つい此の前に新年を迎えたと思ったら、今日で1月も終わり。2018年も、約12分の1を終える訳だ。時が過ぎ行くスピードは、本当に速い。
1月を振り返ると、「兎に角、寒かったなあ。」という印象が在る。東京都心では4年振りの大雪となったし、以降も寒い日が続いている。関東地方では「明日にも又、降雪の可能性が在る。」という事だし、「来週、西から再び強烈な寒気が入って来る。」という予報も出ている。暫くは寒さと付き合わなければならない様で、本当にウンザリ。
閑話休題。
以前、「直径1cmの蜘蛛糸を放射状に30本張り巡らせた直径500m位の“巣”を作ったら、“理論上”では「乗客が居ないジャンボ・ジェットが離陸スピード位で突っ込んで来ても、其の巣は敗れる事無く、受け止める事が出来る。」という話を読み、「蜘蛛糸って、そんなにも強度が在るのか。」と驚いた。自然界には意外な強度を持つ物が他にも在る様で・・・。
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「卵の白身が高強度の新素材に 医療、食品・・・応用に期待」(1月29日、産経新聞)
食卓で御馴染みの卵。白身は生の状態だと透明でドロドロだが、茹で卵にすると白い弾力を持った状態に変わる。極当たり前の此の現象を応用し、驚くべき高強度材料の開発を遣って退けた研究者が居る。強度は実に、茹で卵の150倍以上。医療用素材や食品への利用が期待される。
中国・東南大准教授の野島達也さんは、蛋白質科学の研究者。東京工業大特任助教だった平成28年には、水に溶けた蛋白質質の分子が界面活性剤を使うと凝縮する現象を、チームで発見する成果を挙げている。
同年秋頃、大学近くのコンヴィニで売られている卵を見付け、ふと考えた。「蛋白は元々、卵の白身という意味だ。蛋白質科学者にとって、此れは原点。開発した界面活性剤の技術が白身にも適用出来たら、技術の普遍性がアピール出来る。」。
生物の体を構成する重要な成分の蛋白質は近年、金属やセラミックスに続く次世代材料として注目されている。唯、微生物や細胞の培養で生産されるた為、時間も費用も掛かる点がネックだ。其処で野島さん等は、大量生産で安く入手出来る食品の蛋白質に注目していた。
早速、実験に取り掛かった。白身に水を加えて掻き混ぜ、独自の界面活性剤を加えると、予想通りに卵の蛋白質が凝縮した。此れを温めると、白く不透明なゲル状の塊が出来た。野島さんは「茹で卵が出来るのと同じ事が起きただけ。詰まらない。」と感じたと言う。
ところが其の塊を手にした所、信じられない程の硬さに驚いた。圧縮する時の強度を測ると、茹で卵の150倍以上。全く予想外の事が起こった。詳しく分析した結果、蛋白質の分子同士が均一に結合している事が判った。
蛋白質はアミノ酸が繋がって出来た、高分子と呼ばれる物質の一種だ。普通の茹で卵では紐状の分子同士が不均一に絡まり合っており、力を加えると結合が弱い所に力が集中して壊れてしまう。ところが、界面活性剤を加える事で結合が均一になり、力が特定の場所に集中しなくなって、強度が上がると見られる。
野島さんは此の塊を周りの研究者や学生に触らせては「卵の白身で出来ているんだよ。」と伝え、驚かれる反応を大いに楽しんだのだとか。「唯、私は材料科学の専門家では無いので、論文に纏めるのに苦労した。」と野島さん。今月、英科学誌に掲載された。
此の技術の実用化が楽しみだ。アレルギー反応等の問題の無い他の蛋白質や界面活性剤を用いる必要が在るが、此の課題をクリアすれば、手術糸や関節軟骨再生の素材等の医療分野への利用が、先ず期待出来る。一定期間後に体に吸収され、無くなるのだ。グミや麺等、新食感の食品に利用出来る期待も在る。 今回の実験で使ったのは鶏の卵だが「駝鳥の卵と何方の蛋白質から作ったゲルが強いか、比べても面白い。」とも。
野島さんは「白身を加熱すると固まるのは常識的な現象だが、其れを分析して理解し、応用出来る様にする事は科学だ。此の研究を通して、身近な現象と科学が結び付いている事を判って戴けたら嬉しい。」としている。
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