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米中対立は冷戦へ、米のファーウェイ輸出規制が中国衰退の引導

2019-06-01 19:31:13 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

 
2019-05-28 05:00:00

米中対立は冷戦へ、米のファーウェイ輸出規制が中国衰退の引導

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暗転した運命の行方?

米国は冷戦意識で対応

合従連衡スパイの原型

具体的な損失の中身は

 

米商務省は5月16日、中国通信機会社ファーウェイ(華為技術)と関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティ―リスト」へ正式追加を発表しました。

これは、米国が放った中国戦略の「核爆弾」に匹敵するものです。

 

前記の記述は、「メルマガ57号」(5月20日発行)からの引用です。

その後の情報は、これを裏付けるものが多く、「ファーウェイは存続できても気息奄々(きそくえんえん)」という悲観論が目立ちます。

これは、ファーウェイが「エンティティ―リスト」に追加されたことで、米国からの技術やソフトの輸入杜絶を意味するのです。

 

具体的には、スマホのOSでグーグルの「アンドロイド」が使用不可能になります。

アンドロイド」は、事実上の世界標準です。

世界中のスマホのOSの87%を占めています。

残りのほぼすべてが、アップルの「iOS」です。OS市場は、実質的に複占状況にあります。

 

ファーウェイが、新たに商標登録したOSの入り込む余地は、ほぼゼロの状態です。

さらに難関は、300万と言われるグーグルの「アプリ」が使えなくなります。

「アプリ」こそ、スマホの生命線です。

ここから切り離されれば、ファーウェイ・スマホの魅力が消えるのです。

グーグルのOSとアプリが使えない、スマホの商品価値は極端に下がります。

 

ファーウェイの次世代通信網「5G」の基礎技術でも、米国企業に依存しています。

IBM、アクセンチュアといった米国を拠点とする大手企業の名前が出ています。

今回の「エンティティ―リスト」によって、これら企業からの技術輸出も止まるので、「5G」製品に多大の影響が出てきます。

 

暗転した運命の行方?

以上のように、ファーウェイの運命は急転せざるを得なくなりました。

この影響は、ファーウェイだけに関わらず、中国経済そのものを直撃します。

その点で、米中関係が根本的に変わる事件となりました。

中国政府は、米中通商協議中にファーウェイ問題が起こったことで、米国の真意が掴めないとする報道が見られるほどです。

 

私は、米国が明白にその意図を示していると思います。その理由を、次に説明します。

 

(1)米国は、中国の産業高度化計画である「中国製造2025」に補助金を使うことがWTO(世界貿易機関)の規則違反であるとし、撤回を求めてきました。しかし、中国はこれに応じる意向を見せませんでした。

 

(2)「中国製造2025」の担い手になる中核企業は、ファーウェイです。ファーウェイは「5G」の先導企業として、世界の通信機市場で絶対的な地位を築かせるようにする狙いでした。

 

(3)「5G」が、「4G」に比べて約100倍もの通信速度を持つことから、安全保障上で米国の地位を脅かす危険性が特段に高まります。

それは、軍事機密情報がファーウェイを通して、中国人民解放軍の手にわたる危険性が高まるからです。

 

(4)ファーウェイは、形式的に見れば社員株主制で民営企業です。

米国法学者の研究によれば、実態は国営企業でした。ファーウェイは「民営企業」のお面を被り、世界中から先端技術を集めて人民解放軍に渡していたと見られます。

 

その一例として挙げれば、ファーウェイは住友電工ライトウェーブへ委託開発した光ファイバー技術と同じものが、中国軍のジェット戦闘機の殲10(J―10)、ハイエンド駆逐艦、巡洋艦、開発を続けている空母に使用されているそうです。

米国諜報部によって確認されました。これらの技術横流しについては、後で取り上げます。

 

以上の4点を見ますと、ファーウェイが中国の経済問題の推進役だけでなく、米国の安全保障上のリスクとして浮上しました。

ファーウェイは、文字通り中国を牽引する「航空母艦」に当ります。

米国は、ここへ「エンティティ―リスト」入りという核爆弾を投下したのです。その「被弾範囲」が、きわめて大きいのです。中国政府が戸惑う原因はここにあります。

 

