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玉城デニー沖縄知事誕生、中国の国益に…玉城知事がひた隠す「普天間基地の危険性」

2018-10-13 20:41:31 | 日記

玉城デニー沖縄知事誕生、中国の国益に…玉城知事がひた隠す「普天間基地の危険性」


2018年沖縄県知事選挙、玉城デニー氏が当選

 8万票もの差をつけて、玉城デニー氏が圧勝――。

 9月30日に投開票された沖縄県知事選挙で、前宜野湾市長の佐喜眞淳氏を破っての勝利を、多くのメディアが「圧勝」「完勝」として伝えた。

確かに、玉城氏の獲得した39万6632票は、沖縄県知事選で史上最多得票である。

 だが、もう少し冷静な目で見るべきではないか、と語るのは、法学者、政治評論家の竹田恒泰氏である。

「メディアは『8万票も大差が付いた』と言いますけど、佐喜眞さんもそこそこ取って肉薄しています。

得票率を見ると、玉城さんが55.07%に対して、佐喜眞さんが43.94%で、ほぼ拮抗しています。

私に言わせれば、8万票もの大差ではなくて、たった8万票の差です。

翁長さんの弔い合戦ということで大きな風が吹いたということと、佐喜眞さんの掲げた『対立から対話へ』というスローガンがあまりよくなかったということなどで、玉城さんが勝利したのでしょう。

 今回、玉城さんの応援の主体になったのは、2015年に結成された『オール沖縄』(辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)ですが、2016年からの沖縄の自治体の首長選挙を見ると、オール沖縄は11回のうち1度しか勝ってないのです。

今回の知事選の結果を見ても、基地問題に関して沖縄の世論が割れているということがわかったということです。

ですから選挙結果によって、1票でも少なかった人たちは黙れという話かといったら、そうではない。賛成する人も反対する人も織り混ざっているということですから、これを受けてどういうふうに着地させていくのかっていうのが、政治の役割だと思います」(竹田氏)

 辺野古新基地建設を進めようとする政府には、この選挙結果はどのように影響するのだろうか。

「普天間基地から辺野古への移設ということが、スムーズには行かなくなった、難航するということですので、この選挙結果は、安倍政権にとっては“やりにくくなった”とはいえるでしょう。

ただ、辺野古新基地反対とはいっても、知事としては承認撤回という手法はとれるでしょうが、翁長前知事も埋め立て承認取り消しの違法確認訴訟で最高裁まで争って負けています。

政府としてはこれまでの路線に沿って、粛々と進めていくのだろうと思います。やりにくくなったのは事実ですが、計画が頓挫するかといえばそうではないでしょう」(同)

●中国にとっての利益

 玉城氏の沖縄県知事就任は、日米関係に影響を与えるのだろうか。

「これまでも、翁長さんが沖縄県知事でありながら、日米関係をここまで温めてきたわけですから、玉城さんが引き継いだからといって悪化するということはないでしょう」(同)

 玉城氏の父親が米海兵隊員であったこともあり、沖縄知事選での勝利は米紙ワシントンポストやニューヨークタイムズなどで大きく報じられた。

ニューヨークタイムズ(電子版)は、玉城氏の県知事選当選を受け「沖縄の米軍駐留を減らすために」との社説を掲載、「日米両政府は妥協案を見いだすべきだ」として新基地計画の再考を促している。

アメリカの世論の受け止め方はどうなのだろうか。

「アメリカの世論というよりも、メディアがどういうふうに誘導したいのかということの表れと私は見ています。

ワシントンポストもニューヨークタイムズも、スタンスは反トランプじゃないですか。

安倍・トランプ路線でやっているのはダメじゃないかという視点から社説を書くと、そうなるということだと思うんですね。

世論といってもですね、アメリカ人のほとんどは、普天間問題なんて知らないですから。ほんの一握りの人たちが意見を言っているだけで、アメリカ国民全員にとっては興味がない話でしょう」(同)

 中国との関係は、どうなっていくのだろうか。

「中国共産党の『人民日報』の傘下に『環球時報』という国際誌があります。

そこに、中国は沖縄の領有権も主張できるとする記事が載ったことがあります。

尖閣問題で日本が譲歩しないのであれば、沖縄の独立を支援すべきだということが書かれていたわけです。

一般の民主主義の新聞が書くのであれば何を書いても勝手ですが、一党独裁で中国を支配している中国共産党傘下の新聞です。

それは共産党の承認の下で書かれたものと見なくてはいけない。

 普天間問題がこじれて政府と沖縄が対立するということは、中国にとってはひたすら国益につながることです。

だからこそ中国は介入しているのではないかと陰謀論を言う人もいますよね。

実際に介入があるのかどうかはわかりませんけど、沖縄の基地問題が解消するというのは、中国にとってはつまらない話です。

玉城さんが勝ったというのは、中国からしたら、それはもう“どんどんこじらせろ”と、ほくそ笑んで見ているのかなと思います。

 玉城さんはもともと自由党で小沢一郎さんとの関係は強くて、小沢さんは中国と大変近しい存在ですよね。

小沢・玉城ラインで沖縄をかき回せば、これは中国にとっても利益になるでしょう。

小沢さんも政治的にいいポジションを取れるので、小沢さんにしても中国にしても、願ってもないところに落ち着いたのかなと思います」(同)

