本格派ミステリーとは言えないが、読み易い事も在って、西村京太郎氏の作品は全て読破している。特に”十津川警部シリーズ”は、新刊が出るのを心待ちにしている程の大ファン。そして、今、「十津川警部『生命(いのち)』」という作品を読んでいる最中である。
一部ネタばれになってしまうが、この作品のテーマは「AID」に付いて。
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AIH(artificial insemination by husband - 夫婦間人工授精)
AID(artificial insemination by donor - 非配偶者間人工授精)
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人工授精に付いてはそれなりに知識を持っているつもりだったが、AIHやAIDという用語を含め、知識不足で在った事を思い知らされた。AIHは、精子が在っても射精出来ない等の場合、夫の精子を用いて人工授精する方法。それに対して、夫に精子が無い場合、他の男性の精子を用いて人工授精を行なうのがAID。
夫の精子を用いるAIHと異なり、他者の精子を用いるAIDの場合、子供が成長するに従って或る問題が起こって来るという。夫以外の遺伝子を受けた子供の顔立ちは、当然ながら夫と違って来る。その事で、事情を知らない子供は疑念と不安を深めていくだろうし、親の側も悩み続ける事になると。又、仮に親が事情を話したとしても、”実の父親”を子が知る事は原則的に不可能な状態。精子提供は法に触れる行為ではないが、後々のトラブルを考慮して、精子提供者に付いての情報は”原則として”手術を受ける夫婦に一切知らせない事になっており、当然ながら子供にも知らされないからだ。
後々のトラブルは色々考えられる。精子提供者が”子供”の親権を求めて来る事や、その逆のケースも在ろう。財産トラブルに直結し兼ねない事態だ。だからこそ、精子提供者は「後に何も要求しない。」旨の誓約書が書かされるし、精子提供者及び手術を受ける夫婦共に、双方の情報は一切知らされないというのだ。
とは言え、AIDの先進国であるアメリカやカナダでは、AIDによって生まれ&成長した子供達が、本当の父親に会いたいと訴える動きが出て来ており、社会問題にもなって来ているのだそうだ。日本でも、15歳を越えたら実の父親、つまり生物学的な父親の事を、子供に知らせても良いのではないかという考えが出て来ているという。
今回の作品では、医者の側で極秘裏に保管していた「精子提供者と手術を受けた夫婦の情報」が盗まれ、それを使って手術を受けた夫婦達が強請られるというストーリー。上記した様に、AID自体は法に触れる行為ではない。でも、地位や名声を得た夫婦達にとって、実の子供でない事が暴露されるのは致命的と捉えてしまう気持ちを悪用した犯罪を描いている。実際に起こり得ないと断言出来ない話だ。
それにしても驚いたのは、AIDという方法がアメリカでは1800年代末頃から行なわれていたという事実。人工授精自体がそれ程歴史の古い方法では無いと思っていただけに意外だった。日本でも1950年代から行なわれており、一説にはAIDで生まれた子供は1万人を超えるとされている。そんなにも多いのかという思いと、初期の頃に生まれた子供は既に50歳代であるという重みを持った歴史を感じる。
可能性は限りなく少ないだろうが、同じ父親から生まれた”他人”の男女が、その事を知らずに恋に落ち、知らない内に近親婚となってしまう危険性も作品内では触れられている。
子供が欲しくても授からない夫婦にとって、人工授精は願ってもない手段だろう。やっとの事で子供を授かった夫婦の喜びは痛い程良く判る。でも、様々な問題を同時に抱えているのも事実なのだろう。難しい問題だ。
一部ネタばれになってしまうが、この作品のテーマは「AID」に付いて。
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AIH(artificial insemination by husband - 夫婦間人工授精)
AID(artificial insemination by donor - 非配偶者間人工授精)
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人工授精に付いてはそれなりに知識を持っているつもりだったが、AIHやAIDという用語を含め、知識不足で在った事を思い知らされた。AIHは、精子が在っても射精出来ない等の場合、夫の精子を用いて人工授精する方法。それに対して、夫に精子が無い場合、他の男性の精子を用いて人工授精を行なうのがAID。
夫の精子を用いるAIHと異なり、他者の精子を用いるAIDの場合、子供が成長するに従って或る問題が起こって来るという。夫以外の遺伝子を受けた子供の顔立ちは、当然ながら夫と違って来る。その事で、事情を知らない子供は疑念と不安を深めていくだろうし、親の側も悩み続ける事になると。又、仮に親が事情を話したとしても、”実の父親”を子が知る事は原則的に不可能な状態。精子提供は法に触れる行為ではないが、後々のトラブルを考慮して、精子提供者に付いての情報は”原則として”手術を受ける夫婦に一切知らせない事になっており、当然ながら子供にも知らされないからだ。
後々のトラブルは色々考えられる。精子提供者が”子供”の親権を求めて来る事や、その逆のケースも在ろう。財産トラブルに直結し兼ねない事態だ。だからこそ、精子提供者は「後に何も要求しない。」旨の誓約書が書かされるし、精子提供者及び手術を受ける夫婦共に、双方の情報は一切知らされないというのだ。
とは言え、AIDの先進国であるアメリカやカナダでは、AIDによって生まれ&成長した子供達が、本当の父親に会いたいと訴える動きが出て来ており、社会問題にもなって来ているのだそうだ。日本でも、15歳を越えたら実の父親、つまり生物学的な父親の事を、子供に知らせても良いのではないかという考えが出て来ているという。
今回の作品では、医者の側で極秘裏に保管していた「精子提供者と手術を受けた夫婦の情報」が盗まれ、それを使って手術を受けた夫婦達が強請られるというストーリー。上記した様に、AID自体は法に触れる行為ではない。でも、地位や名声を得た夫婦達にとって、実の子供でない事が暴露されるのは致命的と捉えてしまう気持ちを悪用した犯罪を描いている。実際に起こり得ないと断言出来ない話だ。
それにしても驚いたのは、AIDという方法がアメリカでは1800年代末頃から行なわれていたという事実。人工授精自体がそれ程歴史の古い方法では無いと思っていただけに意外だった。日本でも1950年代から行なわれており、一説にはAIDで生まれた子供は1万人を超えるとされている。そんなにも多いのかという思いと、初期の頃に生まれた子供は既に50歳代であるという重みを持った歴史を感じる。
可能性は限りなく少ないだろうが、同じ父親から生まれた”他人”の男女が、その事を知らずに恋に落ち、知らない内に近親婚となってしまう危険性も作品内では触れられている。
子供が欲しくても授からない夫婦にとって、人工授精は願ってもない手段だろう。やっとの事で子供を授かった夫婦の喜びは痛い程良く判る。でも、様々な問題を同時に抱えているのも事実なのだろう。難しい問題だ。

まず感じたのが、近親婚の危険性でした。
私は、自分の遺伝子のルーツは
知っておくべきだと思います。
本作品は、西村先生が単なるトラベルミステリ作家ではないところをキラっと見せたという点で、なかなか興味深い作品でしたね。
この後も、かなり新作出てますよ。3作くらいかな?