを極限まで下げていた。
 俺の思い描いていた高校生活とは全く違う。入学して1ヶ月、早くも俺はこの学校を続ける意欲が無くなっていた。もう辞めてしまいたい。高校受験からやり直したい。

 日曜日の夜、絶望に満ち溢れていた俺は、駅前のロータリーを歩いていた。すると、
「人生に、疲れましたか?」
 突然聞こえてきたその言葉で俺は立ち止まった。アコースティックギターを肩にかけた女性が、歩く人々に語りかけていたのだ。
「もっと肩の力を抜いてみてはいかがですか? 嵐のように過ぎゆく時に流されながらも、あなたは一本の道を歩き続けてきたのです。本当にお疲れ様です。でも、そろそろ立ち止まってみてはいかがですか?」
 公衆の面前でよくそんな臭い台詞を吐けるなあ、と心の中で突っ込むのを忘れさせるほどの衝撃があった。この女性は公立高校の制服を着ており、ある程度焼かれた顔に茶髪、そしてルーズソックスというギャル風の小娘だったのだ。
「それでは最後の曲になりました。お聴き下さい、『Gloomy girl』」
 ギターで弾き語りをする小娘。ギャルとは見た目だけで、清楚な口調と言葉使い、そして春風のように優しい歌声が何よりも印象的だった。
「ありがとうございました、ミホでした」

 翌日の放課後、俺は足早にサークル棟へと向かっていた。軽音部を見学するためである。
 理屈なんて無かった。ただ、ギターを弾けるようになれば何かが変わるかもしれないと昨日の小娘を見て思ったのだ。しかし、
「自分で楽器を持っている人じゃなきゃ入部できなくて、無い人は自腹で買ってもらうことになっているんだ。悪いけど、部員が皆本気だからそれぐらいやる気のある人じゃないと困る」
 厳しい入部条件だった。俺はギターどころか楽器を何も持っていなければ演奏経験も全く無いし、貯金も無い。どう考えても軽音部は諦めるしかないと思い、部室を出たその時だった。
(!!!)
 廊下を歩く一人の少女。可愛い。少女のワッペンの色は2年生のものだった。学年は違うが、少女とは校内で時々すれ違っており、その度に胸の鼓動が治まらなかった。一目惚れだった。
 どの部室へ向かうのだろうか。俺は少女に気づかれない距離で後をつけた。そして入ったのは“ファッション研究部”と書かれた部室。
俺はこの部への入部を決意した。少女がいるのならどんなサークルでもいい。少女と一緒にいれば何かが変わる気がした。泣いてばかりの毎日に終止符を打ちたかった。

 しかし、入部初日からファッション研究部の厳しさを痛感させられることとなった。
「ハイ、3万円。これで帽子から靴までトータルコーデしなさい」
 部長の今野明美から早くも指令が出される。
「コーディネート、ですか?」
「来月の中旬に定期ファッションショーを開くんだけど、見学に来た日に紹介した3人のモデルいたでしょ? 滝口と水島と野田のことね。ファッションショーでその3人の誰かに着せる服を買うのよ。期限は来週の火曜までね」
 そのうちの一人、水島詩織が少女の名前だった。少女はこの部ではモデルだったのだ。
「でも、どうやって服を選ぶんですか?」
「それは自分で考えなさい。これは教えたら意味ないのよ、考えることが大事だから」
「入部早々そんなこと言われましても……」
「あのね、本当はこの部に男なんて必要ないの。ファッションショーも男はモデルにならずに裏方に回るだけなんだから。だからせめて服のセンスは持ってもらわないと話にならないのよ」
 そんなことを言われても、俺は今まで自分の服にすら興味を抱いたことがなく、持っている私服はダサいものばかりなのに、ましてや女の子のコーディネートなど出来るわけが無い。しかし、
「頑張って下さいね、秋本君」
少女に可愛い服を着せてあげたい。少女のためなら頑張れるような気がした。
「ハ、ハイ、了解しました!」