●2つの不都合な点

 玉城知事の誕生によって、今後求められることはなんだろうか。

「玉城さんの勝因として、2つの都合の悪いところを隠したということがあります。

ひとつは、日本共産党が背後にしっかりついているということを、一所懸命隠しました。

共産党が前に出ないように出ないように、相当に神経を使っていました。

もうひとつは、普天間基地の危険性の除去については一言も触れないまま、選挙を進めたんですね。

普天間が危険だから辺野古へ移設しようということになっているわけで、辺野古新基地建設反対一辺倒で、危険な普天間が使われ続けるのでは、本末転倒です。

 一方、沖縄は感情的に難しいところがありますので、正論を吐いているだけではダメですよね。

安倍政権としても法的なところだけで突き進んでいくのではなく、普天間の危険性を除去するという目的を掲げながら、しっかりと沖縄に寄り添っていくという姿勢をしっかり取っていくべきでしょう。

選挙の争点というのは基地問題だけではないので、今回すべてが決したというよりも、これはひとつの局面です。これから国政選挙も含めてさまざまな選挙もあり、いろんな場面で見て判断していかなければならないと思います」(同)

 玉城知事は10月4日の初登庁で、「いばらの道だが、そこにいばらがあれば、踏み締めて踏み越えていくという覚悟が必要だし、そのいばらをかき分けて突き進んでいきたい」「いばらをかき分けていったその先に、県民が求めている未来が必ず見えてくる。信じて突き進んでいきたい」と語った。
(文=深笛義也/ライター)

朝鮮半島の変化は不可逆的

2018-10-13 19:59:47 | 日記

2018年09月19日

朝鮮半島の変化は不可逆的


南北首脳会談

今回の南北首脳会談では、文在寅大統領の必死の説得にもかかわらず、非核化検証のための北朝鮮国内の核施設や核兵器のリスト開示が実現しませんでした。

しかし、成果は二つあります。まず、より小さな成果としての非核化問題における進展は、ミサイルのエンジン開発に使った試験場の取り壊しを検証するために、関係各国の専門家を入れる約束をしたことです。

もちろん、もはや開発の終わったエンジンの実験場を取り壊したり、そちらのほうに査察を入れたりしても大した意味はありません。

ただし、ここで国際世論の観点に注目すれば、北朝鮮が少しでも歩み寄りを見せたという点で成果として受け止められることになるでしょう。

さて、南北首脳会談のより大きな成果は南北の軍事的な緊張緩和の分野にあります。

38度線の非武装地帯の実際の非武装化。これは前哨の全撤去を行う準備段階として、一キロ以内の前哨をまず撤去するところなどから始めます。

そして、南北の海域の軍事境界線である北方限界線(NLL)付近での軍事衝突回避と攻撃姿勢をやめるための各種合意。

既に韓国は7月に「国防改革2.0」を文在寅政権が通していますが、こちらでは国防能力強化の方針とともに徴兵期間の短縮を実現しています。

韓国の徴兵者の若者が張り付いている前哨での負担が減ることは、国内的にも非常に大きな意味を持ちます。

漁民の操業などの経済的利害からくる衝突を避けることも盛り込まれているため、これらの措置が全部実現すれば南北の小規模軍事衝突の可能性は限りなくゼロに近づくはずです。

共同宣言に、相変わらず「北の非核化」でなく「朝鮮半島の非核化」という言葉が載っていることで成果は乏しいということを指摘する人もいるでしょう。

しかし、今回の首脳会談の目的はそこにはなく、北朝鮮が従来からのそうした考え方を崩していないことは驚きでも何でもありません。

むしろ、この会談の「南北融和」を超えた意義は、これで二回目の米朝首脳会談の開催に持っていけるかどうかにあったわけです。

具体的には、米国が要求している核施設と核兵器のリスト申告であり、残念ながらそこまで行かなかったというのが、文在寅大統領が会談後に厳しい顔をしていた理由なのでしょう。

ボールはトランプ政権に移りました。

すぐに首脳会談というよりは、まず第二回の首脳会談を実現するための非核化行動の条件交渉に入ることでしょう。

しかし、国内政治的に見れば、現在の米国は中間選挙を控え、ぜひとも外交で得点したい局面にあります。

米国の世論を見れば、非核化が実現しなくとも「歴代大統領がいずれも成し遂げられなかった業績」というスピンをかけて誇大広告を打つことは十分に可能です。

したがって、朝鮮半島情勢は、南北首脳会談を受けておそらくは速いペースで変化していくことでしょう。

日本がこのプロセスに含まれていないことは明らかです。現状、トランプ政権に対して要望を出しているという状況なのでしょうが、日本が引けるレバーは極めて限られているため、まずは朝鮮半島情勢の趨勢を見極め、日本ができることを探る頭の体操が必要です。

