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税金でしのいできた韓国経済…成長率ショック、素顔を見せた

2019-06-29 17:20:23 | 日記

税金でしのいできた韓国経済…成長率ショック、素顔を見せた

2019年04月25日13時03分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]

成長はなかった。

1-3月期の韓国経済は後退した。世界金融危機以来10年3カ月ぶりに最も低い増加率となった。「マイナス成長率ショック」だ。

景気減速が数値で確認され、補正予算と政策金利引き下げの圧力もさらに強まる見込みだ。 
  

韓国銀行(韓銀)が25日に発表した1-3月期の実質国内総生産(GDP)増加率(速報値)は-0.3%(前期比)だった。

2008年10-12月期(-3.3%)以来、四半期別の増加率では10年3カ月ぶりの最低水準だった。 
 

 1-3月期の成長率が良くないという兆候はあった。18日に韓銀が今年の経済成長率予測値を修正し、2.5%へと0.1ポイント引き下げた。 
  

保守的な見方をする韓銀が4回連続で成長率予測値を下方修正するしかなかっただけに、1-3月期の数値がマイナスに転じるかもしれないという見方があった。 
  

にもかかわらず市場は1-3月期の成長率を0.3%前後と予想した。政府の力を信じたのだ。

470兆ウォン(約47兆円)にのぼる「スーパー予算」を編成したうえ、政府の重点管理資金執行率が最も高いと伝えられたからだ。 
  

ふたを開けてみると市場は衝撃を受けた。

1-3月期の成長率は-0.3%だった。

1-3月期の「成長率ショック」の主犯は政府だ。

支出項目別の成長寄与度で政府(-0.7%ポイント)がマイナスに転じた。前期(1.2%ポイント)と比較しても差が大きい。 
  

韓銀のパク・ヤンス経済統計局長は「昨年10-12月期との比較の影響、また政府の財政執行率が高くても各種手続きを踏んで実際には資金が使われなかったことで、

政府の支出がマイナスに転じた」とし「政府の部分のマイナス寄与分を除けば市場の展望と似た水準」と述べた。

財政を執行しても実際にその効果が表れるまでは時間の差があるという説明だ。 
  

しかし1-3月期の経済成績表を見ると、韓国経済についた警告灯の実体が赤裸々に見える。

投資と輸出がともに力を失う状況で政府に頼ってきたことがはっきりと表れたからだ。

政府の効果が消えると成長率が折れたということだ。 
  

さらに成長寄与度でみると、内需(-0.5%ポイント)より純輸出(0.2%ポイント)がやや良かった。

純輸出寄与度は前期(-1.22%ポイント)より高まった。

投資不振などで内需が落とした成長率を純輸出が少しでも埋めたという形も望ましくない。

純輸出寄与度がプラスになったのは輸出(-1.1%ポイント)より大きく減少した輸入(-1.3%ポイント)影響だ。 
  

「不況型黒字」の影がちらつく。 
  

1-3月期の民間の成長寄与度(0.4%ポイント)はマイナスの前期(-0.3%ポイント)からプラスに転じ、民間消費が良くなるという予想もあるが、期待感を高めるには負担だ。 
  

今後も問題だ。韓銀は今年上半期の成長率予測値を2.3%としている。この数値を達成するには4-6月期は1.5%(前期比)の「サプライズ」成長率でなければいけない。 
  

問題はこの目標値を達成するのが非常に厳しいという点にある。

1-3月期の成長率ショックの別の原因の一つ、投資が回復するかに対する疑問も膨らむ。

1-3月期の設備投資(-10.8%)と建設投資(00.1%)はともにマイナスだった。 
  

半導体をはじめとする主力産業の輸出が鈍って投資が減少している状況で、また最近の輸出統計が依然として不安定な状況で、楽観的な展望を出すのが難しいからだ。

このため輸出景気悪化→投資不振→雇用悪化→消費不振という悪循環につながることも考えられる。 
  

政府の財布ばかり眺められない状況で与野党が対立している状況を考えると、24日に出した6兆7000億ウォン規模の補正予算執行も遅れる可能性がある。

補正予算の実際の効果は7-9月期に入ってこそ期待できるということだ。 
  

現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は「24日に出した補正予算は社会補完的な性格が強いうえ成長率を0.1%ポイント上げる水準と予想されるため、景気を防御するのは難しい。

今年の成長率は韓銀の予測よりはるかに低くなる可能性が高まった」とし「財政で限界があるのなら韓銀も積極的な通貨政策に動く必要がある」と述べた。

 

"スマホ不振"で行き詰まる韓国経済の末路

2019-06-29 15:55:00 | 日記

"スマホ不振"で行き詰まる韓国経済の末路

 

6月10日(月)9時15分 プレジデント社

■経常赤字は「輸出主導型経済」の行き詰まりと同義

4月、韓国の経常収支が7年ぶりの赤字に転落した。

経常収支が赤字に転落した主な原因は、韓国の輸出が急速に減少したためだ。

その背景には、輸出依存度の高い中国経済に減速感が出ていることに加えて、主力の輸出製品であるスマホなどIT関連機器の需要が落ち込んでいることがある。

特に、サムスン電子の半導体事業の減速は顕著だ。

韓国銀行(中央銀行)は、今回の経常赤字転落は海外投資家への配当金支払いによる一時的なものと説明しているが、あまり説得力はない。

むしろ、今後、韓国経済は一段と厳しい状況に直面する可能性が高いとみられる。

今年2月にサムスン電子が発表した「Galaxy Fold」。ディスプレーを直接折り曲げられる「折り畳みスマホ」として4月に発売予定だったが、

その後に発売延期となり、6月7日現在、まだ発売されていない。(写真=dpa/時事通信フォト)

米国は中国の通信機器最大手ファーウェイへの制裁を発動し、中国はそれに対して報復すると明言している。

米中の摩擦は激化し、今のところ、両国の折り合うポイントが見つからない状況だ。

世界各国のスマートフォンや5G関連の通信機器への需要、IT関連の設備投資は落ち込むことが懸念される。

これまで半導体を輸出の主力製品として経済成長を実現してきた韓国にとって、経常収支の赤字転落は輸出主導型経済の行き詰まりを意味する。

当面、輸出の大幅な回復と見込むことは難しい。

それに加えて、足元のウォン安が輸入物価を上昇させ、経済を圧迫する懸念もある。

それは、社会心理を一段と悪化させ、韓国の政治と経済の停滞懸念を高めることになりそうだ。

■一握りの財閥企業が韓国全体を左右するいびつな構造

韓国経済には、2つの大きな特徴がある。

1点目は、韓国経済がサムスン電子を筆頭とする「財閥(チェボル)企業」の業績拡大に依存していることだ。

サムスン電子1社の売上高は、韓国のGDP(国内総生産)の15%程度を占め、上位10社の売り上げを合計するとGDPの45%程度に達する。

なお、サムスンの営業利益の70%程度が半導体事業からもたらされている。

これはかなりいびつな経済構造だ。

事実上、サムスン電子など一握りの財閥企業の業績が、韓国経済の成長を左右している。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、経済格差の拡大と固定化を食い止めると主張し、財閥改革を標榜した。

