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韓国憲法裁判所の異常判決から日本人が学ぶべきこと

2020-01-18 16:49:48 | 日記
日本では安倍外交の成果だとされる向きもある、2015年になされた日韓慰安婦合意ですが、先日、韓国憲法裁判所が「無効」という判断を下したようです。これを受け、情報戦略アナリストの山岡鉄秀さんは今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で、自分たちの常識が国際的に通用すると思い込んでいる日本人の甘さを指摘するとともに、今後の韓国との交渉における注意点を記しています。

韓国憲法裁判所の異常判決から日本人が学ぶべきこと

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

元慰安婦と称する韓国人女性たちが、2015年12月末に電撃的に行われた日韓慰安婦合意は「日本政府への賠償請求権を阻むもので憲法違反だ」と訴えていた件で、去る12月27日、韓国憲法裁判所は「憲法違反ではない」として訴えを却下しました。

この報に触れて、「珍しく韓国の憲法裁判所が正しい判断をした」と勘違いをした方もいらしたようですが、とんでもない話です。

韓国憲法裁判所は、「日韓合意はそもそも書面の交換も国会の同意もない政治的な合意で、効力も不明だから、憲法違反にもなり得ない、それ以前の問題だ」と言っているのです。

つまり、「日韓合意など有効な合意ではない」と言いたいわけです。ここまで政府間の合意を反故にできる国も珍しいですね。心から呆れます。

文在寅大統領の説明も支離滅裂です。「合意について破棄したり、再交渉も求めないが、裁判所の判断は尊重する」なんて意味不明です。日韓慰安婦合意に基づいて設立された財団も一方的に解散してしまいました。

これに対する日本政府の反応は、「引き続き、慰安婦問題をめぐる日韓合意の着実な実施を韓国政府に求めて行く」だけです。

この状況について、皆さんはどう思われますか?

「この問題は決着済だと言えるようになったのは安倍政権の外交成果だ」と主張する人達がいます。「韓国政府は自分たちが約束を守らない信用できない国だと自ら世界に証明して恥をかいたのだから、日本の勝ちだ」と主張する人達もいます。私ははっきり言って、どちらの主張も間が抜けていると思います。

私と私の豪州の仲間たちは、2015年の日韓合意に対して当初から一貫して批判し、反対して来ました。

これに対して、「日韓合意に反対する保守派は、安倍総理の深慮遠謀がわからない馬鹿だ。韓国はきっと合意を破る。そうすれば、韓国が仲介したアメリカの前で恥をかくのだ」と主張する人達がいました。さらに、「さっさと10億円を韓国に払ってしまって、道徳的優位に立った方がよい」という人達までいました。

日本人はつくづくナイーヴな民族です。自分たちの常識が国際的に通用すると思い込んでいるのです。

「恥」とか「道徳」は日本人にとって重要な概念ですが、日本の国境を一歩出てしまえば、それほど当てにならない概念もありません。ましてや、韓国に対してそれらの概念を持ち出すことほど無意味なことはありません。

はたして韓国は、予想通りに約束を反故にしました。しかし、彼らはそれを恥だとはもちろん思っていません。そして、肝心のアメリカも日韓合意肯定派が期待したように「メンツを潰された」と韓国を叱責することもありません。なぜでしょうか?

それは、「日本政府が自ら戦時中に韓国人女性に対して酷いことをしたと公式に認めた」と解釈されているからです。いや、そんなことは言ってないし書いてない、と言っても無駄です。

あのような曖昧な言い方をしたら、印象としてそう取られてしまうのです。総理官邸は外務省の作文(日本語)がどう英語に訳されていて、それが相手にどういう印象を与えるか、まったく無知であり、それをチェックする機能もありません。これが致命的な構造的欠陥です(これに関しては拙書『日本よ、もう謝るな(飛鳥新社)』で詳しく説明してあります)。

確かに、韓国政府の態度は不誠実で支離滅裂です。それを冷静に指摘できる冷静な識者も海外にいないことはないでしょう。しかし、その間にも、「日本は韓国人女性を性奴隷にしたことをついに認めて国庫からの賠償をオファーした。韓国の国民、特に元慰安婦は納得していないが、日本政府は金を払ったのだからこれで終わりにしろと強要している」という印象が世界中に広まってしまっています。

だから、日本政府としては「できることは全てやった。これ以上は何もしない。そちらも合意を守れ」と言い続けることはできるでしょうが、日本が過去の悪事を公式に認めたという印象は広がり続けるのです。

これが深慮遠謀だったのでしょうか?私には、一番避けなくてはならない事態を自ら招いたようにしか見えません。それも分かりきった結末です。

誠意も道徳も対馬海峡を越えただけで通用しなくなります。

罪を認めたら最後です。韓国はどうせ約束を破ります。だからこそ、自ら罪を認めて謝罪するような印象を与えては絶対にいけないのです。その部分が永遠にマイナスになります。そのことを韓国憲法裁判所の判断から学ばなくてはなりません。





