少数派シリーズ/政治情勢
松尾貴史氏コラム◇愛知県知事へのリコール署名の偽造・河村名古屋市長の責任は
■43.5万人分の署名のうち8割が不正、同じ筆跡の署名が多数見つかる
投稿者の文章/愛知や名古屋以外はあまり取り上げられていませんが、投稿者としては耳を疑う大問題と捉えピックアップしました。芸術祭「あいちトリエンナーレ」を巡る愛知県・大村秀章知事に対するリコール(解職請求)を求める署名が、大量偽造されていた不正事件です。43.5万人分の署名が集まりましたが、83.2%にあたる36.2万人分がニセモノだったことが判明しました。大量のアルバイトが動員され、同じ筆跡の署名が多数見つかっています。選挙人名簿に登録されていない人の署名や、亡くなった方の氏名も載っていました。大掛かりな組織的な行動であり、主導したとされるのが河村たかし名古屋市長、他にも美容外科「高須クリニック」高須克弥院長、日本維新の会関係者が深く関与していたと見られています。これは民主主義の根幹を破壊する行為、芸術や「表現の自由」が侵害された極めて深刻な事態です。河村市長・高須院長などの一連の動きは、あまりにもお粗末です。コロナ禍にこんな時間があるなら、もっと「コロナ対策」に力を集中すべきです。
以前にも投稿(下記・参考ページ)したのですが、「トリエンナーレ」とは3年ごとに開催されている国内最大規模の国際芸術祭です。2015年に東京都内のギャラリーで開かれた「表現の不自由展」の続編として、愛知県美術館で2019年10月に開かれる予定でした。ところが旧日本軍「慰安婦」を題材にした少女像や昭和天皇の写真を使った作品などの展示が公表されると、テロ予告や脅迫を含むファクスや電話が祭典実行委員会や愛知県庁などに殺到しました。わずか3日で、中止に追い込まれてしまいました。当時、実行委員会会長の大村秀章愛知県知事はあいちトリエンナーレを擁護しましたが、極右タカ派政治家・ネトウヨ(ネット右翼)などの扇動的な言動・暴力や脅迫が相次ぎ、中止せざるを得なくなったのです。今回のリコール行動はその 延長であり、偽造署名(偽装リコール)や金銭で自由な表現の場を奪うことは許されません。河村市長はかつて市政に情熱的だったのですが、昨今はすっかり"豹変"して「右傾化」してしまいました。詳しくは、松尾貴史氏のコラム本文をご覧下さい。
毎日新聞の日曜版、「松尾貴史のちょっと違和感」というコラムからの記事をご紹介します。
松尾貴史氏はコラムの中で、痛烈な批判をしています。ぜひお読み下さい。
*タイトル付け、文章の省略化、補足は投稿者によるものです。
↓ ↓ ▽松尾貴史氏のコラム
■主導した河村市長と高須クリニックの高須克弥氏の行動に正当性はない
愛知県の大村秀章知事に対するリコール(解職請求)署名不正事件は、無残な格好の悪さをさらしている。署名活動で不正を行うという、民主主義そのものに対するイメージダウンに、まれに見る「貢献」をした。紛れもないこの運動の中心人物の一人、河村たかし名古屋市長は、今後の身の振り方について、「今出馬を断念したら、不正署名運動に関与したと認めることになるから」という理由で来期に向けて市長選に出馬する意向だと一部で報じられた。しかし、「自分は関与していない」という、保身の状況証拠づくりのために再出馬するのは、政治のあからさまな私物化ではにゃあか(※投稿者補足/名古屋弁=ないか!)。おりしも市民団体が、河村市長に対して政治的及び道義的責任を問い、辞任を求める決議を出した。
河村市長は、あれほど率先して運動を引っ張ってきたにもかかわらず、「私は中心人物ではない」と距離感のある言い訳をしている。「愛知100万人リコールの会」のチラシに会長の高須克弥氏と共に2人の顔が大きく印刷されているのに、この逃げ口上はどう考えてもおかしいのではないか。コロナ禍において、連日のように街頭宣伝をしまくり、43万人分の署名も提出して、「中心人物ではない」「私も被害者」なのだと言う。このような事態を招いた中心にいたことは確かなのに、責任を取って辞職するどころか、再選を目指すというならば、その厚顔無恥には驚くばかりだ。盟友の高須氏は、偽造署名に気付いてテレビ局に告発をした複数のボランティアを刑事告訴までしているが、その告発にどこまで正当性があるのかも不明だ。
■リコール運動資金5000万円超・名簿書き写しアルバイトは延べ1000人