米国は冷戦意識で対応

米国側の意識では、すでに中国と冷戦状態に入っています。

一方の中国には、冷戦への準備も覚悟もなく、米国から技術窃取してうまく立ち回る積もりだったのでしょう。

その「隠密作戦」が、米国のファーウェイ探索によって暴露されたのです。

中国は現在、茫然自失状態に陥っています。習近平氏が、「新長征」と言いだしている背景でもあります。

 

韓国、「重大岐路」日韓会談、G20で実現なければ「断交状態証明」

2019-06-01 18:57:58 | 日記

2019-06-01 05:00:00

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

韓国、「重大岐路」日韓会談、G20で実現なければ「断交状態証明」

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韓国外交は、完全に行き詰まっている。

日本、米国、中国などとの間で意思疎通を欠いているからだ。

日本が、中国との関係を復活させ、米国との親密度合いをさらに深めて、外交的な発展を目指す。

米国とイランの間で仲介の労を取る。そこまで余裕を見せてきた。

 

韓国は、頼りの北朝鮮関係も手詰まり状態に陥っている。

北朝鮮からは、過去2回の南北首脳会談の成果も吹き飛んだ形で、悪口雑言を浴びせかけられているほどだ。

文在寅大統領は、どこで誤算をしたのか。

それは、文氏が原理主義者であることだ。

思い込み外交と言っても良い。「かくあるべし」という理念先行であり、現実とのギャップを調整できない融通の効かなさにあるのだろう。

 

『朝鮮日報』(5月30日付け)は、「韓国の外交は今、どこにあるのか」と題する社説を掲載した。

 

この社説では、韓国外交が過去に縛られて動きの取れない現実を嘆いている。

日本外交は、中国との間にある過去問題を修復した点と比較している。

日韓におけるこの違いは、文在寅氏が、過去に執着して自縄自縛になっている点にあろう。

 

(1)

 

「日本を国賓訪問したトランプ米大統領が28日、米国の大統領としては初めて日本の空母級護衛艦『かが』に乗船した。

安倍首相は『日米同盟はこれまでになく強固になった。

この艦上に我々(安倍首相とトランプ大統領)が並んで立っていることがその証しだ』と言った。

こうした『日米蜜月ムード』の中、トランプ大統領は在日米軍海軍基地を訪れて、東海をためらうことなく『日本海』と呼んだ。

これは単なる失言だろうか。トランプ大統領との会談を終えた安倍首相は来月、米国と対立しているイランを訪問する。幅広く迅速に動いていると評価せざるを得ない」

 

韓国は、完全に過去の視点で日本を捉えている。

70年以上昔の日本に適用された物差しで現在の日本を計っている。

70年以上昔には、日本は米軍と敵味方に分かれて血みどろの戦争をしていた。

今は、日米首脳が一緒にゴルフをし、日本の艦船で日米兵士に演説をする時代だ。

こういう根本的な状況変化を見落として、日本が「普通に戦争する国となる」と言って警戒している。

 

旭日旗に対して、戦犯旗だとか軍国主義復活とか空騒ぎしている。

日本が、米国と一体になって中国の海洋進出に対抗している。

そういう時代変化を見ない。

客観的に捉えようとする努力を怠っているのだ。

日本から見た韓国は、「箸にも棒にもかからない」厄介者に映る。

 

韓国はもう、好き勝手にやってくれ。自滅しようと北朝鮮に飲みこまれようとご自由に。これが、多くの日本人の抱く韓国観であろう。

 

(2)

「中国と日本は歴史問題・領土問題から脱して急速に関係を修復している。

両国は31日にシンガポールで行われるアジア安全保障会議(シャングリラ会合)での国防相会談を推進している。

先月の中国での観艦式には日本の自衛隊艦が旭日旗を掲げて参加した。

日中外相は既に『両国関係の正常化』を宣言した。

日本は習近平国家主席が力を入れているシルクロード経済圏構想『一帯一』を話し合う会議に代表団を派遣し、中国は牛海綿状脳症(BSE)を理由に中止していた日本産牛肉の輸入を再開した。