 その2日後には部会が開かれ、そこでも部長は厳しかった。
「野田、あんたウエスト3.5センチオーバー。ちゃんと毎日1万歩歩いてるの?」
「最近測ってないので分からないですぅ」
「万歩計持ち歩きなさいって言っているでしょ? まあいいや。今日からちゃんと1日1万歩ね。あと来月の10日までにブートキャンプ4周とターボジャム2周しなさい」
「エー、またビリーですかぁ? もう飽きましたぁ」
「つべこべ言わずにやりなさい。OL部門のモデルに相応しい長身体形はあなたしかいないんだから。20代女性向けファッション雑誌4誌の現役モデル計40人のデータから算出した平均身長は167センチ、平均スリーサイズは上から82-58-85センチ。身長は平均値の5センチ前後、スリーサイズは3センチ前後に入らなければファッションショーに出られないって部の決まりがあるのよ」
「分かってますよぉ」

 その2日後は土曜日だったが、俺を含め部員たちは朝から渋谷に集められた。この部は毎週土曜日にストリートファッション調査を行うことになっている。週替わりで渋谷、原宿、銀座、代官山のいずれかへ赴き、街を歩く女性たちのファッションを研究し、レポートにまとめなければならない。
 しかし俺は、女性の顔や胸の谷間についつい視線が行ってしまい、服の着方まで細かくチェックするのは難しいことだった。そして、土曜の渋谷だけあってカップルが異常に多い。俺の前を楽しそうに横切るカップルを見る度に鬱になった。俺は何をやっているのだろうか。一体何がしたいのだろうか。
「秋本君、顔色が悪いですよ? 大丈夫ですか?」
 俺を心配したのか、少女が話しかけてくれた。
「あ、イヤ、あの、大丈夫ですよ。ちょ、ちょっと寝不足で」
 俺は少女の前でだけはいつも緊張のあまりオドオドしていた。
「睡眠はちゃんと取らないと駄目ですよ、秋本君」
「あ、ハイ、すみません……」
「どれくらいノート書けましたか?」
「エーット、まだ3~4行ぐらいです」
「それじゃレポート書けないですよ。ちゃんと書かないと明美先輩にカンカンに怒られます」
「そうなんですか? すごい厳しいですね」
「まあ慣れですよ。私も入部当初は部長や先輩に何度も怒られていました。でも1年も経てば慣れて楽しくなってきますよ、私みたいに」
 優しいのみならず、一つ年上なだけで俺より何倍も大人に見えるところが少女の魅力だった。
「ストリート調査も慣れれば簡単ですよ。よく見ればホラ、ワンピはボーダーが多いし、デニムはショーパンとかケミカルウォッシュのロールアップとか、あと黒のレギンスも結構いますよね」
「え、ケミカルウォッシュ? ロールアップ? レギンス?」
「それぐらいのファッション用語は知っていないとこの部は務まりませんよ?」
「あ、すみません……」
 午後は全員でショップ調査を行った。毎回訪れる行きつけの店に行き、店員にいろいろ質問してトレンドを知ることが目的だった。渋谷のあちらこちらを歩き回り、4時間かけて10軒も回っていた。
 空が赤く染まる頃にようやく終わり、最後に部長が口を開いた。
「来週の火曜は定期ファッションショーに使う服のプレゼンの日よ。まだ服を全く買っていない人はいないと思うけど、火曜までに必ずトータルコーデを完成させること」

 俺はまだ服を全く買っていなかった。少女のためなら頑張れると思っていたが、少女は高校生部門のモデル。今時の女子高生はどんな服を着ているのかがさっぱり解らない。本屋で女性ファッション雑誌を買う勇気が無ければ、レディースの洋服屋に入る勇気はもっと無かった。
結局、ネットの通販サイトで服を探し、速達指定で注文。ギリギリ間に合った。選定のポイントは少女が着たら可愛いかどうか、ただそれだけだった。