将来を見通すためには、基本に立ち返るのが早道でしょう。以下では、各国ごとの基本的な構造と思惑に光を当てたいと思います。

韓国の生存本能

今般、朝鮮半島情勢が動きを見せている最大の要因は、韓国政府が積極的に動いているからであり、一番のキーマンは文在寅大統領です。

朝鮮半島情勢の影響をもっとも受けるのは韓国であるにもかかわらず、これまでの朝鮮半島をめぐる情勢は大国の思惑によって動いてきました。

もちろん、一定の事実ではあるのだけれど、「韓国は朝鮮戦争の休戦協定の署名国でない」などの言説が、韓国の思惑は関係ないという文脈とともに語られることも多かったわけです。

これは、ある意味、分断国家の悲劇であり避けられない部分があります。

冷戦の終わりが見え、ドイツ統一が現実に観念できるようになった時でさえ、米ソは慎重であったし、英仏は露骨に嫌がらせをしていたわけですから。

朝鮮半島をめぐっても、中国や日本などの周辺国は朝鮮半島が分断されていることからくる利益を享受してきた部分があります。

文在寅大統領と現在の韓国には、脇役に甘んじる気はないという明確な意思を感じます。それは、韓国の立場にたって考えれば当然であろうと思います。

文在寅大統領及び同政権の高官の発言から見えてくる思惑を、そのまま韓国の国家意思として理解するには少々飛躍があるでしょう。

ただ、文在寅氏に代表される進歩派的な考え方が、中長期的に韓国の有権者の感覚となっていく流れは変わらないのだろうと思います。

保守派と高齢者を代表していた朴槿恵政権的な意味での、伝統的な保守の政権はもはや二度と現れないのではないでしょうか。

少々乱暴であることを覚悟の上で、文在寅大統領に代表される韓国進歩派の考え方を表現するとすれば、一番大事なのは北朝鮮との間の平和であるという点です。

もっとはっきり言えば、北の非核化よりも、平和が大事だということです。

そのためには、当然、宥和策を採用するということになります。

宥和の先に平和があり、非核化があるかもしれないが、なくても良いという発想です。

当座の朝鮮半島のリスクを低減させることこそが、韓国にとって最も意味のある成果だからです。

実際、韓国は相当前のめりで融和策を進めようとしています。

今般の南北首脳会談には、韓国経済を支える4大財閥のトップが帯同しました。

当然、南北融和を肉付けするプロジェクトを実際に担う存在として期待されているからです。

意味あるレベルでの核削減コミットと平和宣言が実現しないと、こちらの開発協力は起動しませんが、交渉を進める際のアメにもなる材料ですから、準備を進めることには問題はないでしょう。

実際、現代財閥だけでなく、サムスンやLGなどは相当程度北への投資・開発協力のポテンシャルを感じ取っています。

すでに彼らは東西ドイツ統一の際の開発をレビューしています。

韓国国内での言説分析には注意が必要です。

本音と建前の部分を切り分けて考えないといけない、というのがここでもカギとなります。

文在寅政権は経済政策で躓いて支持を下げていますから、経済的チャンスをものにすることは重要です。

進歩派政権ができると、一定の試行錯誤ののち、大抵野党の時よりも経済政策が現実路線になるものです。文在寅大統領も例外ではないはずです。


また、韓国の本音からすると、一定程度の南北融和が達成された後の北朝鮮の核兵器は、必ずしも脅威とは映らないでしょう。

実際、同一民族に対して北朝鮮が核攻撃を行う可能性はそのシナリオの下ではかなり低下するのでしょうから。

また万が一、北朝鮮が核武装したままの形で南北統一やその中間形態としての連邦制的な状況が実現したとして、朝鮮民族としての核は韓国の国益上もマイナスではないからです。

韓国の日本に対する警戒感が強いのは自明のことですが、実は、中国に対する反発や警戒感にも大きなものがあります。

これまでは、日米韓という同じ陣営の存在がありましたが、米国が東アジアから引いていき、北朝鮮との融和が実現すると、米韓同盟の大義名分が掘り崩されていくわけです。

韓国からすれば、その時には、中国の影響力とじかに対峙しなければならなくなると考えるでしょう。


核兵器そのものでなくとも、核技術を有する同民族の存在は力強いものと感じられる土台が存在するのです。

撤退する米国の本音

私が、米国が「帝国の座から降りる」、あるいは「東アジアから撤退していくであろう」と申し上げると、特に、実務界隈の方から強く反論されます。

トランプ政権の登場で、さすがに米国の内向き化が白日の下にさらされましたので、最近はそこまで露骨な反発は受けなくなりましたが。私は、2007~08年頃からイギリスの帝国からの撤退の研究をしてその種の発言をしてきたので、随分と反発を受けたものです。

実際に、米国において内向き化の歯車が回り始めたのは、2006年にイラク戦争の泥沼化を受けて、当時の与党共和党が中間選挙に惨敗してからであると思っています。

ブッシュ(子)大統領は、戦局悪化の責任を取らせる形でラムズフェルド国防長官のクビを切ります。

イラク戦争とアフガニスタン戦争はその後も続きますが、米国のスタンスはガラっと変わりました。

中東では出口戦略が語られ始め、東アジアでは米国の姿勢がにわかに融和的になっていきます。

朝鮮半島情勢をめぐっては、六ヵ国協議が立ち上がったころと重なっていますが、外交の大物達が現場を去り、職業外交官を中心とする融和的なチームが投入されることとなりました。