(山岡鉄秀:Twitter:https://twitter.com/jcn92977110)

image by: Chintung Lee / Shutterstock.com

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「次は誰だ」ク・ハラ自殺でも終わらない韓国ネット民の狂乱

2020-01-18 16:31:20 | 日記
「次は誰だ」ク・ハラ自殺でも終わらない韓国ネット民の狂乱

『竹嶋渉』 2019/12/06


竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト)

 去る11月24日午後、韓国の女性アイドルグループ「KARA」の元メンバーであるク・ハラさん(28)が自宅で亡くなっているのが発見された。すでに広く報道されているが、ク・ハラさんの死は、韓国国内はもちろん、日本を含む海外の韓流ファンにも大きな衝撃を与えた。特に、ク・ハラさんの自殺の40日前には、同じく韓流スターであるソルリさん(26)が自殺していたため、その波紋はさらに大きいものとなった。

 ク・ハラさんは1991年、韓国西南部・光州生まれ。2008年にKARAに加入し、芸能界デビュー。2016年までシングル12枚、アルバム5枚を発表。韓国と日本で活発な活動を繰り広げた。この時期、「少女時代」「東方神起」らと共に「第二次韓流ブーム」の中心となった。2016年にKARAが実質上解散した後もバラエティー番組や音楽番組などで高い人気を誇っていた。

 ク・ハラさんは日本でのライブツアーを終え、22日に韓国に帰国した。自宅に到着した時刻は24日午前0時35分だったとみられている。24日の午後6時になって、家政婦が自宅の1階で冷たくなっているク・ハラさんに気付き、警察に通報した。警察は6時9分にク・ハラさんの死亡を確認している。ク・ハラさんは前日の23日には写真共有アプリ「インスタグラム」に自分の写真を掲載し、写真とともに「おやすみ」という書き込みを残していた。予期されなかった自殺であったため、衝撃は大きかった。

 警察の捜査によると、監視カメラの映像を分析した結果、ク・ハラさんが帰宅してから、同日の午後6時まで、外部の人物が訪ねてきた痕跡はなかったとしている。他殺の可能性がなかったことから、遺体の解剖は行われなかった。

 当初、彼女の死因についての詳しい報道はなかったが、その後、自筆メモが発見され、自殺の可能性がささやかれ始めた。このメモは自宅1階の居間のテーブルの上に置かれていたもので、短い内容であったが、自分の身の上を悲観する内容であったと言われる。その内容は公開されなかったため、自殺の原因についてさまざまな臆測がなされることになった。

 まず、原因と目されたのが、「アクプル」と呼ばれるネット上の書き込みである。「アク」は「悪」の韓国漢字音、「プル」は「reply(リプライ)」の略。要するに他人を誹謗(ひぼう)中傷するアンチ・コメントのことである。

再始動第1弾シングル「Midnight Queen」の発売記念トークショーを行った韓国女性グループ、KARAの元メンバーで歌手のHARA=東京・東池袋のサンシャインシティ噴水広場
再始動第1弾シングル「Midnight Queen」の発売記念トークショーを行った歌手のク・ハラさん=2019年11月8日、東京・東池袋のサンシャインシティ噴水広場
 韓国のネットニュースには、配信元を問わず例外なくコメント欄が設けられている。日本同様、注目度の高いニュースには数百、数千のコメントが書き込まれる。韓国はネット・インフラの整備がアジアで最も早く進んだことから「ネット先進国」「オンライン強国」を自負しているが、残念ながら、ネット利用者の意識やモラルはお世辞にも先進的とは言えない。
 人種や特定地域に対する「ヘイトスピーチ」顔負けの酷(ひど)い書き込みが行われることなど日常茶飯事だ。時には政治的な目的や商売上の利益のために、アルバイトを雇って大量の書き込みを行い、世論を誘導しようして発覚するという「事件」もたびたび発生している。
 ク・ハラさんの死後、韓国の公営放送KBSは、彼女の関連記事に書き込まれたコメントの内容を分析している。韓国の大手ポータルサイト・ネイバーに書き込まれたク・ハラさんの私生活と関連した記事5件を選び、記事に書き込まれた1万3700件の書き込みをすべて分析したものである。分析の結果、全体の19%に当たる2600件が「悪質コメント」と見なされるものだった。

 韓国ではさらに、こうした根拠があやふやな書き込みをネタとして報道する慣習がある。もちろん元ネタに対する事実確認などはなされない。あくまで「ネットニュースにこうした書き込みがなされた」との「事実」を報道しているだけ、という言い訳が通るからだ。結果として、事実無根の「流言飛語」がニュースとして再生産され、拡散する悪循環を招く。もちろん、こうした悪質な書き込みや報道は刑事事件や裁判沙汰にもなっており、警察庁の統計によると、ネット上の名誉毀損(きそん)・侮辱に関する事件は2012年に5684件、14年に8880件、16年は1万4908件と急増している。

