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韓国、「失業者急増」アルバイト増で辻褄合わせ「苦肉の策」

2018-10-17 16:51:25 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


2018-10-17 05:00:00

韓国、「失業者急増」アルバイト増で辻褄合わせ「苦肉の策」

一部削除

政府のトリック記者を「騙す」

雇用政策はアルバイト募集?

韓国政府は、左派の革新政権を売り物にして登場した。

文政権は「雇用重視の政府」という触れ込みであった。

実態は、「雇用破壊政府」の汚名を着る結果になった、原因は、最低賃金の大幅引き上げ(16.4%)が仇となり、解雇と雇用を増やすという事態に陥っている。

韓国の最賃制度は罰則を伴うだけに、零細企業者は罰則に問われないよう解雇せざるをえない局面に追い込まれた。

文政権は、「革新成長」なる旗を掲げてスタートした。つまり、「親労組・経済民主化・所得主導成長」という内容である。


① 親労組とは、労働組合の主張に沿うことが労働大衆を重視する政策につながる。


② 経済民主化は、反大企業主義で財閥企業の経営自主性を奪うため規制を増やす。


③ 所得主導成長とは、最低賃金の大幅引上げである。


これら三項目から受けるイメージは、純粋な市場経済の否定である。

韓国左派は、市場経済ルールの抑制が国民福祉の増大につながるという、大いなる錯覚をしている。この学派が一大山脈をなしており、卒業生が各分野で実力を持っている。

現在の文政権は、その象徴的な存在になった。

過去二代、韓国右派の保守党が政権を握ったのでこの際、徹底的に右派を追放する。

そして、左派の長期政権樹立構想を立て実行しているところだ。


韓国経済は、こういう左派政権の思惑の道具にされている。

最低限、労働組合の主張を生かして、彼らの利益を保障し選挙運動の際に与党の手足になって働ける「部隊」を確保したい。

こういう狙いが浮かび上がるのだ。最低賃金の大幅引上げがそれである。


もっと、ハッキリ言えば、最低賃金引き上げによって失業率が増えても、韓国労組には直接の被害はない。

それどころか、韓国労組には最賃大幅引き上げ分がメリットになる。

野党勢力の抑制には、司法の力を利用して「積弊一掃」という名の下で、保守党政権関係者を追放する。

こうして野党を無力化し、南北統一に向けた動きを加速させるのだ。


私が、これまで得てきた韓国関連情報を総合すると、こういう危機的な結論に辿り着く。

南北統一では「反日」が、共通のキーワードになってくる。

慰安婦問題、旭日旗問題など次々に役者が代っても、日本批判への動きに変わりはない。

文政権は、経済問題を棚上げして政治問題のみに集中しているが、それだけ経済危機を招くリスクは大きくなっている。



政府のトリックは記者を「騙す」韓国政府は、失業率を低く見せかける「トリック」を始めている。



韓国統計庁長官は8月末に突如、解任された。

理由は、最低賃金引き上げに伴い所得分配の不公正が高まった、というデータ発表にある。

これは、調査標本を一部手直ししたこともあるが、結果には影響のないもので不公平の高まりに変わりなかった。

だが、韓国大統領府は、自らに都合の悪い結果が出たとして激怒、統計庁長官を更迭した。


この「隠蔽工作」が、どのような形をとってくるか注目していたところ、9月の完全失業率の発表で、従来の「季節調整値」(国際標準)をトップに出さず、「実数値」を発表してきたのだ。

この種の統計数字に不慣れな新聞記者は、何ら疑問にも感じず、統計庁発表の文書をそのまま記事にした。

『聯合ニュース』では、「9月の失業率は3.6%に悪化」という見出しになった。

8月の失業率は4.2%(季節調整値)である。それが「9月は3.6%に悪化」とは、辻褄の合わない記事である。

読む側を混乱させるものだ。

実は、この「3.6%」は実数値である。

日本では、最初に「季節調整値」が正式データとして発表される。

「原数値」は、統計の末尾に「参考」として掲示されている程度だ。

統計専門家以外に、「原数値」を見る者は少ない。その程度の扱いである。

季節調整値こそ、統計判断の生命線といってもよい。


韓国政府は、明らかに社会に誤った情報を流布させて、失業問題が深刻化していないと、カムフラージュしている。

これが、「革新政権」の看板を出す文政権が、堂々と行なっている「データ発表の欺瞞性」なのだ。

9月の完全失業率は、季節調整値によると4.0%である。

『中央日報』(10月12日付は、次のように伝えた。



「統計庁が12日に発表した雇用動向によると、9月の韓国の失業率は3.6%だった。前年同月比0.3ポイント増えた。季節的特性を考慮した季節調整失業率は4.0%だった。

8月(4.2%)に比べると低下したが、過去5カ月間で3回も4%を上回った。

失業者数は9カ月連続で100万人を上回った。


通貨危機の影響で1999年6月から2000年3月まで10カ月連続で「100万人失業」となったが、それ以来の長い期間だ」


文政権に、失業問題の悪化が最低賃金の大幅引上げにあるという認識はある。

だから、実態をカムフラージュする必要に迫られるのだ。

過去5カ月間で3回も4%(季節調整値)を上回った。

失業者数は9カ月連続で100万人を上回った。

通貨危機の影響で1999年6月から2000年3月まで10カ月連続で「100万人失業」となった。

現状の失業者100万人は、「平時」で起こっている現象である。文政権の労働政策がいかに無策であるかを物語る数値である。



韓国は、間違った最低賃金の大幅引上げによる高い失業率解決に手を焼いている。

間違った政策の解決には、間違った政策を廃止するしか方法がない。

それをやると、政府が間違いを認めることになるのでやりたくない。まさに、メンツの問題で事態を悪化させている。


「メンツ」という問題は、儒教社会で共通である。

中国もそうだ。体面を重視するから、間違いを認めて撤回することはない。

だから、深みにはまり込んで身動きできない状態に落込んでゆく。

韓国の雇用悪化が、これに該当するのだ。



雇用政策はアルバイト募集?

