日本語文法論議23104
古典語を捉えて江戸期徳川時代以前の国語では、文の議論がどうであったか。構文と呼ぶものにおいては、もともと日本語で主語を明示する、あるいはその方法において現代語で言う標識を持つ、格助詞がつくことはなかった、文章において、そこによく使われるのは係助詞のハであったと、こう言えば、口語ではどうだったか、どう表現していたかと言文二途方の見方で捉えなおすことになる。
すでに指摘されているように近代以降の翻訳による文体のことを含めて格助詞の使用が認められてくるところである。
次は書評から。
『格助詞 「ガ」の通時的研究』
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青木博史 著 · 2012 — 『格助詞 「ガ」の通時的研究』. 青 木 博 史. 1. 構成と概要. キ格助詞 「ガ」の 発達は,文法史.t に おい て 注目すべ. き重要な出来事で ある。 本書 は. こ の 重大 ...
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書評 日本語 の 研 究 第 8 巻 1 号 2012 青 木 博 史
山田昌裕著『格助詞「ガ 」の通時的研究』
>主格助詞「ガ 」の発達は 文法史において注目すべき重要な出来事である。本書はこの重大なテーマに正面から取り組まれたものとしてきわ めて意義深いものといえる 。以下に,本書の構成を示すためにまず目次を掲げ,その後に記述の概要を示しておく。
https://www.hituzi.co.jp/books/455.html
第1章 主語の定義
1. 1 研究史概観
1. 1. 1 主語廃止論までの流れ
1. 1. 2 三上説に対する反論と擁護論
1. 1. 3 新たな展開
1. 1. 4 認知的観点からの規定
1. 2 本稿で扱う主語の定義
第2章 格助詞「ガ」の文法化
2. 1 原初格助詞「ガ」の分化と多機能性(Polyfunctionality)
2. 2 主語表示「ガ」の変化と一般化(Generalization)
2. 2. 1 一体化から主語表示へ
2. 2. 2 変化1:構文的制約からの解放
2. 2. 3 変化2:上接語の拡大
2. 2. 4 「一般化」(Generalization)
2. 3 「一般化」(Generalization)の背景
第3章 主語表示「ガ」の拡がりー各種表現におけるー
3. 1 強調表現における「ガ」ー「ゾ」から「ガ」へー
3. 1. 1 先行研究
3. 1. 2 用例について
3. 1. 3 強調表現における「主語ガ」「主語ゾ」の分布
3. 1. 4 「主語ガ」の強調表現における拡がり
3. 1. 4. 1 「有情+ガ」ー平安期ー
3. 1. 4. 2 「有情+ガ」ー鎌倉期ー
3. 1. 4. 3 「有情+ガ」と「有情+ゾ」との関係
3. 1. 4. 4 「非情+ガ」
3. 1. 4. 5 「非情+ガ」と「非情+ゾ」との関係
3. 1. 5 まとめ
3. 2 名詞述語文における「ガ」ー「ゾ」「コソ」から「ガ」へー
3. 2. 1 先行研究と分析の枠組み
3. 2. 2 「AガBダ」型の発生
3. 2. 3 主語表示の推移
3. 2. 4 第�期
3. 2. 4. 1 記述用法における拡がり
3. 2. 4. 2 「AゾBダ」型との関わり
3. 2. 5 第�期
3. 2. 5. 1 前項焦点用法における拡がり
3. 2. 5. 2 前項焦点用法における「AコソBダ」型との関わり
3. 2. 5. 3 記述用法における「AコソBダ」型との関わり
3. 2. 6 第�期
3. 2. 6. 1 主語名詞句
3. 2. 6. 2 述語名詞句における解答提示
3. 2. 6. 3 前項焦点的記述用法
3. 2. 6. 4 後項特立用法
3. 2. 7 まとめ
3. 3 疑問表現における「ガ」ー「ヤ」「カ」から「ガ」へー
3. 3. 1 本節の目的と用例
3. 3. 2 第一期 奈良期から平安期
3. 3. 3 第二期 鎌倉期から南北朝期
3. 3. 4 第三期 室町末期以降
