2018/10/11 10:02
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
対北制裁解除に前のめりの韓国外相、発言を謝罪
与党代表「対北朝鮮制裁を解除?」 外交部長官「検討中」
韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官は10日、国会外交統一委員会の外交部国政監査で、韓国独自の対北朝鮮制裁「5・24措置」の解除に関連、「関係部処(省庁)と検討中だ」と述べた。
政府当局者が5・24措置解除の検討に言及したのは初めてだ。
2010年3月の北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没事件に対抗して取られた5・24措置は、南北交易や北朝鮮への新規投資などを禁止する内容で、韓国独自の対北朝鮮制裁の中核だ。
■康京和長官「5・24措置解除を検討」→「聞いた話だった、申し訳ない」
与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が同日、「観光自体は(国連安保理の)制裁対象ではなのではないか」と質問すると、康京和長官は「観光(自体)はそうではないが、そのために資金が流入するのは明らかな制裁対象だ」と答えた。
さらに、李海チャン代表が「金剛山観光が(安保理)制裁対象だから行けないのではなく、5・24措置で政府が禁止しているから行けないのではないか」とあらためて質問すると、康京和長官は「そうだ」と言った。
李海チャン代表がその後、「5・24措置を解除する用意があるのか」と尋ねると、康京和長官は「関係部処と検討中だと聞いている」と述べた。
この発言は、政府として5・24措置の解除を検討しているという意味だと解釈できる。
李海チャン代表が質問し、康京和長官が答える形式だったため、与党内の「制裁緩和」に対する共通認識が反映されているのではないかという声も上がっている。
野党からはすぐに批判が出た。野党・自由韓国党の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員は「少なくとも、『天安』の遺族にまず聞き、理解を求めるのが順序だ」と言った。
「主務部処の統一部の長官でもない、外交部長官の発言で、非常に不適切だ」という叱責に、康京和長官は「汎政府的に検討しているということではなかった。
申し訳ない」と述べた。
謝罪・発言撤回要求が続くと、康京和長官は「(外交部が関係部処と共に検討しているのではなく)ほかの関係部処が検討中だと聞いたという意味だったが、間違って発言したようだ」と言った。
金剛山観光中止が、2008年の北朝鮮兵士による韓国人女性観光客射殺事件に伴うものではなく、5・24措置に伴うものだとした点についても、「事実関係とは異なる発言したことについて謝罪申し上げる」と述べた。
しかし、実際に政府内で5・24措置解除議論が行われた可能性は高いと見られている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、新政治民主連合代表だった2015年9月、その必要性に言及していた。
野党関係者は「事前に共通認識を持って国政監査の場で李海チャン代表と康京和長官が決められた通りの問答を交わしているに見えた」と言った。
南成旭(ナム・ソンウク)高麗大学行政大学院長は「康京和長官の発言は『失言』というよりも南北経済協力を加速させようという政権の本音に近い」と語った。
■北朝鮮制裁解除に焦り見せる政府
この日の康京和長官の発言に対して、「北朝鮮はまだ具体的な非核化措置を取ってもいないのに、韓国が先に制裁解除を検討するのは先走りすぎだ」との指摘が出ている。
北朝鮮が具体的な非核化後続措置を履行していない状況で、韓国政府が先に立って制裁を緩めるのは、国際協調に亀裂を入れる行為だという意味だ。
北朝鮮は「天安」爆破・沈没について認めたり謝罪したりしておらず、国連と米国の対北朝鮮制裁は解除されていない。
5・24措置が解除されたらすぐに南北交易が再開され、新規投資が許可されるわけではない。
国連安保理が北朝鮮の核・ミサイル資金に転用される恐れがある「バルク・キャッシュ」(大量の現金)の提供を禁止しているからだ。
しかし、象徴的措置として5・24措置が解除された場合、各種の経済協力・金剛山観光・開城工業団地再開も容易になるとの見方がある。
文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は昨年、「バルク・キャッシュ禁止条項は核・ミサイル兵器に転用されるという証拠がなければならない」とした上で、「国連制裁に違反しない方法を見つけられる」と言った。
対北朝鮮制裁解除を前提とした政府の動きは加速している。
統一部は同日、先月の南北共同連絡事務所開所に合わせて、開城工団の浄水・排水施設を2年ぶりに再稼働
させたことを発表した。
また、同じく連絡事務所開所時、一部の資材・部品などの禁止品目を北朝鮮に持って行き、「制裁違反」騒動を引き起こした。
8月にはソウルから新義州まで列車を試運転して北朝鮮側の鉄道を共同点検するという計画が国連で不許可となり実現に至らなかった。
康京和長官はまた、「(南北協力)の速度調整に関しては(米国側の)意見がある」として、韓米間に見解の違いがあることを示唆した。
米国務省は「南北関係進展は非核化の進展と共に進めるべきだ」という考えを持っている。
康京和長官は豊渓里の核実験場査察に韓国の専門家が参加することについて、「韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部の傘下に、北朝鮮の核の検証チームを新たに作っている」と述べた。
【5・24措置】2010年3月26日に発生した北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没事件に対抗して韓国政府が打ち出した独自の対北朝鮮制裁措置。南北交易中止、対北朝鮮新規投資禁止、北朝鮮船舶の韓国海域運航不許可、対北朝鮮支援事業の原則保留などが盛り込まれている。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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対北制裁解除に前のめりの韓国外相、発言を謝罪
