もの は、物、者である。
日本国語大辞典の語義では、物について、次のようである。
〔一〕なんらかの形をそなえた物体一般をいう。(1)形のある物体・物品をさしていう。(2)特定の物体・物品を一般化していう。文脈や場面から具体物が自明であるとして用いる。(3)対象をあからさまにいうことをはばかって抽象化していう。
〔二〕個々の具体物から離れて抽象化された事柄、概念をいう。
(1)事物、事柄を総括していう。(2)「ものの…」の形で抽象的な語句を伴って、漠然と限定した事柄をいう。(3)概念化された場所を表わす。中古から中世にかけて、特に神社仏閣をさすことが多い。(4)ことばや文字。また、文章や書物。その内容もいう。→もの(物)を言う。(5)感じたり考えたりする事柄。悩み事、考え事、頼み事、尋ね事など。→もの(物)を見る・もの(物)覚ゆ・もの(物)を思う。 (6)道理。事の筋道。(7)特定の事柄が思い出せなかったり、わざとはっきりと言わないようにしたりするとき、また、具体的な事柄を指示できないとき、問われて返答に窮したときなどに仮にいう語。(8)言いよどんだとき、あるいは、間(ま)をとったりするために、話の間にはさんで用いる語。(9)(格助詞「が」を伴った「がもの」の形で)「…に相当するもの」「…に値するもの」などの意を表わす。→がもの。
〔三〕抽象化した漠然とした事柄を、ある価値観を伴ってさし示す。(1)一般的・平均的なもの、また、一人前の、れっきとしたもの。物についても人についてもいう。(2)大事、大変なこと。重要なこと、問題。
〔四〕他の語句を受けて、それを一つの概念として体言化する形式名詞。直接には用言の連体形を受けて用いる。(1)そのような事態、事情、意図などの意を表わす。(2)文末にあって断定の語を伴い、話し手の断定の気持を強めた表現となる。→ものか・ものかな・ものぞ・ものだ・もん。(3)活用語の連体形を受けて文を終止し、感動の気持を表わす。さらに終助詞を付けて、逆接的な余情をこめたり、疑問・反語の表現になったりすることが多い。
また、者について、次のようである。
もの 【者】(「もの(物)」と同語源)
人。古来、単独で用いられることはごくまれで、多く他の語句による修飾を受けて、形式名詞ふうに用いられる。卑下したり軽視したりするような場合に用いることが多く、また、現代では、「これに違反したものは」「右のもの」など、公式的な文書で用いる。
【語誌】(1)一般に「ひと」に比べて立場や地位の低い人をいうのに用いられるといわれ、平安時代の和文からはそのような傾向がうかがわれるが、厳密ではない。ことに漢文訓読資料にはあてはまらない例が多い。(2)訓点資料では、「者」が人を意味する場合に「モノ」と訓読するようになるのは九世紀末からで、それ以前は必ず「ヒト」と訓んだ。そこで、「万葉集」の場合も「者」を「モノ」と訓ませたはずはない、として、用例の三四九番歌の第一句(原文「生者」)を「生けるひと」あるいは「生まるれば」とよむ説がある。
日本国語大辞典の語義では、物について、次のようである。
〔一〕なんらかの形をそなえた物体一般をいう。(1)形のある物体・物品をさしていう。(2)特定の物体・物品を一般化していう。文脈や場面から具体物が自明であるとして用いる。(3)対象をあからさまにいうことをはばかって抽象化していう。
〔二〕個々の具体物から離れて抽象化された事柄、概念をいう。
(1)事物、事柄を総括していう。(2)「ものの…」の形で抽象的な語句を伴って、漠然と限定した事柄をいう。(3)概念化された場所を表わす。中古から中世にかけて、特に神社仏閣をさすことが多い。(4)ことばや文字。また、文章や書物。その内容もいう。→もの(物)を言う。(5)感じたり考えたりする事柄。悩み事、考え事、頼み事、尋ね事など。→もの(物)を見る・もの(物)覚ゆ・もの(物)を思う。 (6)道理。事の筋道。(7)特定の事柄が思い出せなかったり、わざとはっきりと言わないようにしたりするとき、また、具体的な事柄を指示できないとき、問われて返答に窮したときなどに仮にいう語。(8)言いよどんだとき、あるいは、間(ま)をとったりするために、話の間にはさんで用いる語。(9)(格助詞「が」を伴った「がもの」の形で)「…に相当するもの」「…に値するもの」などの意を表わす。→がもの。
〔三〕抽象化した漠然とした事柄を、ある価値観を伴ってさし示す。(1)一般的・平均的なもの、また、一人前の、れっきとしたもの。物についても人についてもいう。(2)大事、大変なこと。重要なこと、問題。
〔四〕他の語句を受けて、それを一つの概念として体言化する形式名詞。直接には用言の連体形を受けて用いる。(1)そのような事態、事情、意図などの意を表わす。(2)文末にあって断定の語を伴い、話し手の断定の気持を強めた表現となる。→ものか・ものかな・ものぞ・ものだ・もん。(3)活用語の連体形を受けて文を終止し、感動の気持を表わす。さらに終助詞を付けて、逆接的な余情をこめたり、疑問・反語の表現になったりすることが多い。
また、者について、次のようである。
もの 【者】(「もの(物)」と同語源)
人。古来、単独で用いられることはごくまれで、多く他の語句による修飾を受けて、形式名詞ふうに用いられる。卑下したり軽視したりするような場合に用いることが多く、また、現代では、「これに違反したものは」「右のもの」など、公式的な文書で用いる。
【語誌】(1)一般に「ひと」に比べて立場や地位の低い人をいうのに用いられるといわれ、平安時代の和文からはそのような傾向がうかがわれるが、厳密ではない。ことに漢文訓読資料にはあてはまらない例が多い。(2)訓点資料では、「者」が人を意味する場合に「モノ」と訓読するようになるのは九世紀末からで、それ以前は必ず「ヒト」と訓んだ。そこで、「万葉集」の場合も「者」を「モノ」と訓ませたはずはない、として、用例の三四九番歌の第一句(原文「生者」)を「生けるひと」あるいは「生まるれば」とよむ説がある。