3. 3. 5 主語表示「ガ」拡大の位置づけ
3. 4 「ガー連体形終止」の表現効果
3. 4. 1 先行研究と問題点
3. 4. 1. 1 連体形終止法に表現効果を認めるもの
3. 4. 1. 2 連体形終止法に表現効果を認めないもの
3. 4. 1. 3 先行研究の問題点
3. 4. 2 喚体か述体かー平安期ー 3. 4. 2. 1 「ハー連体形終止」
3. 4. 2. 2 「連体形ガー形容詞連体形」
3. 4. 2. 3 述体としての連体形終止
3. 4. 3 連体形終止の機能
3. 4. 4 位相的観点の問題点
3. 4. 4. 1 韻文における連体形終止
3. 4. 4. 2 地の文に見られる連体形終止
3. 4. 4. 3 会話文に見られる終止形終止
3. 4. 5 「ガー連体形終止」と表現効果
第4章 「ガ」の変質と主節における拡がり
4. 1 「ガ」の連体性の後退ー平安期から鎌倉期ー
4. 1. 1 主語表示と連体表示
4. 1. 2 「体言1+ガ」と「体言2」の意味的関係
4. 1. 3 「体言1+ガ」と「体言2」の構文的関係
4. 1. 4 まとめ 144 4. 2 「ガ」の連体性の後退ー鎌倉期から江戸期ー
4. 2. 1 「AガBダ」型運用上の問題点
4. 2. 2 格助詞「ガ」の機能の推移
4. 2. 3 語列と格助詞「ガ」の機能
4. 2. 4 初期の「AガBダ」型の特徴
4. 2. 5 他の統語構造における格助詞「ガ」の機能と語列
4. 2. 6 まとめ
4. 3 「ガ」の主語表示の拡がりー鎌倉期から室町末期ー
4. 3. 1 無助詞主語と助詞の付加
4. 3. 2 主節における「ガ」の拡がり
4. 3. 2. 1 非対格自動詞述語文における「ガ」
4. 3. 2. 2 非対格自動詞述語文における「ガ」付加の意味
4. 3. 2. 3 形容詞述語文における「ガ」
4. 3. 2. 4 他動詞述語文. 非能格自動詞述語文における「ガ」
4. 3. 3 疑問の係助詞と「ガ」
4. 3. 4 「ノ」と「ガ」
4. 3. 5 まとめ
4. 4 「ガ」の主語表示の拡がりー室町末期から江戸初期ー
4. 4. 1 主語表示の史的変化
4. 4. 2 「ガ」の無助詞主語への拡がり
4. 4. 3 「ヤ」「カ」への拡がり
4. 4. 4 「コソ」への拡がり
4. 4. 4. 1 強調
4. 4. 4. 2 前項焦点用法における拡がり
4. 4. 5 現代語には見られない「ガ」の用法
4. 4. 6 まとめ
第5章 主語表示「ガ」と「ノ」
5. 1 主語表示「ガ」の拡がりと「ノ」ー鎌倉期から室町末期ー
5. 1. 1 原拠本「平家物語」と『天草版平家物語』の比較
5. 1. 2 付加された「ガ」「ノ」
5. 1. 2. 1 人主語の場合
5. 1. 2. 2 非人主語(構文的相違)
5. 1. 2. 3 主節. 従属節において付加された「ノ」
5. 1. 2. 4 連体節において付加された「ガ」
5. 1. 3 「ノ」から「ガ」への移行
5. 1. 3. 1 尊敬対象表示
5. 1. 3. 2 詠嘆表現
5. 1. 3. 3 「ノ」から「ガ」へー従属節における「ガ」の拡がりー
5. 1. 3. 4 「ノ」から「ガ」へー連体節における「ガ」の拡がりー
5. 1. 4 まとめ 217 5. 2 主語表示「ガ」の拡がりと「ノ」ー江戸期ー
5. 2. 1 『狂言記』の資料性
5. 2. 2 「ガ」「ノ」と待遇性
5. 2. 2. 1 「ガ」の待遇性の変化
5. 2. 2. 2 「ノ」の待遇性の変化
5. 2. 2. 3 (表6)が示すこと
5. 2. 2. 4 「ガ」の進出した領域
5. 2. 3 「ガ」「ノ」と構文
5. 2. 3. 1 連体節内の「ガ」と「ノ」
5. 2. 3. 2 「ガ」の拡がりの偏り
5. 2. 4 まとめ
5. 3 「ガ」「ノ」の表現価値
5. 3. 1 共時態としての「ガ」と「ノ」
5. 3. 2 「ガ」と「ノ」の共存
5. 3. 3 「ガ」と「ノ」の実態
5. 3. 4 「ガ」と「ノ」の表現効果
5. 3. 5 ことばの新局面
第6章 主語表示システムの変化と「ガ」の発達
