最近お母さん方によくされる質問に「中耳炎の予防にワクチンは有効ですか?」というのがあります。
急性中耳炎の原因として一番多いのは肺炎球菌、2番目がインフルエンザ菌(インフルエンザの原因ではありません。19世紀まだウイルスが発見されていない頃に、間違ってつけられた名前)、3番目がモレキセラ・カタラリスという菌です。
最近行われるようになった予防接種に、肺炎球菌のワクチンとHibワクチン(ヒブ。インフルエンザ菌のうち重症の髄膜炎の原因となるb型に効く)があります。中耳炎を起こすインフルエンザ菌はb型とは別のタイプなので、Hibワクチンは中耳炎には無効です。肺炎球菌ワクチンについては、答えるのが難しいところがあります。
最近できた7価の肺炎球菌ワクチンは、幼児のためのワクチンで、中耳炎にも有効と謳われています。しかし、7価というのは、7つのタイプのという意味で、他のタイプの肺炎球菌による中耳炎は予防できません。その上、7つのタイプの肺炎球菌だけを予防することによって、他のタイプの肺炎球菌や、肺炎球菌以外の菌による中耳炎が、逆に増えるという報告があります。また中耳炎が減少したという米国の報告でも、その減少はわずかですし、ネイティヴ・アメリカンの中耳炎を対象とした検討では、有効性は認められなかったという報告もあります。
そこで現在のところは、「ワクチンで中耳炎を完全に予防することはできません。中耳炎の予防というよりも、髄膜炎や肺炎の予防のために必要な予防接種と考えます。」とお答えするようにしています。