『朝鮮日報』(10月12日付)は、「アルバイト3万人雇用で問題を覆い隠す韓国政府」題する社説を掲載した。


(1)

「韓国政府が政府系企業、公共機関などを総動員し、短期の雇用約3万人分をつくり出す方針だという。

政府の傘下機関、政府系企業、さまざまな協会、外局などに期間2カ月から1年の臨時職、インターン、アルバイトなどを募集させる内容だ。

企画財政部(省に相当)の主導で雇用労働部、国土交通部などオール政府で取り組み、傘下機関に採用実績を機関トップの評価に反映すると公文書で圧力をかけている。

既に韓国土地住宅公社(LH)、韓国鉄道公社(KORAIL)、韓国農漁村公社などが「賃貸住宅探し補助員」「体験型インターン」といった名目で数千人規模のアルバイト採用を始めた」

文政権は、世にも不思議な「政府雇用のアルバイト募集」を始めた。

政府系企業、公共機関などを総動員し、短期の雇用約3万人分をつくり出す方針だという。

政府機関のトップ評価では、このアルバイト募集の実績を加味するという。

100万人以上の失業者を抱える現在、わずか3万人のアルバイト募集では効果がない。

それでも、「やらないよりもよい」程度のこと。言い訳仕事である。


雇用を増やすには、企業活動を活発化させること。

そうすれば達成可能だ。

賃金は、市場に任せて置く。

最賃引上幅は企業の生産性向上の範囲内という制約があるからだ。

小幅でなく、大幅な最賃引上には、生産性向上を実現させる、別途の政策が必要である。

それをやらずに、「16.4%」という法外な最賃引上を行なった。大混乱に陥って当然である。

(2)

「毎月30万人前後だった就業者数の伸びが昨年8月には3000人にまで減少した。

税金54兆ウォンを投じてその結果だ。

そこで短期アルバイトの仕事を急ごしらえして統計を変えようとしている。

事実上の統計操作であり、到底、政府の対策とは言い難いお粗末さだ。

大統領が「良質な雇用が増えた」と発言した日にこのありさまが明らかになった」


文政権の雇用問題は、「数合わせ」である。

アルバイトでも何でも良い。就業者数が上げれば、それで言い訳が可能という判断であろう。

これでは、国民が安定した生活を望んでも不可能である。


(3)

「政府が増やしたという「見せかけの雇用」は、巨額の税金をのみ込んでいる。

政府は昨年、追加補正予算11兆ウォンを投じ、6万7000人分の雇用を創出したというが、その半数が60代のアルバイトだった。

保育施設での奉仕活動や一人暮らしの高齢者の安否確認、ごみ拾いなどで日当を受け取る期間数カ月の雇用に税金を数兆ウォンばらまいた。

ソウル市が今年上半期に創出したという5000人の雇用も禁煙区域監視といった日当4万5000ウォンの「高齢者バイト」が大半だった。

政府の評価を受ける公共機関はアルバイト募集競争を展開している。

韓国南東発電は5万人、山林庁は2万人の雇用を創出すると言っている。支援が途切れれば消えてしまう見せかけの雇用をつくり出す競争だ」。


政府は昨年、追加補正予算11兆ウォン(約1兆0900億円)を投じ、6万7000人分の雇用を創出したという。

その半数が、60代のアルバイトだった。

日本でも高齢者が働いているが、「働き方改革」で雇用形態を労働需要に合わせた。

日本にできて、なぜ韓国では不可能なのか。

労組が、自らの権益を侵されるとして反対しているのだ。

韓国は、労組が生き残って国民が滅びるという最悪構図になっている。

韓国労組は、李朝時代の「科挙」と同じで一生、身分保障されるべきだと思い込んでいる。

(4)

「雇用は税金ではなく、新たなビジネスが生み出すものだ。

新産業を阻む規制をなくし、法人税負担を軽減し、労働市場を改革すれば、企業自らが新たなビジネスを始める。

良質な雇用が増えれば、家計所得が増え、消費が上向き、企業はさらに投資を行い、雇用が増え続けるというプラスの循環が起きる。

政府は正攻法を捨て、税金ばらまきという誤った処方を続けている。

最低賃金を急激に引き上げ、若者が仕事を追われる結果を生んだ。

誤った政策を是正せず、税金で公務員を増やすことに固執している。

今度はアルバイトの急募で統計数値を良く見せかけようとしている。

問題の本質はどんな病気であれ、見栄えが良ければよいという発想が雇用問題にまで広がっている点だ」


韓国経済の悲劇は、左派経済学に占領されてしまったことだ。

日本で言えば、日本共産党が政権を取ったときと同じ現象が起こるのだろうか。

日本共産党は、ここまで独善的な政策に陥らないことを願っている。

韓国に、失敗例があるから同じ轍を踏まないように、周囲が目を光らさなければ危険だ。

これは、あくまでも仮定の話である。文政権の経済政策は、日本共産党並みであることを言いたいためである。

(2018年10月17日付)