海の男の胃袋を支え続けた小名浜の老舗
福島県最大の港・小名浜。観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」の建つ1号埠頭や、東北最大級の水族館「アクアマリンふくしま」のある2号埠頭をはじめ、10を越える埠頭からなる巨大な港である。2011年の東日本大震災で津波被害を受けたが、2018年には震災復興の拠点・イオンモールも完成。活気のあるエリアとなっている。
今回は、その小名浜港の東の端で1952年から営業を続ける「チーナン食堂」へ。小名浜エリアでは「味世屋食堂」「なぎさ亭」と並ぶ老舗で、わざわざ県外から足を運ぶファンもいるほどの人気ぶりだ。公共交通機関で辿り着くのは難しく、車でのアプローチがオススメである。駐車場も店の向かいなどに10台分ほど用意されている。
店の暖簾をくぐると、小柄で元気な女将さんが迎えてくれる。店内はテーブル席と小上がりで30席ほど。さすが食堂。メニューはラーメンの他、麺類だと焼ソバ、ウドン、冷ソバを用意。飯モノはカレー、焼めし、カツ丼、親子丼、玉子丼、オムライス、チキンライスなど。また、野さい肉炒めや焼肉、豚カツなどもラインナップしている。
さらにビールや冷酒もあり、昼間から一杯ひっかけることも出来る。漁業や工業などの肉体労働者が多い港湾地域で長年営業してきたので、いずれの料理もボリュームたっぷりだそうだ。今回は人気の「ラーメン半チャーハン(900円)」をオーダーすることに。ちなみに「半カレー」とのセットも同じ料金である。
ラーメンは背脂の浮いた白湯スープで、魚介系不使用のワイルドな一杯。豚と鶏ガラの出汁にタマネギで甘みを加え、3日寝かせた醤油ダレを合わせているそうだ。麺は地元・小名浜の「諸橋製麺所」製の中細ストレート麺。低加水で灌水も少なめなので、小麦の香りをしっかりと感じられる。しなやかな食感でスープとの相性も抜群だ。
チャーシューは厚みのある豚肩ロース肉が3枚。煮豚系で味付けは塩程度なので、豚の味をストレートに感じられ、食べ応えたっぷりで旨い。ほか、甘めに煮付けられたメンマ、ネギ、海苔、蒲鉾が乗る。いわき市では練り物産業が盛んで、蒲鉾屋や工場も多い。この蒲鉾のトッピングは、小名浜ならではというところか。
一方の半チャーハンはパラパラ系ではなく、しっとりとした仕上がり。醤油や胡麻油での味付けは控えめで、胡椒が強めにきいている。玉子、チャーシュー、ネギ、人参と彩りも豊かで、焦げ目もしっかり入っていて旨い。この2品のセットだけで、夜まで十分に腹が持ちそうだ。常連は「焼ソバ」を推していたので、次回オーダーしたい。
なお、訪問時は丁度「グリーンスローモビリティ」の実証実験中(2020年11月26日~2020年3月8日)で、「チーナン食堂」のバス停も設置されていた。実験は9人乗りの小型EVバスが小名浜港周辺を巡回するもので、100円で利用が可能だ。平日は予約制だが、土・日・祝日は定時で周遊する。これに乗って訪問するのも面白いだろう。
<店舗データ>
【店名】 チーナン食堂
【住所】 福島県いわき市小名浜字栄町66-30
【最寄】 JR常磐線「泉駅」より車で15分