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韓国、「政府傍観」半導体が支えた輸出は土壇場「後継製品ゼロ」

2018-10-03 18:13:57 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

一部省略

2018-10-01 05:00:00

韓国、「政府傍観」半導体が支えた輸出は土壇場「後継製品ゼロ」

テーマ:ブログ


半導体市況は間もなく下落

技術窃取した半導体の悲劇



韓国経済は、これからどのような道を歩む積もりだろうか。従来の主力は、自動車と半導体であった。

これらの二業種に明らかな変調の兆しが見える。



自動車は脱落しかけている。労働組合の賃金攻勢によって高い賃金コスト体質に陥っている。

現代自動車の売上高営業利益率は、すでに5%を割り込んでおり「再起不能」に近い限界状況に直面している。



残るは半導体である。

半導体市況は大きな山谷を描く特色がある。

装置産業ゆえに、一度設備が完成すると、生産過剰に落ち込み市況は急落する。

これによって、設備投資が手控えられると、品薄となって市況高騰に見舞われる。

これを機に再び設備投資すると、また過剰設備化して、市況が急落する。この繰り返しだ。現

状は、半導体市況が急上昇して「我が世の春を謳歌」しているが、そろそろ峠に差し掛かっている。市況急落説が出てきたのだ。



半導体市況は間もなく下落

『朝鮮日報』(9月28日付)は、「韓国経済支える半導体、価格急落予測」と題する記事を掲載した。



この記事は、やや専門的な記述が多いので、私のコメントだけでも読んでいただければと思う。かつての経済記者としての「勘」を取り戻して書きたい。



(1)

「韓国経済を唯一支えてきたメモリー半導体市場にも警告音が鳴り響いている。

主要製品のNAND型フラッシュメモリーの価格が今年10-12月期から急落すると予想されるからだ。



世界の半導体では、量的にはメモリー半導体が圧倒的なシェアを持つ。

いわゆる量産品であるため、幅広い需要先を持っているからだ。

それだけに市況変動が激しい。


非メモリー半導体は、システム半導体と呼ばれており特殊分野、例えば全自動運転車などは、システム半導体が多用される。

韓国は、この分野が未発達である。

1990年代から2000年代にかけて、日本の半導体が世界市場を制したが、日米半導体調整で力を失い、韓国に席を譲った。

ただ、システム半導体では技術力を蓄えている。


10~12月期のDRAM平均価格が7~9月期に比べ5%も下落すると予想されている。

下落幅は当初予測(1-3%)を上回るもので、これが半導体市況の本格的下落の根拠とされている。



(2)

「半導体価格の下落で、韓国の2大半導体メーカーであるサムスン電子とSKハイニックスの業績も10-12月期から低迷するとの見方が支配的だ。

これに先立ち、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなど世界の主な投資銀行も、世界のメモリー半導体需要が減少し、在庫が増え、価格圧力が強まるとし、10-12月から業界の景気が低迷するとの予想を相次いで示した。



市況製品の価格は、スポット価格と固定取引価格に分けられる。スポットは、短期的な需給変動を反映するが、固定取引価格は長期の売買契約に基づくので固定される。ただ、スポット価格が需給を反映するので、固定取引価格のシグナルになる。

そのスポット価格が、今年上半期から下落しているのだ。半導体の需給関係が、すでに緩和に向かっている証拠である。この点を軽視してはならない。固定取引価格の下落は不可避となった。半導体業界からは、パソコン、サーバー、モバイル用メモリー半導体の需要が同時に減少し、値下がりが予想よりも急激なものになるとの分析が聞かれる。



(3)

