日本と世界

世界の中の日本

「靖国参拝を再開せよ」

2022-09-26 18:11:50 | 日記
「靖国参拝を再開せよ」

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会長・政治評論家 屋山太郎


安倍晋三元総理の存命中に申し上げておけばよかったと悔いる問題がある。

何年か前、元総理から「靖国神社参拝問題について考えておいてくださいよ」と言われたことである。

当然、御自身も一つの問題、それは「参拝」ということについて確かな思想を持っておられたことは間違いない。

しかし「参拝」を表明する時期と理屈は極めて困難である。

そもそも1985年の中曽根康弘首相の時代まで粛々と続いてきた首相の靖国参拝がなぜ途切れることになったか。

当時の後藤田正晴官房長官は「中国が納得していない」旨を述べている。

しかし靖国参拝中止の決定的根拠になったのは、昭和天皇が内密に語られた次の発言ではないか。

これは2006年(平成18年)7月20日)に日経新聞が一面に挙げたスクープ記事である。

元宮内庁長官富田朝彦氏の聞き書きのメモと言われる。

文章を簡潔にするため箇条書きにした。

天皇は、

①私は或る時に、A級が合祀され、

②松岡(松岡洋右元外相)、白取(白鳥敏夫元駐伊大使)までもが合祀されたと聞いた。

③筑波(筑波藤麿靖国神社宮司)は慎重に対処してくれたと聞いたが、

④松平(松平慶民元宮内大臣)の子の今の宮司(松平永芳靖国神社宮司)はどう考えたのか。

⑤松平は平和に強い考えがあったのに、親の心子知らずだ。

⑥だから 私あれ以来参拝していない。それが私の心だ」

(肩書は筆者注)A級合祀が間違いなら、元に戻す分祀をすればいいとの案があるが、神道の教義上分祀はできないことになっており、この筋上には解決案がない。

A級戦犯が合祀されたことについて昭和天皇に不満があるようだが、B級、C級や樺太の電話交換手までが祭られている

反戦的ムードのマスコミが吠えそうだが、吠える根拠があるのか。

世界全体を見渡して、戦死者が公式に葬られていない国があるのか。

河野克俊前統合幕僚長が安倍首相のお供で硫黄島を訪れた時、ふと見ると安倍首相が滑走路沿いに埋められた遺骨に手をついてお祈りしていたという。(雑誌WILL9月号)。

安倍元首相は訪問国の戦没者墓地をよく回る首相の一人だった。

日本国民の平凡な気持ちは8月15日でも春秋例大祭でも、首相と天皇がそろって靖国神社をお参りすることだ。

こういう平凡でどこの国でもやっている祭祀が再開されて、どこの国がどう文句を言うだろうか。

問題は国際問題よりも国内の理屈の建て方である。

先ほど述べたように、公式参拝を止めている決定打は、昭和天皇が言われたとする「松平には強い考えがあったと思うのに『親の心子知らずだ』」というセリフである。

これは昭和天皇の本心だと思うが、れっきとした証拠がない。

特に「松岡(洋右元外相)までが合祀された」という個人の怒りが神社の歴史を曲げかねない。

この発言に目をつぶれば、全て円く収まる。

(令和4年8月10日付静岡新聞『論壇』より転載) バックナンバーはこちら 



「国家運営の見直しをすべき国、韓国」

2022-09-26 17:51:07 | 日記
「国家運営の見直しをすべき国、韓国」

―海外脱出・出生率低下・自殺率増加・条約不履行・三権の役割不確立・歴史捏造―
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会長・政治評論家 屋山太郎


韓国の大統領選挙が3月9日に迫った。かつては誰が当選すれば、対日関係はどう変わるか注目していたものだが、今は全く関心がない。

退陣する文在寅氏がいきなり投獄されても驚かない。

韓国政治は予想もできない程、路頭に迷っているように見える。

今や700万人が海外に脱出し、合計特殊出生率はわずか0.84(2020年)。

出生率が1.0未満の国は、世界でも韓国しかない。

しかもソウルの0.64は、信じられないほど低い。

自殺も多く、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で自殺率は10万人当たり25.7人となっており、加盟国38ヵ国平均である10.9人の倍を超えている。

