芋子「2015年の『おそ松さん』、2017年の『けものフレンズ』、そして今期の『ポプテピピック』……アニメは本当に何がヒットするのか分かりませんねえ」
小野「しかも、内2つはギャグアニメだからね。その『ポプテピピック』だけど、観たことはあるの?」
芋子「観ましたけど、1話のAパートの途中で切りました」
小野「実は僕、先週の土曜日に10話を観たんだ。前々回で紹介した『スロウスタート』を観終わった後、チャンネルを変えずにいたらたまたま放送していただけだけど。でもこれは確かに面白かった」
※関連記事→◎小野と芋子(7)泣ける日常アニメという新ジャンルを確立した『スロウスタート』
芋子「本当ですか? 1話を観た限りでは『観る人を選ぶ』というか、『人類には早すぎるアニメ』としか思えませんでした」
小野「面白かったから、『dアニメストア』で1話を観てみたら、これはそんなに面白くなかった」
芋子「やっぱそうですよね」
小野「ただ、続けて2話を観たら面白かった」
芋子「うーん、その言葉も信じ難いです」
小野「確かにこれは評価が難しいアニメだと思うよ。ただ、30分×12話という一般的な1クールアニメの枠内で数々の斬新なことをしたという意味では、日本のアニメの歴史に名を刻んだといっても過言ではないと思う」
芋子「クソアニメにそんな大げさな表現を使われても……」
小野「例えば全編にわたりホロスコープという斬新な手法を用いた2013年の『悪の華』は良くも悪くも話題となり、日本のアニメの歴史を語る上で『制作方法の一つの例』として取り上げるべき作品となった。『ポプテピピック』もその系統に入ると思うのだよ」
芋子「まだ良く分かりません」
<ポプテピピックの特徴とは>
小野「では具体的に説明していこう。まず、このアニメの特徴とは何か、挙げてみてほしい」
芋子「うーん、まず『絵が個性的』、『女子高生キャラなのに声が男』、あとは『ショートストーリーの詰め合わせ』ですかね」
<声優が毎回変わる>
小野「1話の途中で切ったなら仕方ないけど、少し違うね。1つ目と3つ目は良いとして、2つ目は全くの誤解だ。ポプ子とピピ美の声優は毎回変わる。もっと言うと、1話のBパートはどちらも女の声に変わっている」
芋子「えっ、そうだったんですか?」
小野「まあ片方は男性声優(三ツ矢雄二)が女の声を出しているけどね」
芋子「最初観たときは声が男だったことに引っかかりを感じて、素直にギャグを楽しめなかったんですよ」
小野「そういう人も多かったと思うよ。だから大事な1話の見せ方として果たして正しかったのかは疑問である」
<AパートとBパートは同じ話>
芋子「で、3つ目の『ショートストーリーの詰め合わせ』ですけど、原作が4コマ漫画だからというのもありますが、この方式のまま30分×12話もやると途中で飽きられたり、ネタ切れを起こしかねないのではないでしょうか」
小野「いや、実質15分アニメだよ。BパートはAと同じ話を声優を変えて繰り返しているだけだから」
芋子「そういうことですか。にしても斬新すぎるでしょ」
小野「まあ『ポプ子とピピ美の声優が毎話変わる』『AパートとBパートは同じ話で、そこでも声優を変えている』がこのアニメ独自の特徴と言って良いだろう。ただ1話ではこの特徴を上手く生かしきれていなかったとも思う」
<1話が面白くなかった人の意見>
芋子「※あくまで個人の感想だと思って読んで下さい」
小野「ショートストーリーの詰め合わせというのは、その話、話で当たり外れがあるのは仕方の無いことだ。同様にショートの詰め合わせにしたアニメ『日常』も、面白い話は多かったが、一部クスリともしない話もあったのは事実」
芋子「ギャグアニメとしては難しい手法ではありますよね」
小野「で、『ポプテピピック』の1話は、僕の場合、すべての話が笑えなかった。これは致命的だ」
芋子「でも2話は面白かったのですね」
小野「2話は最初の『魔法使いがポプ子とピピ美を召還する話』と『かくれんぼ』は面白かったかな。あとは少しニヤける程度。でもそれくらいで良いんだよ。1つでも超絶につまらない話があると、気分的にその後の話も笑いづらくなる。それが1話だったのかもしれない。2話は全体的にニヤける程度でも笑える話ばかりだったから良かった」
芋子「もちろん1話が面白かったと思う人もたくさん居ますから、これは合う合わないの問題だと思います」
<2話が面白かった理由>
小野「で、ここからが重要なんだけど、2話はAパートが女性声優(悠木碧・竹達彩奈)、Bパートが男性声優(古川登志夫・千葉繁)だったから、Aパートは女性キャラに女性声優を当てるという普通のキャスティングをしたから、普通のギャグアニメとして違和感無く観ることが出来た。そしてBパートで同じキャラを男性声優が演じるという変化球を投げてきたわけだ」
芋子「つまり、Aパートはあくまでもフリで、Bパートで同じ話を男性の声に変えることで笑いに昇華するという、30分まるごと使ったギャグということですか?」
小野「まさにそれを言いたかった。もちろんAパートの女性声優2人も独自の味を出していたけど、Bパートの変化球が壮大すぎて、Aが霞むというか、結果的にフリになってしまったという個人的見解だから、誤解しないでもらえると助かる」
芋子「ショートの1つ1つがギャグではあるけれど、構成上は30分まるごと使ったギャグでもあるとは、深いですねえ」
<10話は絶対に観るべき>
小野「そして、その2話の良さを最大限に生かしたのが今回の10話だ。Aパートは女性声優(徳井青空・三森すずこ)、Bパートを男性声優(小山力也・高木渉)にしたことで前述の『Aパートがフリで、Bパートの変化球で笑いに昇華する』手法がちゃんと確立しているし、とにかくBの変化球の度合いが半端ではない。台詞もちょいちょいアドリブを入れたりしていて、もう完全に遊んでいるよね。さすがはネクストコナンズヒント(検索)でアドリブコメントを鍛えてきた高木さんだけあるよ」
芋子「その『Aパートがフリで、Bパートの変化球で笑いに昇華する』ですけど、1話はそれが上手く出来ていなかったということですよね」
小野「まあ1話はギャグアニメとしては分かりづらかったよね。Aパートでいきなり男性声優を使う変化球を投げちゃって、それからBパートで同じ話を女性の声にされても、女性キャラに女性の声を当てるのは普通のことじゃんってなる」
芋子「いや、片方は三ツ矢さんのオカマ声ですから、それはそれで変化球なのですけどね」
小野「あと、上坂すみれのOPも何気に良曲だから、それが1話で流れなかったのも痛い」
芋子「1話は色々と惜しかったのですね」
小野「まあ色々言っちゃったけど、結果的に今期一番かと思われるほど人気アニメになったのだから、世間的には1話はあれで良かったのだろうね。やったもん勝ちだよね、こういうのって」
芋子「そんな色々な意味で斬新なギャグアニメクソアニメ『ポプテピピック』は、TOKYO MXで土曜25時から、『スロウスタート』の後に放送中です」
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