米国の姿勢が急にふにゃふにゃになったことを訝しく思った記憶は、今でも鮮明です。

2006年に始まった内向き化の流れは、2007-08年の金融危機の深刻化の中で、鮮明となっていき、ある意味、その流れを象徴する存在であったオバマ大統領の当選によって決定的となりました。

中東では、シリアでいったん引いたレッドラインを守らず、同盟国であるイスラエルの反対を押し切ってイランとの核合意を締結します。

東アジアでは、民主党大統領が陥りがちな中国との融和にのっかり、その大国化を牽制することはほとんどありませんでした。北朝鮮政策は、「戦略的忍耐」という名の無策でした。

そして、トランプ大統領とともに2016年の大統領選挙において、民主党側で旋風を巻き起こしたサンダース上院議員は、トランプ大統領に輪をかけて米国の内向き化を推進する存在でしょう。

民主・共和を問わず、孤立主義的な考え方が米政権を席巻して、既存エリート達に挑戦しているのです。

米国の内向き化は、トランプ氏が登場するはるか以前に始まり、彼が去った後にも残るトレンドである可能性が極めて高いのです。

もはや、米国は東アジアの戦争において、自国兵士の犠牲を甘受する気はまったくないでしょう。

まして、東アジアでの戦争は犠牲を伴うということのみならず、中国やロシアなどの大国の関係を気にする必要がある地域です。

冷戦の論理において、ソ連との間で世界を二分していた時代ならいざ知らず、米国としてそんなリスクを冒す合理性は全くないわけです。

とすると、朝鮮半島をめぐる米国の国益は何か。

第一は、熱戦が起きないことでしょう。

北朝鮮の核武装がICBMを通じて米本土を射程に収め得る状態については許容できないでしょうが、とはいえ、それを排除するためにどこまでの行動を想定しているかは微妙です。

米国は、インドやパキスタンの核兵器については基本的に許容しているという歴史を持つわけですから。北朝鮮が、韓国と融和し、米国に対する挑発的な言動を慎んだ場合には、核やミサイルさえも許容しかねないと思っています。テロリスト集団や、中東やアフリカの不安定な地域への核不拡散には気を遣うでしょうが、その程度なのではないでしょうか。

表向きの言説とは裏腹に、在韓米軍の撤退についても、一定の条件の下では許容するのではないでしょうか。

在韓米軍の存在に拘るとすれば、それは中国に対する牽制効果を狙ってということになるでしょうが、米国には他にも多くのツールがあります。

そもそも、米国は中国に対して、東アジアにおける一定の勢力圏の構築に是が非でも反対するでしょうか。

中国が欲するもの

朝鮮半島に関連して、中国が欲しているものは何か。

最低限、中国が確保することに拘っているのは、自国の国益及び安全保障への直接的なダメージを避けることです。

その意味で、中国が望んでいないことの筆頭もまた、朝鮮半島での熱戦です。

いったん戦争が起きれば、北朝鮮から大量の難民が中国に押し寄せることは明らかでしょう。

中国経済は混乱し、具体的なコストを払う立場にもなる。それは、絶対に避けなければならないシナリオです。

しかも、実際に熱戦になった場合には北朝鮮が崩壊することはほぼ間違いない。

東アジアにおける中長期的な米国のコミットメントについては疑問が残る一方で、朝鮮半島で熱戦を戦った暁には、統一した朝鮮に対して影響力を行使する展開とはなるでしょう。

中国からすれば、自国の首都の目と鼻の先の中朝国境沿いに米軍が展開するという悪夢のシナリオへとつながるリスクがあるのです。

自国に直接的に影響があるシナリオに加えて、中国には、中長期的に東アジア地域に対して比類なき影響力をふるうことができる地域覇権国を目指しているという文脈があります。

むしろ、現時点で既にその地位にあると考えているかもしれません。

そして、その思惑を邪魔するする唯一の存在が、東アジアに前方展開する米軍の存在です。

中国は、地域覇権国として朝鮮半島で推移する事態をコントロールしたいとする強いこだわりがあります。

韓国の積極的な動きによって、南北と米国とで半島の運命が決められる可能性が示唆されたときには、強烈に巻き返しを図り、それまで冷たくあしらっていた北朝鮮の後ろ盾としての動きを見せたのは、そのような思惑の表れでしょう。