特に70歳代の自殺率は38.8人に上っている。

以上、見てきた数字だけで、若者が国を捨て外に出ていく一方で、残された人達は70歳を過ぎると死にたくなるという状況が見て取れる。

国民全体が自暴自棄に陥っているのではないか。

国家再生のためにやるべきことは、まず国家の威信を取り戻すため、国と国がむすんだ条約は、何があっても守る姿勢を打ち出すことだ。

日本と韓国は1965年に日韓基本条約を結び、その付属協定として日韓請求権協定を定めた。

請求権として日本から韓国に無償3億ドル、有償2億ドルが支払われた。

日本として韓国との貸借関係はこれで終わりである。

5億ドルは本来、韓国人で損害を被った人に対する賠償や年金にも使われるはずだったが、当時の朴正熙大統領の判断で製鉄会社や農業への投資、道路やダムなどのインフラ投資に使われた。

結果は“漢江の奇跡”と呼ばれる経済復興をもたらした。

その代わり賠償金も年金もない、という人達が対日請求をする裁判が日本で起こされた。

見当違いだと却下されたのは当然だ。

そこで韓国裁判所に訴えたところ韓国の裁判所は「政府は日本に請求せよ」とか「日本企業の財産を差し押さえよ」という判決を出した。

対日請求を要求した時点で「条約を結んだから無効だ」という説明をするのが司法の役割だ。

韓国が司法、行政、立法の三権がきちんと区別されていない国家であることを示している。

退任した大統領が刑務所に入ることが韓国では常時起きている。

これも三権がその権限をわきまえないことから起こっている。

韓国人は「植民地時代」を恨みに思っているようだが、日本は韓国を併合したのであって、欧米人のように植民地にした訳ではない。

併合したからには、まず首都は日本並みにしようと、台北もソウルも下水道造りから始めている。

手元に朝鮮人陸軍特別志願兵制度の記録がある。

これは朝鮮人も日本人も公平に扱っていた一つの証拠でもあるが、昭和15年の採用者は3,060人、応募者は84,443人。

応募倍率は28倍程である。昭和17年には4,077人を採用し、倍率は62倍だった。この数字を見て「奴隷のように扱われた」と言う人は何と反論するのか。

(令和4年2月23日付静岡新聞『論壇』より転載

テーマは「意外と知らない住民税の仕組み」

2022-09-26 17:06:52 | 日記
医療費や保育料の負担が変わる 住民税の意外な仕組み住民税の基本(中)

2019/6/9


夕食を終えた筧家のリビング。幸子はパソコンを開いて、マネーセミナーの資料づくりを始めました。

テーマは「意外と知らない住民税の仕組み」。

恵は興味津々といった様子で、幸子のパソコンをのぞき込んでいます。お茶を飲んでいた良男が2人に話しかけてきました。

筧(かけい)家の家族構成

筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。

筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。

筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
 
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

筧良男 所得税は年末調整や確定申告のときに意識するけど、住民税はなじみが薄いな。

筧幸子 自分がどのくらい住民税を払っているのか知っておくのは大事よ。

住民税額によって社会保障や福祉サービスをどのくらい受けられるか、自己負担額がいくらになるのか、違ってくることが結構あるのよ。

筧恵 あ、確かに。例えば保育所の保育料とかね。会社の先輩のワーキングママによると、ママ友との会話の中で保育料の話が出てきて、そのママ友が払っている保育料を聞いて、相手の家の方が高収入だと分かったと言ってたわ。

幸子 この前、住民税には「所得割」と「均等割」があると話したけど、保育料は住民税の所得割で決まるのよ。

例えば、東京都世田谷区で1歳児を預ける場合、所得割が10万円の世帯は2万3000円、20万円の世帯は2万9700円よ。

良男 来年春から大学などの授業料や入学金を減免してもらえる高等教育無償化が始まるそうだけど、対象は基本的に住民税非課税世帯の子だそうだね。

幸子 私が会社員向けのマネーセミナーで講師をするときは、離れて暮らす老親の収入を把握するようアドバイスするわね。

住民税額によって払う医療費や将来受けるかもしれない介護サービスの自己負担額が変わることがあるのよ。

『イカゲーム』に見る韓国格差社会の現実

2022-09-26 16:37:34 | 日記
『イカゲーム』に見る韓国格差社会の現実

『ヴィンチェンツォ』も大ヒット

高橋一也 (ジャーナリスト)

