Une vie / Guy de Maupassant
Une vie (1)
————————————【1】—————————————————
Jeanne, ayant fini ses malles, s'approcha de la fenêtre,
mais la pluie ne cessait pas.
————————————《訳》—————————————————
荷造りを終えたジャンヌは窓に近寄った.
でも雨は止んでいなかった.
———————————〘語句〙—————————————————
une vie ある人生(「女の一生」と訳されている有名な小説のタイトル)
私たちは、フランス語学習をしているので、「ある人生」
としておきます.私たちの学習では「女の一生」は
"la vie d'une femme"
Jeanne ジャンヌ(女性名)、ジャーヌと訳されることもあります.
実際のところ、フランス人の発音は、この中間に聞こえます.
malle (f) 大型トランク
———————————≪文法≫—————————————————
Jeanne, ayant fini ses malles, s'approcha de la fenêtre.
という前半部ですが、 ayant fini ses malles という語句が
文の中に割り込んでいて、初心者の私たちを悩ませています.
迷惑な語句にはしばらく消えてもらいましょう.
Jeanne s'approcha de la fenêtre.
ジャンヌは窓に近寄った.
まだわからない方も多いでしょうね.
その原因は S'
これは se [スと読む]という言葉の省略形です.
se [ス]があるためにスーっと文を読めない!
なるほど.では
se とはなにか?
それは主語と同じ人を指す人称代名詞で、
この文の場合、se = Jeanne です.
ということは、この文は
「ジャンヌはジャンヌを窓に近づけた」
となるわけですが、
これも馴れないと奇怪な文章ですね.
馴れたときがフランス語をモノにするときだと
信じて邁進しましょう!
フランス語では再帰代名詞と言って、自分自身に
他動詞が作用する表現を多用します.
彼女は自分自身を窓に近づける=彼女は窓に近づく
というわけなのですが、approcher [アプロシェ]
という他動詞を使って、自分自身をその目的語に置いて
表現するこの表現を se approcher という 動詞とみなして
「代名動詞」というものを生み出しました.
代名動詞は目的語の人称代名詞内蔵の動詞でございます.
妊婦さんが赤ちゃんを内蔵しているように.
そういう動詞です.
フランス人の画期的なこのアイデアに敬意をもって学んでいきましょう.
さて、一段落したところで、さっき追い出した語句を呼び戻します.
ayant fini ses malles
これは、分詞構文というもので、分詞というのが ayant [ɛjã エイヤン]
で、avoir という動詞の変形で「現在分詞」と呼びます.
一応正体は avoir なので fini という過去分詞とともに
複合過去形を作っています.
fini は finir (終わる)の過去分詞なので avoir fini で「終わった」
分詞構文は「~したら」「~すると」など様々に訳せるので、
一番おさまりのいい訳をつけましょう.
finir ses malle は直訳すると「大型トランクを終える」
何のこっちゃ?
まあまあ怒らずに!相手は小説なので、文学的香りが必要なのだよ.
美しい女性のあなたに香水が必要なように!
ということで「大型トランクを終える」=「荷造りを終える」
と読み手の方でホローいたしましょう.
これで
Jeanne, ayant fini ses malles, s'approcha de la fenêtre
は
荷造りを終えたジャンヌは窓に近寄った.
となることが納得いただけたでしょうか?
でもそのあと雨が降っていたといっているのでモーパッサンも
いじわるな人だねえ…