来月、大阪で行われる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では日中首脳会談も予定されている」

 

中国が、日本に接近したのは米中対立で孤児になる危険を避けた結果だ。

日本とパイプをつないでおけば、間接的に米国と話をするルートが確保できる。

さすが中国は、百戦錬磨の国である。中国にとって日本は、「ヘッジ」(保険)対象である。日本と真の友好国になろうとは思っているはずがない。

中国は、尖閣諸島奪取の機会を虎視眈々と狙っていることに変わりない国である。

 

(3)

「韓国の外交は完全に『ひとりぼっち』状態だ。韓国国会外交統一委員会所属の議員5人は29日、日本に行って冷遇された。

日本の衆議院外務委員長との面談は拒絶され、参議院外交防衛委員長がたった1人で出てきた。

委員長とは言え、比例代表当選1回目の議員だ。

尹相現委員長は『(強制徴用判決関連で)日本が要求した仲裁委員会設置を韓国側が拒否すれば、大阪G20サミットで韓日首脳会談を行わないと言われた』と話す。

日本で開催される会議に出席する韓国大統領が、日本の首相と会談できないなんて考えられるだろうか。

国が過去の歴史問題と現実を区別できなければ外交は成立しない。

韓日関係は既に外交が成立しない状況に入っている。これが韓国の国益にとって何の助けになるというのか」

 

日本は、韓国外交にサジを投げた形である。

協定を結んでも最後まで守る意思がないからだ。

日本が、当てにならない韓国に見切りを付けたのは、傷を浅くする上で不可欠である。

隣国日本を敵視し積弊扱いしている韓国に、もはや親しみを感じる理由もなくなった。

6月末のG20で、日韓首脳会談が見送られれば、日韓関係は凍結という意味であろう。


文大統領の支持率が40%台から落ちない不思議

2019-06-01 18:47:54 | 日記

文大統領の支持率が40%台から落ちない不思議 (朝鮮半島ファイル) 編集委員 峯岸博

朝鮮半島ファイル
            
朝鮮半島
                    
(1/2ページ)
2019/5/31 5:50
情報元
日本経済新聞 電子版
 
 

 

5月で発足3年目に入った韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権。アキレス腱(けん)の経済だけでなく外交や北朝鮮との南北関係も行き詰まり、保守系メディアから「四面楚歌(そか)」「文在寅パッシング(外し)」などと書き立てられている。

それでも大統領支持率が40%台という比較的安定した数字を維持しているのはなぜか。

この"不思議"を解く鍵は国内事情に潜んでいる。

直接選挙で選ばれた大統領として過去最高の84%の支持率でロケットスタートした当初の勢いはすでにない。

最大の要因である景気悪化への国民の不満は、政権交代や3回にわたる南北首脳会談の高揚をかき消した。

韓国ギャラップによる世論調査で文氏の支持率は、2018年11月を最後に50%に届いていない。

かといって30%台まで急落することもなかった。

5月第4週の支持率も46%で、不支持率の44%をわずかながら上回った。

同調査までの半年間は41~49%で推移している。

歴代大統領と比べても、政権発足2年にあたって実施した調査での文氏の支持率47%は、国民的な人気のあった金大中氏に次ぐ高水準だ。

■「30代・40代」「女性」に強み

 

文在寅氏は前回大統領選で特に20~40代の支持を多く集めた(2017年大統領選時の文氏)

文在寅氏は前回大統領選で特に20~40代の支持を多く集めた(2017年大統領選時の文氏)

その理由の一つは、世代別支持率に見てとれる。文氏の場合、30代(57%)と40代(65%)が突出して高い。

この世代は、韓国が国家破綻の窮地に陥った1997年の「IMF(国際通貨基金)危機」を学生や若い社会人の時分に経験し、徹底した市場原理の導入や貧富の格差の荒波をもろにかぶった。

