日本語文法議論2392
文章の単位、文類型を分析する。資料は新聞記事、ネットサイトの無料記事を引用する。会員になると有料記事を使うが、無料会員での引用をお断りして利用の謝意を申し上げる。
文章をとらえるには文を複数、連鎖するひとまとまりを見る。そこに文単位を見ると、文と文の関係が意味内容を伝える文法機能を持っている。そこには単位文とする分析によって明らかである機能がある。それは何か。なお、文は句読による書き手の単位を区切り符号として読み手がとらえる。その複数の文による文章は形式段落を与える書き手、記事の場合には編集者がいるかもしれない、その段落によってあらわされている。
まず3文を並列してみる。
例1 長年の願いが叶(かな)ったのにあまり喜びを感じなかった。
そんな経験は多くの人にあるのではないだろうか。
そのいっぽうで、起こったときはさほど感じなかったが、時間を経るたびに喜びが深まってくる、という場合もあるだろう。
この文章では、願いとその経験について、願いが叶うという経験を言う。
願いが 叶(かな)った 喜びを感じなかった
そんな 経験は 人に ある
起こったときは 感じなかった 喜びが 深まってくる
そのいっぽうで ーー という場合も あるだろう
願いが 経験が おこったときに 文章はつたえる、次の文章にみえるのは、願いの様々にあるものである。
願いには さまざまな姿が ある。
同様にして、次の例である。
例2 おとといの午後、ストライキで閉館中の百貨店、西武池袋本店を訪れてみた。
閉じたシャッターの前に組合員たちが並び、「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません」と道行く人たちに謝っている。
強い日差しの下、長袖の白いワイシャツが汗で腕に貼り付いていた。
第1文は、書き手が主語である。第2文は、組合員たちが 主語である。第3文は、ワイシャツが 主語である。この文章は書き手による描写叙述になるから、次にその意味内容を伝えるのは何についてか。
丁寧で低姿勢な語りかけは、ストと聞いて連想する往年のたけだけしい姿とはだいぶ違う
語りかけ であり、姿 である。
なお、この段落の冒頭分はまた、次の構造を持つ。
丁寧で低姿勢な語りかけと、
ストと聞いて連想する往年のたけだけしい姿と
だいぶ違う
日経記事より
若松英輔「言葉のちから」
2023年9月2日 2:00 [会員限定記事]
長年の願いが叶(かな)ったのにあまり喜びを感じなかった。そんな経験は多くの人にあるのではないだろうか。そのいっぽうで、起こったときはさほど感じなかったが、時間を経るたびに喜びが深まってくる、という場合もあるだろう。
願いにはさまざまな姿がある。願望、悲願、嘆願、哀願、念願という表現もある。
春秋
2023年9月2日 0:00 [会員限定記事]
おとといの午後、ストライキで閉館中の百貨店、西武池袋本店を訪れてみた。閉じたシャッターの前に組合員たちが並び、「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません」と道行く人たちに謝っている。強い日差しの下、長袖の白いワイシャツが汗で腕に貼り付いていた。
▼丁寧で低姿勢な語りかけは、ストと聞いて連想する往年のたけだけしい姿とはだいぶ違う。