ただ、中長期的には米軍を地域から排除し、東アジアにおいて比類なき存在となりたい中国も短期的には米国との対立を避けることを重視しています。

そもそも、中国経済は米国市場に大きく依存しており、米国との対立は中国との国益になりません。

しかも、中国は、時は自らの味方であることをよくよく承知していますから、焦る必要は全くないのです。

日本にとっての朝鮮半島問題

他にも、ロシアの動きもあるし、北朝鮮の経済開発に一枚かみたい欧州諸国の思惑もあるでしょぅ。

ただ、これまでに取り上げた米中韓がもっとも重要なアクターです。

そして、以上からはっきりするのは、そのいずれもが朝鮮半島での熱戦を望んでいないということです。

北朝鮮と違って、各国の思惑はある程度外部からも窺い知れますので、北朝鮮自身も十分に理解していると考えるのが普通でしょう。

そんな中、日本が欲するものは何か。

表向きは、核、ミサイル、拉致の問題を包括的に解決することとなっています。それは、偽りではありません。

核とミサイルは日本の安全保障に直結する点であり、拉致問題は日本国民の関心も非常に高い人権問題だからです。

それらの解決を目指すべきということに異存はありません。

では、日本に切れるカードは何か。

一つは、米国をはじめとする周辺国に日本の国益を訴え、代弁を頼むということです。

いかにも、心もとないですが、米中韓の三カ国にとって日本はそれなりに重要な国です。

北朝鮮政策で恩を売ることで、その他の分野で日本から利を引き出せると思えば、成立しない戦略ではありません。

だから、それはそれでやればいい。

ただ、当たり前ですが、外交の世界は利と利がぶつかり合う世界。

基本的には、日本自身が北朝鮮の利益になるカードを切れなければ事態は動かないでしょう。

日本には、北朝鮮での熱戦の脅しをかけるという選択肢はありません。

米中韓が、基本的に熱戦を望んでいない以上そもそもそんな脅しはききませんし。

経済制裁についても、米中韓次第というところがあります。

結局のところ、日本が切れるカードは日朝平壌宣言の中で触れられている経済協力です。

下記に、同宣言で触れられている部分を抜粋します。

これは、小泉総理が署名したものとして将来にわたって日本という国家を拘束する原則です。


「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。

双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、

無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、

また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした」

 
同宣言には、具体的な金額は明記されていませんが、報道ベースでは1兆円規模とも、それ以上とも言われています。

経済協力が行われるような局面では、北朝鮮のある程度の「改革開放」を想定できるのでしょうから、経済協力は日系企業の進出の足掛かりという観点からも捉えられるでしょう。

南北首脳会談や米朝首脳会談がニュースを飾っている際には、国内で日本が「蚊帳の外」であるとの批判が行われました。

日本は安全保障上の強制力を持ちませんし、朝鮮半島の当事者でもありません。

その意味では、日本が蚊帳の中に入るためのカードは、この経済協力における存在感以外にはないのです。

そして、北朝鮮のような強権体制と融和することが大変に苦しく、不道徳でさえあるかもしれないとは思いつつも、平和が一番であることはその通りです。

また、歴史が確かに動こうとするとき、立場こそ違え、その朝鮮半島に背を向けることは望ましいことではありません。

また、経済協力をするということは、日本が北朝鮮の核の脅威にまるで対処しなくて良いということを意味しません。

南北が行っているのは偶発的衝突の最小化であり、韓国はむしろものすごい勢いで軍事支出を増やしてきているからです。

北朝鮮の核がすぐに全廃されるどころか、ある程度の量が保有され続けることを見越せば、また、融和を通じて米国の地域的な軍事プレゼンスが後退していくであろうことを踏まえれば、融和と国防強化はセットです。

そこを読み違えてはいけません。

日本では長らく、北朝鮮に融和せず自前の防衛力強化を望むリアリストと、北朝鮮との融和を主張する一方で自前の防衛力強化や対米同盟の強化に反対する平和主義者が対峙してきました。

今リアリストに求められる組み合わせは逆であるはずなのです。

最後に、北朝鮮との融和が呼び起こす問題を指摘しておきましょう。

安倍政権は、過去6年の間に国防政策を「普通の国」に近づけてきました。

安保法制の整備や、特定秘密保護法の整備などです。

そして、それらの改革を押し通す際に頻繁に聞かれたのが、安全保障環境の悪化です。

そして、日本の国益にとって中長期の最大の懸案事項は中国の台頭です。

しかし、中国とは政治的にはしばしば緊張関係に陥るものの、経済的には相互依存の関係にある。

よって、中国が脅威であると正面切っていうことは憚られる部分がありました。

そこで、役割を果たしたのが北朝鮮の脅威でした。国民からも、世界からも、北朝鮮が脅威であることは明らかであったし、北朝鮮には大して気を遣う必要もなかったからです。

朝鮮半島における地政学的なリスクがなくなったわけではまるでありませんが、突発的な事態が生じない限り、しばらくは融和の方向で推移するでしょう。

それは、日本にとっても歓迎すべき緊張緩和ではあるのだけれど、いよいよ「中国恐怖症」が日本外交の前面に出てくる契機でもあるのです。

*この記事は三浦瑠麗の公式メールマガジン「自分で考えるための政治の話」9月19日配信記事に加筆修正したものです。

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この旭日旗騒動とは、結局のところ、何だったのでしょうか?

2018-10-13 19:30:46 | 日記
不参加国は日本を含め最大で5ヵ国

新宿会計士

ここで、2018年10月11日の観艦式について、参加国に関する情報をまとめておきましょう。

•事前の報道によれば、観艦式への参加予定国は14ヵ国だった。

•2ヵ国(日本と、なぜか中国)が、観艦式への参加を見送った。

•動画で参加が確認できた国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、インド、ロシア、シンガポール、タイ、ベトナム、米国の9ヵ国で、うち、艦旗が確認できなかったのはロシア、米国の2ヵ国であり、それ以外の7ヵ国は堂々と艦旗を掲揚していた。

•動画で参加が確認できなかった国は、インドネシア、マレーシア、フィリピンの3ヵ国。インドネシアについては別のパレードに参加したらしいが、マレーシアとフィリピンの2ヵ国についてはドタキャンした可能性もある。

また、英国も招待されていながらドタキャンしたのではないかとの指摘もあるのですが、この点については私自身は確認していません。

ただ、英国が招待されていたのならば、参加予定国は14ヵ国ではなく15ヵ国であり、実際、次のリンクによれば、観艦式に参加する国は「15ヵ国」と記されています。

観艦式の旭日旗 韓国外交部、日本に「韓国国民の感情を考慮せよ」(2018年10月01日06時36分付 中欧日報日本語版より)

ということは、招待されていながら今回の観艦式に参加しなかった国は、最大で5ヵ国(日本、中国、マレーシア、フィリピン、英国)ということです。

旭日旗騒動って結局何だったの?