 KBSの調査によると、ク・ハラさんに関する悪質コメントには「顔」「整形」「手術」など、主に容貌を卑下する用語が用いられていた。中には「整形に失敗して自殺を試みたのではないのか」といったものもあったようだ。これは、昨年に彼女が受けた眼科手術をネタとしたものだ。彼女の自殺未遂をネタとした悪質コメントもあった。実は、ク・ハラさんは去る5月にも自殺を試みたことがあり(この際にはマネジャーが早くに発見したため、大事には至らなかった)、この事件の後、悪質コメントの内容はさらにエスカレートしていく。その中には「次は自殺に成功しろ」という人格を冒瀆(ぼうとく)する内容もあった。

 また、彼女が光州出身者であったことも、攻撃の対象になった。日本ではあまり知られていないが、韓国国内には、光州が位置する全羅道に対する根強い差別意識がある。

 例えば、韓国のネット上では全羅道出身者を「ホンオ(紅魚)」と呼ぶ。これは、発酵させたエイ(「紅魚」)を食べる全羅道地方の人々を罵(ののし)る地域差別用語である。もちろん、タブーとされる表現だが、いかなる差別や罵倒も許されるネット空間では使い放題。韓国のネット上で「ホンオ」を検索してみれば、韓国における全羅道差別がいかに酷いかが瞬時に理解できるだろう。ク・ハラさんもこうした差別感情の標的になった。書き込みの中には「全羅道出身者を排斥するのがグループの生きる道」といった心ない内容もあったようだ。

 こうした悪質な書き込みに対して、生前のク・ハラさんは「私の精神的健康のためにも、皆さんが美しい言葉、きれいな視線を持つ方々だったら、と思います」「悪質コメントに対する善処はありません」などというコメントを寄せてもいる。

韓国の女性グループ「KARA」の元メンバー、ク・ハラさん(聯合=共同)
韓国の女性グループ「KARA」の元メンバー、ク・ハラさん(聯合=共同)

こうした悪質コメントはク・ハラさんの死後にも続いている。あきれたことに、彼女の死を自分の動画の視聴者数増加や、商売に利用しようとする輩(やから)も登場。ク・ハラさんの死後、韓国の大型掲示板サイトには「ソルリ、ク・ハラの次の打者は誰だ」とのタイトルの書き込みがなされたが、これはオンラインゲームの広告を目的としたもので、ネット上で耳目を集めるために2人の死が利用された(この書き込みはネットユーザーの非難を受けてすでに削除されている)。

 ユーチューバーたちも負けてはいなかった。ク・ハラさんの死亡原因に対する「分析」「陰謀論」をネタにして、注目度を上げ、アクセス数稼ぎに熱を上げていた。「故人をアクセス数稼ぎに利用するな」という批判も、視聴者数が収入に直結しているユーチューバーには大した効果があったようには見えない。ソルリさんの死後には、彼女の交際相手を自称するユーチューバーの動画や、ソルリの霊が降臨したと称する霊媒のユーチューブ映像が批判を浴びたが、結局同じことが繰り返された形だ。

 ク・ハラさんの自殺に関連して、悪質コメント以外の原因として指摘されているのが、元交際相手による暴行・リベンジポルノである。

 ク・ハラさんは昨年9月、元交際相手に暴行され、リベンジポルノを公開するといった脅迫を受けたとして、元交際相手であった男性を刑事告訴。法廷での攻防の末、今年の8月29日、ソウル中央地方裁判所は、この元交際相手に対して懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡した。元交際相手は判決を不服として、高裁に控訴している。

 これは暴行に対する判決であって、リベンジポルノに対しては「性関係のある両人の合意のもとに撮影された」として、無罪が言い渡された。この男性は有名美容師で、裁判の最中に自分の美容室を開業している。ク・ハラさんが自殺未遂を起こしたのはその直後のことだ。

 この裁判に対しても数多くの悪質コメントがネット上で書き込まれ、ク・ハラさんは自分の会員制交流サイト(SNS)に「辛(つら)くても辛くないふり」「一言の言葉が人を生かすこともできるし、殺すこともできる」「幸せなふり、大丈夫なふりは、もうやめたい」といった真情を吐露している。

 この裁判に対しては、去る11月29日、女性団体が裁判所の前で一審の判決に抗議する集会を開いている。リベンジポルノを公開するとの脅迫を裁判所が無罪としたことに対する抗議であるが、司法判断を糾弾して済む問題ではない。

 この裁判を散々ネタにしてきたイエロージャーナリズム(扇動的なニュースを売り物にする報道機関)、それを面白がって大量の悪質コメントを書き込んでいた一般大衆も同じく糾弾の俎上(そじょう)に上げられるべきだろう。彼らがク・ハラさんを死に追い込むのに一役買ったのは、厳然たる事実だからだ。