しかし、実際に改革を進めることは口で言うほど容易ではない。

なぜなら、財閥企業の経営が揺らげば、韓国経済そのものが大きく傷つくからだ。

■韓国政府は企業業績のかさ上げで「ウォン安」を重視

2点目は、貿易への依存度が高いことだ。

韓国の貿易取引はGDPの80%程度に達する。これは、わが国の2倍以上の水準だ。

韓国経済は、わが国などから資材を調達し、それを用いて半導体などの製品を生産し、それを中国などに輸出することで成長してきた。

また、韓国政府は企業業績をかさ上げするためにウォン安を重視してきた。

過去数年間の韓国の輸出を見ると、サムスン電子の株価とかなり相関が高い。

2016年初旬ごろから中国では景気対策が進み景気が徐々に上向いた。

中国は「中国製造2025」の推進のために半導体を買い求めた。

加えて、世界的にスマートフォンが急速に普及し、データセンター向けのDRAM需要も高まった。

サムスン電子は、その需要を取り込んで半導体輸出で収益を獲得した。

2017年秋口まで韓国の輸出は増加基調で推移し、ほぼ同じタイミングで同社の株価も最高値をつけた。この時期、韓国の消費者信頼感も大きく上昇した。

2017年11月には、韓国銀行が利上げを実施した。近年の韓国経済は、サムスン電子の半導体輸出に支えられたのである。

韓国の輸出に急ブレーキがかかる要因とは

2018年に入ると、韓国の輸出は伸び悩み始めた。

公共事業の削減に加え米中の貿易戦争から、中国経済が急速に減速した。

また、世界的なスマートフォン販売台数の鈍化やデータセンター向け設備投資の一巡から半導体市況が悪化した。

2019年に入ると、米中摩擦の激化や欧州の政治混乱から多くの企業が設備投資を手控え、半導体需要がさらに落ち込んでいる。

その結果、年初から5月末まで、韓国の輸出は前年同月比ベースで減少している。

これが、韓国の経常赤字の原因だ。

経常収支とは、海外との財(モノ)やサービスの貿易や、投資(例、海外子会社からの配当受け取りなど)の状況を示す。

経常収支が黒字であるということは、その国が海外からお金を受け取っているということを意味する。

反対に、経常赤字である国は、海外に対してお金を支払わなければならない。

■韓国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性

2018年、韓国の経常収支は764億ドル(約8兆3000億円)の黒字だった。

このうち、貿易収支が約1120億ドル程度と、圧倒的に大きい。財閥企業の輸出競争力を高めることで成長してきた韓国にとって、経常収支が黒字であることは経済が成長していることの裏返しだ。

2019年第1四半期、韓国の実質GDP成長率はマイナス0.4%に落ち込んだ。

原因は、企業の設備投資と輸出が減少したためである。

その上、4月の経常収支が赤字に落ち込んだ。

これは、輸出主導型の韓国経済が成長の限界に直面したことと言い換えられる。

米中の摩擦激化は世界のサプライチェーンを混乱させ、貿易取引は低迷するだろう。

韓国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性がある。

サムスン電子では、半導体事業に加え、スマートフォン、ディスプレーの主力3事業が総崩れだ。

加えて、LG電子の液晶事業も急速に業況が悪化している。

稼ぎ頭のエレクトロニクス産業の業績が急速に悪化する中、韓国が輸出で成長率を高めることはかなり難しくなっている。

■韓国はエネルギー資源や食料のほとんどを輸入している

韓国では、財閥企業の経営悪化を受けた景気後退のリスク上昇に加え、政治への懸念も強い。

外国人投資家は韓国株を売り、ウォン売り圧力が高まっている。

輸出が減少傾向をたどり経常赤字が続くようだと、ウォン安は韓国経済にとってマイナスに働く。

なぜなら、韓国はエネルギー資源や食料のほとんどを輸入しているからだ。

自国通貨安は輸入品の価格を上昇させ、個人消費を圧迫する。ウォン安は徐々に家計の重しになるだろう。

本来であれば韓国政府と韓国銀行は外国為替市場に介入し、過度な通貨安を抑えたい。

これまでにも韓国は自国に適した為替レートの水準を実現するために、頻繁に外国為替市場に介入してきた。

問題は、北朝鮮への対応をめぐり、米国と文政権の関係がこじれていることだ。

韓国が自国に適した為替レートの実現を目指して為替介入を行えば、トランプ政権は韓国に対してより強硬な姿勢をとるだろう。

景気失速の懸念がある中、通貨防衛の利上げも困難だ。韓国が従来のようにウォンの為替レートをコントロールすることは難しい。

■財閥企業の輸出競争力に依存してきたツケ

文大統領は景気を支えるために、財政出動を重視している。

政府は、財政出動を呼び水にして財閥企業の設備投資や雇用を勢いづけたい。

それは、文氏が支持率回復を目指すためにも重要だ。

一方、すでに韓国の財閥企業は過去数年間に大規模な設備投資を行ってきた。

サムスン電子などは設備投資を減らしている。

文政権の財政政策の効果は一時的なものにとどまり、財政の悪化懸念が高まりやすい。

その状況が続くと、韓国の国債利回りが上昇し、企業や家計には一段の重しとなる恐れがある。

第2次世界大戦後の長い間、韓国は財閥企業の輸出競争力に依存し、成長を実現した。

一方、内需の厚みは増していない。

韓国が輸出減少のマグニチュードを吸収し景気を落ち着かせることは難しい。

経常収支の赤字転落により、韓国経済の停滞リスクは高まっている。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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韓国、来年から人口減に 2065年に高齢化で日本逆転

2019-06-29 15:05:45 | 日記

韓国、来年から人口減に 2065年に高齢化で日本逆転

日経

2019/3/28 20:04

【ソウル=鈴木壮太郎】

韓国統計庁は28日、将来人口推計を発表した。総人口は早ければ2019年の5165万人をピークに減少に転じる。

人口に占める65歳以上の高齢者の割合も65年に46%に達し、高齢化では日本を抜いて経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国のなかで首位になる。

急速な少子高齢化は韓国経済にも影響を与えそうだ。

 

