いつものように夕飯が終わり、最後はと~さん一人がリビング室でうとうと。
昨夜も同じく、うとうとし、目を覚ますと・・・・
いきなり両手を捕まれた。
“痛いよ、と~さん。”
“何が痛いだ!勝手に人のうちに入ってきて!”
どうやら私はと~さんの家に不法侵入した曲者のようだ。
手を振り払おうとすると、蹴りが入り、足払いが入る。
バシッと平手打ちが入る。
ふいをつかれた。不覚。
掛けていたタオルケットをぐるぐる私に巻きつけ、端と端で結んでいる。
“と~さん、苦しいよ、これじゃ蓑虫だよ、取って!”
“だめだ! 取ったら逃げるだろう!”
“と~さん、トイレに行きたい。”
“だめだ!”
“絶対逃げないって約束するから行かせて、出ちゃうよ~”
“絶対逃げないな!”
と言いながらと~さんは手は離さずトイレまで。
“と~さん、ここは大丈夫、逃げ場はないから”
やっと手が離れ、トイレを済ましドアを開けると、そこにはと~さんが待っていた。
すぐに両手を捕まれ、連行。
“お~い、お~い、誰かいないか~、ちょっと来てくれ~”
誰からも応答なく、“もうどいつもこいつも、今度ヤキを入れてやる!”とプンプンのと~さん。
歩き回っての連行は疲れるので、と~さんに負けずと布団に連行し、横になってもらう。
今度は背中に蹴りが入る。
“と~さん、女に手をあげるなんてとんでもないよ!いい加減にしてよ!”
“何言ってる! この泥棒が!”
はあ~~~~
疲れ始めたと~さん、うとうと・・・・
やっと開放、書き物でもと立ち上がった時、外で車のドアが開く音が。
“誰だ!!”
起き上がろうとするがなかなかスムーズにはいかない。
“おい! おい!“
呼ばれた私、また捕まれた。
今度は胸ぐらだ。
着ているシャツを切れちゃうんじゃないかと思うほどグイグイ引っ張る。
“切れちゃうよ。”
“うるさい!”
“疲れたからソファーに座らせて”
“何、ばか言ってる! ここに座ってれ!”
“ここ床じゃん、痛いよ。”
“ここで上等だ!”
またうとうと始めたと~さん。でも両手はしっかり捕まれたまま。
他の年寄りのトイレに行く音で“誰だ!”
不法侵入者だった私は、今度はと~さんの奥様になっている。
“ここで寝てろ。起きんじゃないぞ!”と言いながら毛布を掛けてくれると~さん。
と~さんはバスタオルをブンブン振り回し悪者を退治している。
振りまわすと~さんが危なくて立ち上がると、
“なんでお前はわかんないだ!”とまた平手が飛んできた。
残念。空振りでした。
頭が少々ふらついてきた。
きっとと~さんも、このエネルギーは相当疲れるよね。
またうつらうつら。
5時、目を覚ましたと~さんは私の手をスっと離し、立った瞬間にプ、プ、と可愛い音が。
“と~さん、いい音色だね~”
“な~に言ってる~”
と~さんが笑っている。
やっと長い捕り物帖が終わった・・・・・
薬で鎮静をとも考えたけど、飲めば・・・・
夜の捕り物帖が終わればと~さんの笑顔が見れる。
今宵はと~さんに身を預ける事に。
捕り物帖の最中、“せつないよ。”と一瞬顔を伏せたと~さん。
この言葉が今も残る。
帰り際、
“気をつけて帰れよ。
身を預けるのはいいんだけど、
他の入居者のお年寄りもいるんだよね。
ひとり夜勤、どうすればいいのかな~