6. 1 中央語における主語目的語の表示システム
6. 2 方言における主語目的語の表示システム
6. 2. 1 『おもろさうし』
6. 2. 2 現代沖縄方言
6. 2. 3 喜界島方言
6. 2. 4 水海道方言
6. 3 中央語における主語表示システムの変化
6. 3. 1 周圏論的考察について
6. 3. 2 主語目的語表示の多様性
6. 3. 3 中央語の表示システムの特徴
6. 3. 4 言語接触による表示システムの変化
6. 4 まとめ
第7章 「ガ」の周辺の問題
7. 1 現代語には見られない「ガ」
7. 1. 1 『捷解新語』の「変」な「ガ」
7. 1. 2 狂言資料との比較
7. 1. 2. 1 既出語. 既知情報
7. 1. 2. 2 状況成分
7. 1. 2. 3 構文的特徴
7. 1. 3 『捷解新語』の「変」な「ガ」の位置づけと資料性
7. 2 『あゆひ抄』における「ガ」と「ハ」の使い分け意識
7. 2. 1 「ぞ」の「里言」
7. 2. 2 「なむ」における使い分け
7. 2. 3 「や(やは)」「か(かは)」における使い分け
7. 2. 4 まとめ
7. 3 「コソガ」の発生
7. 3. 1 先行研究
7. 3. 2 「コソガ」の用例
7. 3. 3 「コソガ」の発生過程
7. 3. 3. 1 「コソ」の変容
7. 3. 3. 2 「コソガ」発生の因子
7. 3. 4 「コソガ」の用法と変容
7. 3. 4. 1 名詞述語文における「コソ」と「ガ」
7. 3. 4. 2 「コソ」と「ガ」の相補分布
7. 3. 4. 3 「コソガ」の用法
7. 3. 4. 4 「コソガ」の拡がりー述語の多様化ー
7. 3. 5 まとめ 299 7. 4 「ガコソ」の発生
7. 4. 1 用例について
7. 4. 2 「ガコソ」形式の許容度
7. 4. 3 許容度アンケート調査と結果
7. 4. 4 「カガコソ」形式の許容度の高さ
7. 4. 5 「ガコソ」発生のメカニズム
7. 4. 5. 1 格助詞と「コソ」の承接の推移
7. 4. 5. 2 言語運用上の効率を求めて
7. 4. 5. 3 「ガコソ」形式によるさらなる効率
7. 4. 6 まとめ
第8章 まとめと課題
主格ガの確立と近代日本語の成立: 助詞のプロファイルと ...
同志社大学学術リポジトリ
https://doshisha.repo.nii.ac.jp › record › files
菊田千春 著 — 一般化が進んで係り結びの消失が決定的になったことと,格助詞ガが,明確. に主格表示として用いられるようになったことが挙げられる。 近年,日本語の歴史的な変化 ...
主格ガの確立と近代日本語の成立:
助詞のプロファイルと制約の競合という観点から
菊田千春
>近代語にはない古典語の特徴として,以下のことがあげられる。
a. 主語と目的語は無助詞であらわれることが多かった。
b. 格助詞には未発達のものがあった。
c. ガ格とノ格は主格と属格の両方の役割を果たしているように見える一
方,主格としては,主に連体形述語の節にしかおこらず,終止形述語
で終わる主節の主語にはならなかった。終止形節の主語は無助詞や係
助詞のハなどが使われた。
d. ガ格とノ格の使い分けは上接語の意味的な要因によるといわれる。
e. 係り結びが発達していた。上代(奈良期)からみられ,中古(平安期)
に広がるが,中世(鎌倉・室町期)になって衰退する。
> 国語学での主格ガの確立の通説は次のようなものである。室町期には,係り結びの崩壊という大きな言語変化が起こった。その裏には,係り結びの広がりによって,連体形終止節の使用が拡大し,終止形終止と連体形終止との区別が消失し,連体形で結ぶという係り結びの形式が壊れてしまったことがある。さらに,連体形と終止形の区別がなくなっていったことから,本来,連体形節に限られていた(いわば暫定主格であった)ガ格とノ格が,述語の活用形にしばられなくなり,主節までその分布を広げていく。その過程で,ガ格とノ格の機能分化がおこり,最終的には,ガ格が,主節にも従属節にも用いられる,正式な主格としての地位を獲得するに至る。