かつて、厳しい女性上司に仕えたことがある。
着任当初は彼女の要求に自分の能力が追いつかず、叱責の連続。
その叱責ぶりは迫力満点で、時には全人格を否定されるような叱責も受けた。
ある日、終業間際にガンガンにやられ、彼女が帰った後で帰り支度をしていたところ、遠巻きに様子を見ていた他の部署の先輩から、
「…大丈夫か?あんなに怒られて。」
と慰められたが、自分の中では『できなかったのだから叱られて当然』と思っていたので、
「ありがとうございます。大丈夫ですよ♪」
と笑顔で(多少引きつっていたのは覚えているが)答えて驚かれたことがある。
その意外そうな表情の元になっているのは、「部下を潰す」という周囲の人々の彼女への評価であっただろう。
「部下を次々と潰す」という評価は、その上司のもとへ着任する前にも聞いていたが、自分は大丈夫♪と思っていた。
なぜなら、その女性上司と共に仕事をするのは2回目で、仕事ができる人間に対しては、彼女は正しい評価をすることを知っていたからだ。
そして、彼女が“怒る”のは、彼女のオーダーを完遂できないとき、あるいは仕事に手抜きが見られたときに“叱る”ためだということも知っていたからである。
先の先輩の言葉に、彼女に対する周囲の誤解がある。
確かに感情的に怒るときもあったが、それも仕事ができていないことに対する叱責の延長線上であって、ただ単に“怒っている”のではない。
彼女のもとでは、仕事ができない部下は叱られる場面が多くなり、そうなるとどうしても怒られるときも増えてしまうのだが、これを周囲の人間は、
「あいつはいつも部下を怒鳴りつけて潰してしまう」
という悪評に結び付けていくのだ。
また、彼女に「怒られてばかりいる」と不満に思い続けていた部下が、他の職場に行って悪評を喧伝する場合もあっただろう。
いずれにせよ、かの上司に対する悪評の中に、しょっちゅう「女のくせに」という理不尽なニオイがして、反吐が出る思いがしたものである。
彼女に理解を示していた幹部達の中にも、
「あいつが男やったら良かったのになぁ」
と嘆く声があがるのを度々耳にした。
「女性だから」という全く意味の無い基準が作用して、正当な評価が下されないという話もよく聞いた。
なんやねんそれ?
映画に登場する、メリル・ストリープ演じる女性編集長について部下のアン・ハサウェイが友人達と交わす会話。
彼女(編集長)が男性だったらその仕事の内容(「質」とも言うべきだろうか)で評価されるのに、女であるばかりに正当に評価されず、悪口を言われることが多い、てなことを言うシーンがあった。
仕事ができる女性に対するゲスな評価というものは、洋の東西を問わないことを改めて認識した。
ヴォーグ誌の女性編集長のアシスタントを務めた経験を持つローレン・ワイズバーガーのベストセラー小説を映画化したこの作品。
不可能としか思えないようなオーダーを出す上司(メリル・ストリープ)と、ミッションを達成しようと東奔西走悪戦苦闘するその部下(アン・ハサウェイ)。
本名さえ呼ばれず、まるで人間扱いされないところから始まる彼女のキャリアだが、あるキッカケを境に、一人前の部下として認められていく。
若手社員の成長物語ではあるが、自分が今現在会社の中で置かれている立場によって、大きく見方・感じ方が違う作品。
いろんな人と語り合ってみると面白いだろう。
「プラダを着た悪魔」
2006年/アメリカ 監督:デビッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グレニアー、サイモン・ベイカー
着任当初は彼女の要求に自分の能力が追いつかず、叱責の連続。
その叱責ぶりは迫力満点で、時には全人格を否定されるような叱責も受けた。
ある日、終業間際にガンガンにやられ、彼女が帰った後で帰り支度をしていたところ、遠巻きに様子を見ていた他の部署の先輩から、
「…大丈夫か?あんなに怒られて。」
と慰められたが、自分の中では『できなかったのだから叱られて当然』と思っていたので、
「ありがとうございます。大丈夫ですよ♪」
と笑顔で(多少引きつっていたのは覚えているが)答えて驚かれたことがある。
その意外そうな表情の元になっているのは、「部下を潰す」という周囲の人々の彼女への評価であっただろう。
「部下を次々と潰す」という評価は、その上司のもとへ着任する前にも聞いていたが、自分は大丈夫♪と思っていた。
なぜなら、その女性上司と共に仕事をするのは2回目で、仕事ができる人間に対しては、彼女は正しい評価をすることを知っていたからだ。
そして、彼女が“怒る”のは、彼女のオーダーを完遂できないとき、あるいは仕事に手抜きが見られたときに“叱る”ためだということも知っていたからである。
先の先輩の言葉に、彼女に対する周囲の誤解がある。
確かに感情的に怒るときもあったが、それも仕事ができていないことに対する叱責の延長線上であって、ただ単に“怒っている”のではない。
彼女のもとでは、仕事ができない部下は叱られる場面が多くなり、そうなるとどうしても怒られるときも増えてしまうのだが、これを周囲の人間は、
「あいつはいつも部下を怒鳴りつけて潰してしまう」
という悪評に結び付けていくのだ。
また、彼女に「怒られてばかりいる」と不満に思い続けていた部下が、他の職場に行って悪評を喧伝する場合もあっただろう。
いずれにせよ、かの上司に対する悪評の中に、しょっちゅう「女のくせに」という理不尽なニオイがして、反吐が出る思いがしたものである。
彼女に理解を示していた幹部達の中にも、
「あいつが男やったら良かったのになぁ」
と嘆く声があがるのを度々耳にした。
「女性だから」という全く意味の無い基準が作用して、正当な評価が下されないという話もよく聞いた。
なんやねんそれ?
映画に登場する、メリル・ストリープ演じる女性編集長について部下のアン・ハサウェイが友人達と交わす会話。
彼女(編集長)が男性だったらその仕事の内容(「質」とも言うべきだろうか)で評価されるのに、女であるばかりに正当に評価されず、悪口を言われることが多い、てなことを言うシーンがあった。
仕事ができる女性に対するゲスな評価というものは、洋の東西を問わないことを改めて認識した。
ヴォーグ誌の女性編集長のアシスタントを務めた経験を持つローレン・ワイズバーガーのベストセラー小説を映画化したこの作品。
不可能としか思えないようなオーダーを出す上司(メリル・ストリープ)と、ミッションを達成しようと東奔西走悪戦苦闘するその部下(アン・ハサウェイ)。
本名さえ呼ばれず、まるで人間扱いされないところから始まる彼女のキャリアだが、あるキッカケを境に、一人前の部下として認められていく。
若手社員の成長物語ではあるが、自分が今現在会社の中で置かれている立場によって、大きく見方・感じ方が違う作品。
いろんな人と語り合ってみると面白いだろう。
「プラダを着た悪魔」
2006年/アメリカ 監督:デビッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グレニアー、サイモン・ベイカー