日本語は正書法が確立していないと言う。これは正書法がないと言うことではない。さきの説明には、ある言語において、単語を書くときにその書き表し方が一つに決まっている状態にあるとき、その言語の正書法が確立していると言う、と述べている。言葉の表記の教科書、佐竹秀夫+佐竹久仁子、24ページ、べレ出版による。そして語の表記の揺れを指摘する。
漢字と平仮名の対立 漢字と片仮名の対立 平仮名と片仮名の対立 漢字と数字の対立 片仮名とアルファベットの対立 異なる漢字の対立 漢字の字体の対立 送り仮名の対立 仮名遣いの対立 外来語表記の対立に ローマ字における表記法の対立 数字表記における対立 符号と文字の対立 によるゆれ、以上の13を挙げる。
これは表記の種類に日本語の5種類を挙げていることで、日本語の大きな揺れとしている。中には漢字の字体、漢字の当用、漢字と仮名遣いの問題もある。いずれも文字を表記として許している日本語だからである。一つの文字ではない、言い換えれば種類を文字に持つのは、その文字を伝統的に言葉と考えてきたわたしたちだからである。
この説明では表記形式に形音義があるとして単語のひとつを単位にそれを認める。アルバイトは、片仮名以外には意味をなさない、あるばいと ではだめで、極端に言えばこういうことである。これは漢字になると様相が変わる。読みと書き表し方が複雑になるからである。たとえば、かめい かな と言うのは、仮名 のことであるから、ひとつではない。
表記論は表記行動の分析から始まったようである。日本語の書き表し方をわたしたちがどのように行うか、その表記意識、表記態度を探ろうとしたようである。表記体系に表記主体が表記記号を用いて表記手段としたのは、どの表記か。一口に言えば、表記行動を調べるというわけだが、興味のある実験である。将来に日本語が選ぶ表記が動向となる。