韓国にこれからやってくる「危機」は、アジア通貨危機以上に深刻だ 世界は再び「救済」してくれるのか?
韓国が日本を追い抜く?
昨年12月14日、キャノングローバル経済研究所・小黒一正氏の「韓国、すでに日本を一人当たり購買力平価GDPで追い抜き…数年内に名目でも逆転か」、
1月10日、THE OWNER、アレン琴子氏「韓国に年収でボロ負けの日本 5年後にはGDPも追い抜かれる?」、
3月7日、東洋経済オンライン、リチャード・カッツ氏「『日本経済』が韓国に追い抜かれた納得できる理由」
など、昨年末から今年の初めにかけて、「韓国を称賛し、日本についてネガティブ」な論調が多数見られた。
確かに、表面的な統計データだけを分析し「机上の空論」を述べる「机上のクウロニスト」の立場では、そのような見通しになるのかもしれない。
しかし、私はそのような論調に対して、昨年12月30日公開「韓国は日本を追い抜く前に朝鮮半島ごと沈没してしまいませんか?」という記事を執筆した。
副題の「超少子化と旧友好国との距離の意味」のように、1.0をはるかに下回る「国家崩壊レベル」の少子化や、
日本にも米国にも通貨スワップ協定を「打ち切られた」ことが典型的である海外の国々との深刻な対立など「国家の存続にかかわる重大問題」をいくつも抱えていたからだ。
また、2月21日公開「いよいよ怒涛の韓国売りか?
中国崩壊よりも早いかもしれない」の副題の「1997年アジア通貨危機の再来も」十分あり得ると見ていた。
逆に、日本については、
8月13日公開「世界の生産年齢人口が減れば、日本のお家芸『自動化』に追い風が吹く」、
5月25日公開「日本の『お家芸』製造業、じつはこの円安&インフレで『圧倒的強さ』を発揮しそうなワケ」、
昨年5月9日公開「日本の『お家芸』製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」、
さらには2020年4月14日公開「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」など多数の記事において、「悲観論は間違っていた」ことについて詳しく述べた。
そして、その後、「大原浩の逆説チャンネル<第1回・特別版>大乱の八つのテーマと対処法」で述べたような、「世界的な危機」がより顕在化した。
8つどころではないかもしれない「複合危機」の中で生き残り、これから繫栄していくのはどちらの国かなのかを考えてみたい。
バッテリーはすでに「炎上」している
現代自動車の相次ぐバッテリー「炎上」事件や、LG化学がバッテリーを提供したGMの大規模リコール(発火の危険性のため)問題については、8月20日公開「中国、韓国『EV電池』の発火が相次ぐ一方、
『何もしていない』ように見える『日本の製造業』はやはり凄かった」で触れた。
世界販売台数ではホンダを抜く、現代自動車の実態がこの事例からよくわかる。
また同社は、2001年に日本進出を果たしたものの、販売低迷によって2009年にわずか8年で撤退した。
そして、今年2月に日本に再進出すると発表している。
しかし、上記のような問題を引き起こしている現代の自動車が日本の厳しい目を持つ消費者に受け入れられるとは考えにくい。
さらに、「一本足打法」と揶揄されるほど、韓国経済に占める存在が大きく、屋台骨を支えるはずのサムスンも、中国を中心としたスマホの販売不振などに直面している。
韓国は、「IT立国」を掲げ、過去おおよそ四半世紀、IT・インターネット分野に注力したが、
現在は9月5日公開「IT成金がいよいよ没落する、産業分野栄枯盛衰の歴史は繰り返す」のような状況だ。
これまでの韓国の「我が世の春」が終焉に向かうサインが多数出ている。
日本頼みの製造業
2019年9月13日公開「日韓対立のウラで、日中に『サンドイッチ』された韓国経済の行く末」で述べたように、韓国経済は、中国が追い上げているのに日本には追いつけないという「サンドイッチ問題」を抱えている。
もちろん、スマホの世界シェア(2021年)は、サムスンが2位のアップルを押さえて堂々の世界1位だ。
ちなみに3位が中国系のXiaomiである。
また、前述の現代自動車の世界販売台数(2019年)は、2位トヨタ自動車、3位ルノー・日産・三菱連合、4位GMに続く5位である。なお、6位は中国系の上海汽車だ。
確かに、「量」においては韓国勢が中国勢に追い上げられながらも健闘している。
だが、品質・性能についてはどうであろうか。
例えば、「日本品質」ならぬ「韓国品質」という言葉を聞いた時にどのようなものをイメージするのかということである。
「中国品質」よりはましだが、「日本品質」にはとても及ばないのではないだろうか。
前記記事3ページ目「日韓貿易から見えてくること」などで、2019年のフッ化水素をはじめとする3品目の「輸出管理規制強化」に触れた。
もちろん、安全保障問題に関わる単なる事務的手続きなのだが、韓国では天地がひっくり返るほどの騒ぎが起こった。