さて、この旭日旗騒動とは、結局のところ、何だったのでしょうか?

これについて私は、「韓国が自分で言いだして収拾がつかなくなってしまった」という代物だと考えており、また、日本が最後まで折れなかったがために、結局は韓国が自分で自分自身の顔に泥を塗った騒動だったという言い方をしても良いと思います。

そもそも、なぜ韓国国内で旭日旗が敵視されるようになったのかといえば、そのきっかけは、2011年1月25日のAFCアジアカップの日韓戦において、韓国の奇誠庸(き・せいよう)選手が日本を侮辱する猿真似パフォーマンスを行った際、「旭日旗を見てカッとなった」という言い訳をしたことにあります。

それ以降、韓国国内では旭日旗を勝手に「戦犯旗」と呼び換えるとともに、全世界に対して「旭日旗はナチスのカギ十字と同じ意味を持つ」、「この旗は日本の帝国主義の象徴だ」、といったウソをばら撒き続けているのです。

もし旭日旗が日本の軍事主義の象徴ならば、なぜ1998年や2008年に韓国で開催された観艦式には、日本の自衛艦が旭日旗を堂々と掲げて参加できたのでしょうか?なぜ旭日旗を「戦犯旗」と呼ぶ国が、韓国と北朝鮮の2ヵ国しかないのでしょうか?

そして、今回の騒動が、韓国政府が水面下で物事を進めようとしたものの、日本側がオープンな場でこれを議論したため、以前の「悪い日韓関係」にありがちな、「水面下で韓国が日本に泣きついて、日本が折れてあげる」という轍を踏まなかったことについては、私は高く評価したいと考えているのです。

ただし、韓国側による「日本を貶める戦術」が、これで収束したわけではありません。いや、むしろこれからもっと活発化するでしょう。

こうしたいわれなき名誉毀損と歴史プロパガンダにどう対抗していかねばならないのか。

結局のところ、私たち日本国民が韓国による「ジャパン・ディスカウント運動」にもっと関心を持ち、危機感を共有することしか方法はありません。

さしあたって、私は日本を愛するウェブ評論家の1人として、こうした韓国のいわれなき歴史攻撃については、きちんと記録することを続けていきたいと考えています。

(朝鮮日報日本語版) 李舜臣旗掲揚、自ら通達破った韓国に日本政府が抗議

2018-10-13 18:35:16 | 日記

(朝鮮日報日本語版) 李舜臣旗掲揚、自ら通達破った韓国に日本政府が抗議


10/13(土) 8:33配信

朝鮮日報日本語版


(朝鮮日報日本語版) 李舜臣旗掲揚、自ら通達破った韓国に日本政府が抗議


 11日に済州島で行われた「2018大韓民国海軍国際観艦式」の海上査閲で、一部参加国の艦船が太極旗(韓国国旗)と自国国旗以外の旗を掲揚したことを日本政府が指摘し、韓国政府に遺憾の意を表した。

 先の「旭日旗」掲揚問題で、日本は国際観艦式に参加しない意向を明らかにしていた。

旭日旗は日本の帝国主義時代に日本軍が使っていた旗で、韓国などアジア諸国では侵略戦争と軍国主義の象徴と考えられている。

日本の海上自衛隊は1954年の発足当時から自衛艦旗に旭日旗を採用している。

 日本の公共放送NHKなどが12日に報じたところによると、

岩屋毅防衛相は同日、閣議の後の記者会見で、オーストラリア・ブルネイ・カナダ・インド・ロシア・シンガポール・タイの7カ国の海軍艦が、韓国海軍が通知したのとは違い、

太極旗と自国国旗のほか、海軍旗や軍艦旗を掲げていたとして、「結果として韓国の通達は必ずしも守られていなかった」と指摘した。

 しかし、岩屋防衛相は「(今回の状況について)韓国当局も考えることもあるだろうし、今後、韓国側と話し合っていきたい」「朝鮮半島情勢を考えると、日韓の連携は非常に重要だ。

今回のことは非常に残念だが、それを乗り越え、さらに韓国との防衛交流、安全保障交流を進めたい」と述べ、防衛協力を通じて両国関係に影響を及ぼさないよう努める考えを強調したという。

 観艦式で文在寅(ムン・ジェイン)大統領が乗船した揚陸艦「日出峰」に朝鮮時代の水軍隊長旗だった「帥子旗」が掲揚されたことについても、日本の外務省は同日、駐日韓国大使館と韓国外交部(省に相当)に抗議した。

