伝説の寿司職人である父親(ジジ・ぶぅ)のもとで、後継者となるべく厳しい修行に励んでいたケイコ(武田梨奈)。
しかし父親から寿司職人としての致命的な弱点を指摘され、あまりのショックに家を飛び出してしまう。
放浪の末にたどりついた田舎の温泉旅館で、住み込みで仲居として働きはじめたが、他の仲居たちからいじめられ、女将(亜紗美)には叱られてばかり。
唯一、優しく気遣ってくれる雑用係の澤田(松崎しげる)だけが心の拠り所だった。
ある日、小松製薬の一行が、美味しいと評判をとっている旅館の寿司を味わいに、社員旅行でやって来る。
高飛車な態度の小松社長(手塚とおる)を相手に、所詮味など分からないと寿司職人の土田(津田寛治)は侮りつつ、名物の寿司を宴席で握ってみせる。
握り立ての寿司を「美味い」と満足の表情を浮かべる小松社長。
手を抜いた土田の“仕事”、またそんな寿司を美味いと食べてグルメを気取る小松社長の様子に我慢ならなくなったケイコは、二人の“茶番”をズバリと指摘!
激怒した土田と小松製薬の社員達に襲いかかられるが、厳しい寿司の修行で身に付けたカンフーを武器に受けて立つ。
大乱闘の場となった宴会場をよそに、小松製薬に恨みを持つ不気味な風貌の山田(島津健太郎)という男が現れる。
彼は元小松製薬社員で、死んだ細胞を生き返らせるという画期的な薬品を開発するが、生き返った生物が凶暴化するという副作用があり、これを闇に葬ろうとした会社から解雇されたうえに犯罪者にされ、刑務所にぶち込まれていたのである。
山田は、この恐怖の薬品を宴席の寿司に注入。
すると、トロ、エビ、イクラ、あぶりサーモンと次々に寿司が凶暴化し、人間を襲いはじめたのである!
人々は血まみれになって逃げ惑い、阿鼻叫喚の世界が繰り広げられる中、ケイコは襲い来る寿司に果敢に立ち向かう……!
片腕をマシンガンに改造した少女が、殺された弟の復讐に立ち上がる「片腕マシンガール」、暗殺ロボットに改造された姉妹が、悪の陰謀に立ち向かう「ロボゲイシャ」など、戦う美少女と独創的なキャラクターが特徴の井口監督最新作。
海外にも多くの熱狂的ファンを持つ井口監督ならではの、日本文化をモチーフにした…否、パロディにした物語が展開されるが、今回題材に選ばれたのは、日本を代表する食文化である寿司。
その寿司が、あろうことか大挙して人間に襲いかかるという、オソロしくもオモシロい、パニック・ムービー。
ある日突然、“まさか”と思うものが人々を襲うという映画として思い出すのは、「アタック・オブ・ザ・キラートマト」(1978年アメリカ)。
理由も前触れもなく、いきなりトマトが人々を襲っているという状況から始まり、ワケのわからない恐怖と唖然とするばかりのバカバカしさが素晴らしい映画だった。
この「デッド寿司」は、襲いかかる寿司の中で唯一人間の味方になる「玉子ちゃん」の存在が「グレムリン」的な味わいを醸し出し、物語にふくらみを持たせていて、ただバカバカしい“まさか”だけではないところが、監督自ら手掛けた脚本の妙味。
とはいえ、「デッド寿司」はこれまでの井口作品を上回る、お色気とくだらなさ全開のギャグもまた大きな特徴。
寿司に襲われて息も絶え絶えになっている小松社長の秘書の前に出た男が、
「もうすぐ彼女は死んでしまう。それなら、彼女がまだ生きているうちに、胸を揉んでやろう」
などと心の中で呟く。
怪物に追われた男が大浴場に逃げ込み、湯の中で隠れていると、それを知らずに入ってきた女性客が、
「あ~、誰もいなくてサイコー♪」
などとご機嫌で体を洗っているところに怪物がやってきて、哀れ女性客は美乳を曝したまま首を飛ばされてしまう。
ここまでくだらないギャグが散りばめられたお色気が炸裂すれば天晴であり、どこか清々しささえ漂う♪
しかし、ただくだらないギャグ連発だけの映画ではない。
え!?まだ特徴があるのか?などと言うべからず。
黒帯の腕前を持つ空手を生かしてオーディションを勝ち抜き、「ハイキックガール!」で見事に映画初主演を果たした武田梨奈のカンフー・アクションは見事!
前後から男に挟み撃ちにされたケイコが、前の男の股間を蹴り上げ、返す足のかかとで後ろの男の股間を蹴り上げるアクションなどは秀逸!
息の根を止めた寿司をつないで作った「寿司ヌンチャク」を駆使した戦闘シーンや、怪物相手に魅せる切れ味鋭いアクロバティックなスタントなど、若き日の志保美悦子もかくやの、キレのある吹き替えなしのアクションは見応え十分♪
また、色気とハチャメチャギャグだけでなく、おなじみ西村喜廣監修による豪快に血しぶきが飛ぶスプラッター・シーンは本作も健在。
グラインドハウス映画の基本をしっかり押さえ、娯楽に徹したB級テイストは、正に井口作品の真骨頂である。
笑いあり、お色気あり、アクションあり、スプラッターあり、そして怪獣までもが登場してきて、もう何が何だか何でもかんでもアリでお腹いっぱいが楽し過ぎる、エンタメテンコ盛り傑作パーティ・ムービー!
