昨日と今日の気温差はなんたることでありましょう。せめて5度以内にしてもらえれば助かるのですが、空模様だけは思うとおりにはなりません。
朝食後に趣味部屋の掃除をしていると、先日ランチを共にしたT君から電話がかかってきました。
「バブさん、午後からおじゃましてもいいですかね?」
もちろん、誘ったのは私の方ですから断る理由もありません。
「午後からお客さんが来るから、家の仕事は無しね。」
「え~~せっかくいい天気なのに・・・」
さぁ、午後からはジャズ喫茶「BABU HOUSE」(?)をオープンせねばなりません。
「趣味部屋にもう一つ椅子を用意してと・・・」
「それじゃあ、午前中の内に買い物だけは行ってきてよ。お客さんに出すお茶菓子も無いよ。」
「はーい」
こういう時の返事はじつによろしいんです私。しかも同時にナイス・アイディア(これは死語か?)が浮かびました。
「今晩はT君をダシに、我が家で飲み会というのはどうだろう?????」
仕入れてきましたよ。ビールにワインにバーボン、それとバブ・シェフ特製つまみの材料。(ふふふふふ)
午後1時過ぎにT君はやってまいりました。それもケーキとビールまで持参で
「あら、すいません。汚いところですけど、ゆっくりなさっていって下さい。」
(ケーキの力は絶大だ!)
ともかく、ジャズ喫茶「BABU HOUSE」(?)オープンです。
昔を思い出しながら円盤をまわしていると、プレーヤーが一台しかありませんので音の切れ間は出てしまうものの、なんだかとてもいい気分。
「あーっ!リクエスト・カードは用意してなかったなぁ~~。まぁ、常連のT君だから、口頭でのリクエストも特別に許す!はははははは」
とリストを見せると
「リクエストなんて言われったって、何をリクエストしていいか、わかんないっすよ。」
「前に聴いたことがあるものでもいいし、ちょっとでも好きなプレーヤーがいたらプレーヤーで選んでも、曲で選んでもいいよ。面倒だったら、ジャケットで適当に選んでもいいし。」
彼が選んだのは「WALTZ FOR DEBBY / BILL EVANS」でした。
順当、順当、これでいいんですよね。
ちょっと小難しいジャズ喫茶で「WALTZ FOR DEBBY」なんかリクエストしたら笑われるんじゃないか、なんて考えるのは愚の骨頂。まして、ジャズ喫茶「BABU HOUSE」(?)では、誰に気を遣う必要もない。
一生懸命ライナーノーツを読みながら聴くT君の姿は、まさに昔のジャズ喫茶での私の姿にそっくりじゃありませんか。
「うわぁ、これいいっすねぇ」
T君が感嘆の声を上げたのは、タイム盤の「BOOKER LITTLE」でした。
(なんと嬉しいことを言ってくれるじゃあ~りませんか)
「バブさんは、どんなのが好きなんですか?」
「えっ?詰まるところ持ってるアルバムはどれも好きなんだけどね・・・・」
「CRESCENT / JOHN COLTRANE」をかけると(本当は「LIVE AT VILLAGE VANGUARD」をかけようかとも思ったんですけどね。)
「へぇ~~、やっぱりコルトレーンなんですね。」
夕方6時近くまで、ゆっくり十一、二枚のレコードを楽しんだでしょうか。
「今日は予定無いんだろ?晩飯付き合っていってよ。」
音源をCDに換え、私はいそいそとつまみ作りです。
蓮根でエビのすり身、ホタテを挟んで揚げてみました。
アボガド・蟹サラダ(缶詰ですよ)
まずはビールで「乾杯!」
その後は、私はバーボン、彼はワインで大盛り上がりでした。
そして、二人のジャズ談義は、彼が帰るついさっきまで続いたのでありました。
私は食べませんでしたが、T君には、冷製パスタを用意しました。
「まだまだ聴かせていないレコードもあるし、またいつでもビール持って遊びにおいで」
次回、ジャズ喫茶「BABU HOUSE」(?)の営業日はいつになることでしょう。
さて、今日の一枚は、彼のリクエスト盤です。
たしかに、私も「こんなベタを紹介するのもなぁ」と考えていたふしがあります。ですから、3年近くブログを書き続けていながら、この名盤を紹介しなかったのでしょう。
内容についての説明は、あえて必要ないでしょうから、『珠玉のピアノ・トリオ』誕生について少々、
エバンスがマイルスのグループを離れて、最初に組んだトリオは、エバンス、ジミー・ギャリソン、ケニー・デニスというメンバーでした。これがエバンスの希望により結成されたトリオであったのか否かは別として、1959年11月から『ベイジン・ストリート・イースト』に出演するため、10月からリハーサルに入ったのです。
『ベイジン・ストリート・イースト』での評判は燦々たるもので、話題にも上らない始末、
もっとも、このステージのメインはエバンス・トリオではなく、ベニー・グッドマン率いるグループでありましたし、そもそもピアノ・トリオは『カクテル・ピアニスト』による合間演奏との認識が強い時代でもありましたから、しかたがないともいえますが、ベーシストとドラムに関してはメンバーまで何度も入れ替わる始末でした。
結局、最後にこのステージに立っていたのは、エバンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンというメンバーだったのです。
つまり、今日のアルバムの名演奏を今耳に出来るのも、『ベイジン・ストリート・イースト』で失敗してくれたおかげだとも言えるわけです。
よかったよかった(笑)
ちなみに、デニスは別として、ギャリソンに関して、エバンスとしてはそれなりの構想も持っていたようで、ともすれば、エバンス、ギャリソン、モチアンというトリオが『珠玉のピアノ・トリオ』になっていたかもしれないという話もあります。
でも、電話のベルともインタープレイするとも言われたラファロ、彼あってのエバンス・トリオ、これも揺るがぬ総意でありますよね。
WALTZ FOR DEBBY / BILL EVANS TRIO
1961年6月25日録音
BILL EVANS(p) SCOTT LAFARO(b) PAUL MOTIAN(ds)
1.MY FOOLISH HEART
2.WALTZ FOR DEBBY
3.DETOUR AHEAD
4.MY ROMANCE
5.SOME OTHER TIME
6.MILESTONES
おまけ
エバンスが「TRIO」のクレジットを、プロデューサーのオリン・キュープニュースに「PORTRAIT IN JAZZ」から、入れるように要望したのだそうで、『三人の音楽』という考えを明確に感じていたところがうかがえます。
そのキュープニュースも「誰か一人がソロをとり、あとの二人が伴奏にまわる必要はない。たとえばベーシスト、どうしてベーシスとは、絶えず誰かの背後で弾いていなければならないのだろう。」とライナーノーツに書き残しています。
ここに、ピアノ、ベース、ドラムによるインタープレイが完成されたのでありました。