与党代表「対北朝鮮制裁を解除?」 外交部長官「検討中」
韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官は10日、国会外交統一委員会の外交部国政監査で、韓国独自の対北朝鮮制裁「5・24措置」の解除に関連、「関係部処(省庁)と検討中だ」と述べた。
政府当局者が5・24措置解除の検討に言及したのは初めてだ。
2010年3月の北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没事件に対抗して取られた5・24措置は、南北交易や北朝鮮への新規投資などを禁止する内容で、韓国独自の対北朝鮮制裁の中核だ。
■康京和長官「5・24措置解除を検討」→「聞いた話だった、申し訳ない」
与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が同日、「観光自体は(国連安保理の)制裁対象ではなのではないか」と質問すると、康京和長官は「観光(自体)はそうではないが、そのために資金が流入するのは明らかな制裁対象だ」と答えた。
さらに、李海チャン代表が「金剛山観光が(安保理)制裁対象だから行けないのではなく、5・24措置で政府が禁止しているから行けないのではないか」とあらためて質問すると、康京和長官は「そうだ」と言った。
李海チャン代表がその後、「5・24措置を解除する用意があるのか」と尋ねると、康京和長官は「関係部処と検討中だと聞いている」と述べた。
この発言は、政府として5・24措置の解除を検討しているという意味だと解釈できる。
李海チャン代表が質問し、康京和長官が答える形式だったため、与党内の「制裁緩和」に対する共通認識が反映されているのではないかという声も上がっている。
野党からはすぐに批判が出た。野党・自由韓国党の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員は「少なくとも、『天安』の遺族にまず聞き、理解を求めるのが順序だ」と言った。
「主務部処の統一部の長官でもない、外交部長官の発言で、非常に不適切だ」という叱責に、康京和長官は「汎政府的に検討しているということではなかった。
申し訳ない」と述べた。
謝罪・発言撤回要求が続くと、康京和長官は「(外交部が関係部処と共に検討しているのではなく)ほかの関係部処が検討中だと聞いたという意味だったが、間違って発言したようだ」と言った。
金剛山観光中止が、2008年の北朝鮮兵士による韓国人女性観光客射殺事件に伴うものではなく、5・24措置に伴うものだとした点についても、「事実関係とは異なる発言したことについて謝罪申し上げる」と述べた。
しかし、実際に政府内で5・24措置解除議論が行われた可能性は高いと見られている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、新政治民主連合代表だった2015年9月、その必要性に言及していた。
野党関係者は「事前に共通認識を持って国政監査の場で李海チャン代表と康京和長官が決められた通りの問答を交わしているに見えた」と言った。
南成旭(ナム・ソンウク)高麗大学行政大学院長は「康京和長官の発言は『失言』というよりも南北経済協力を加速させようという政権の本音に近い」と語った。
■北朝鮮制裁解除に焦り見せる政府
この日の康京和長官の発言に対して、「北朝鮮はまだ具体的な非核化措置を取ってもいないのに、韓国が先に制裁解除を検討するのは先走りすぎだ」との指摘が出ている。
北朝鮮が具体的な非核化後続措置を履行していない状況で、韓国政府が先に立って制裁を緩めるのは、国際協調に亀裂を入れる行為だという意味だ。
北朝鮮は「天安」爆破・沈没について認めたり謝罪したりしておらず、国連と米国の対北朝鮮制裁は解除されていない。
5・24措置が解除されたらすぐに南北交易が再開され、新規投資が許可されるわけではない。
国連安保理が北朝鮮の核・ミサイル資金に転用される恐れがある「バルク・キャッシュ」(大量の現金)の提供を禁止しているからだ。
しかし、象徴的措置として5・24措置が解除された場合、各種の経済協力・金剛山観光・開城工業団地再開も容易になるとの見方がある。
文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は昨年、「バルク・キャッシュ禁止条項は核・ミサイル兵器に転用されるという証拠がなければならない」とした上で、「国連制裁に違反しない方法を見つけられる」と言った。
対北朝鮮制裁解除を前提とした政府の動きは加速している。
統一部は同日、先月の南北共同連絡事務所開所に合わせて、開城工団の浄水・排水施設を2年ぶりに再稼働
させたことを発表した。
また、同じく連絡事務所開所時、一部の資材・部品などの禁止品目を北朝鮮に持って行き、「制裁違反」騒動を引き起こした。
8月にはソウルから新義州まで列車を試運転して北朝鮮側の鉄道を共同点検するという計画が国連で不許可となり実現に至らなかった。
康京和長官はまた、「(南北協力)の速度調整に関しては(米国側の)意見がある」として、韓米間に見解の違いがあることを示唆した。
米国務省は「南北関係進展は非核化の進展と共に進めるべきだ」という考えを持っている。
康京和長官は豊渓里の核実験場査察に韓国の専門家が参加することについて、「韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部の傘下に、北朝鮮の核の検証チームを新たに作っている」と述べた。
【5・24措置】2010年3月26日に発生した北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没事件に対抗して韓国政府が打ち出した独自の対北朝鮮制裁措置。南北交易中止、対北朝鮮新規投資禁止、北朝鮮船舶の韓国海域運航不許可、対北朝鮮支援事業の原則保留などが盛り込まれている。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版