伝統的に韓国は日本に対して貿易赤字だ。
それは、韓国の産業が「日本から先端製造装置や先端素材(材料)を輸入して完成品を生産して世界に販売する」という「場貸し業型ビジネスモデル」だからである。
輸出管理規制強化の後、「それなら国産化するから構わないよ!」と豪語していたが、3年たった現在も実現していない。
それどころか、いまだに折に触れて「規制緩和の要請」を日本政府に対して行っているようである。
結局、サムスンのスマホ販売台数が世界一と言っても、そのスマホは「ニッポン入ってる」であり、本当の覇者は日本の素材・製造装置メーカ―なのだ。
もちろん、自動車・スマホ以外の分野でも韓国の産業構造は似たりよったりである。
韓流はマカロニウェスタン?
「マカロニウェスタン」という言葉は、もはや死語かもしれない。
英米ではスパゲッティ・ウェスタンと呼ばれるようだが、要するに1960年代から1970年代前半に製作されたイタリア製西部劇である。
なぜ「西部劇」がイタリアで製作されたのかについては色々な理由があるが、当時すでに製作費が高騰していたハリウッドよりも、イタリア(実際の撮影はさらにコストが安いユーゴスラビアやスペインで行われたとされる)の方がコストが安かったということが大きいのではないかと思う。
同じように「韓流」の作品も、私から見れば韓国で製作された(かつて日本で一大ブームとなった)「トレンディドラマ」だから、マカロニウェスタンに倣えば「キムチトレンディ」と呼ぶべきかもしれない。
実のところ、マカロニウェスタンの時代、米国では「西部劇は古臭いもの」として人気が衰えていた。
それを活性化したのがマカロニウェスタンである。
それと同じように、日本ではトレンディではなくなったドラマを活性化させたのが「キムチトレンディ」=「韓流」だと言える。
日本のトレンディドラマで青春を過ごした特定のファン層や、かつて日本のトレンディドラマが流行った時代に経済的に追いつこうとしているアジア諸国で大人気を博した。
しかも、日本製のドラマよりもコストが安いから儲かる。
そのため、メディアが一生懸命「韓流」を盛り立てたといえよう。
だが、イタリア製の西部劇が消えていったのと同じように、「韓流」も消えていく運命にあると思える。
また、活動休止中のBTSは優れた才能を持つグループであり、世界の時流にのってはいるが、「独自性」は感じられない。
あくまで「世界標準」のグループだと思う。
つまり、エンタティメントにおいても「韓国独自」の部分は少ないから、コストが増加すれば厳しい局面を迎えると考えられる。
高い自殺率と少子高齢化
前記「韓国は日本を追い抜く前に朝鮮半島ごと沈没してしまいませんか?」
記事3ページ目「すでに起こった未来」で韓国の0.84という「国家崩壊レベル」の少子化に言及したが、2021年には0.81となりさらに減少している(日本は2021年に1.30)。
2017年以降5年連続で最低値を更新している上に、4年連続で1.0を下回っているからこの勢いを止めることができないだろう。
少子化の原因には色々あるだろうが、「韓国人自身が韓国の将来に希望を持てない」部分も大きいと考える。
実際、昨年の韓国の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数:年齢構成の違いを調整後)は23.5人で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国・地域のうち1位を記録した。加盟38カ国の平均10.9人の2倍以上という驚くべき数字である。
韓国に住む人々が、自国の将来に明るい展望を持てないというのは、今後の行方を占う上で重要な事実である。
不動産バブル崩壊、巨額の貿易赤字等々
そして、そのような長期的・構造的問題が積み重なっている中で、
ITmedia ビジネスオンライン記事「金利引き上げで『不動産バブル崩壊の足音』韓国 今度という今度は本当かも」のような懸念が高まっている。
日本でも昨年12月9日公開「『変動金利』で住宅ローンを組んだ人の末路…
インフレで『ローン破綻』の可能性も」というリスクがより一層顕在化している。
しかし、中国恒大問題をきっかけとして不動産バブルが崩壊しつつある中国と同じくらい、あるいはそれ以上に韓国の不動産バブル崩壊は深刻なものになるであろう。
さらに、韓国の8月の貿易赤字は95億ドルである。
これは、1か月分のデータにもかかわらず、過去最大の貿易赤字を出した1996年(アジア通貨危機の前年)通年での赤字幅(206億ドル)のほぼ半分に達する規模だ。
当時とは経済規模が違うが、それはIMFや他国による韓国の救済がより難しいということも意味する。
しかも、アジア通貨危機の時とは違って、資源、エネルギー購入のために外貨が大量に流出している。
さらに、ロックダウンを繰り返す中国などの「お得意様」への、スマホを始めとする輸出が振るわない。
韓国を助けてくれる仲間はいるか?
