米国大統領のスピーチに万葉集の伝統にふれるところがあった。令和の年号におよび、日本の伝統文化に敬意を示すものである。そして取り上げた歌人に大伴旅人、もう一人の歌人、山上憶良を良き友人として述べている。令和の元号は大統領スピーチの解釈で、日本国民の一体性と美しさを祝福する、伝統の中に我々が安らぎを得られるとする。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190527/k10011931661000.html
宮中晩さん会 トランプ大統領挨拶 全文
2019年5月27日 20時11分
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こんばんは。天皇皇后両陛下、安倍総理御夫妻、御来賓の皆様。
天皇陛下の御即位の後、最初の国賓として、再び日本を訪問できましたことを大変光栄に思います。
陛下、私と妻は、この丁重なる御招待を決して忘れることはありません。
また、この威厳のある国で、日本の方々の素晴らしいおもてなしと心温まる歓迎に感謝します。
私は、米日間で大切に育まれてきた同盟関係について米国民が抱く希望とともに参りました。
両国の益々繁栄する関係が次なる段階に歩みを進めるに際し、米国国民は陛下の下で新しい時代を迎える日本の全ての人々に対し、幸運をお祈りしています。
おめでとうございます。
今朝、私と妻メラニアは、光栄にも、ここ宮中で、天皇皇后両陛下にお目にかかりました。
2年前、私たちが前回日本を訪問した際には、光栄にも、現在の上皇上皇后両陛下にお目にかかりました。
日本の皇室の方々が私たちとの御友誼を保って下さっていることに深く感謝申し上げます。
今般の訪日では、とても良き友人である安倍総理御夫妻と更に多くの時間を共に過ごせることについても嬉しく思っています。
この2年間、私たちは、密接で信頼に基づくパートナーシップを育み、私たちはこれを非常に大切にしています。
日本の新しい元号は令和で、美しい調和を意味します。
この言葉は、万葉集と呼ばれる日本古来の和歌集に由来していると伺っています。
令和は、日本国民の一体性と美しさを祝福するものです。
そして、それはまた、変わりゆく時間の中でも、我々が受け継いできた伝統の中に我々が安らぎを得られることを思い起こさせます。
令和がその由来をもつ万葉集の第5巻には、2人の歌人によって書かれた文章の中に、この瞬間に関する重要な洞察を与える記述があります。
その歌人の一人は、大伴旅人ですが、春がもつ潜在的な可能性について書いています。
もう一人の歌人は山上憶良で、1人目の歌人の良き友人であり、家族や将来の世代に対する私たちの厳粛なる責任を想起させます。
これらはいずれも古来の叡知から受け継がれてきた美しい教えです。
そして今、私たちは目の前に広がる無限の可能性を喜ばしく思います。
それは、技術、宇宙、インフラ、防衛、商業、外交、その他はるかに多くの分野での新たなフロンティアにおける協力です。
そして、日本国民の一体性と美しさを祝福するように、私たちの同盟も受け継がれてきた豊かな財産であり、子供たちに受け継いでいかなければならないものであることを心にとどめています。
陛下、美しい調和の精神の下で、この新しい時代における多くの可能性を共に祝福します。
過去と将来の世代への私たちの務めを心にとどめます。
そして、米国と日本との間で大切に育まれてきた絆を我々の子孫のために守っていきます。
御礼を申し上げるとともに、令和が両陛下と皇室、日本全国の人々にとって平和と繁栄の時代となることを心よりお祈り申し上げます。ありがとうございました。
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天皇陛下 宮中晩さん会でおことば 全文
2019年5月27日 20時07分
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この度、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ閣下が、令夫人と共に、我が国を再び御訪問になりましたことを心から歓迎いたします。
特に、私が皇位を継承してから最初の国賓として、今宵、大統領御夫妻を晩餐会の席にお迎えすることができ、嬉しく思います。
我が国が、鎖国を終えて国際社会に足を踏み出したのは、今から百六十五年前の一八五四年に、貴国との間で日米和親条約を締結したことに始まります。それ以来、日米両国とその国民は、様々な困難を乗り越え、相互理解と信頼を育み、今や太平洋を隔てて接する極めて親しい隣国として、強い友情の絆で結ばれております。
特に近年、両国の関係が、政治や経済にとどまらず、芸術、文化、スポーツ、最先端技術など、幅広い分野で深みを増していることを、喜ばしく思います。
また、日米両国が困難な時に互いに助け合える関係にあることは大変心強く、取り分け、八年前の東日本大震災の折に、二万人を超える貴国軍人が参加した「トモダチ作戦」を始め、貴国政府と貴国国民から、格別の温かい支援を頂いたことを、私たちは決して忘れることはないでしょう。
貴国と皇室との交流の歴史にも、また特別なものがあります。私の祖父である昭和天皇は、香淳皇后と御一緒に、一九七一年、御即位後初めての外国御訪問の途次に立ち寄られたアラスカにおいて、ニクソン大統領御夫妻より、そして、一九七五年に御訪米をされた折には、フォード大統領御夫妻より、それぞれ歓迎を頂きました。
また、私の両親である上皇上皇后両陛下も、皇太子時代の一九六○年に初めて貴国を公式訪問された折には、アイゼンハワー大統領御夫妻始めの歓待を受けられたほか、御即位後の一九九四年には、国賓として、クリントン大統領御夫妻をはじめ貴国の国民から手厚くおもてなしいただいたと伺っています。
私自身の貴国との最初の思い出は、一九七○年の大阪万博であり、当時私は十歳でしたが、月の石を間近に見たことや、チャールズ・リンドバーグ飛行士(※1)に、水上飛行機シリウス号(※2)の操縦席に乗せていただいたことを、今でも鮮明に覚えています。
その後、一九八五年に、英国留学の帰途、貴国を初めて長期に訪れた折には、レーガン大統領から温かくお迎えいただきました。マンハッタンの摩天楼、サンフランシスコやニューオリンズの街並み、グランドキャニオンの威容など、都市や自然のスケールの大きさと多様性に強い印象を受けたことが懐かしく思い起こされます。
皇后も、幼少の時期をニューヨークで、また、高校、大学時代をボストン郊外で過ごしており、私どもは貴国に対し、懐かしさと共に、特別の親しみを感じています。
トランプ大統領御夫妻が、前回の御訪問の折にお会いになった上皇陛下は、天皇として御在位中、平和を心から願われ、上皇后陛下と御一緒に、戦争の犠牲者の慰霊を続けられるとともに、国際親善に努められました。今日の日米関係が、多くの人々の犠牲と献身的な努力の上に築かれていることを常に胸に刻みつつ、両国の国民が、これからも協力の幅を一層広げながら、揺るぎない絆を更に深め、希望にあふれる将来に向けて、世界の平和と繁栄に貢献していくことを切に願っております。
日本は、今、緑の美しい季節を迎えています。大統領御夫妻の今回の御滞在が、楽しく、実り多いものとなることを願うとともに、お二方の御健勝、そして、アメリカ合衆国の繁栄と貴国国民の幸せを祈り、杯を挙げたく思います。
(※1)チャールズ・A・リンドバーグ飛行士(米国人)は、一九二七年に、「スピリット・オブ・セントルイス」号と名付けた単葉単発単席のプロペラ機で、世界で初めて大西洋横断単独無着陸飛行に成功したことで知られている。
(※2)水上飛行機「シリウス」号は、リンドバーグ飛行士が、一九三一年に北太平洋航路の調査のため,ニューヨークから日本を経て中国まで飛行した際に使用したもの。一九七○年の大阪万博の折に展示された。