20年たった現在は、子どもの教育費負担増や不動産価格の高騰などに見舞われ、「格差」を最も実感している世代とされる。

朝鮮戦争を体験したり、高度経済成長「漢江の奇跡」の果実を享受したりした50~70代以上はもとより、就職難に直面し文氏の経済政策をシビアに見つめる20代男性の多くが文氏の敵対勢力にポジションを移した。

これに対し30代や40代は、今も「公正な社会」や「正義」の実現を文政権に期待する気持ちが強い。

この世代は2年前の大統領選の出口調査でも、文氏に投票した比率が最も高かった。

 

文政権を支えるもうひとつのキーワードは「女性」だ。

男性優位社会が長らく続いた韓国で、女性が日常的に経験する差別や苦悩を描いた小説「82年生まれ、キム・ジヨン」が異例の大ベストセラーになった。

文政権はフェミニズムやジェンダーの問題に焦点を当て、女性を暴力から守る法整備や職場進出に力を注ぐ。これが女性の支持をつなぎ留める。


文政権打倒だけが大韓民国が生きる道だ

2019-06-01 18:29:49 | 日記
 

 統一日報

 

韓半島が文明史転換期に入った。66年間持続された「1953年体制」韓国戦争後、アジアで米・中が共存してきた体制が対決構図へ戻ったからだ。

米中貿易戦争、あるいは関税戦争に見える米・中摩擦は、東アジア韓半島の未来を決定する巨大な戦いだ。

中国が文明社会の価値と秩序に挑戦、米国が中国共産党の「侵襲的全体主義」を容認できないと宣言したからだ。

 われわれは、この文明史的転換期を迎える心の準備をし、近づいてくる未来を具体化するビジョンを作らなければならない。

韓半島の北では、金正恩体制が断末魔の悲鳴を上げながら終着へと走っている。

ところが、韓国と日本は1世紀以上、奴隷状態だけを経験した北の鮮住民2500万人を新しい世界へ導く準備をしていない。

 スターリン主義の衛星国として誕生した北韓を受け継いだ金正恩が4月25日、ウラジオストックへプーチンに会いに行った。

しかし、プーチン大統領は、北韓の全面的非核化を促した。

テロ国家の北韓を核保有国にして対米、対日戦略に利用しようとした中国も金正恩を露骨に支援できる状況でない。

自国が必要な食糧とエネルギーを米国の管理下に置いている中国は、もはや金正恩を庇護するのが難しい。

中国は北韓ではなく親中・反米の文在寅政権が執権している先進工業国・韓国を掌握しようとしている。

誰が見ても、この二つ大国米・中の戦いは結果を予測できる。

そして歴史的に大国間の戦いで敗北した方は解体が避けられない。

韓国は、共産全体主義の体制と秩序を強要する国について行くわけにはいかない。

問題は、文在寅政権がこの自明の事実を否定していることだ。

文政権と主思派(金日成主義)集団は、北の非核化を拒否し、金正恩の虐政を延命させようとし、韓国を中国とつなげようとしている。

文在寅は、南北連邦が目標だ。彼らは自分たちの反文明的選択を正当化するため大韓民国を破壊している。

 ここ2年間、自由大韓民国を守ろうとする韓国民は、まるで占領軍のような全体主義集団の野蛮な暴走に抵抗した。

全体主義勢力は、自由民主体制を破壊するのに自由民主憲法と制度を悪用した。

主思派政権は文明社会を維持する機能として、司法府を破壊した。

文在寅政権はジョージ・オーウェルの小説『1984』を実践している。

特に「言葉の統治」において完璧に『1984』を実践している。

文在寅の平和は奴隷状態を意味する。

 文在寅・主思派集団は、全教組とメディアを動員して韓国社会の次世代を洗脳している。

未来世代の富を前倒しして消費するポピュリズムで、国民を堕落させている。