韓国は参加各国の艦船に対して自国国旗と太極旗のみ掲揚するよう要請したのにもかかわらず、自ら矛盾する対応を取ったということだ。帥子旗は壬辰倭乱(文禄・慶長の役)で三道水軍統制使だった李舜臣(イ・スンシン)将軍の船にも掲げられていたと言われている。

韓国、「与党」長期政権狙い北朝鮮と連携強化目指し「経済犠牲」

2018-10-13 11:21:14 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2018-10-11 05:00:00

韓国、「与党」長期政権狙い北朝鮮と連携強化目指し「経済犠牲」

一部省略

北朝鮮接近の与党

支持基盤の機嫌取


10月4~6日、北朝鮮を訪問した韓国与党「共に民主党」の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が、平壌(ピョンヤン)で口にした発言が議論を呼んでいる。

野党に権力を渡さず、北朝鮮との関係強化に努めるといった主旨の発言をしたからだ。

韓国与党は、政権独占の大胆な戦略を立てているようだ。

韓国与党が、長期政権を樹立したいという願望だけならば聞き流す。

最近、立て続けに起こっている問題を並べてみると、すべて一本の線上につながっていることに気付く。

つまり、北朝鮮との統一とまでは行かないまでも、南北連携強化の動きが始っている解釈可能な問題が多いからだ。

このように判断する理由は、韓国大統領府の秘書官の6割が「86世代」で占められたことだ。

86世代とは、1960年代うまれ。80年代に大学生活を送った、学生運動家上がりの集団である。

彼らは、「親中朝・反米日」が共通認識だ。

文政権になって、慰安婦問題は解決どころか振り出しに戻っている。

今回の「旭日旗問題」もこの一環として引き起こされたと見るべきだ。

北朝鮮の意向も受けているのでなかろうか。

「旭日旗問題」は、単純な問題でなく、南北が日本へ突き付けてきた「闘争の始り」かも知れない。

与党「共に民主党」は、朴槿惠政権を打倒した原動力である、「ローソク・デモ」主催の労組と民主団体の意向を最大限受入れる姿勢を見せている。

その例の一つが、「最低賃金大幅引き上げ」である。

経済的破綻は不可避だが、見直しの動きを全く見せずにいる。


見直しが、労組への裏切りになるからだ。「教科書書換え」も南北連携への準備である。

韓国の国是と言うべき「自由と民主主義」から「自由」を削除した。

「民主主義」だけなら、北も「人民民主主義」である。これならば、南北連携の壁がなくなる。


北朝鮮接近の与党

『中央日報』(10月8日付)は、「北朝鮮で行った韓国与党代表の不適切な発言」とだいする社説を掲載した。


(1)

「10・4南北共同宣言11周年を記念して4~6日、北朝鮮を訪問した与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が平壌(ピョンヤン)で口にした発言が論議をかもしている。

李代表は5日、安東春(アン・ドンチュン)最高人民会議副議長と会った席で『われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している』と述べた。

引き続き、記者に『平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない』と話した」


韓国与党代表は、次のような問題発言をした。



「われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している」

与党「共に民主党」が、政権を維持し続けるには、「積弊一掃」で歴代保守党大統領を獄窓に送る。

その政策執行者も追放する。そのためには司法を徹底的に利用する。

すでにこの戦術を実行している。同時に、支持団体の利益を擁護して支持をつなぎ止める。

最賃大幅引上げと原発廃止政策がそれだ。その結果、韓国経済が混乱してもやむを得ない。





「平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない」



国家保安法は、反国家活動を規制するもの。国家の安全と国民の生存・自由を確保することを目的としている。

1948年に李承晩政権によって制定されてから、反共イデオロギーを実現するための装置として、長年韓国における治安立法の中核をなしてきた。

具体的には国内で北朝鮮・共産主義を賛美する行為及びその兆候(軍政当時は南北統一の主張まで)が取締の対象となる。日本の治安維持法をモデルにしたともいわれる。


このように問題のある法律だが、この扱いを北朝鮮で発言すべきではない。

北朝鮮こそ、国家保安法の対象であるからだ。韓国与党は、すっかり精神的に南北協調ムードに入っていることに注目すべきである。

(2)

「李代表が北朝鮮で南北交流と韓半島(朝鮮半島)の平和への意志を強調したことを責める人はいない。

しかし、大韓民国政府与党の代表なら北朝鮮で口にすべきことがあり、口にしてはならないことがある。

保革論争の頂点にある国家保安法の改廃問題は過去数十年間、韓国社会をずたずたに分断してきた雷管中雷管だ。

このような敏感な問題を李代表があえて北朝鮮で取り出す必要があったのか疑問だ。

国家保安法の改廃は国内政界が国会で決めることであり、北朝鮮が関与する問題でないからなおさらだ。

公然と野党の激しい反発を呼び、南南葛藤(注:韓国内部で北朝鮮問題で対立する)だけを拡大するのではないか懸念される」

韓国与党が、北朝鮮と精神的に一体感を強めている証拠だ。


(3)

