冬は中耳炎の季節です。
開業して最初の冬だったでしょうか、自分自身が急性中耳炎になりました。中耳炎の痛みは、本当につらいものです。鎮痛剤では抑えきれず、文字通り七転八倒。夜は、疲れてうつらうつらとはするのですが、痛みですぐ目が覚め、一晩中熟睡することはありませんでした。最初の夜を過ぎると、激痛は収まったのですが、鈍痛と耳閉感、難聴は2週間以上続き、精神的な疲労はかなりのものでした。他の耳鼻科の先生にお願いして、鼓膜切開もしてもらいました。(その節は、ありがとうございました。)
でも、医者が病気になるのには、いいこともあります。
自分の鼓膜を内視鏡で見て、鼓膜が赤くなり、腫れて膿が貯まっていくのを、時間を追って観察できました。普通、患者さんを発症した瞬間から診ることや、その後24時間見続けることなどは不可能です。自分自身が患者だからできたことです。大人が中耳炎になることは珍しいし、耳鼻科医が中耳炎になる確率はもっと少ないでしょうから、こんな経験をした耳鼻科医は、あまりいないと思います。
鼓膜がどういう状態のときにどういう症状が出るのか、正確に知ることができましたし、耳とは離れた下顎まで痛くなること(神経がつながっているのです。これがけっこうつらい)など、あまり知られていないことも体験することができました。自分がその病気になると、百編の論文を読むより多くのことを知ることができるし、その病気の患者さんの気持ちが良く分かるようになります。中耳炎の治療を行う上で、貴重な経験となりました。