「デッド寿司」
2012年/日本 監督:井口昇
出演:武田梨奈、松崎しげる、須賀貴匡、仁科貴、亜紗美、村田唯、ジジ・ぶぅ、島津健太郎、手塚とおる、津田寛治
しかし父親から寿司職人としての致命的な弱点を指摘され、あまりのショックに家を飛び出してしまう。
放浪の末にたどりついた田舎の温泉旅館で、住み込みで仲居として働きはじめたが、他の仲居たちからいじめられ、女将(亜紗美)には叱られてばかり。
唯一、優しく気遣ってくれる雑用係の澤田(松崎しげる)だけが心の拠り所だった。
ある日、小松製薬の一行が、美味しいと評判をとっている旅館の寿司を味わいに、社員旅行でやって来る。
高飛車な態度の小松社長(手塚とおる)を相手に、所詮味など分からないと寿司職人の土田(津田寛治)は侮りつつ、名物の寿司を宴席で握ってみせる。
握り立ての寿司を「美味い」と満足の表情を浮かべる小松社長。
手を抜いた土田の“仕事”、またそんな寿司を美味いと食べてグルメを気取る小松社長の様子に我慢ならなくなったケイコは、二人の“茶番”をズバリと指摘!
激怒した土田と小松製薬の社員達に襲いかかられるが、厳しい寿司の修行で身に付けたカンフーを武器に受けて立つ。
大乱闘の場となった宴会場をよそに、小松製薬に恨みを持つ不気味な風貌の山田(島津健太郎)という男が現れる。
彼は元小松製薬社員で、死んだ細胞を生き返らせるという画期的な薬品を開発するが、生き返った生物が凶暴化するという副作用があり、これを闇に葬ろうとした会社から解雇されたうえに犯罪者にされ、刑務所にぶち込まれていたのである。
山田は、この恐怖の薬品を宴席の寿司に注入。
すると、トロ、エビ、イクラ、あぶりサーモンと次々に寿司が凶暴化し、人間を襲いはじめたのである!
人々は血まみれになって逃げ惑い、阿鼻叫喚の世界が繰り広げられる中、ケイコは襲い来る寿司に果敢に立ち向かう……!
片腕をマシンガンに改造した少女が、殺された弟の復讐に立ち上がる「片腕マシンガール」、暗殺ロボットに改造された姉妹が、悪の陰謀に立ち向かう「ロボゲイシャ」など、戦う美少女と独創的なキャラクターが特徴の井口監督最新作。
海外にも多くの熱狂的ファンを持つ井口監督ならではの、日本文化をモチーフにした…否、パロディにした物語が展開されるが、今回題材に選ばれたのは、日本を代表する食文化である寿司。
その寿司が、あろうことか大挙して人間に襲いかかるという、オソロしくもオモシロい、パニック・ムービー。
ある日突然、“まさか”と思うものが人々を襲うという映画として思い出すのは、「アタック・オブ・ザ・キラートマト」(1978年アメリカ)。
理由も前触れもなく、いきなりトマトが人々を襲っているという状況から始まり、ワケのわからない恐怖と唖然とするばかりのバカバカしさが素晴らしい映画だった。
この「デッド寿司」は、襲いかかる寿司の中で唯一人間の味方になる「玉子ちゃん」の存在が「グレムリン」的な味わいを醸し出し、物語にふくらみを持たせていて、ただバカバカしい“まさか”だけではないところが、監督自ら手掛けた脚本の妙味。
とはいえ、「デッド寿司」はこれまでの井口作品を上回る、お色気とくだらなさ全開のギャグもまた大きな特徴。
寿司に襲われて息も絶え絶えになっている小松社長の秘書の前に出た男が、
「もうすぐ彼女は死んでしまう。それなら、彼女がまだ生きているうちに、胸を揉んでやろう」
などと心の中で呟く。
怪物に追われた男が大浴場に逃げ込み、湯の中で隠れていると、それを知らずに入ってきた女性客が、
「あ~、誰もいなくてサイコー♪」
などとご機嫌で体を洗っているところに怪物がやってきて、哀れ女性客は美乳を曝したまま首を飛ばされてしまう。
ここまでくだらないギャグが散りばめられたお色気が炸裂すれば天晴であり、どこか清々しささえ漂う♪
しかし、ただくだらないギャグ連発だけの映画ではない。
え!?まだ特徴があるのか?などと言うべからず。
黒帯の腕前を持つ空手を生かしてオーディションを勝ち抜き、「ハイキックガール!」で見事に映画初主演を果たした武田梨奈のカンフー・アクションは見事!
前後から男に挟み撃ちにされたケイコが、前の男の股間を蹴り上げ、返す足のかかとで後ろの男の股間を蹴り上げるアクションなどは秀逸!
息の根を止めた寿司をつないで作った「寿司ヌンチャク」を駆使した戦闘シーンや、怪物相手に魅せる切れ味鋭いアクロバティックなスタントなど、若き日の志保美悦子もかくやの、キレのある吹き替えなしのアクションは見応え十分♪
また、色気とハチャメチャギャグだけでなく、おなじみ西村喜廣監修による豪快に血しぶきが飛ぶスプラッター・シーンは本作も健在。
グラインドハウス映画の基本をしっかり押さえ、娯楽に徹したB級テイストは、正に井口作品の真骨頂である。
笑いあり、お色気あり、アクションあり、スプラッターあり、そして怪獣までもが登場してきて、もう何が何だか何でもかんでもアリでお腹いっぱいが楽し過ぎる、エンタメテンコ盛り傑作パーティ・ムービー!
「デッド寿司」
2012年/日本 監督:井口昇
出演:武田梨奈、松崎しげる、須賀貴匡、仁科貴、亜紗美、村田唯、ジジ・ぶぅ、島津健太郎、手塚とおる、津田寛治