韓国は5年ごとに人口推計を発表している。

前回発表は16年で、次回は21年に予定していた。

ただ2月末に発表した18年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が想定以上に低い0.98となり、

初めて1を下回って世界で最低水準に落ち込んだことから、人口を推計し直して発表を前倒しした。

出生率と寿命を低く見積もる「低位シナリオ」の場合、16年の発表では23年が人口のピークで、その後減りはじめると予想していた。

今回の発表では人口減が4年早く訪れる。

総人口は67年に3365万人まで減り、1972年の水準になる。

 

高齢化も急速に進む。

2017年時点の65歳以上の人口比は14%。国連の人口推計(15年)と比べると日本のほぼ半分の水準にとどまる。

OECD加盟国の中でも低い方だが、65年にはほぼ2人に1人が65歳以上となる見通しだ。

生産年齢人口(15~64歳)も17年は73%と、OECD加盟国のなかで最高だが、少子高齢化によって65年は46%(中位シナリオ)と、日本(51%)を抜いて最低になる。

韓国で少子高齢化が急速に進んでいるのは、子どもを産み育てるのが難しい社会になっていることがある。

15~29歳の青年失業率は18年に9.5%に達し、若者の就職難は社会問題化している。

経済力の問題から結婚しない人も増え、20~44歳の未婚率は男性が58%、女性は48%(15年)に達した。

結婚しても教育費負担が重く、出産をためらう夫婦が多い。

急速な少子高齢化は経済の活力低下につながる。

現在の潜在成長率は2.7~2.8%だが、現代経済研究院の洪俊標(ホン・ジュンピョ)研究委員は「30年以降は潜在成長率が1%台まで下がる可能性がある」と予測する。

国内では「通貨危機以上の危機だ」(韓国大手紙の朝鮮日報)と警戒する声が強まっている。

韓国政府は少子高齢化対策に16~18年の3年間で117兆ウォン(約11兆円)をつぎ込んだが、施策が総花的で即効性がなく、出生率は目標の1.5に上向くどころか低下に歯止めがかからなかった。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年12月「低出産・高齢社会政策ロードマップ」を発表。

出産・養育費支援の増額や小学校入学までの医療費無料化、育児休暇時の給与引き上げなど、ニーズの高い施策に財源を集中配分し、出生率の引き上げに腐心する。

ただ急激な出生率の回復は難しいのが現実だ。

延世大の成太胤(ソン・テユン)教授は「このままでは年金制度の維持も難しい。

移民の受け入れなど、既存の政策を転換する必要がある」と指摘する。

洪氏も「潜在成長率を高めるには女性が働きやすい環境づくりのほか、

移民政策の緩和に加え、規制緩和や新産業の創出などで投資をしやすい環境づくりをさらに進める必要がある」と、産業政策との連携が重要だと強調する。

 

韓国経済が直面する問題は何か

2019-06-27 17:02:53 | 日記

アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 1 8.

韓国経済が直面する問題は何か_

低成長、チャイナショック、高齢社会 (株)日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 向山 英彦氏

 【はじめに】 波木井さんがいらっしゃる前という事もありまして、少し雑談を兼ねて自己紹介させていただきたいと思います。向山というのは東京ではどちらかというと珍しい姓なのですが、山梨の一部の地域ですとそんなに珍しくない姓です。

実際私の父は、山梨県の出身でありまして、先祖代々は今の甲州市辺りで生活していました。かなり前に両親が亡くなり、墓参りを兼ねて最低年に2回は来ています。

また去年は夏休みを八ヶ岳の麓で過ごし、今年の2月にも、冬の星空を見に清里高原を訪れました。

そういった意味で、山梨は自分にとって第二のふるさとだと思っています。

私が韓国経済を主として調査研究の対象にしたのは、大体2000年くらいからだと記憶しています。ですから、15年くらい経ちます。

長いといえば長いですし、短いといえば短いと思います。

 韓国経済あるいは韓国に対する見方は、この数年で非常の大きく変わりました。

いいイメージから悪いイメージへです。

4年くらい前までは韓国経済、韓国企業を非常に高く評価する、そういう雰囲気がありました。

多分皆さんもご記憶にあるかと思いますが、2010年3月4日、日本経済新聞の社説で、『世界に躍進する韓国企業を学べ』が出ました。

その年の4月13日号の週刊エコノミストは『最強韓国』という特集を組んでいます。

李 明博(イ・ミョンバク)前大統領の竹島(独島)上陸をきっかけに日韓関係が悪化したことや韓国経済に一時期のような勢いがなくなったこともあり、韓国経済に対する見方も非常にネガティブなもの変わってしまいました。

ある意味で、見方が180度変わったといってもいいでしょう。

私は、これはコインの表と裏ではないかと考えています。

韓国が2000年代に形成した成長メカニズムが韓国の躍進をもたらした一方、そのメカニズムがこの数年機能しなくなり、それが現在の低成長につながっているからです。

その意味で、複眼的に韓国経済の動 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 2 きをとらえていく必要があります。

 今日は韓国経済の現状、直面している問題点、最後に日韓関係についてお話出来ればと思っています。お手元にあります資料を中心に、進めさせていただきます。

 【1.低成長、到来する「高齢社会」】

まずは3ページ目ご覧になって下さい。これは非常に長期的な観点から、現在の韓国を位置づけたものであります。左の図表の棒グラフは経済成長率の推移です。折れ線グラフが固定資本形成いわゆる投資の動きです。