「半導体市場が低迷すると、韓国の輸出にも打撃が懸念される。

韓国の輸出全体に占める半導体の割合は2015年の11.9%から今年は21%にまで高まった。

しかし、半導体価格が低下すれば、輸出額が大幅に減少し、半導体設備・素材メーカーにも悪影響が及ぶ。

IT業界関係者は「韓国経済と輸出を唯一支える半導体の景気が悪化すれば、経済全般に打撃が心配される」と話した」



半導体市況の下落は、韓国の輸出に影響をもたらす。輸出全体に占める半導体の割合は2015年の11.9%から今年は1~8月で22.5%に高まった。

しかし、半導体価格が低下すれば、輸出高の大幅減少は避けられない。

自動車産業が輝きを失ってきた現在、半導体輸出高が減少に転じれば、韓国輸出は総崩れとなる。

文政権に、その対応があるとは思えない。来年の韓国経済は相当の危機感に直面するであろう。今から、それを確実に予想できる。


技術窃取した半導体の悲劇

韓国が最大の看板とする半導体技術は、日本の技術を窃取したものだ。

サムスンが、日本の半導体技術者をアルバイトで雇ったもの。土日の休日を利用してソウルに呼び寄せたのだ。

これが長い目で見れば、韓国の半導体技術の偏った発展をもたらした。

汎用品のメモリー半導体は製造できても、高級品の非メモリー半導体のシステム半導体技術は、弱体という跛行性をももたらしている。

自力での半導体技術開発でない報いが現れた恰好である。


『中央日報』(9月3日付)は、「過去最大の輸出額も実際は半導体錯視」と題する記事を掲載した。



(4)

「韓国の輸出は、半導体依存度が1~8月で過去最大の22.5%になっている。

問題は、この半導体輸出好調で他の産業の危機が埋もれる、いわゆる「半導体錯視」現象が生じている点だ。

今年1~8月の輸出は前年比6.6%増えたが、半導体を除けば輸出増加率は0.37%にすぎない。

伝統的に輸出に寄与してきた船舶(-56.2%)・液晶表示装置(-8.8%)・家電(-7.3%)・無線通信機器(-5.4%)は同期間の累積輸出額が前年比で減少した」

半導体輸出好調が、他産業の輸出不振を隠している点が問題である。伝統的に輸出に寄与してきた船舶、液晶表示装置、家電、無線通信機器がいずれも前年比マイナスになっている。中国製品に食込まれたのであろうが、まさに「韓国輸出危機」という実感がする



(6)

「半導体依存の副作用は他の指標にも表れている。

未来の産業と直結する投資部門でだ。

統計庁によると、7月の設備投資は前月比0.6%減少した。3月から5カ月連続の減少となる。

通貨危機当時(1997-98年、10カ月連続の投資減少)以来20年ぶりの長い期間だ。


7月の設備投資は、3月から5ヶ月連続で前月比マイナスを続いている。これは、半導体設備投資減少の影響による点が大きい。

ここまで半導体の影響が大きくなると、「韓国経済は半導体と心中」という危機的状況にある。

来年、半導体市況が下落して半導体関連設備投資がさらに減れば、韓国のGDPを直撃して足を引っ張る懸念が強まる。ここまで来たら、韓国経済は「バンザイ」でお手上げになろう。


韓国ではメモリー半導体技術は進んでいるが、非メモリー半導体技術は半ばである。

だが、韓国政府はこれを誤解している。

非メモリー半導体研究開発に資金を投じることに消極的であるからだ。

メモリー半導体では、いずれ中国の量産化が軌道に乗ってくる。そうなると、韓国は非メモリー半導体で勝負しなければならないが、その技術を持っていないという悩みを抱えている。


『中央日報』(8月17日付)は、「国半導体危機論より重要なこと」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のソ・ギョンホ/論説委員である。


韓国は、半導体量産技術が進んでいる。だが、研究レベルでもリードしていると錯覚してはいけない。このコラムは、何が問題かについて指摘している。



(7)

「第一に、半導体人材養成が危機だ。黄哲盛ソウル大教授は「絶望的」と語った。

ソウル大材料工学部41人の教授のうち半導体専攻は黄教授が唯一だ。

半導体研究が成熟期に入ると新しい成果を出すのが難しく、ネイチャーやサイエンスのような権威のある学術誌に半導体論文はあまり掲載されない。

このため魅力は落ちるしかない。ソウル大が輩出した半導体専攻修士・博士は2006年の97人から2016年には23人と10年間に77%も減少した」



ソウル大学の黄教授は、「半導体専攻人材を現在の10倍に増やし、優秀な人材が半導体企業を満たし、装備と材料・部品会社にも十分に広がってこそ互いに協業もできるが、現在はそのような環境ではない」と説明している。

文政権は、大企業虐めを楽しんでいる風情だが大間違いである。金の卵を産む大企業の規制を外して、自由にさせるべきだ。世界の流れと逆行している。

(8)