 2019年から20年にかけてNetflixで公開された『愛の不時着』に続き、今年またもや韓国ドラマの嵐が吹き荒れた。

コロナ禍のため自宅で過ごす時間が長くなったこともあり、もはや韓国ドラマが生活の一部となった日本人も少なくないだろう。

 そこで本稿では、21年に公開された韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』と『イカゲーム』を取り上げて、ドラマから見える韓国事情を解説していきたい。

『ヴィンチェンツォ』が見せる〝移民大国〟韓国

 幼い頃にイタリアに渡りマフィアのボスに育てられた韓国人ヴィンチェンツォ・カサノ(演:ソン・ジュンギ)は、マフィアの顧問弁護士となり韓国に渡る。

その目的は、ソウルの雑居ビル地下に隠された金塊を手に入れること。

ヴィンチェンツォはビルの住民を立ち退かせようとするが、ビルは違法な手段で開発を進める大手ゼネコンの手に渡ってしまう。

ヴィンチェンツォは心を通わせたビルの住民とともに悪事を働く大手ゼネコンに立ち向い、悪をもって悪を制していく――。

 主人公の人物設定から荒唐無稽な印象を受ける方も多いと思われるが、韓国人にとって韓国系外国人は珍しい存在ではない。

そこには一つ目のキーワード「移民」の存在がある。

 海外に住む韓国人(永住者を含む)は約700万人で、人口が多い順に米国約254万人、中国約246万人、日本約82万人となっている。

既に現地で帰化した人たちは除外されているため、それらを含むとその数はより多くなる。

韓国の人口が約5100万人であることを考えると、人口の2割近くが海外に居住する「移民大国」であることが分かる。

 本稿ではそれらの人々をあえて「移民」と表現するが、それら移民が韓国から離れた理由は経済的なものだ。

近年「キロギアッパ」(雁のお父さん)と呼ばれる、子どもを母親同伴で海外留学させて、父親は韓国で暮らしながら仕送りを続ける移民が多いことが社会問題になっている。

 これは韓国の受験戦争が激化するとともに、一流大学を出ても大手企業に就職できず、就職できたとしても熾烈な出世競争で多くが40代で退職しなければならないという事情がある。

イタリア系韓国人の弁護士という人物設定が成り立つのは、このような背景があるからだ。

権力闘争の狭間に置かれた検察

 二つ目のキーワードは「検察」だ。

韓国パワーエリートの系譜を辿ると、1945年の独立から93年の軍事政権終焉までは軍人が圧倒的な力を持っており、次いで国家安全企画部(現在の国家情報院)関係者が位置していた。

その後、金泳三(キム・ヨンサム)政権に始まる文民政権で軍人や情報機関関係者は意趣返しを受けて権勢が削がれ、国家機関としては検察のみがパワーエリートとして生き残った。

 検察が生き残れたのには理由がある。

韓国の歴代大統領が金泳三氏と金大中(キム・デジュン)氏を除いて安らかな余生を送れなかったように、文民政権以降は新大統領が前大統領を訴追する事態が続いた。

 そこで猟犬の役割を果たしたのが検察だ。

韓国の検事は日本と同様に司法試験を突破した秀才たちだが、軍事政権時代は軍人の風下に置かれてルサンチマン(怨恨)を鬱積させていた。

文民政権になり軍事政権関係者糾弾の動きが始まると検事たちは、それまで忠誠の対象であった関係者を次々に取り調べ、全斗煥( チョン・ドゥファン )氏と盧泰愚(ノ・テウ)氏の元大統領を獄に繋いだ。

 その後は政権が交代するたびに、新政権の守護者と世論の代弁者よろしく前政権関係者を訴追し続けた。

2019年になぜか日本のお茶の間でも話題になった当時の法相である曺国(チョ・グク)への数々の疑惑事件は、最後に残ったパワーエリートである検察と、検察を含む旧来的な韓国を破壊しようとする文在寅政権の対立であったと見れば理解が容易だ。