 実は、ク・ハラさんの自殺が報じられた後、元交際相手が公開を予告していたリベンジポルノをネット上で販売するとの書き込みがあちこちでなされた。彼女の死後にも、故人の死をネタにして、モラルの欠如した大衆相手に金もうけをたくらむ輩が存在したのである。

第40回ベストドレッサー賞2011発表・授賞式。元KARAのク・ハラ=東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテル(撮影・戸加里真司)
第40回ベストドレッサー賞2011発表・授賞式。元KARAのク・ハラ=2011年11月30日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテル(戸加里真司撮影)

 今回のク・ハラさんの自殺の原因を巡っては、この他にもさまざまな臆測がささやかれている。その決定的な原因が何であれ、無責任な報道と、その報道に扇動された大衆、そしてその大衆を相手に一儲けを企む輩が、手を組んで起こした「社会的殺人」であったことに疑いはない。

 ク・ハラさんの自殺後、韓国国内ではその死を悼む声が大きいが、彼女が死に至った過程を徹底して検証し、報道の在り方とその受け止め方を真摯(しんし)に自省しなければ、第二、第三のソルリ、ク・ハラが生まれるのは必定(ひつじょう)であろう。謹んで彼女の冥福をお祈りするとともに、こうした事件が再発しないことを切に祈りたい。

韓国就職難、若者は日本へ 2年で3割増、初の2万人超え 政権後押し補助金30億円 早期離職も多く

2020-01-18 16:15:45 | 日記
韓国就職難、若者は日本へ 2年で3割増、初の2万人超え 政権後押し補助金30億円 早期離職も多く

2018/12/28 6:00
西日本新聞


11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参加した 拡大

11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参加し


11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参加した 拡大

11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参

11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参加した 拡大

11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が参加した

11月に韓国・釜山市で開かれた日本企業の合同就職説明会。日本企業112社に対し、千人を超える韓国の若者が 日本で就職する韓国の若者が急増している。韓国では就職難が深刻化しており、韓国政府は国を挙げて海外就労を支援。人材不足や訪日外国人の増加など日本側の事情もあり、日本で就労ビザを得て働く韓国人は2017年に初めて2万人を超え、15年から2年間で3割増えた。入管難民法により業務内容は海外取引や通訳など特定分野に限られるが、一方で違法な業務を命じる受け入れ企業や悪質な仲介業者も存在し、早期離職が問題化しつつある。

 佐賀県武雄市などでホテルを経営しているメリーランド(山口修代社長)は、社員約50人のうち6人が韓国人。30代の韓国人男性に支配人も任せている。

 「皆、日本語や英語が堪能。営業で韓国の旅行社を一緒に回ると、交渉がスムーズに進む。待遇などは日本人社員と同じ条件だが、早く昇格する人が多い」と山内茂樹専務。韓国人採用を始めた5年前はほぼゼロだった韓国人宿泊客が今では全体の約2割を占める年間約4万人に達し、売り上げ増に大いに貢献した。

 韓国の昨年の失業率は3・7%。20~24歳が10・9%、25~29歳が9・5%と若年層で際立って厳しい。対照的に日本の10月の有効求人倍率(季節調整値)は1・62倍と高水準で推移。11月に韓国・釜山市であった日本企業の合同就職説明会には、千人を超える韓国人の若者が参加した。

■採用に裏事情

 日本への就職熱が高まる一方で、韓国メディアによると、就職後1年以内に離職する韓国人が3~4割に上るという。「事務職のはずが、実際は市場での野菜の積み降ろしだった」。釜山市の男性(28)は2月、横浜市の青果卸業者に入社し、わずか1週間で退職した。

 社長に説明を求めると、採用時の「裏事情」を打ち明けられた。社長は、仲介業者から「事務職で募集すればビザが取りやすい」と助言され、うその業務内容を掲げて募集した。日本の入管難民法は「技能実習」を除き、野菜の積み降ろしのような単純労働を外国人に認めておらず、就労ビザの対象を「高度人材」に限っているためだ。

 北九州市の会社に就職した釜山市の別の男性(27)は、休暇が取りにくいことなど職場への不満から9カ月で辞めた。本当は早々に辞めたかったが、韓国の仲介業者から3カ月以内に辞めたら罰金約20万円を支払うよう言われていたため、我慢したという。

 早期退職を理由に「罰金」を取るのは韓国でも違法だ。男性は「就職先は政府系の就職情報サイトで見つけた会社だし、仲介業者も株式上場企業なので信用したのに」と憤る。

■体制の整備を

 日本に若者を送り出す側にも課題がある。韓国の人材を日本企業に紹介しているホスピタブル(福岡市)の松清一平社長は「韓国の一部の大学などが学生を“押し売り”するような実態もある」と打ち明ける。

 松清社長が問題視するのは、韓国政府が力を入れる海外就職支援事業「K-ムーブスクール」だ。韓国の大学や専門学校と提携し、語学研修費など学生1人当たり約80万円を各校に支給する制度。朴槿恵(パククネ)前政権時代に始まり、事業費は年間約30億円に上る。