 そして火曜日、プレゼンの日は訪れた。他の部員たちにレジュメを配り、購入した服一式を着せたマネキンを使って説明するという本格的な形式だった。
 全員が真剣な面持ちの中、ついに俺のプレゼンが始まった。
「テーマは『初夏の乙女系女子高生』です。女性は高校の制服を着るとより可愛くなるのが相場なので、限りなく高校の制服に似せた私服になるようにコーディネートしました。リーバイスの白のウエスタンシャツは袖を捲し上げてクールさを出し、リボンは王道のピンク、ニットベストは控え目な薄いベージュでリボンを引き立て、スカートは赤のチェック柄のフリルで可愛さをアップ、さらに定番の黒のニーハイソックスで無敵の絶対領域を演出しました。帽子は古き良き麦わらでギャップを出し、靴はシンプルにハルタの黒のコインローファーです。無難であり鉄板でもあるこの正統派乙女系コーデですれ違う男たちを一人残らずメロメロに出来ること間違いないでしょう」
 これが、俺が精一杯考えた少女に着てほしいコーディネートだった。
 全員のプレゼンが終わると、部長と3人のモデル以外は皆廊下に出された。ここからは協議タイムとなる。ファッションショー本番で中学生、高校生、OLの3部門にそれぞれどの部員のコーディネートを採用するのかを彼女たちだけで話し合う。ここで採用されなかった服は無常にも全て古着屋に買い取ってもらわねばならず、買取価格全額を学校に返すことになっている。
 廊下で待っている間、俺はずっと緊張していた。少女のために、少女だけを考えて選んだ服。もちろん少女に選ばれて欲しい。俺の熱意が少女に届いて欲しい。
 協議は15分にも及び、ようやく部長から入室の許しを得た。ついに結果が出たのだ。
「協議の結果、中学生部門は野田香苗、高校生部門は佐々木雄二、OL部門は滝口美奈、以上の部員のコーデをそのまま採用することになった」
 ショックだった。俺のコーディネートは少女どころか誰からの支持も得なかったのだ。
 それどころか、最後に俺一人だけ残され、部長からの説教を受けてしまう。
「まあ今まで何も言わなかったってのもあるけど、あんたファッション舐めすぎ。制服に限りなく似せた私服って言うけど、だったら最初から制服でいいじゃんって話。現に学校の制服を私服として休日の街を歩く女性が高校生はもちろんOL世代にも増えていて“制服ファッション”なんてジャンルも出来ているのよ。そういうの知ってた?」
「イヤ、知らなかったです……」
「一つ一つを見てもダメダメすぎる。例えばリボンを引き立てたいならニットベストも白で良くね? 薄いベージュにしちゃうとシャツ、ベスト、リボンのバランスは保たれるけどその分ピンクのリボンは目立たなくなるよね? あとシャツの袖を捲し上げたのも意味不明。乙女系がテーマなのにクールさを出す必要性はあるの? 麦わら帽子も似合わなすぎて笑っちゃう。ワンピ系の私服にはマッチするだろうけど制服スタイルに被せても邪魔にしか見えないし。で、挙句の果てにはニーソ? そんなのキモヲタ以外のどこに需要があるのよっ!?」
「す、すみません!」
「あと一つ質問だけど、このレジュメを見てもシャツと靴以外はブランド名を書いていないのは何で?」
「エ、イヤ、その、ちょっと解らなくて……」
「ファッションショーに来るお客さんは、欲しい服を見つけたらどこのブランドかとか、どこで買えるんだろうとか知りたいわけよ。だからブランド名が解らなくてもせめて買ったお店は書きなさいよ。例えばこのリボンは何ていうお店で買ったの?」
「イヤ、その……覚えていないと言いますか……」
「まさかヤフーとか使ったんじゃないでしょうね?」
「……そのまさかです」
「いかにもキモヲタがやりそうなことね。コーデ初心者がいきなりネットで買うのはとても高いハードルなのよ。お店で実物を見て決めるのは基本中の基本よ。学校の予算で買ってるんだからさあ、もう少し考えて服を選びなさいよ」