世界記憶遺産:「シベリア抑留」「東寺」登録 日本5件に
「舞鶴への生還」(申請者・京都府舞鶴市)は、舞鶴港に引き揚げた人たちの手記など570点で、市文化財に指定されている。抑留者がシラカバの皮に、ストーブのすすをインク代わりにしてつづった「白樺日誌」や抑留中の収容所で発行された新聞のほか、戦後のヒット曲「岸壁の母」のモデル、故端野いせさんが息子に宛てた手紙も含まれる。舞鶴市の舞鶴引揚記念館で約40点が常設展示されている。今後、全ての写真をウェブサイトで公開する予定。
東寺百合文書(申請者・政府)は、794年の平安遷都とともに建立された東寺に伝わる8〜18世紀の文書約2万5000点。仏教史や寺院史の研究上、貴重な史料で、足利義満の直筆や織田信長の印入りの文書もある。京都府立総合資料館(京都市)に収蔵され、ウェブサイト(http://hyakugo.kyoto.jp/)で全点の写真が公開されている。
記憶遺産の審査は2年に1回。政府申請に限られる世界遺産と異なり、自治体や個人でも申請できるが、審査対象となるのは1国2件までとなっている。2015年登録の候補を巡っては4件が申請されたため、初めて国内選考が実施され、今回の2件に絞られた。【三木陽介】
◇シベリア抑留
第二次世界大戦で日本が無条件降伏した1945年8月以降、当時のソ連が旧満州(中国東北部)や朝鮮半島などに駐留していた60万人規模とみられる日本兵や軍属らを、シベリアをはじめとするソ連国内やモンゴルなどの周辺地域へ送り、木材伐採や鉄道・道路建設といった労働に従事させた。抑留は最長で56年まで続き、飢えや寒さなどに苦しむ過酷な状況下で、6万人近くが死亡したと推定されている。