 同制度は提携時に学校側へ支援金の7割が支給され、残り3割は学生の就職実績などによって「成功報酬」のような形で支払われる仕組みだ。一部の学校は支援金目当てに学生の希望や資質に合わない業種でも就職を勧め、失望した学生が早々に会社を辞める構図が生まれているという。

 松清社長は日本企業に対しても「人手不足だからと安易に外国人を雇用するのは誤り。業務マニュアルや社員教育制度など外国人人材の受け入れ体制を整えた企業は、日本人社員の定着率も高い」とくぎを刺す。 (釜山・丹村智子、池田郷)

   ◇    ◇

財閥系と中小の格差深刻 強い大企業志向

 韓国で日本企業へ活路を求める若者が急増しているのは、就職難だけが理由ではない。財閥系の大企業と中小企業の賃金格差や、住宅費高騰など複数の社会問題が背景にあり、日本以上に深刻な少子化の大きな要因にもなっている。

 韓国では2010年ごろから、就職難と低所得を理由に「恋愛・結婚・出産」を放棄する若者が増え「3放世代」と呼ばれた。以降も「人間関係・マイホームの購入」が困難な「5放世代」、「夢・希望」も諦めた「7放世代」へと深刻度を増している。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は世界最低水準で、18年に「1」を割り込む見通しだ。

 17年の大統領選でも若者を取り巻く厳しい社会状況が争点になった。朴槿恵前大統領の雇用施策を批判し、若者の圧倒的支持を得て当選した文在寅(ムンジェイン)大統領は就任後、最低賃金引き上げなどの施策を打ち出した。だが、逆に企業が採用数を絞り込む悪循環を生み、直近の支持率は5割前後に低迷。特に20代男性の支持率が急落した。

 韓国は日本以上に受験競争が激しく、大企業志向も強い。調査会社が発表した18年の大卒新人の年間平均給与は大企業約400万円に対し、中小企業約270万円。中小は昇給も望めず、人手不足から長時間労働を強いられるなど負の印象が強いという。大学関係者によると「教育費にお金をかける親の期待も大きく、中小企業に入るなら日本など海外で就職する方が箔(はく)が付くとの考え方もある」。

 韓国の大学の就職支援担当者によると、学生は大企業の入社試験に失敗すると、大学院に進んだり、留学や専門学校に入り直して資格を取得したりして次の機会を目指す。男性は約2年間の兵役があり、日本ほど「新卒」重視の傾向はないが、就業しないまま30歳近くになり、結局、中小企業に就職する人も多いという。

   ◇    ◇

外国人の就労

 外国人の就労について現行の入管難民法は教育や経営、法律、科学技術などの「高度人材」に限って認めている。韓国人の多くは通訳や海外取引を担う「技術・人文知識・国際業務」の高度人材として在留資格を取得している。日本の技術を習得して母国に持ち帰る目的の「技能実習」を除き、単純労働は認められなかったが、来年4月1日施行の改正入管難民法は単純労働分野にも門戸を開く。

=2018/12/28付 西日本新聞朝刊=

「今度は中国と競合」停滞が続く韓国経済の憂鬱

2020-01-18 15:07:30 | 日記
「今度は中国と競合」停滞が続く韓国経済の憂鬱


■韓国経済を支えてきた輸出の落ち込みは深刻

足元で輸出依存度の高い韓国経済は不安定だ。米中の貿易交渉で事実上、第1弾の協定が成立したものの、今後の展開は不透明な部分もある。そうした状況下、韓国経済の下振れを警戒する経済専門家は多い。

景気下振れの要因として、韓国経済を支えてきた輸出の落ち込みは軽視できない。中国経済の減速、米中の貿易摩擦などによる世界的なサプライチェーンの混乱などを受けて韓国の輸出が減少し、個人消費を中心に内需も冷え込みつつある。

ただ、わずかながら明るさも見え始めている。世界の半導体市況には反転の兆しが見えつつある。その背景には、世界各国で5G通信の本格的なサービスが始まりつつあることがある。目先、5G関連の需要は韓国経済にとって部分的な下支えの要因となる可能性がある。

今年10月に発売されたサムスン電子の折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold 5G」。閉じた状態は4.6型、開くと7.3型のディスプレイになる。日本では5G非対応の機種が約24万円で販売中。 - 写真=AFP/時事通信フォト

問題は、その持続性だ。韓国にとって最大の輸出先である中国は「中国製造2025」の下でIT先端分野の競争力向上に取り組んでいる。IT先端分野における米中の“覇権国争い”も当面続くだろう。また、文在寅(ムン・ジェイン)政権下、労働争議が激化するなど経済環境も悪化傾向にあるとみられる。外需依存度が高く内需の厚みを欠く韓国経済が自律的な安定を目指すことは容易ではないだろう。