 韓国の場合、朴 正煕(パク・チョンヒ)政権の60年代から70年代にかけて、いわゆる漢江(ハンガン)の奇跡と呼ばれた高成長時代を経験していきます。

それ以降、成長率は経済社会の成熟化と共に趨勢的に低下してきました。

これは多くの国が経験する過程だと思います。

そして2013年に、現在の朴 槿惠(パク・クネ)政権が誕生します。

それから右のグラフをご覧になっていただきたいのですが、日本以上に少子化が進んでいます。

特に2000年代に入って、合計特殊出生率が急激に低下しています。

なぜこの時期に急低下したのかということですが、恐らく97年の通貨経済危機の影響があったと思います。

通貨経済危機後、98年2月に金大中(キム・デジュン)政権が誕生します。

金大中政権下で実施された構造改革には、4つ柱がありました。

企業の構造調整(財閥改革)、金融改革、労働市場改革、政府部門の縮小です。

労働市場改革として実施されたのが、整理解雇制度と派遣労働制度の導入です。

整理解雇制度というのは、一定のルールに基づいて解雇が出来る仕組みです。

韓国ではそれまで経営環境が厳しくても、なかなかレイオフが出来なかったのですが、これによりレイオフが可能になり、企業のリストラが進みました。

もう一つの派遣労働制度は労働市場の柔軟性を強めていく目的があります。

日本ですと確か80年代後半くらいに導入されたと思いますけれど、韓国の導入はかなり遅くなってからです。

出生率の低下は、通貨危機後の雇用環境の悪化、今まで正規職で働いていた人が例えばレイオフされてその次に就いた仕事が非正規職でしかなかったとかが反映されているかと思います。つまり、雇用や所得環境が悪化し、結婚したくても結婚出来なくなった、あるいは結婚しても子どもを産む余裕がなくなってきたことを示唆しているのです。 成長率がだんだんだんだん低下してきた一方で、少子高齢化が進展しています。その結果として2017年に労働力人口が減少に転じ、翌年の2018年に「高齢社会」(全人口に占める65歳以上の割合が14%以上になる)へ入ると予測されています。低成長下で高齢社会に入っていく、これが今の韓国の置かれている状況です。 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 3 【2.2000年代 グローバル化の進展と対中依存度の上昇】 もう少し2000年代の動きを振り返りながら、話を進めていきたいと思います。先程、日本経済新聞が2010年3月4日の社説に、「世界に躍進する韓国企業を学べ」を掲載したと申し上げましたが、韓国経済が注目されていったのが2000年代の半ばあたりからです。 2000年代に形成された韓国の成長メカニズムには、3つの特徴があります。 一つ目は、財閥中心として大企業が積極的にグローバルな事業展開を進めていったことです。二つ目は、そういう大企業の事業活動を政府が積極的に支援したことです。これには、法人税率を引き下げたり、電力料金を政策的に安く設定したり、政府が積極的にFTAを締結するなどが含まれます。三つ目は、その結果として韓国の経済成長が輸出主導型(輸出とその拡大に伴う投資)になっていることです。こういう成長メカニズムが2000年代に作られました。 左のグラフをご覧になってください。これは、財・サービスの輸出のGDPに対する比率を表したものです。上の折れ線グラフが韓国で、下の折れ線グラフが日本です。いかがでしょうか。2000年代に入って、その比率が著しく上昇していることが分かります。韓国の企業が海外で現地生産を始めたり、海外市場に向けて輸出を積極的に伸ばしたことが反映されています。 海外の空港で韓国製を多く見かけるようになったのが2000年代半ばくらいからではないでしょうか。資料の右に出ているのはタイのスワンナプーム国際空港です。飛行機から降りてイミグレーションへ行く途中に、天井から下がっているディスプレイで、サムスンの文字が見えます。またタイの場合ですと自動車は日本企業のブランドがほとんどですが、ホテルでテレビを点けようと思って見ると、LGであるとかサムスンが多いですね。 いずれにしても、韓国企業のグローバル化を示すものです。 後の話にも関係しますが、韓国企業がグローバル展開を加速していく、韓国経済のグローバル化が進む過程で、中国への依存度が上昇していきます。 真ん中の表は、輸出全体に占める対米輸出、対日輸出、対中輸出の割合です。輸出に関しては、中国が2003年に、米国に代わり、韓国にとって最大の輸出相手国になりました。また、韓国にとって最大の輸入相手先は長いこと日本でしたが、2007年に中国が最大の輸入相手国になりました。こういうように、韓国経済のグローバル化が進む過程で、中国への依存度を強めていきました。 【3.新興国市場の開拓により躍進した現代自動車】 韓国の大企業はグローバル展開を積極化させたのですが、特に成長が期待できる新興国に力を入れて、そこでシェアを上げていったことが特徴的です。 例えば5ページ目をご覧になってください。左のグラフは世界の自動車グループの販売 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 4 台数の推移です。トヨタ自動車の場合にはダイハツと日野自動車が入り、現代自動車の場合には傘下の起亜自動車が入ります。 2000年代の動きをみると、現代自動車グループの順位が上昇していったのがわかります。現在、販売台数では世界第5位の自動車グループになっています。 この躍進は何によってもたらされたのかと言いますと、新興国市場での需要取り込みです。右のグラフは、世界の地域別自動車販売台数の推移です。全体に占める新興国の割合が折れ線グラフで示されています。1995年は、先進国が8割近いシェアを占め、新興国は2割ちょっとです。2010年になりますと、新興国のシェアが5割を超え、世界の自動車販売台数において先進国から新興国へウエイトがシフトしています。その新興国市場で販売を伸ばしてきたのが現代自動車グループなのです。 左下のグラフで現代自動車の海外生産の動きを見ますと、カナダ工場の閉鎖後、新興国、特にBRICsを中心に現地生産を進めてきた事が分かるかと思います。 その隣のグラフはトヨタ自動車と現代自動車の地域別販売構成比率のグラフです。トヨタ自動車にとって最大の市場はアメリカですが、現代自動車にとって最大の市場は中国なのです。こういうように、総じて韓国の企業は新興国を中心に売上を伸ばしてきたといえるでしょう。 【4.失速する韓国経済】 次の6ページをご覧になってください。左の図は折れ線グラフが成長率、棒グラフが、成長率に対する需要項目の寄与度を表しています。 先程言いましたように、韓国の2000年代の成長は輸出主導型です。輸出とその拡大に伴う投資が成長を牽引しているのが、グラフから分かります。しかし、この数年、輸出の寄与度が低下し、従来の成長メカニズムが機能しなくなっています。 右のグラフは、消費者物価上昇率の動きを示しており、足元では、0.5%、0.6%にまで低下しています。原油価格下落による影響が大きいですが、長期的に見てインフレ率が低下してきており、「日本型デフレ」に陥るのではないかという懸念が非常に強くなっています。 ただし、近年の経済成長率の低下というのは、ある意味で予測されたものだと思うのです。というのは、韓国の成長率が輸出主導型であれば、輸出環境、特に韓国企業が力を入れてきた新興国の成長鈍化により、輸出の伸びが鈍化し、これが成長率の低下に繋がっていくのは避けられないからです。 【5.チャイナインパクト】 最近の韓国経済の減速は、特に中国の影響を強く受けています。 先程、韓国は経済のグローバル化を進めていく中で、貿易面で対中依存度が上昇してき アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 5 たことを説明しました。