親中勢力は韓国の同盟国・米国と伝統的友邦の関係を破壊することに反日・反米の種主義(民族主義)を動員した。

 文政権の公権力は鉄パイプを振り回す民労総などの極左勢力には無力で、卵を投げるふりをする右派は逮捕する。

自由右派を支援する個人や組織は徹底的に圧迫、弾圧する。

主思派集団は心は平壤や北京へ行っているのに、現実ではまだ米国の牽制をうけている。

今、韓国民が直面しているのは野蛮な全体主義との戦いだ。

全体主義から自由を守らなければならない。ただし、全体主義は世論と住民の苦痛を統制できる。

そして、政治工学的に有能だ。 だが、反全体主義勢力は全体主義の真似をしてはならない。

韓半島の北側でついに「自由朝鮮」が現れた。彼らは苦難で鍛えられた自由人たちだ。彼らこそ北韓解放の主役だ。

 韓半島の北で1世紀以上の奴隷状態が終わる前に、文政権を打倒せねばならない。

そうしないと100年もの間、奴隷状況にある兄弟たちを助けられるどころか、大韓民国の生存が危ういからだ。


文大統領の専制革命路線で滅びる韓国

2019-06-01 17:08:38 | 日記

2019.05.30 (木)   

  

 

「 文大統領の専制革命路線で滅びる韓国 」

『週刊新潮』 2019年5月30日号 日本ルネッサンス 第853回

 自伝、とりわけ政治家のそれは割引いて読まなければならない。それにしても韓国大統領文在寅氏の『運命』(岩波書店)ほど独特の左翼臭を放つものはないだろう。

日本語版の出版は昨年10月だが、韓国では2011年の発売で、刊行2週間で書籍部門の売り上げ1位になったと書いている。

氏が北朝鮮からの難民だった少年時代のこと、貧困を乗り越えて人権弁護士となったこと、「善き人」であろうとした「普通の人」が、

人間の尊厳や人権を尊重して仕事をしている盧武鉉氏と知り合い、深く感銘を受け、やがて政治に関わり始めたという人生物語が情趣的な文章で描かれている。

北朝鮮一辺倒だった盧武鉉元大統領への感情移入と、彼らの振りかざす社会主義の旗には欺瞞の色彩が漂う。

事実、自伝に綴られている人権、自由、正義や正統性などの価値観を、文氏自身がいま、酷い形で踏みにじっている。

文氏は5月に就任2周年を迎えた。

任期5年、1期であるから、残り3年だ。2年間の文政治は、一言でいえば社会主義革命政治である。

文氏も自分は「ロウソク革命」で政権を奪ったと語っており、氏の政策の方向性は独裁型社会主義政権の樹立だと断じてよいだろう。

ちなみにロウソク革命は、政権に不満を持つ市民がロウソクを掲げて街頭に繰り出し、圧力で政治を動かしていくものだ。

朴槿恵前大統領はロウソクデモで糾弾され続けて失脚した。

韓国ではこの左派リベラル勢力主導のロウソクデモと、保守勢力が韓国国旗の太極旗を掲げて行う太極旗デモが毎週、行われている。

文氏は言葉は柔らかくとも行動は陰湿で強硬だ。

そんな文氏の体質は、少しずつ、韓国国民に見抜かれてきた。

政権発足当時には84.1%もあった氏の支持率は、5月9日の世論調査(リアルメーター)では47.3%に落ちていた。

不支持率は48.6%。政党支持率は文氏の与党「共に民主党」が36.4%、第一野党の「自由韓国党」が34.8%と拮抗している。

親日派パージ

このままでは来年4月の総選挙で敗北するかもしれない。

おまけに韓国経済は苦戦中である。

4月時点で失業者は124万人、若年層の失業率は11.5%だった。

朝鮮問題の専門家・西岡力氏は、1日3時間のアルバイトで暮らす若者やパートタイムで働く予備校生なども入れると、若年層の失業率は25%にふくらむと指摘する(「言論テレビ」5月17日)。