「また、『生きている限り、政権を守る』という発言も同じだ。



韓国与党は、「北朝鮮労働党と手を握って野党を壊滅させ、長期執権するということか」と疑われているが、これこそズバリ核心を突いている。

すでに革新政権を10~20年継続させるマル秘戦術が取り沙汰されている。

この戦術を実現する上で、司法機関(検察と裁判所)を抱き込む動きを見せている。

韓国司法機関は、実質的に政治権力に弱く、言いなりになる。あるいは、自ら立身栄達のために権力へすり寄る人物が現れている。

ここが、朝鮮民族の悲しいまでの性である。強いと見える側にすり寄るからだ。


支持基盤の機嫌取り

朴槿惠前大統領が、100万市民の「ローソク・デモ」によって退陣しなければ、文政権は誕生しなかったであろう。

朴氏の後継者として、当時の国連事務総長の呼び声が高かったからだ。朴スキャンダルは、文氏と「共に民主党」に僥倖であった。

こうして、文政権はローソク・デモを組織した労組と市民団体の意向を100%受入れなければならなくなっている。

これが、韓国経済にとって「不幸」の始りである。

現実感覚の少ない、労組や市民団体の要求する経済政策が、韓国経済全体から見て整合性のとれる可能性は低い。

彼らは、自らの利益達成が最大目的である。

政府の役割は、利害関係の総合調整にある。だが、最初からそれを放棄して、労組や市民団体の要求に全て応じる信じがたい政策を選択だ。

これでは、韓国経済が回復軌道に乗れるはずがない。

予想通りの結末に向かっている。高い失業率と設備投資の落ち込みで、間もなく「不況宣言」が発せられる所まで追い込まれてきた。

それでも、路線変更はなさそうだ。支持基盤の了解が得られないからだ。


この支持基盤は、徹底的な「反企業主義」にこだわっている。

韓国経済全体に良いことでも、大企業の利益になるようなことは一切、認めないという「原理主義集団」である。

『朝鮮日報』(10月8日付)は、「銀産分離、なぜ韓国の進歩陣営は一文字も修正させないのか」と題する社説を掲載した。

(4)

「韓国公正取引委員会の金尚祚(キム・サンジョ)委員長はメディアの取材に対し『進歩(リベラル)陣営は2002年に制定された今の銀行法が定める銀産分離について、これをなぜ一文字も修正できない金科玉条のように考えるのか理解できない』と発言した。

金委員長はさらに

『最近はネットバンクをめぐる議論が活発化しているが、これに関してはサムスングループだけの規制を求める声も上がっている』とした上で、

『サムスンは220兆ウォン(約22兆円)規模のサムスン生命を保有しているため、10兆ウォン(約1兆円)規模のネットバンクを持つべき理由などない』とも指摘した。

金委員長は『かつて資本が足りなかった時代、財閥は銀行を保有しこれを私的な金庫としたい誘惑もあったが、通貨危機やクレジットカード問題、リーマンショックなどを経て(財閥にとっては)金融機関を持つリスクが逆に高まっている』との見方も示した。

金委員長によると、韓国の金融機関は規制にがんじがらめとなっているため、アフリカの一部の国よりも競争力が低いという」


「銀産分離」とは、厳密に言えば金融が産業(事業)を支配しないという独禁法上の大原則である。

韓国では、これが完全分離していない点で問題になってきた。

サムスングループは、グループ内に製造業と金融証券業を抱えており、本来ならば違法である。

製造業と金融(保険業)・証券業が同一企業グループに所属すれば、韓国経済への支配権が強まる懸念が持たれるからだ。

こういう現実は、早急に改革すべきである。それを理由に、ネットバンクを規制しているのも理屈に合わない話である。江戸の仇を長崎で討つようなことだ。


(5)

「左派陣営の『本能的』とも言える反資本主義感情の影響を受け、今なお一歩も進めることができない新産業分野はいくつもある。

人工知能(AI)、ドローン、ビッグデータ、フィンテックなどの第4次産業分野はもちろん、韓国で最も多くの人材が集まる医療分野でさえ勢力争いや下方平準化の壁にぶち当たり、数十年にわたり規制緩和が実現しない。

これに対してシンガポールや米国などでは医療やヘルスケア産業が発達し、欧州や中東、ロシアなど世界各国から患者が集まり今や経済の成長エンジンとしても機能している」

政治的左派が、資本主義経済=市場機構を受入れないのは過去のこと。

反資本主義経済とは本来、市場機構軽視して直接統制経済を志向するものだ。

それを、現代に復活させることは不可能である。

中国経済の混乱が、それを見事に証明している。

韓国左派が、学生時代に学んだ理論を検証もしないで実行して失敗しつつある。

現在の「最賃大幅引上げ」だ。この失敗に懲りずに、新たな案を阻止しようとしている。労組と市民団体の支持を失うのが怖いのだ。


(7)

「1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式に今なお縛られた与党や過激な貴族労組など既得権を持つ勢力が変わらない限り、第4次産業はもちろん今何とか持ちこたえている半導体や自動車など、従来型の主力産業もこのまま衰退していくのは目に見えている」



1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式は、まさに「86世代」のそれである。

韓国経済は、反市場経済システムを信奉する彼らが率いている。

上手く機能するとは思えないのだ。彼らの夢は、北朝鮮と連携すること。

それには、労組と市民団体の意向を最大限受入れるだろう。かくて、韓国経済は破綻に向かう。



(2018年10月11日付)