これによって、韓国経済は中国経済の変動の影響を大きく受けるようになったわけです。 ご存知のように、中国では以前、二桁の成長が続いていました。二桁の成長が続いた時期には資源の輸入が急増しました。資源国では対中輸出が急増したため、開発プロジェクトが相次いで実施されました。また、資源国の成長加速によって消費が増えました。いうなれば「好循環のメカニズム」が働いたわけです。 しかし、中国経済の成長率は近年7%台へ低下しました。中国政府も持続的な成長を目指して、構造改革進めながら安定した成長を目指す路線に転換しています。それによって、韓国の対中輸出が低迷するようになりました。 もう一つは、中国の高成長の効果は世界的に波及したのですが、近年は、その「好循環のメカニズム」が逆転しました。資源国の中国向け輸出が減少したため、海運需要が減少し、船舶の発注も減少するという具合です。資源国での開発プロジェクトが中止し、消費も減速するなど、影響は広範囲に及びました。 中国の影響には、過剰生産もあります。中国はリーマンショック後に4兆元の大型景気対策を講じました。これによって鉄鋼や石油化学製品の生産が拡大したのですが、その後需要が鈍化したことにより、過剰な生産能力を抱えるようになってしまいました。その結果、中国の鉄鋼や石油化学製品などがアジアを中心に海外市場へ流入し、市況が悪化しました。このように、韓国経済、韓国企業は中国の影響を強く受けています。 ちなみに、資源価格に関してみると、石炭価格はピーク時の三分の一くらいにまで低下しています。また、中国の粗鋼生産量が依然として増加しているように、中国政府の政策にもかかわらず、減産が進んでいないのが実態です。 【6.円安・ウォン高の進展】 それから次のページを見てください。更に韓国経済の置かれた環境が厳しくなったことに、為替の動きがあります。皆さんご存知のように、この数年ウォン高が進みました。ウォン高が進む一方、円はドルに対して急ピッチで安くなりました。 日本で2012年12月に、安倍政権が誕生します。政権が実際に誕生する前から、アベノミクスを先取りするような形で為替が動きました。大胆な金融政策、日銀による異次元の金融緩和を進める政策を見越した動きです。為替の変動要因はさまざまですが、最近は、日米の金利差で動いています。日本が大胆な金融緩和を進めれば、日米の金利差が広がり、円安が進行する動きになっています。 大胆な金融緩和を進めてきた結果、円安になったのですが、韓国での受け止め方は必ずしもそうではありませんでした。日韓関係が悪化したこともあり、韓国の一部で、日本が通貨戦争を仕掛けてきたという受け止め方をしました。今、経済副首相は崔炅煥(チェ・ギョンファン)氏ですが、その前は玄旿錫(ヒョン・オソク)氏です。彼はKDI(韓国開発 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 6 研究院)のトップにいらした方ですけれど、彼自身が通貨戦争を仕掛けてきたという発言をするわけです。 円安が進む一方で、ウォン高が進みました。なぜウォン高が進んだのでしょうか。右下のグラフは韓国の投資率と貯蓄率、それから経常収支の動きを示したものです。特に注意して頂きたいのが、経常黒字が近年大幅に拡大してきたことです。少し経済学的な説明になりますが、その背景には貯蓄率と投資率のギャップがあります。貯蓄率はほぼ近年横ばいで推移しているのに対して、投資率は低下しています。内外需が低迷していく中で、設備投資含めて全体の投資が落ちて、輸入が減少する。その結果として、貿易収支と経常収支の黒字が拡大する「不況型の黒字」です。 我々は何となく、貿易黒字や経常黒字は良いことだと考えてしまいます。例えば輸出が大きく伸びて、それが貿易黒字に繋がっていく、こんなイメージを持つわけですが、実際景気が回復すると、企業は生産を拡大し投資をします。これに伴い、原材料や機械設備などの輸入が増加します。また景気が良くなると、海外製品を消費します。これらの結果、貿易収支は悪化しやすくなります。 韓国では経常黒字の拡大を背景にして、ウォン高圧力が強まったのです。今アジア諸国の通貨を見ますと、弱い通貨はインドとインドネシアの通貨で、両国とも経済赤字と財政赤字を抱えています。 いずれにしてもこういう形で、円安が進む過程で、ウォン高が進みました。左のグラフはウォンの対円レートです。2012年は100円=1,500ウォン程度でした。この時は円高ウォン安です。日本からの観光客が韓国に多く買い物に出かけました。当時、明洞(ミョンドン)を歩くと、日本人が非常に多かったのを覚えています。 それが今はどうでしょうか。100円が900ウォンです。そうなりますと、当然観光客は減っていきます。 ただこういう円安ウォン高の伸展にも係らず、韓国の輸出は比較的底堅く推移してきました。韓国の企業は原材料とか機械設備、部品などを日本から輸入しているため、、円安ウォン高によって輸入コストが低下するのが一因です。また、韓国製品と日本製品は世界市場で競合しているといわれていますが、主たる販売の対象にしているセグメントが違っていることも関係していると思います。 以上のように、新興国の減速、中国の影響、そしてウォン高と、韓国経済を取り巻く環境が厳しくなり、韓国経済の成長率が低下しました。 【7.サムスングループの動き】 企業業績も悪化してきています。9ページ目をご覧になって下さい。韓国では、財閥グループが大きなウエイトを占めております。 左の表に、97年と2014年の韓国の10大企業グループが出ています。通貨危機後、い アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 7 ろいろな動きがありました。大宇財閥が解体して、現代財閥も4つのグループに分かれました。 4つのグループのなかで、勢いのあるのが現代自動車グループです。 ロッテグループの創業者は、在日コリアンの辛格浩(シン・キョクホ)氏です。日本で事業を開始し、日韓国交正常化を契機に韓国に本格的に進出しました。韓国で事業を拡大して、資産規模で今やサムソン、現代自動車、SK、LGに継ぐ5番目の財閥になっています。 韓国経済を代表するのが、サムソングループです。特にグループの中で中核的な存在になっているのがサムソン電子です。その業績が右のグラフです。営業利益は2013年がピークです。この時の営業利益の7割はITモバイル、とくにスマートフォンが稼ぎ出したものです。それが去年の7~9月期に大幅な減益となりました。ITモバイル部門の利益が著しく減少したためです。スマートフォン市場の成熟化と安い中国企業製の台頭の影響を受けたものと考えられます。 むしろ注目して欲しいのは、デバイス部門の利益が増加していることです。その多くは半導体です。半導体が今、サムソン電子の収益を支えており、恐らく当面収益の柱になることが予想されます。サムソン電子の大幅減益は、「サムスンショック」として日本でも話題になりましたが、総じて減益にのみ目を奪われています。営業利益の水準はまだ高いですし、こういう形で半導体が伸びていることに、注目していく必要があると思います。 それから10ページ目に、他の企業の業績が出ています。現代重工業は造船が主力事業ですが、2014年は3期連続で営業赤字になりました。 【8.朴槿恵政権下の経済政策】 今まで、2000年代に形成された韓国の成長メカニズムが外部環境の悪化によって、十分に機能しなくなっていることを説明してきました。問題は、従来の成長メカニズムが機能しなくなる一方、次の発展に向けての取り組みが遅れていることです。 ご存知のように、朴槿惠大統領が打ち出した政策の一つが創造経済の実現です。11ページ目に、大統領の就任(2013年2月25日)演説の一部を載せています。国民の幸福、創造経済、経済民主化という3つキーワードが多用されているのがわかります。 経済全体の発展と国民の幸せがうまく結び付くような社会を作っていくこと、従来のキャッチアップ型に代わる創造経済を実現させていくことが強調されました。 