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貴方と共に居る事を、世界中の誰もが反対し、批判する筈だ。私を心配するからこそ、誰もが私の話に耳を傾けないだろう。其れでも文(ふみ)、私は貴方の傍に居たい。
再会すべきでは無かったかも知れない男女が、もう一度出会った時、運命は周囲の人を巻き込み乍ら疾走を始める。
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「“新刊を扱う書店(オンライン書店含む)の書店員”の投票によってノミネート作品及び受賞作が決定される。」というのが、2004年に設立された本屋大賞。今年で16年目を迎えた訳だが、数多存在する文学賞の中でも「受賞作が大きな注目を集め、売れ行きに大きく影響する。」物の1つと言って良い。
今回読了した小説は、今年(第17回)の本屋大賞を受賞した「流浪の月」(著者:凪良ゆうさん)。凪良さんの小説を読むのは初めてだが、元々は“ボーイズラヴ作品”を多く著して来た方だとか。
「周りからは“変な親”と見られていたが、家内更紗(かない さらさ)はそんな両親が大好きだった。両親と一緒に居る事が、とても幸せだったのだけれど、或る日、両親は更紗の前から“消えて”しまう。引き取られた伯母の家に居心地の悪さを感じ続ける更紗は、近くの公園で時間を潰す様になる。其の公園には1人の若い男性が毎日来ていて、同級生達は彼の事を“ロリコン”と噂していた。自分の居場所を無くしていた更紗は、其の男性・佐伯文(さえき ふみ)の家で暮らす事になる。更紗は9歳、そして文は19歳だった。文との楽しい日々は、そう長くは続かなかった。幼女監禁の罪で文は捕まり、更紗は伯母の家へと連れ戻されてしまったのだ。其れから15年、24歳になった更紗は偶然文と再開する。」というのが、ざっくりとしたストーリー。
ネットには当時の事件の事が詳しく書かれており、「幼い時、変質者に監禁れ、猥褻行為をされた(で在ろう)可哀相な女性。」という目で、周りからずっと見られて来た更紗。文も“ロリコンの変質者”と記され、身を隠す様に生きて来た。加害者のみならず、被害者もデジタル・タトゥーに苦しむ世の中だ。でも、更紗自身は知っている。「文の家に行ったのは自分の判断だったし、文はとても優しく、猥褻行為なんか一度もされなかった。」と。そう周りに訴えても、誰も本当の事とは信じてくれない。「其れは、ストックホルム症候群なのだ。」と。
人の受け取り方は千差万別で、「流浪の月」の感想は人其れ其れだろう。飽く迄も自分の考えだが、「幼い頃に辛い思いを経験した人程、更紗や文に対する理解が在り、ストーリーにどっぷり入り込める。」様な気がする。自分の場合は「(或る意味)身勝手な親に翻弄された更紗や文に同情はするも、だからと言って“今の”彼女達の言動には付いて行けず、唯々苛々させられた。」というのが正直な所。好き嫌いがはっきり分かれるタイプの作品だろう。
本屋大賞受賞作という事で大きな期待を持って読み始めたが、個人的にはがっかりな内容だった。総合評価は、星2.5個とする。