𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
さすらいの青春(280)
—————————【280】————————————————
Sans autre idée que la volonté tenace et folle de
rattraper sa voiture, tout le sang au visage, en proie
à ce désir panique qui ressemblait à la peur, il
courait... Parfois son pied butait dans les ornières.
.——————————(訳)——————————————————
馬車を取り戻そうという執拗で、顔を真っ赤に染
めるほどの狂気じみた意志以外に別段の思いはなく、
モーヌはこの恐怖にも似た狼狽の中の欲望に憑りつか
れていた.モーヌは走った.時々轍の溝に足が躓いて
いた
.—————————《語句》—————————————————
sans autre idée que ~ :
~以外の他の気持ちはなかったので
【一般に】否定辞 + autre ~ que...
... 以外の~は何もない
idée:(f) 着想、考え、見当、思いつき、アイデア
Aucune idée. / 何も思いつきません.
ne ...aucun(e) 「どんな~も…ない」の省略形.
Je n'en ai aucune idée. / 何も思いつきません.
volonté:(f) 意志、意向
tenace:[トナス](形)❶ 根強い、粘り強い
❷ (人が)頑固な、一徹な
folle:(fou の女性形)<fou [fu フー](形) 気の狂った
気違いじみた、
rattraper:(他) 再び捕らえる、取り戻す、追いつく
sang:(m) 血、血液
proie:(f) 餌食、獲物
(être) en proie à ~ / ~の虜になっている
/ ~に苦しめられている
Ce pays est en proie à la guerre civil.
この国は内戦にさいなまれている.
panique:(f) 恐慌、パニック、恐怖心
butait:(単純過去3単)
<buter [byte](自) [contre に] ぶつかる、
つまづく;
buter contre un caillou. / 小石につまづく
ornière:[オルニエール](f) わだち(轍)
chemin creusé d'ornières / わだちのついた道
.————————— ≪感想≫ ———————————————
Parfois son pied butait dans les ornières.
ときどき足が轍につまづいていた.
直訳するとヘンテコな日本語ができあがります.
ふつうの日本語に直すと、
「ときどき足をわだちの溝にとられて躓かせて
いました」
これでもまだ完全に自然な日本語ではありません.
「モーヌは走ったが、その足はときどき、わだちに
躓きよろめいていた」
これでだいぶ自然な表現になりました.
buer は辞書には「よろめく」とは載っていませんが
つまづけば、よろめくのは当然の結果ですので、こ
の程度の意訳はOKだと思います.