韓国は大企業のグローバル展開に依拠して、2000年代に比較的高い成長を続けましたが、それが必ずしも多くの国民の生活水準の向上に結びつかなかったのです。実際、国民から財閥寄りの政策への批判が噴出しました。これが、保守の側から、経済の民主化を打ち出すことになった背景です。経済の民主化は分かりにくい概念ですが、大企業と中小企業との共生関係を作っていくことといえます。 ただ抽象的には、創造経済というのは分かるのですが、具体的に何を目指し、どのよう アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 8 な政策を具体的に進めていくのかよく分からないという声が韓国国内のなかで聞かれました。 【9.「経済革新3カ年計画」の策定】 次は12ページです。13年6月に創造経済の実現に向けたアクションプランが発表されます。そして14年2月に、創造経済を含めた形での韓国の中期経済計画である「経済革新3ヵ年計画」が発表されました。 3つ柱があります。第1はファンダメンタルズ、経済の基礎的な力の強化です。経済の民主化が朴槿惠大統領の一つのキーワードと申し上げましたが、この時点では、経済の民主化はかなりウエイトが小さくなり、ファンダメンタルズの強化の中の一項目という位置づけになっています。第2は、創造経済の推進です。これに関連して、いくつかの具体的な施策が出ています。第3は、内需と外需の均衡のとれた成長です。従来の輸出主導型成長を転換し、内需の活性化を通じて、バランスのとれた発展を目指していく方向です。 創造経済の実現に関しては、より具体的なものとして、各主要都市に創造経済革新センターを設置する動きが始まっています。計画ですと、2015年6月末までに全国17箇所に設置します。各地方自治体、大企業、政府系の研究機関、大学、金融機関などが相互に連携しながらベンチャー企業の育成とその成長を促進していく狙いです。財閥にはメンターとしての役割が期待されています。 ベンチャー企業を育てていく上でも、大企業の力を借りざるをえないのが現実です。例えば大邱(テグ)ではサムソン、大田(テジョン)はSKがメンターとしての役割を担っていきます。イメージは右下の図のような形です。各機関が連携して人材の育成、資金面の支援、マーケティングを支援していきます。 こうした施策の効果が期待される一方、効果が表れるには相当な時間を要すると思われます。繰り返しになりますが、従来の成長メカニズムが機能しなくなった一方、新しい経済や社会の建設に向けた取り組みは始まったばかりであり、その成果がまだ出ていないというのが今の韓国です。 【10.近く到来する「高齢社会」】 一番最初に申し上げましたように、この数年韓国の成長率は2%から3%台で推移しています。2000年代、つまり2001年から2010年の年平均成長率は4.4%でした。 低成長が続くなかで、韓国は18年に高齢社会を迎えます。こうした中で問題になっているのが、高齢者の貧困です。 右のグラフをご覧になってください。これはOECD(経済協力開発機構)の2010年の統計です。相対的貧困人口比率の定義は囲みの中にあります。所得分布の中央値の50%に アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 9 満たない国民の全体に占める割合です。横軸が全体の相対的貧困人口比率、縦軸が高齢者の相対的貧困人口比率をとっています。これを見てわかりますように、 OECD加盟諸国の中で、韓国の高齢者の貧困人口比率が一番高くなっています。 それでは、貧困人口比率が高い要因は何かということですが、次の16ページ目をご覧になってください。 【11.貧困の一因に低い年金給付額】 高齢者の貧困要因にはいくつか指摘できます。 一番目は、韓国では勤続年数が比較的日本と比較して短いことです。韓国の場合は徴兵制があります。以前に比べて短くなったとはいえ、現在も2年は兵役に従事するため、就職する年齢が高くなります。 また、企業での事実上の定年が日本よりも早いのが実態です。韓国の大企業は全てではないですが、通貨危機後実力主義になっており、サムソン電子では40歳台で「肩たたき」が始まります。その一方、実績を上げた人は役員に抜擢されて、日本よりも高い報酬を得ますが、毎年厳しい業績評価を受け、2年、3年して役員の椅子から外れることも少なくないといわれています。 早期に退職に追い込まれてしまうと、一部の人を除き、次の職場を見つける事が難しく、自営業をしてなんとか生活資金を得ていく動きが出てきます。これが韓国で自営業者の割合が高い理由の一つです。真ん中のグラフをご覧になってください。横軸が一人当たりの国民所得(購買力平価基準)で、縦軸が就業者の中に占める自営業者の割合です。韓国はOECD諸国の中でも非常に高いことが分かります。 勤続年数の短さにより、金融資産もある程度限られてきます。 二つ目は、国民年金保険制度の導入が遅れたことです。国民年金保険制度が成熟化していないため、年金給付が受けられたとしても、十分ではないのです。 三つ目は、韓国の社会が急激に変化して、かつては家族が持っていた扶養機能が急速に低下してしまったことです。 左上のグラフをご覧ください。これは高齢者の主たる収入源を示したものです。日本、米国、スウェーデン、ドイツなどでは、高齢者の収入源の中で最も高い割合を占めているのが公的年金です。ところが韓国の場合には、この割合が他の国に比べて極端に低くなっています。 高齢者の収入は何に大きく依存しているかというと、仕事による収入です。つまり年齢を重ねても何らかの形で働かざるを得ない。こういう状況があるわけです。それと家族の扶養機能が低下したとはいえ、子どもからの援助が他の国に比べて高くなっています。いずれにしても公的年金制度が成熟化していないため、高齢者の生活を支えられないという問題が出ています。 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 10 韓国の国民年金制度について言いますと、比較的早く整備されたのが、公務員、軍人、学校の教職員を対象にしたものです。朴正煕体制を支えたのは軍人、公務員であったこともあり、彼らを対象にした年金制度をまず導入したと考えられます。 実は、国民年金制度に関する法案は73年に国会を通過しました。問題がなければ、70年代に国民年金制度が始まったわけですが、70年代に石油ショックがあり、また79年には朴正煕大統領が暗殺されるなど、政治経済環境が大きく変わって、実施が延期され、88年になってようやく施行されました。最初は従業員10人以上の事業所が対象で、徐々に対象が拡げられてきたというのが今日までの動きです。 【12.基礎(老齢)年金制度の導入】 高齢者の置かれた生活が厳しいことを受けて、朴槿惠大統領は12年12月の大統領選挙の時に、すべての高齢者に基礎老齢年金(現在は基礎年金に名称変更)として月20万ウォン支給することを公約にしました。 この公約によって、高齢者の支持をかなり得る事が出来たと思います。年金を充実させていくこと自体は正しいと思うのですが、問題なのは「増税なき福祉の充実」を公約にしてしまったことです。 実際、この「増税なき」というのがその後の政府の政策を縛っていきます。財源を確保する手段として、成長促進による自然増収、支出構造の調整、非課税・減免対象の見直し、地下経済のあぶり出しなどが示されました。 しかし、月20万ウォンの基礎年金を実施していくことになった時点で、財源が十分に確保できないことが明らかになりました。このため、公約を見直して、所得上位30%には支給せず残りの70%に、いろいろな条件を鑑み、最大で20万ウォンにまで支給していく方針へ変更しました。 高齢者からすると、朴槿惠大統領に裏切られてしまったということになりました。