■韓国から海外に拠点を移す企業も増えている

足元、韓国経済は不安定ながらも、経済全体が大きく混乱する展開を何とか回避している状態にある。

2018年以降、韓国経済は、外部環境の悪化によって下り坂を転がり落ちるような勢いで減速し、それが内需の低迷につながったとみられる。特に、韓国にとって最大の輸出先である中国経済が成長の限界を迎えたことの影響は大きかった。

中国では、過剰な生産能力や債務問題が深刻化し、経済成長が限界を迎えている。共産党政権は減税や公共事業によって景気を支えようとしているが、目立った効果は出ていない。また、中国は生産年齢人口の減少を迎え、労働コストが上昇している。

それに加え、米中の貿易摩擦や米トランプ大統領の通商政策などを受けて世界のサプライチェーンが分断され、混乱に陥った。労働コストの上昇も重なり、“世界の工場”としての中国の地位は徐々に低下し、中国からベトナムなどの東南アジア新興国に生産拠点がシフトしている。韓国から海外に拠点を移す企業も多い。

■米国経済が減速すれば、より大きな下押し圧力に直面

その結果、世界各国で製造業の景況感が悪化した。それとともに、輸出依存度の高い韓国経済では半導体の輸出で業績を拡大してきたサムスン電子をはじめとする大手財閥企業の業績悪化が鮮明となった。韓国にとって輸出は成長のエンジンであり、内需も弱含んでいる。

内需の落ち込みに関しては、文政権の経済政策も無視できない影響を与えた。文氏が所得主導の成長を目指して導入した最低賃金の引き上げは、中小の事業者を中心に企業経営を圧迫し、若年層などの雇用・所得環境が悪化した。

そうした状況に直面しつつも、韓国経済が“底割れ”というほどの急速かつ大きな減速・あるいは景気後退に向かう展開は避けられている。それは、個人消費を中心に米国経済が緩やかな景気回復を維持しているからだ。米国経済が世界経済全体の安定を支え、その中で韓国経済も不安定ながら景気が急速に冷え込む展開をどうにか回避できているというべき状況にある。見方を変えれば、中国の成長の限界に加え、米国経済の減速が鮮明化すれば、韓国経済はより大きな下押し圧力に直面するだろう。
■「5G」でサムスンなどが上向いてもおかしくはないが…

その中で、韓国の半導体業界では、最大手であるサムスン電子の業績に底入れの兆しが出始めている。追い風となっている要素の一つとみられるのが、世界的な5G通信の普及だ。

2019年4月には米国や韓国でスマートフォン向けの5G通信サービスが始まった。同年11月には中国の50都市で5G通信サービスが開始された。特に中国では急速かつ大規模に5G通信が普及している。一部の予測では、2025年、中国における5G接続数は6億件に達し、米国の1億9000万件を追い越すとの見方もある。

2019年1~3月期に比べ、4~6月期と7~9月期は、サムスン電子の半導体事業の営業利益が小幅ながら増加に転じた。このデータを額面通りに受け止めると、同社の半導体事業は5G通信関連の需要を取り込み、徐々にではあるが底を打ちつつあるように見える。

また、世界全体での半導体市況のサイクル(シリコン・サイクル)の観点から見ても、目先、サムスン電子など一部大手企業の業況が幾分か上向いてもおかしくはないように見える。2016年から2017年にかけて、世界全体でデータセンターへの投資が増加するなどし、メモリを中心に半導体需要が大きく増えた。これはサムスン電子が業績拡大を実現し、韓国の景気が安定する要因だった。

■自律的に息の長い回復を実現するのが難しいワケ

その後、2017年半ばごろに市況はピークを迎え、2018年半ばごろには世界的な半導体市況の悪化が鮮明化した。2018年下旬から2019年前半にかけて、世界の半導体市況はボトムを迎えたとの見方もある。5G対応スマホ向けのICチップや自動運転向けの半導体需要の高まりなどから、世界の半導体市況の本格的な底入れは近いとの期待もあるようだ。

そのほか、米中が貿易摩擦の休戦協定の締結に取り組んでいるとの期待が高まっていることも世界経済全体の動向に左右されやすい韓国経済にとって重要だ。また、2020年1月、マイクロソフトの“ウィンドウズ7”のサポートが終了する。それを受け、一時的に世界各国でパソコン買い替え需要が高まり、サムスン電子をはじめとする半導体メーカーを中心に韓国経済に部分的な下支え効果が波及することも考えられる。