日米ともに通貨スワップ協定は終了している。
その他の国々も過去四半世紀の「韓国式外交」をよく知っている。
今回、韓国を救済するかどうかは微妙だ。
実際、1997年以来、韓国がIMF、さらに日本や米国などに助けてもらったことに対する感謝の意を表明したことがあっただろうか?
それどころか、日本に居住する韓国系外国人から次のように言われたことがある。
「日本やアメリカは、韓国が通貨危機の時に、会社などを買いたたいて大儲けしたのだから『謝罪』して、利益を我々に還元すべきだ」である。
「大原浩の逆説チャンネル<特別版・第2回>安倍元首相暗殺事件と迫りくるインフレ、年金・保険破綻」の冒頭で「ニホンノセイダーズ」について述べたが、
このような思考方法の人々に手を差しのべたとしても、「そもそも『危機』が(通貨スワップ協定を終了した)日本のせいだ」と言われかねない。
改めて日本はすごい!
そのような韓国の状況を尻目に、冒頭で述べたように、日本はお家芸製造業を中心に、大躍進の時代に入った。
また、資源・エネルギー不足も、日本は世界最先端の省エネ技術などで追い風にすることが可能だ。
これからは、人件費が高いか安いかよりも、高騰するエネルギーをどのように節約してコストを下げるかが重要になる。
したがって、省エネに優れ、しかも「日本品質」で長持ちして結果的には安い日本製品の人気が高まる。
結局、韓国と日本、それぞれの国の将来は「すでに起こった未来」のように思える。
韓米日台の半導体サプライチェーン協議体 今月末~来月初め頃、予備会議の予定
「『同盟』表現を付けるのは極めて不適切」
「地政学的な不安から台湾への依存度を減らす」
米国 50.8% 28.6%
韓国 18.4% 56.9%
日本 9.2% 8.7%
欧州 9.2% 0.8%
台湾 6.9% 4.2%
中国 4.8% 0.7%
出所:OMDIA2021
2)次世代半導体技術確保のため今後10年間1兆ウォン以上投資予定。
2)素材・部品・装置の自立化率も30%から50%にそれぞれ高める。
3)サムスンやSKハイニックスなどの業界は、R&D(研究開発)と設備投資に、26年までに約340兆ウォンを投資する。
4)政府は、企業投資が適時に執行されるよう、半導体産業団地に電力・用水などの必須インフラの構築を支援する。
5)半導体工場に規制特例を適用して、最大容積率を従来よりも1.4倍高める。
2)EU(欧州連合)は、2030年までに公共・民間投資に430億ユーロ(約5兆9,000億円)を支援することを検討している。
3)日本は、半導体先端企業支援のために今年7,740億円規模の補正予算を緊急編成した。
2)既に存在している資源・資産の効率的な活用。
3)AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となる。
2022年09月19日
- 韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
2022年09月19日
- 韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
(2)「ソウル市によると、7月のソウルのマンション売買件数は639件で、2006年の統計開始以来、月次ベースで最低を記録した。
(3)「住宅取引が途絶え、秋に引っ越しを計画していた人たちは苦慮している。
(4)「賃貸で暮らす人も被害を訴えている。