ドラマではヤメ検弁護士が殺人を指示するなど悪事を尽くすが、そのような検事像は韓国人の検察へのイメージを反映しているといえるだろう。

『イカゲーム』が浮き彫りにする「借金漬け」の韓国民たち

 会社を解雇されてギャンブルにのめり込むソン・ギフン(演:イ・ジョンジェ)が、地下鉄のホームで出会った男に「数日ゲームをやれば金を稼げますよ」と唆されて、秘密の施設に送り込まれる。

施設に集められたのは金に目がくらんで犯罪を犯したり、借金取りに追われたりしている男女456人。

最後まで勝ち残った者が賞金約45億円を総取りできるゲームを提案される。

ただし、ゲームに負けることは死を意味する。

男女は拒否して社会に戻るが、二進も三進もいかない現実をあらためて認識して、秘密の施設に戻ってくる。

死か一攫千金かをかけたゲームは、子どもの頃に慣れ親しんだ遊びだった――。

 イカゲームを観る上でのキーワードは、ずばり「借金」だ。

ドラマを一貫する経済格差と拝金主義というテーマも、この借金を淵源とする。

 世界金融協会(IIP)によれば、2021年4月~6月期における韓国の家計債務残高の対国内総生産(GDP)比が104.2%となり、世界ワースト1となった。

これは韓国の経済規模よりも、韓国人による銀行からの借入れとクレジットカード使用額などの販売信用が大きいことを意味する。

 韓国に次いで香港が92%、英国が89.4%、米国が79.2%と続き、さらに順位は下がって日本が63.9%であることを見れば、韓国が世界で唯一、家計債務がGDPを上回る「借金漬け」の国であることが理解できるだろう。

大きな要因は見栄っ張りな気質

 IIPはその原因について、韓国政府の不動産政策失敗で住宅価格が高騰したことと指摘する。

例えば、ソウルと東京の分譲マンションを比較すると、ソウルは約8800万円(韓国不動産統計院)、東京は7712万円(不動産経済研究所)でソウルは東京の約1.14倍であるが、この数字からでは韓国人の皮膚感覚が分からないので別の数値を示してみよう。

 20年末に韓国紙ハンギョレ新聞が行った調査によれば、17年に平均年収の16.5倍だったマンション価格は、20年には26.5倍になった。

これを東京都(平均年収約447万円)に置き換えると、新築分譲マンションの平均価格が約1億1845万円になったことを意味する。

とてもじゃないが、共稼ぎして35年ローンを組んだとしても買える価格ではない。

 加えて、韓国人の見栄っ張りな特性も家計債務の増大に影響している。

再びマンションを例にすれば、東京の平均面積68.2平方メートルのところ、ソウルは104.9平方メートルと広大だ。

夫婦と子ども一人世帯の韓国人の友人になぜそんなに広い家に住むのかと聞いたところ、「家の広さはステータスに直結するので、狭い家に住むのは恥ずかしい」からだと答えた。

見栄っ張りという特性は、上述のクレジットカード使用額などの販売信用にも影響している。

 韓国は1997年のアジア通貨危機を機に、個人消費の増大と脱税防止を目的として、政府が主体となりクレジットカードの利用を推進したため、今ではキャッシュレス比率89.1%と世界で最もキャッシュレス化が進んだ国となった。

さらに韓国政府はこの過程で、30万円を上限として年間クレジットカード利用額の20%を所得から控除(現在は15%)するとともに、1000円以上のクレジットカード利用で自動的に毎月行われる当選金1億8000万円の宝くじを配布(レシートに抽選番号を印字)する政策をとった。

この射幸的ともいえる政策が見栄っ張りな特性を刺激して、一挙に家計債務が増大したという訳だ。

はたして韓国は幸せな国になったのか?

