2019/6/17。【Newsweek<2019年6月25日号掲載>。グレン・カール(元CIA諜報員)】。安倍のイラン訪問は、激変する国際秩序の大きな潮流と同時に、より短期的な安倍の狙いも浮き彫りにした。
1.まず、安倍は訪問前にトランプと入念に打ち合わせをしたとされる。そうだとすれば、イランへの圧力強化を通じて中東でイランの振る舞いを根本的に変えようとするアメリカと、圧力がこのまま続けばアメリカと地域全体に代償を支払わせると明言するイランの仲介に安倍が失敗したとしても、この訪問は日米関係強化に役立ったことになる。(1.1)日本がイランとアメリカに及ぼせる影響力はごく限定的だ。それでも安倍は、失敗外交の批判と引き換えに日米関係の強化に成功した。この訪問で影響力が低下したわけではないし、日本の国際的役割は大きくなった。私=グレン・カール(元CIA諜報員)=の見るところ、明らかな成功だ。2.第2に、安倍の訪問はアメリカが加速させている国際秩序の継続的崩壊を浮き彫りにするものでもある。国際社会に一貫性と責任感のある指導者が不在の今、安倍はその空白を埋める存在になりつつある。イラン訪問の目的は達成できなかったが、安倍が無秩序と混乱に向かおうとする国際政治の流れを止めようとした点は評価できる。3.第3に、安倍の訪問は日本の国際的役割を第二次大戦後で最大レベルに高めようとする安倍自身の強い意志の表れでもある。現在の国際政治の潮流を考えれば、それは間違いなく日本の利益になる。世界の利益になることもほぼ確実だろう。ある意味で安倍の動きは、アメリカによる2003年のイラク侵攻前にフランスのシラク大統領が取った行動とよく似ている。シラクはイラク侵攻に反対したが、止めることはできなかった。4.安倍は対米協調を維持しながら米・イランの対立緩和を目指し、一方でアメリカの一貫性欠如と中国の台頭によって生じた国際政治の空白を埋めようとしている。この政策は長期的に見て、日本と国際秩序の利益になる。一部の評論家による酷評は、その代償だ。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190617-00010010-newsweek-int