ただ、韓国経済全体が、自律的に、息の長い回復を実現するのは難しいだろう。引き続き韓国経済は不安定に推移する可能性がある。

■中国と韓国の関係が、相互補完から「競合」に変化

韓国経済が持ち直すには、輸出の増加が欠かせない。問題は、中国と韓国の関係が、相互補完的なものから競合相手へと、急速に変化していることだ。

中国は補助金政策を用いつつ、韓国から調達してきたDRAMなどの国産化に取り組んでいる。すでに中国のCXMT(長鑫存儲技術、旧名イノトロン)がDRAMの量産体制を整えている。ファーウェイ傘下のハイシリコン、アリババグループ傘下の平頭哥半導体(T-Headセミコンダクター)などは5Gだけでなく、推論用のAIを用いたチップ、自動運転向けの半導体を開発している。コスト、開発能力の両面において中国のイノベーション力にはかなりの勢いがある。

それに伴い、韓国製半導体への需要は低下する恐れがある。メモリ半導体を中心に輸出を増やしてきた韓国が、最先端、さらには次世代のテクノロジーを、迅速に、自力で生み出すのは口で言うほど容易なことではないだろう。

■IT覇権国を争う米国と中国の摩擦は当分続く

米国でもAIや拡張現実(AR)に関する開発が進み、6G通信分野でも中国との競争が熾烈化している。農畜産物などの特定分野で米中が部分合意を経て休戦協定の締結に向かう可能性はあるものの、IT覇権国を争う米国と中国の摩擦は当分続く可能性がある。米中の摩擦が激化するなどすれば、世界経済の先行き懸念は高まるだろう。それは、世界の貿易取引を減少させ、韓国の成長率が低下する一つの要因になり得る。

また、文政権の経済政策を見ていると、本来必要な構造改革の推進は期待することが難しい。左派政権下、景気減速とともに労働争議が増えるなどし、資金(資本)の海外流出も続く可能性がある。

このように考えると、韓国経済が5G関連需要を取り込んで相応の安定感を取り戻し、その中で構造改革が進み、潜在成長率(経済の実力)が高まる展開は期待しづらい。今後も、韓国経済は不安定に推移するだろう。米国が景気循環上のピークを迎え減速が鮮明化すれば、世界経済全体の先行き懸念も高まり、韓国経済が長期の停滞に向かうとの懸念が高まる展開も排除しきれない。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)

法政大学大学院 教授

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

韓国に経済危機は再来するか?

2020-01-18 11:50:50 | 日記
韓国に経済危機は再来するか?

金 明中(ニッセイ基礎研究所)


2019/12/31(火) 12:48配信

ニューズウィーク日本版

韓国に経済危機は再来するか?

外資より韓国企業が韓国に投資しない状況を改善できなければ文在寅大統領の雇用創出政策は失敗する可能性が高い Chalinee Thirasupa-REUTERS

<韓国の経済成長は減速し、予想の2%をも下回りかねない岐路にある。韓国国籍を放棄する韓国人が増えるなど構造問題も深刻だ>

最近、韓国経済が危ないというニュースがマスコミなどから流れている。一部のマスコミでは1997年のアジア経済危機が再来する可能性が高いとまで報道している。実際、韓国経済はどうなっているだろうか?

<減少する輸出と伸びない経済成長率>

マスコミが韓国経済の危機説を報道している主な理由は、昨今、韓国経済の現状を表す経済指標が悪くなったからである。まず、経済成長率の見通しが段々低下している。国際通貨基金(IMF)は、10月15日に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook)で、今年の韓国の経済成長率の見通しを4月の2.6%から2.0%へと下方修正した。韓国銀行(中央銀行)も11月29日に、2019年の経済成長率見通しを2%と発表した。今年7月時点の前回予想の2.2%を下回る数値である。国際通貨基金(IMF) や韓国銀行などが経済成長率の見通しを下方修正した理由は、米中貿易戦争の長期化によるグロバール経済の鈍化、最大輸出相手国である中国の景気鈍化、半導体市況の回復の遅れなどにより、韓国のGDPの大きな割合を占めている輸出が減少したからである。実際、韓国の輸出額は昨年の12月から今年の11月まで12カ月連続で前年同月を下回っている。輸出が前年同月に比べて12カ月連続で減少したのは2015年1月から2016年7月まで19カ月連続以降初めてのことである。11月の輸出実績を品目別に見ると、半導体(-30.8%)、ディスプレイ(-23.4%)、二次電池(-17.7%)、繊維(-12.3%)、石油化学(-19.0%)、石油製品(-19.0%)、船舶(-62.1%)の減少が目立つ。特に、輸出金額の20%以上を占めている半導体の輸出金額の減少が韓国経済に打撃を与えている。

輸出の減少は経済成長率にもマイナスの影響を与えている。2019年第1四半期の経済成長率は対前期比マイナス0.4%と、世界金融危機だった2008年第4四半期の経済成長率がマイナス3.3%になって以降、およそ10年ぶりの最低値を記録した。民間および政府の消費支出は増加したものの、輸出は半導体をはじめとする主力製品の不振が続いた結果減少した。また、第2四半期と第3四半期の経済成長率もそれぞれ1.0%と0.4%に止まっており、第4四半期の実績が大きく改善されないと年間経済成長率2%を達成することは難しい状況である(経済成長率はすべて実質)。