愛知県の選挙管理委員会によると、署名の約8割が偽造、無効だったという。同じ筆跡や既に死んでいる人の署名まで含め、同一人物の指印もあった。「勝手に名前を使われた」という人も続出している。なぜか愛知県から遠く離れた佐賀県内ではアルバイトも動員されていたという。延べでは名簿を書き写したアルバイトは1000人にも達し、全体で1000万円を超える報酬も支払われていた。署名運動の場合、通常は法定数に達していなければ、審査を行うことはない。今回はよほど悪質だと判断されたのだろう。容疑者不詳のまま、地方自治法違反の容疑で愛知県警へ刑事告発された。リコールのハードルをクリアどころか遠く及ばなかった上に、この不祥事が明らかになってしまった。リコール運動の資金集めにクラウドファンディングで5000万円を超える資金を集めたとも言われているが、この中から偽造アルバイトへの報酬が支払われていた場合、別の犯罪が成立する可能性もある。
リコール運動を主導した高須氏は、2020年10月18日のツイッターで「署名が集まりすぎて署名用紙の追加要請が次々と寄せられております。署名簿の印刷と発送でイエスリコール大村知事100万人の会事務所は大忙しの嬉(うれ)しい悲鳴です(以下略)」と投稿していたが、本当にそういう状況だったのか、疑問が消えない。報道によれば、広告関連会社が事務局からアルバイトを集めるのを依頼されて、この投稿の翌日、470万円を現金で受け取って、業務を受注したという。日本維新の会の田中孝博氏が事務局長を務めていたが、発注書を受け取った広告関連会社の説明と食い違う説明をしている。発注書には事務局幹部の署名押印もあるそうだが、納得のいく説明はされていない。
警察に事情聴取を受けた事務局幹部のみならず、他の役職者らに、日本維新の会の関係者が名を連ねる。これは党としても説明が必要ではないか。大村知事は、憲法における「表現の自由」を尊重して、作品や展示の内容に介入や検閲をしないというまっとうな対応をしただけだが、一部の人たちの、芸術に対する無理解と恣意(しい)的な印象操作で起きたこの空騒ぎが生んだ負の痕跡は相当に大きい。大村知事よりも、河村市長の方がよほどリコールの対象として相応なのではないか。
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止、政治家や右翼の介入を許すな
松尾貴史氏コラム◇愛知県知事へのリコール署名の偽造・河村名古屋市長の責任は
■43.5万人分の署名のうち8割が不正、同じ筆跡の署名が多数見つかる
投稿者の文章/愛知や名古屋以外はあまり取り上げられていませんが、投稿者としては耳を疑う大問題と捉えピックアップしました。芸術祭「あいちトリエンナーレ」を巡る愛知県・大村秀章知事に対するリコール(解職請求)を求める署名が、大量偽造されていた不正事件です。43.5万人分の署名が集まりましたが、83.2%にあたる36.2万人分がニセモノだったことが判明しました。大量のアルバイトが動員され、同じ筆跡の署名が多数見つかっています。選挙人名簿に登録されていない人の署名や、亡くなった方の氏名も載っていました。大掛かりな組織的な行動であり、主導したとされるのが河村たかし名古屋市長、他にも美容外科「高須クリニック」高須克弥院長、日本維新の会関係者が深く関与していたと見られています。これは民主主義の根幹を破壊する行為、芸術や「表現の自由」が侵害された極めて深刻な事態です。河村市長・高須院長などの一連の動きは、あまりにもお粗末です。コロナ禍にこんな時間があるなら、もっと「コロナ対策」に力を集中すべきです。
以前にも投稿(下記・参考ページ)したのですが、「トリエンナーレ」とは3年ごとに開催されている国内最大規模の国際芸術祭です。2015年に東京都内のギャラリーで開かれた「表現の不自由展」の続編として、愛知県美術館で2019年10月に開かれる予定でした。ところが旧日本軍「慰安婦」を題材にした少女像や昭和天皇の写真を使った作品などの展示が公表されると、テロ予告や脅迫を含むファクスや電話が祭典実行委員会や愛知県庁などに殺到しました。わずか3日で、中止に追い込まれてしまいました。当時、実行委員会会長の大村秀章愛知県知事はあいちトリエンナーレを擁護しましたが、極右タカ派政治家・ネトウヨ(ネット右翼)などの扇動的な言動・暴力や脅迫が相次ぎ、中止せざるを得なくなったのです。今回のリコール行動はその 延長であり、偽造署名(偽装リコール)や金銭で自由な表現の場を奪うことは許されません。河村市長はかつて市政に情熱的だったのですが、昨今はすっかり"豹変"して「右傾化」してしまいました。詳しくは、松尾貴史氏のコラム本文をご覧下さい。