そこで文氏は巧妙な罠を仕掛けた。西岡氏の説明だ。

「選挙制度の改正案と高級公職者不正捜査処設置法という二つの立法案件を国会の迅速処理案件に指定してしまったのです。

これは通称ファストトラックと呼ばれて、330日がすぎると本会議で議決にかけられるという制度です」

今着手すれば二つの法律は来年4月の総選挙に使えるのである。

シミュレーションでは、改正選挙法の導入で文氏のライバル・自由韓国党が最も大きな打撃を受けるという結果が出た。

韓国の国会は一院制で300議席、小選挙区が253、比例が47だ。

小選挙区では第一党と第二党の戦いになり、第三、第四の小政党には勝ち目がない。

そこで文氏は比例の議席数を75、またはそれ以上に増やす案を考えている。

75で計算すると、自由韓国党が約20議席減になる。

与党の「共に民主党」も議席を減らす可能性があるが、韓国の政党は自由韓国党を除けばすべて左翼政党だ。

特に少数野党の「正義党」は極左政党であるため、全体としては左派リベラル勢力が絶対に勝つ仕組みである。

「与党代表の李海瓚(イヘチャン)氏は、これで与党は20年間政権を握れると豪語しています」

西岡氏が言うと、「言論テレビ」で同席していた「統一日報」論説主幹の洪熒(ホンヒョン)氏が応じた。

「50年でしょう」

文政権のもうひとつの狙い、「高級公職者不正捜査処設置法」からはどんな結果が予測されるだろうか。

洪氏は同法の性格をズバリ「ゲシュタポ法」だと断じた。

文政権は「積弊の除去」を掲げて、親日派を排除してきたが、このところ、文政権への批判が各界各層から噴き出し始めた。

3月1日、退役軍人会は後輩の現役軍人に、「対北武装解除を進める文政権への不服従」を呼びかけ、鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防相の退任を要求した。

通常の軍隊では考えられない不服従の呼びかけは、韓国内の対立が如何に深刻かを示している。

また、元大使経験者ら42人が韓国の外交政策への反対を表明し、後輩の外交官に「早く日米両国との安保協力体制を復元せよ」と呼びかけた。

親日派パージの中心勢力になっているかのように見える検察、裁判官、警察官などの中にも文政権に批判的な勢力が存在する。

こうした反文勢力の動きを鋭い嗅覚でキャッチし、このままではやられると考えて、先手を打ったのが今回の二つの法案であろう。

「血を流して我々は戦う」

「反旗を翻したら、今度はお前たちを逮捕するぞというわけです」

と西岡氏。

高級公職者を対象にしたこのような取り調べ機関が実現したら、韓国の空気は途端に陰鬱なものになるだろう。

自伝で文氏は自らの使命を盧武鉉氏の遺志を継ぐこととしている。

盧武鉉氏は07年の南北首脳会談で、金正日氏に韓国を事実上明け渡すような誓いを立てていた人物だ。

韓国で進行中の革命と言ってよい一連の変化は、大韓民国の崩壊に直結しかねない。大統領が自ら指揮する、祖国への反乱である。

こうした異常事態の中で、自由韓国党代表の黄教安(ファンギョアン)氏の動きに注目したい。

氏は朴前政権で法相、首相を務めた公安検事出身のエリートだ。

元々政治家ではなかったが、今年2月、文政権と戦うために立ち上がった。氏はいま、街頭に出て国民に「一緒に血を流して戦おう」と呼びかけている。

黄氏が発表した決起文が凄まじい。

「文政権はすでに行政府を掌握した。司法府もほぼ占領された。彼は選挙法の改正で国会さえも掌握しようとしている。

文在寅の左派独裁を、いま終わらせよう。自由韓国党は命がけの戦いの先頭に立つ。血を流して我々は戦う。

国民の皆さんも犠牲を覚悟して立ち上がってほしい。そうしなければ、私たちの息子、娘たちは左派独裁の下で暮らすことになる!」

韓国は内戦中なのだ。

それはとりも直さず日本に危機が迫っているということだ。

令和の時代、日本を取り巻く国際環境は、平成の時代のそれ以上に、厳しいものになるだろう。そう自覚して憲法改正を含めて日本の在り方を考えていきたい。
 
        

 
 

櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。