また年金以外にも、無償保育、大学の授業料半減なども公約にありましたが、大学の授業料半減(奨学金を増やす)は延期され、無償保育は実施に移されたものの、地方自治体の財政悪化に繋がっています。最近では、政府与党からも「増税なき福祉の充実」という公約を見直した方がいいという声が出ています。 【13.「高齢社会」に向けた課題】 18ページのグラフは、OECD加盟諸国の中の税収と社会支出の関係を示したものです。韓国は、社会関連の支出の対GDP比率が低い一方、それに見合うかのように税収の対GDP比率も低くなっています。 このグラフは福祉を充実させていく、社会関連支出を増やしていく為には、それ相応に アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 11 税金を増やしていくことが必要だという事を示唆しています。 韓国は政府債務残高の対GDP比は30%で低い方です。日本は200%くらいです。韓国はこれからどういった福祉社会を目指していくのか、高負担高福祉を目指すのか、中負担中福祉を目指すのか、現在のような形で低福祉低負担のまま続けていくのか、 その選択を迫られているわけです。 私は韓国は中負担中福祉を目指す方向になると思っていますが、その場合でも、国民の負担を増やさざるをえません。政府がきちんと国民に対してそれを説明できるのか、だれがどういうタイミングで言い出すのか、大変難しい問題が残されています。 【14.朴槿恵大統領に対する支持率】 19ページ目をご覧になってください。創造経済の実現に向けての政策は開始されましたが、まだその成果が出ていません。成長率も3%くらいに留まっています。一方で、基礎年金に関して公約違反という声も聞かれるように、国民に約束したことが実現されていません。 その結果、一時期60%くらいあった朴槿惠大統領の支持率が30%程度にまで落ちました。特に当初大統領を支えていた岩盤層といえる50歳代60歳代の大統領離れが起きています。人事の躓き、国民とのコミュニケーション不足、セウォル号沈没事後の政府の対応の悪さ等々が支持率低下に繋がったと思います。 【15.冷え込む日韓関係】 最後に、日韓関係について触れます。最初に申し上げたように、韓国に対する見方はこの数年で大きく変わりました。韓国経済に対しても、数年前には高く評価する見方がありました。例えば、韓国企業のグローバル化あるいは政府のFTAを積極的に進めていく姿勢などを日本でも参考にすべきという意見がありました。 しかし、この数年はネガティブな評価に変わりました。 左上のグラフは、内閣府の大臣官房政府広報室が毎年行っている、外交に関する世論調査です。2012年の李明博前大統領の竹島(独島)上陸を契機に、関係が悪化しました。それにより、韓国に「親しみを感じる」割合が大幅に低下した一方、「親しみを感じない」割合が上昇しました。13年は若干改善したのですが、14年に再び悪化しました。 朴槿惠大統領は日韓の首脳会談実現の前提として正しい歴史認識を掲げたのに対して、安倍首相は無条件に首脳会談をしていこうと提案したのですが、両者の溝がうまらず、冷え込んだ状態が続いています。国民の韓国に対する親近感というか親しみが、こうしたなかで一段と悪化してしまったといえましょう。 ただ日韓関係というのは、渡辺先生はじめ皆さんもご経験されてきたように、今まで悪 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 12 くなったり良くなったりというサイクルを繰り返してきたわけです。 かつては日韓関係がギクシャクしても、それを修復していくメカニズムが働きました。というのは、かつては韓国にとって日本は経済的にも重要な相手ですし、また安全保障面でも日韓関係は重要だったからです。しかし、国際環境の変化に伴い、日本の重要性が低下しました。 さらに、かつては関係がギクシャクすると、両国の大物政治家が関係の修復に向けて大きな役割を果たしましたが、安全保障面での重要性の低下と世代交代によってそうしたメカニズムが作用しなくなりました。 韓国の国会議員の中で日本語の出来る人が少なくなってきたこと、韓国社会のなかでも日本の事情に精通した人が少なくなりました。日本でも同じで、韓国の政治家とパイプを持った人達が少なくなっており、関係修復を図ろうにも、なかなか出来なくなってきているのが現状です。 私は去年辺りまでは、関係の改善に関しては比較的楽観的に考えていました。両国の経済団体が現在の関係を憂慮し、関係の改善を求める声明を発表したり、米国政府も同盟国である日韓の関係改善を求めていたからです。しかし、両国の置かれた現状をみると、首脳会談の実現は厳しいのではないかと思っています。 【16.経済面への影響】 経済面にも影響は出てきています。ただし、日韓関係の悪化と円安ウォン高の動きが重なっていますので、どこからどこまでが関係悪化による影響なのかは必ずしも判別できません。 まず、ドルベースでの貿易額が減少しています。図表は、韓国側から日韓の貿易を見たものです。対日輸出だけではなく、対日輸入も3年連続で減少しています。普通に考えれば、円安になったら韓国向けの輸出が増えるのですが、円安にもかかわらず日本から韓国の輸出が減っているのです。 日本から韓国への輸出の多くは、韓国の企業が生産するのに必要な部品、原材料、機械設備です。ですから、韓国企業の生産の伸びが低下すれば、日本から韓国への輸出が落ちます。輸出していたものが韓国での現地生産に切り替わっている影響もありますが、韓国の対日輸入の減少は韓国経済、韓国企業の勢いの低下を反映したものと考えられます。 二つ目は、日本からの観光客が大幅に減少しています。関係の悪化と為替の影響が重なったことによるものですが、減少に歯止めが掛かっていません。 ただ韓国にとって幸いな事は、日本からの観光客の減少分を埋める以上に、中国からの観光客が増えています。かつては韓国のロッテホテルの滞在客は日本人がほとんどだったと思うのですが、最近ではホテルの前で観光バスから降りてくる人を見ますと、中国人が大変多いですね。それから明洞(ミョンドン)もかつては日本人が多かったのですが、今 アジアフォーラム21 ANNUAL REPORT 13 はもう店員が呼びかける声も、日本語よりは中国語になっているように、圧倒的に中国人が多くなっています。日本人を相手にしていたお店のなかには、中国人向けに衣替えしている所もあるでしょうが、そう出来ない店は厳しい状況だと思います。 三つ目は、日本からの直接投資の減少です。数年前には「超円高」が続いていたこともあり、日本企業のなかに、それまで輸出していたものを韓国での現地生産に切り替える動きが出ました。右下のグラフに示されていますように、2012年に日本から韓国への直接投資が急増しました。 しかし、その後の円安の加速、日本政府のTPP交渉への参加などにより、韓国に投資するメリットが減少しています。このため、日本から韓国への直接投資もこの2年減少しています。 今年は日本と韓国の国交が正常化して50周年になります。関係改善が望まれるにもかかわらず、関係改善の糸口がみえないのが現状です。 以前よりも低下したとはいえ、韓国にとって日本、日本にとって韓国は重要な相手国です。近年は、あまりにも歴史認識問題が前面に出て、「共通の利益」が忘れがちです。経済面をみると、韓国と日本はサプライチェーンで結ばれています。また、日本と韓国は少子高齢化など共通する問題を抱えており、政策や活動面で相互に学ぶことができます。さらに、アジア地域の発展は両国にとってプラスとなります。アジアが持続的に発展していく上で課題となっている環境対策やインフラ整備、貧困削減などの分野で協力することも「共通利益」といえましょう。こうした「共通利益」を私たちは再確認していくことが必要だと思います。 少し話が長くなってしまいましたが、説明出来なかった部分はまた質問を受ける形で答えていきたいと思います。どうもありがとうございました。 (平成27年3月6日開催)