毎日新聞の日曜版、「松尾貴史のちょっと違和感」というコラムからの記事をご紹介します。
松尾貴史氏はコラムの中で、痛烈な批判をしています。ぜひお読み下さい。
*タイトル付け、文章の省略化、補足は投稿者によるものです。
↓ ↓ ▽松尾貴史氏のコラム
■主導した河村市長と高須クリニックの高須克弥氏の行動に正当性はない
愛知県の大村秀章知事に対するリコール(解職請求)署名不正事件は、無残な格好の悪さをさらしている。署名活動で不正を行うという、民主主義そのものに対するイメージダウンに、まれに見る「貢献」をした。紛れもないこの運動の中心人物の一人、河村たかし名古屋市長は、今後の身の振り方について、「今出馬を断念したら、不正署名運動に関与したと認めることになるから」という理由で来期に向けて市長選に出馬する意向だと一部で報じられた。しかし、「自分は関与していない」という、保身の状況証拠づくりのために再出馬するのは、政治のあからさまな私物化ではにゃあか(※投稿者補足/名古屋弁=ないか!)。おりしも市民団体が、河村市長に対して政治的及び道義的責任を問い、辞任を求める決議を出した。
河村市長は、あれほど率先して運動を引っ張ってきたにもかかわらず、「私は中心人物ではない」と距離感のある言い訳をしている。「愛知100万人リコールの会」のチラシに会長の高須克弥氏と共に2人の顔が大きく印刷されているのに、この逃げ口上はどう考えてもおかしいのではないか。コロナ禍において、連日のように街頭宣伝をしまくり、43万人分の署名も提出して、「中心人物ではない」「私も被害者」なのだと言う。このような事態を招いた中心にいたことは確かなのに、責任を取って辞職するどころか、再選を目指すというならば、その厚顔無恥には驚くばかりだ。盟友の高須氏は、偽造署名に気付いてテレビ局に告発をした複数のボランティアを刑事告訴までしているが、その告発にどこまで正当性があるのかも不明だ。
■リコール運動資金5000万円超・名簿書き写しアルバイトは延べ1000人
愛知県の選挙管理委員会によると、署名の約8割が偽造、無効だったという。同じ筆跡や既に死んでいる人の署名まで含め、同一人物の指印もあった。「勝手に名前を使われた」という人も続出している。なぜか愛知県から遠く離れた佐賀県内ではアルバイトも動員されていたという。延べでは名簿を書き写したアルバイトは1000人にも達し、全体で1000万円を超える報酬も支払われていた。署名運動の場合、通常は法定数に達していなければ、審査を行うことはない。今回はよほど悪質だと判断されたのだろう。容疑者不詳のまま、地方自治法違反の容疑で愛知県警へ刑事告発された。リコールのハードルをクリアどころか遠く及ばなかった上に、この不祥事が明らかになってしまった。リコール運動の資金集めにクラウドファンディングで5000万円を超える資金を集めたとも言われているが、この中から偽造アルバイトへの報酬が支払われていた場合、別の犯罪が成立する可能性もある。
リコール運動を主導した高須氏は、2020年10月18日のツイッターで「署名が集まりすぎて署名用紙の追加要請が次々と寄せられております。署名簿の印刷と発送でイエスリコール大村知事100万人の会事務所は大忙しの嬉(うれ)しい悲鳴です(以下略)」と投稿していたが、本当にそういう状況だったのか、疑問が消えない。報道によれば、広告関連会社が事務局からアルバイトを集めるのを依頼されて、この投稿の翌日、470万円を現金で受け取って、業務を受注したという。日本維新の会の田中孝博氏が事務局長を務めていたが、発注書を受け取った広告関連会社の説明と食い違う説明をしている。発注書には事務局幹部の署名押印もあるそうだが、納得のいく説明はされていない。
警察に事情聴取を受けた事務局幹部のみならず、他の役職者らに、日本維新の会の関係者が名を連ねる。これは党としても説明が必要ではないか。大村知事は、憲法における「表現の自由」を尊重して、作品や展示の内容に介入や検閲をしないというまっとうな対応をしただけだが、一部の人たちの、芸術に対する無理解と恣意(しい)的な印象操作で起きたこの空騒ぎが生んだ負の痕跡は相当に大きい。大村知事よりも、河村市長の方がよほどリコールの対象として相応なのではないか。
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止、政治家や右翼の介入を許すな