2022.09.03
韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!
田中 美蘭ライター
プロフィール
「先進国」になった韓国でひっそり進む「危機」
韓国では、少子高齢化がとどまるところを知らない。
そんな韓国の高齢者たちは一見するとアクティブで、スマホといった最新機器も積極的に使いこなしたり、パワフルで、感心させられることが多い。
しかし、その反面で、社会が急速に変化し、世代間などで生じる対立や分断も深まる中、高齢者たちを取り巻く環境は実に厳しいものとなっている。
韓国といえば、「家族との付き合いが深い」というイメージがある。
このため、家族の集まりや旧盆、旧正月といった伝統行事は妻の立場である女性たちにとってこの上にない精神的な負担と苦痛であることが少なくない。
さらに、義両親があれこれと息子、娘夫婦の孫の育児や教育事情など家庭全般に口出しをして介入してくることで、摩擦が生じることはよくある話である。
だからこそ、ママ友同士で集まれば自然と義実家の愚痴話に花が咲くのである。
一方、中高年の女性たちが集まりながら自分の子どもや嫁、孫の自慢話をしてマウンティングを繰り広げるというのは、これもまた“韓国あるある”な話であり、ドラマなどでもよく描かれる。
これだけを聞けば、韓国の女性たちの老後は子どもや孫の存在が「生きる糧」になっているような印象を受けるが、必ずしもそうではないようである。
広がる「絶望」
先日、朝鮮日報で韓国のジェンダー問題について特集した記事の中で、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つに「孫育て」が含まれているというのだ。
日本と同様に共働き家庭が多い韓国では、夫または妻の両親の助けを借りながら育児をする。
その理由が「若い頃は義実家に縛られ、老後では孫に縛られ、いつまでも自分のためではなく家族のために生きなくてはならない」ということに虚しさを感じ、自分の人生を悲観するというものである。
5年ほど前に大手建設会社KCC建設のCMが大きな反響を呼んだ。
高齢の女性が孫とおぼしき子どもを背負いながら、台所で食事の準備をするシーンが描かれたCMでは、その女性の顔に疲れの色と憂いの表情が浮かんで見えるが、これが「孫育て」をする韓国の高齢女性のありのままの姿といえる。
一人当たりGDPで日本を間もなく抜き去り、
「先進国になった」
「日本を超えた」
という韓国だが、そのウラではこのような社会の歪が起きているわけだ。
日本でも孫の面倒を見ることに疲れやストレスを感じている高齢者は多いという話を聞くが、韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている。
ここへきて韓国ではウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に悩まされている韓国経済だが、新たに高齢者問題が「四重苦」として注目されてきた。
後編記事『“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!』では、そんな韓国経済でいま起きている“危ない現実”についてレポートしよう。
2022.09.03
“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!
ウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に苦しむ韓国で、いま新たに高齢者問題が浮上してきている。
最新の調査では、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つが「孫育て」だということがわかり、いま話題になっている。
よもや家族を支える高齢者が“離脱”すれば、韓国で新たな家族問題に発達しかねない。
そこへ追い打ちをかけるように、韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上してきた。
「先進国」になったと騒ぐ韓国にあって、いま危ない危機が進行し始めているわけだ。
その最前線をレポートしよう。
高齢女性たちの「深刻すぎる貧困問題」
韓国では、高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化している。
映画『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を獲得したユン・ヨジョンが主演を務めた『バッカスレディ』は、生活のために売春を行う高齢女性の姿を赤裸々に描いた作品である。
「バッカス」は韓国を代表する栄養ドリンク剤の名前であり、ソウルなど都市部の高齢者が集まる場所に現れ、「バッカス」を中高年相手に売りながら、売春を行うというというものである。
一見すると都市伝説のような話であるが、現実であるからこそ、映画にもなり、社会問題としても注目されるのである。
年金、金利、不動産、高齢労働…
最近では高齢女性に限らず、高齢男性がタクシー運転手や配達員、警備員などをして働く姿も目にする。
かつての韓国では50代で仕事をリタイヤするケースがほとんどであった。
それでも、今とは比較にならないほど、物価は安く、銀行の金利は高かった時代でもあり、小さくとも不動産を所有し、それを貸し出すことで得た収入の利息でも受けて蓄えを増やす人も多かった。
そして、老後の生活や介護は子ども、特に長男が無条件に見ることが当然のこととされていた。
つまり、「年金や蓄えがなくとも子どもがいれば何も心配はない」ということだったのだ。
しかし、現在ではどうであろうか――。
子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である。
500万世帯に迫る「独居高齢者」
年金制度も開始されて30年ほどで、公務員や教員、軍人といった一部の職業を除けばあとは国民年金であり、その支給額にはやはり大きな差がある。
このため、現在、60代以上の高齢者は少しでの生活の足しを得るために、働かざるを得ない状況なのである。
また、独居高齢者の数は2020年に161万8000世帯で、年々増加傾向にあり、30年後の2050年頃には467万1000世帯にまで増えると見られている。
この背景には、核家族化が進んだことや、日本でいうところの「熟年離婚」の増加が挙げられる。
女性が結婚生活に不満や理不尽さを感じても、昔であれば「離婚はマイナスイメージ」というのが強い上に、女性が一人で生きていくことはほぼ不可能であり、じっと耐えるしかできなかった。
それが、今では迷わず離婚を選ぶことも普通になった。
完全に崩壊した「人生のモデルケース」
とはいえ、公的年金や高齢者向けの職業斡旋も充実しているとは言い難い。
まして、家族や親族に頼ることが当たり前であった韓国で、いまや子どもに頼ることもできず、高齢者たちにとっては非常に厳しい時代であるといえる。
韓国のみならず、中国でも長きにわたる「一人っ子政策」の弊害が少子化を加速させ、貧困の高齢者問題も深刻化している。
日本も韓国や中国と比較すれば、まだマシと言えるかもしれない。
が、それでも、筆者と同世代の40代は「就職氷河期世代」と言われ、この世代が高齢者の仲間入りをする20~30年後の生活や日本の状況は厳しいと予測されている。
韓国も日本も親世代が歩んで来た「結婚し、子どもを生み育て定年まで勤め上げれば老後は安泰」というモデルケースが完全に崩壊したのだ。
「日本を超えた」などと言っている場合ではない
いま、高齢者の生活苦や孤独死といった問題はさらに増えていくことであろう。
特に中年世代はこれからの年の重ね方や老後の過ごし方、さらには「終活」についてもシュミレーションをしておく必要があるかもしれない。
この問題を放置しておけば、韓国経済が足元から崩れていくリスクすら秘めている。
このままでは「日本を越えた」などと言っていられないほどの危機に直面する危険性すら出てきたというわけだ。
さらに連載記事『韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!』では、そんな韓国で広がる高齢者たちの新たな問題についてレポートしよう。