「第二は、国家レベルの研究開発(R&D)が「大企業フレーム」に閉じ込められている。

半導体の好況で半導体企業は稼いでいるのになぜ国家予算を支援する必要があるのかという主張だ。

実際、過去5年間に半導体関連予算は大幅に減った。

しかし、半導体関連の国家R&D予算は大企業ではなく、中小・中堅装備・素材会社と大学にいく。

半導体の生態系形成のために国家R&D予算が必要であり、下手をすると第4次産業革命の成長動力を失う可能性がある」と懸念を表した。

白雲揆(ペク・ウンギュ)産業通商資源部長官は最近、次世代メモリー素子・素材開発を支援し、韓国が相対的に弱いシステム半導体など非メモリー分野を育成する強力な産業政策を展開すると明らかにした。半導体危機論はいつもあった。まともに対応していなかっただけだ」

韓国の「反企業ムード」は極めて強い。それ故、政府資金をシステム半導体技術開発に向けると、すぐに国民が反発するという悪循環に陥っている。

これが、回り回って韓国の半導体輸出競争力を削ぐ恐れを強くさせている。韓国最大の欠陥は、理性で物事を捉えずに感情論で議論することだ。これがどれだけ、社会の発展を阻害しているか分らない。「感情8割・理性2割」という価値判断基準から脱皮しないと、経済は縮小均衡に陥るにちがいない。




(2018年10月1日付)

韓国自動車産業を襲う雇用不安、造船業界と同じ轍を踏む懸念も

2018-10-03 16:50:22 | 日記
記事入力 : 2018/10/02 09:12

韓国自動車産業を襲う雇用不安、造船業界と同じ轍を踏む懸念も

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版


 輸出と内需の同時減少による「自動車雇用ショック」が押し寄せている。

8月の自動車製造業の直接雇用(雇用保険加入者数)は39万1000人で、前年末(40万人)に比べ9000人減少した。

製造業、サービス業を通じ、雇用の減少幅が造船業と並んで大きかった。

自動車産業が「第2の造船業」に転落するのではないかという懸念が生じている。


 韓国の自動車生産台数は2012年に456万台でピークを迎えた後、昨年は411万台まで減少した。

今年は400万台の生産すら危うい。

韓国の自動車生産が400万台を初めて超えたのは2010年(427万台)だったが、韓国の自動車産業の規模は10年前の水準に逆戻りすることになる。


 現代・起亜自動車の営業利益率は限界企業(利益で利払いも賄えない企業)レベルの2-3%台に低下し、韓国GMは不渡り直前の事態となり、政府やGM本社の資金投入で延命している。

最低賃金引き上げ、労働時間短縮などの悪材料も重なり、部品メーカーの連鎖倒産も現実となっている。


 産業研究院による分析の結果、韓国の中堅部品メーカー100社中82社は、今年上半期の平均営業利益が前年比で半減。

31社は営業赤字を出した。現代自動車の1次下請け業者、理韓のワークアウト(金融機関主導の経営再建)申請(7月)に続き、中堅部品メーカー、ダイナメク、クムムン産業、イーウォンソルテックなどが相次いで法定管理(会社更生法適用に相当)に入った。


 こうした状況で雇用労働部は「不法派遣の是正を」と企業に圧力をかけている。

雇用労働部は国民の血税で延命する韓国GMに対し、昌原と富平の工場の下請け業者社員約1600人を直接雇用するよう命じ、一部の中小企業に対しても派遣労働の実態調査を実施した。


 自動車産業の危機が韓国経済に与える影響はメガトン級だ。直接雇用規模は造船業(12万8000人)の3倍に上り、輸送、整備、販売、資材などの裾野も含めると、177万人の雇用に影響を与える。

自動車産業は韓国の輸出全体の11%(昨年時点)を占める。今年は年初来9月20日までに輸出が前年同期比で7.7%伸びたが、自動車輸出は5.1%落ち込んだ。


 金秀旭(キム・スウク)ソウル大経営学科教授は「自動車産業の雇用ショックは始まったばかりで、深刻に受け止める必要がある。

自動車は電子と共に韓国の産業を支える二大基幹産業であり、自動車が滅べば、深刻な経済危機が訪れかねない」と指摘した。