韓国経済の何が問題なのか?

2019-06-27 15:13:29 | 日記

 

外から見る日本、見られる日本人

 

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

 

 

韓国経済の何が問題なのか?

 

韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は4日「韓国経済の内外環境が厳しい。
 
今年1−3月期の輸出が振るわず、2月の生産・消費・投資がいずれも減少した」とし「それによって民生も企業もさらに厳しくなるだろう」(中央日報)と発言し韓国経済の厳しさを物語っています。
 
表面的理由は中国経済の影響が最も効いているようです。
 
昨年10-12月に中国経済は日本電産の永守会長の「尋常ではない変化が起きた」というあの言葉に凝縮できるほど過激な状況に落ち込みました。
 
韓国にとって中国は最大の貿易相手国であり風邪をひいている中国の状況を考えれば韓国は入院患者のような状態になるのは自明であります。
では、仮に中国がアメリカとの貿易協定を締結し、両国間の問題が解決できたとしたら韓国にとって春が訪れるのでしょうか?否です。
 
理由は二つ。
 
一つは中国にとってアメリカとの通商問題は山積する経済問題のごく一部であり、それが中国経済を回復させる決め手にはならないからです。
 
特に中国の地方経済の問題は深刻であり、中央政府が地方の案件に対して銀行が貸し渋りをするのを防ぐのに躍起になっています。
 
市場経済という自動調整機能をうまく活用しない中国方式の経済運営はAIの時代にマニュアル操作するようなものであり、早晩、回復できるような話ではないでしょう。
もう一つは中国の産業界の技術革新が進み、韓国製品と直接ライバル関係になることが挙げられます。
 
ハイテク、造船、鉄鋼、自動車、化学製品が韓国の売り物ですが、中国が自前で調達できるようになれば韓国にとっては太刀打ちできない状態になります。
 
余談ですが、「経済は西に進む」という言い伝えがあります。
 
街も原則、西に向かって発展していくように国家も西側に次の夜明けを待つ国が控えます。
アメリカ国内でもサンフランシスコやシアトルといった西側がアメリカの次世代をリードしています。
 
欧州、アメリカを経てアジアの時代という歴史の流れを見てもご理解いただけるでしょう。
 
日本はアメリカという「時代の先輩」を持つことによって経済繁栄しましたがこれは経済の引継ぎがスムーズに移行できたからとも言えます。
 
つまり、国家は東側にある国との関係を維持したほうが経済的にうまくいくと考えています。
 
ところが、韓国の場合、日本に一時頼った後、西にある中国に頼ってしまったことで根本的な間違いを犯してしまいます。
 
なぜなら韓国の西にある中国がいつかは韓国に追いつくのは「経済は西に進む」原則からわかりきっていたことだからです。
もう一つ、韓国経済について根本的な問題点を指摘します。
 
これは財閥経済が生み出す国民の分断化であります。
 
韓国では現代にしては珍しい「資本家と労働者の闘争」が起きています。
 
ストライキが頻繁に起きるのは好例ですが、国民の大多数を占める労働者の地位を守るため、政権は左寄りにならざるを得ません。
 
同国内には「財閥がもたらす社会問題」は十分認識されており、財閥の一つだった大宇も解体されましたがそれでも韓国経済全体のうち4分の3を残りの財閥が生み出している歪があります。
 
このため、若者の財閥就職志向が強まり、子供に異様に教育熱心な家庭が多く存在しているのはご承知の通りです。
 
子供がサムスンに入社できれば親のみならず親族一族が祝うほどとされ、かつての中国の科挙試験に合格するのと同じぐらいの重みがあるのか、と疑うほどであります。
 
財閥系に入れる若者はごく一部であり、残った若者が失業し、将来展望が出来なくなるケースがしばしば見られるのはこの理由です。
 
海外に渡った韓国人が異様に頑張るのは故郷で成し得なかった成功を目指すためであり、かつての在日韓国人もそうですし、現在の北米在住の韓国人にビジネス成功者が目立つのはそのあたりの背景もあるのでしょう。
 
今般、大韓航空を抱える韓進グループの会長が亡くなり、グループ運営に大きな懸念があるほか、アクティビストが同社株を買い上げ、グループへの揺さぶりをかけています。財閥解体まで進めるのか、注目しています。
もう一点、財閥に金融がない点が韓国経済の特徴で日本の旧財閥と一線を画しています。(韓国政府がそれを是としなかった経緯があります。)
 
韓国金融の足腰は十分ではない中、外資の影響が大きく、このあたりに経済が筋肉質になりにくいもう一つの問題が隠されているのかもしれません。
こんな状態ですので個人的には将来、北朝鮮と経済関係が構築された際、メリットよりも厳しい時期が長くなる公算はあるかもしれないと思っています。
では今日はこのぐらいで。