2%は心理的な支え

経済成長率が公式的に集計された1954年以降、年間経済成長率(実質)が2%を下回ったのは、凶作があった1956年(0.6%)、第2次オイルショックがあった1980年(-1.6%)、アジア経済危機があった1998年(-5.1%)、リーマンショックがあった2009年(0.8%)の4回のみで、2%を下回ることに対する韓国国内での心理的不安感は大きいと言える。

<「セルコリア」、「エクソダスコリア」?>

一方、韓国株式市場において、外国人投資家の韓国株の売りが続いたことや、外国人投資家の韓国国内への投資が2018年に比べて大きく減少したことで、韓国のメディアでは「セルコリア」という見出しで、韓国からの資本の急速な引き上げと、韓国経済の危機を書き立てた。

外国人投資家の韓国株の売り越しは11月7日から12月5日まで、営業日基準で21日間続いた。この期間、外国人投資家の売り越し金額は5兆ウォンを超え、韓国総合株価指数も同期間に2,144から2,060まで3.92%下落した。このように外国人投資家の韓国株の売り越しが続いた主な理由としては、米中貿易摩擦が長期化している中で、アメリカが中国に対して12月15日に対中追加関税リストを予定していたことで中国への輸出依存度が高い韓国経済がさらに悪化すると予想されたこと(幸い、米国通商代表部(USTR)が12月13日に、米国と中国が貿易交渉で第1段階の合意に達したと発表したことにより、対中追加関税リストの発動は見送ることになった)、香港事態と関連した不安感が拡大したこと、米朝関係の悪化により韓国の地政学リスクが高まったことなどが挙げられる。

さらに、外国人直接投資の金額は2018年の269億ドルから2019年第3四半期現在135億ドルまで大きく減少している。第4四半期に大きな投資が行わなければ前年を大きく下回ることが確かである。ムーディーズが半導体、自動車、鉄鋼、通信、流通、石油精製、化学など主要業種の信用見通しを「否定的」と評価したことも外国人投資家の韓国への投資減少に影響を与えている。では、本当に「セルコリア」や「エクソダスコリア」が発生し、1997年のような経済危機は再来するだろうか?

<韓国発の経済危機は起きるだろうか?>

確かに、最近、韓国の経済状況を表す経済指標はよくない。従って、韓国政府が適切な景気対策を緻密に行わないと1997年の経済危機が再来する可能性は十分ある。但し、その可能性はマスコミで騒ぐほど高くはないだろう。

国籍を捨てる若者が増加

取引日基準で21日間続いた外国人投資家の韓国株の売り越しは止まり、韓国総合株価指数も12月27日現在、2,204まで回復している。そして、外国人投資家の対韓投資金額の減少が懸念されていたものの、この点はより長期的な観点から見る必要がある。つまり、上記の「対韓外国人直接投資の推移」を見ると、2018年の対韓投資金額が群を抜いて多かったことが分かる。特に、フランスや中国における2018年の対韓投資金額が大きく増加した。

そして、経済危機があった1997年と比べると、韓国経済は大きく成長した。サムスン電子、LG、SK、現代自動車など韓国を代表する企業が現れた。1997年に89億ドルにすぎなかった外貨準備高は、2018年時点で4,037億ドルまで増加した。また、1997年の経済危機の大きな要因であった短期対外債務の対外貨準備高比も1997年の286%から2019年には28%まで低下しており、2019年第3四半期の失業率も3.3%まで改善(政府の財政投入拡大により公共事業の仕事が経ているものの)している。このような数値からは、確かに韓国経済は1997年に比べるとよくなっていると言える。

もっとも、油断はできないだろう。経済全般に関する構造改革を急がないと、経済危機に直面する可能性は高くなる。マスコミでは外国人投資家の韓国離れだけが報道されているが、実際には韓国企業や若者の韓国離れの方が深刻だ。韓国企業の韓国への投資金額の減少が強まる中で、韓国企業の海外への投資は増加傾向にある。このままだと韓国政府の雇用創出政策は失敗に終わる可能性が高い。

また、若者の多くが国籍を放棄している。韓国における国籍放棄者(国籍離脱者や国籍喪失者の合計)は2018年現在33,593人で、2017年の21,269人に比べて1万人以上も増加した。日本の2,262人(2018年)を大きく上回る数値である。日本に比べて韓国の国籍放棄者が多い理由としては、1)海外への留学生数が日本より多いこと(2017年基準、韓国:239,824人、日本:66,000人)、2)日本より労働市場が狭く、就職することが難しいこと、3)男性の場合、兵役の義務があることなどが考えられる。

世界的に貿易の伸びが低下し、過去のような爆発的な経済成長は期待できないのが現状である。今後は2%前後の経済成長が続くという見通しが多い。今後、韓国政府が国の富を増やし、国民の生活の質を高めるためにどのような経済対策を実施するのか注目したい。
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金 明中(ニッセイ基礎研究所)