 内閣府が実施した調査(令和2年度外交に関する世論調査)では、韓国に「親しみを感じる」とする者は34.9%で、そのうち18〜29歳の女性が最も多くの割合を占めている。

また、日本テレビは今年6月のニュースで、「韓国での就職目指す 日本の若者が増加」を報じ、韓国のコンテンツの影響が大きいという声を紹介した。

これらの傾向は、ひとえに韓国ドラマが日本の若者に好影響を与えた結果だといえる。

 確かに、率直に言って韓国ドラマの質は俳優や脚本、演出、映像の面で日本のドラマやバラエティー番組を凌駕していると思う。

これは韓国政府と芸能関係者が一体となって、「韓流」を輸出コンテンツとして育成してきた成果であり、素直に賞賛すべきだろう。

ただ、日本の若者が憧れるような夢の国なのだろうか?

 イカゲームは日本のみならず、米国や西ヨーロッパでもヒットしたという。

ここから思い起こされるのは、19年アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』だ。

 イカゲームとパラサイトが西欧キリスト教文化圏ではない韓国を舞台としながら欧米人に親近感を抱かせたのは、貧富の格差が拡大していることへの共感があるからだ。

つまり、これら作品は不平等や機会の減少という世界に共通する格差問題を韓国人特有の豊かな感情表現で描き出したからヒットといえる。

世界中の視聴者が楽しむドラマの裏には、経済格差で苦しむ韓国の市民がいることを忘れてはならない。

 果たして、ドラマとして社会問題を切り売りしている韓国の未来に夢はあるのだろうか。



国葬と安倍政治 功罪の検証はこれからだ

2022-09-26 16:07:35 | 日記
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国葬と安倍政治 功罪の検証はこれからだ

2022/9/26 6:00

 参院選の街頭演説中に銃撃されて亡くなった安倍晋三元首相の国葬があす行われる。
 世論調査では国葬に反対する割合が増え続け、直近では賛成を大幅に上回っている。

 安倍氏は憲政史上最長の8年8カ月にわたり政権を担った。

政権を奪還した2012年以降は大型国政選挙に6連勝し、首相が毎年交代していた不安定な政治に終止符を打ち、有権者の支持を集めた。

 にもかかわらず国葬への支持は広がらない。実施を決めた岸田文雄首相は、この落差を深刻に受け止めるべきだ。

 首相は国葬とする理由の一つに「さまざまな分野での歴史に残る業績」を挙げる。

具体的に言及していないが、経済政策「アベノミクス」や集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法などが念頭にあるとみられる。

 いずれも、それまでの政権が成し得なかった大胆な政策転換である。

株価上昇などで低迷していた経済を動かし、有事に備えた態勢整備に踏み出したことは間違いない。

 一方、先例のない金融緩和がもたらす副作用や解釈改憲の違憲性といった問題点も指摘されており、歴史的評価を下すのは早計に過ぎる。

 安倍氏自身、首相退任後もなお自民党内に影響力を維持し、過去の人ではなかった。

 国葬への支持が広がらないのは、まだ評価の定めようがない安倍氏を対象とすることに、国民がためらいや疑問を感じているからでもあろう。

 安倍氏が手がけた政策は現在も賛否を伴って進行中だ。そのまま受け継ぐか見直すかは、岸田政権が直面する政治課題である。

 国葬によってそれらを安倍氏の「功績」として定着させるようでは、後継政権の政策判断を縛ることになりかねない。絶対に避けるべきだ。

 長期政権下で生じたひずみも見過ごせない。

 1強体制の下、国権の最高機関である国会が軽んじられた。

「数の力」による採決強行が繰り返され、安倍氏が事実と異なる答弁を重ねたこともあった。

 人事権を振りかざした官僚支配は過度な忖度(そんたく)や萎縮を招き、公文書改ざんという信じ難い不祥事も起きた。

 死去後に表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡っては、安倍政権下での教団の名称変更や選挙支援などの実態が未解明のままだ。

 安倍氏の非業の死を悼む思いは、もちろん大切にされなければならない。

それでも弔意と政治的評価は冷静に切り離すべきだ。負の遺産はなかったことにできない。

 数の力に頼って異論を排除する政治手法は、岸田政権が決して引き継いではならないものだ。
残念ながら、国葬を強行する首相のやり方は安倍氏と重なって見える。

 国葬によって安倍政治の検証が終わるわけではない。功罪が問われるのは、むしろこれからだ。